2019-10

海南万寧の女子小学生の性侵害事件と女性運動

5月8日、海南省万寧市の小学校の陳在鵬校長と地方政府の職員が、女子小学生をホテルに連れ込んで、一夜を過ごすという事件が発生しました(1)

陳校長らは逮捕されましたが、警察は、彼らの犯行を「強姦」ではなく、「強制わいせつ」として扱いました。また、警察やマスコミは、被害者のほうにも問題があったかのような発表をしました。また、被害者の家族は、当局からメディアや弁護士に接触しないように言われて、家族の代理人になった7人の弁護士は、家族から解任されました。

こうした状況に対して、以下のような、さまざまな運動が起きました(以下、微博を典拠にしている記述については、注記としては不完全ですが、微博名と日付だけを付記してあります)。

<目次>
1.警察の捜査を批判する署名運動
2.メディアによる二次加害に抗議するパフォーマンスアート
3.婦女連合会の不作為に対する抗議活動
4.教育局や小学校に対する葉海燕さんらの抗議活動と葉さんに対する弾圧、行政拘留

1.警察の捜査を批判する署名運動

警察の捜査に対する批判

ジャーナリストの李思磐さんは、警察の捜査に対して、以下のような批判をしました(2)

一、「処女膜が破れていなかったから強姦ではない」という罪状決定の方向が誤っている

警察は、処女膜が破れていないことを根拠に、強姦ではなく「わいせつ」であるとしている。しかし、従来の司法解釈(最高人民法院が出す法律の公式の解釈)は、幼女の場合は、成人よりも強姦の定義を広く取って、「双方の生殖器の接触」があれば強姦と認めており、処女膜の状況だけを強姦の基準にしてはならないとしている。また、4つの鑑定書のうち、1つは処女膜に裂傷があるとしている。さらに、警察は処女膜の状況だけを問題にしていて、DNA鑑定の結果や証人の証言を取り上げていない。

二、幼い女の子に汚名を着せ、容疑者を罪から逃れさせている

警察は、被害に遭った女子生徒が自分から関係を持ったと発表している。しかし、従来の司法解釈は、一般に、幼女の場合、同意の有無を問題にしていない。警察は、被害者の道徳について主観的な論評をすべきではない。警察は幼女が主体的に売春をしたかのように言っているが、未成年者は性関係において民事的能力がないことを無視している。

三、万寧の警察は犯罪の容疑者をかばっている疑いがある

 ・警察は、6人の生徒のうち4人だけについて、DNAが検出されなかったとし、他の2人については検査をしていない。
 ・かりに挿入行為がなかったとしても、「わいせつ」よりも罪が重い「強姦未遂」である可能性がある。警察は、被害者が薬を飲まされて気分が悪くなったという証言や金銭による性関係を持ちかけられたという証言、脅迫されたという証言もあることも考慮すべきである。
 ・未成年者に対する性侵害事件は、通常、累犯・重犯であり、警察は容疑者が余罪がないか調査する必要がある。とくにこの事件では、陳は仕事をつうじて幼い女の子に接触しており、類似の行為をしていないか追及する必要がある。

公開書簡への署名運動

李思磐さんが代表をつとめる「広州ニューメディア女性ネットワーク」という団体と宋志標さん(メディアウオッチャー)・余丹丹さん(女性の権利活動家)は、以上のような認識の上に立って、以下の点を万寧市公安局に要求する公開書簡への署名運動を始めました(一部の抜き書きです)(3)

・無責任に幼い女の子に汚名を着せる情報を発表した行為に対して、女の子とその家族に謝罪すること。

・証拠を全面的に分析せずに出した「強姦は存在しなかった」という結論を撤回すること。

・一部の保護者に対して介入・説得する行為をストップすること、警察が事件の捜査の過程で政府内部の行政命令の影響を受けないことを保証すること、事態を粉飾するために、陰の取引によって事実を歪曲しないことを保証すること。

・最も重要なのは、このように全国が関心を持ち、注目している事件については、万寧市政府はその公式サイトでこの事件に関する情報を、すぐに、正確に、完全に発表して、疑問に堪えうる公開の文字の記録をとどめおくこと。本来きわめて厳粛な、公権力の機関を代表する信頼度の情報を、随意・選択的に発表するようなことがないようにすること。


この公開書簡に対しては、5月26日までに1400人近くから署名が集まりました(新媒体女性的微博5.26)。

2.メディアによる二次加害に抗議するパフォーマンスアート

5月15日付『瀟湘晨報』は、「6名の女子小学生の生活の規律の乱れを重視せよ」という社説を掲載して、女子小学生が成人男性と付き合ったり、贈り物を受け取ったり、ホテルに付いて行ったことを問題にしました(4)

この報道に対して、5月21日、長沙の瀟湘晨報ビルの前で、4人の若い女性が、股をべったり広げて地面に座り、その股の間に、細い切れ目を入れた、赤い果肉が見えているスイカを置いて、ヴァギナに見立て、『ヴァギナ・モノローグ』(イヴ・エンスラー)を改編した「私のヴァギナはお誘いではない」を朗読して、「性道徳は、性侵犯の理由ではない。海南の幼女に二次被害を与えることを止めてください」と訴ました(大兔纸啦啦啦的微博5.21)(5)。その傍らでは、一人の青年が「性道徳は、性侵犯の~」という文言を書いたプラカードを掲げて、道行く人にも訴えがわかるようにしました (以上の写真→「四女青年长沙街头上演“阴道独白”声援海南幼女」女声网2013年5月21日[新浪微博@女权之声])。

3.婦女連合会の不作為に対する抗議活動

海南省万寧市以外の地区でも、最近、相次いで幼い女の子に対する教師による性侵害事件が発覚しており、たとえば、広東省でも、雷州市で小学校の校長が女子生徒を強姦した事件が起きました(6)。しかし、各地の婦女連合会(婦連、中国共産党の指導の下にある女性団体)は、何の抗議や声明も出していません。

それに対して、5月27日、広東省の婦連の入口で、何人かの市民が、「沈黙している婦連よ、性が侵害された子どもの泣き声は聞こえているか?」、「婦連よ、耳が聞こえぬふり、口がきけないふりはやめてくれ!」「幼女買春罪(14歳以下に対する買春を、「強姦」ではなく、「幼女買春」とすることによって、強姦ほどには重く罰しない法律(7))を廃止して、子どもの性侵害という犯罪行為を厳罰にせよ!」というプラカードを掲げて、婦女連合会に抗議しました。

彼らは、婦連に対して以下の7項目の要求をまとめています。

1.婦連は「女性と少年・児童の権益を守る」という法律で定められた職責をきちんと履行して、児童に対する性侵害事件に対して、やるべきことをやり、「大衆団体」として発すべき声を発しなければならない。

2.婦連は、行政・司法機関の職責履行状況を法にもとづいて監督し、職務上の怠慢や法律違反の疑いがある行為(捜査・事件処理の手続き違反や倫理違反など)に対しては責任を追及しなければならない。

3.「社会の安定維持」の名の下に、被害に遭った子どもや家族に圧力をかけて口を封じたり、メディアの報道を阻止したりする行為に対しては、婦連は、断固として、被害当事者の権益を侵犯する行為として通報・問責するべきであり、悪行に対して声を上げないようではいけない。

4.性的侵害を受けた女性の「貞潔」に対する偏見・非難および官界での「処女を破れば官位が上がる」という悪い風俗迷信など、女性をモノ化する行為に対しては、婦連は敏感なジェンダー意識を持って対応し、譴責すべきである。

5.現行刑法の「幼女買春罪」は幼い少女に汚名を着せ、基本的法理に違反している疑いがあり、法学界や人民大衆の中では、この罪名の廃止を求める声がきわめて高い。婦連は全国的大衆組織としての立場から、学者・専門家や利害関係者と協力して、立法機関に対してこの罪名の存廃問題の研究を強化するように訴えるべきである。

6.婦連は、自らの組織の優位性を生かして、学校・地域コミュニティなどで、児童少年・教師・保護者などに対して性知識・性安全・自己保護教育をするべきである。

7.婦連は民間の公益組織と協力して、被害に遭った子どもに対する心理的危機管理と救済の方法を逐次構築するべきである。


実は、昨年4月24日の『広州日報』では、広東省女性児童工作委員会が検察院と共同で作成した『女児が性侵害に遭った情況の調査研究報告』について報道されています(「广东发布女童遭性侵报告:多为熟人作案」)。婦連に対する抗議行動に参加した陳生さんは、「婦連は子どもに対する性侵害事件に関心を持って、多くの時間を使って調査研究をしているのに、なぜ事件が起きたときに、各地の婦連はみな黙っているのか?」と言います。また、この研究報告はまだその一部が新聞で報道されただけなので、市民たちは、その全文を公開するように、広東省女性児童工作委員会に情報公開申請をおこないました(8)

それに対して、広東省婦連権益部は、翌日、公式微博で、「婦連はずっと、どのようにして性侵害事件の発生を防ぐかを宣伝し、被害者にさまざまな形の救助をすることに努力してきた。年内に児童の性侵害防止に関するパンフレットを出す予定だ」と述べました。もっとも、それに対しては、「ずっと努力してきた? そうは見えない。婦連は、パンフレットを編集する以外に、もし被害者が助けを求めたら、どんな役割ができるのか?」(手牽手工友活動室[女性農民工支援NGO]的微博5.28)という疑問が寄せられましたが……。

「婦連は解散せよ!」という声も

この件に対する婦連の対応に関しては、すでに5月19日、フェミニスト活動家の李麦子さんも「婦連は結局、何の役に立つのか?」と言っていますし(麦子家的微博5.19)、セックスワーカー支援活動家の葉海燕さんも、5月22日、「婦連は一言も言わない。本当におかしい」と述べました(叶海燕宝贝的微博5.22)。

さらに、広東省婦連前での抗議がおこなわれた翌日の5月28日、向莉さん(どういう方なのかよくわかりませんが、写真を見ると、わりあい若い女性のようです)は、砂浜に「妇联解散(婦連解散)」と大きく書いた写真をアップして、以下のように述べました。

婦連は本来女性の権益・少年・児童の権益を守る団体だ。。。しかし、婦連は合肥の安坭事件・万寧の校長の小学生への性的侵害などの事件の間、ずっと耳が聞こえぬふり、口がきけないふりをしていた。公権力と被害女性を前にして、婦連は何度も口を噤んできた。解散すべきだ!!!(@花儿在歌唱的微博5.28)


5月28日、作家の天佑さんも以下のように述べました。

中国には女性と子どもの権益を保護する組織があるという。それは――婦連である。けれども、多くの小学生が強姦され、わいせつなことをされても、何も言わない。こんな組織がなんの役に立つのか? この組織に解散するように強く意見を出す!(作家・天佑的微博5.28)


向莉さんは、さらに、「婦連解散、幼女買春罪廃止!」というタイトルで、「女性と子どもの権益を守ると称している婦連は、万寧の6人の女子生徒が校長にホテルに連れ込まれたというスキャンダルが発生しても、耳が聞こえぬふり、口がきけないふりをしている。婦連は解散してください! 幼女姦淫は、強姦と見なすべきだ。幼女買春罪は5年以上の有期懲役で、量刑がきわめて軽く、成人が未成年者に性的侵害をする罪を逃れさせる疑いがあるので、廃止すべきだ。幼女をこの罪の中で売春婦と見なすのは、彼女たちと家族の人権と名誉権を侵犯している」として、9人(組)がそれぞれ、婦連や幼女買春罪を批判しているメッセージを掲げている写真を掲載しました(@花儿在歌唱的微博5.28。向莉さん自身は「学校の子どもが性的侵害に遭ったのに、無用な婦連は解散しろ!!」というメッセージを持って立っている写真を掲載している)。

この発信は、5月30日現在、5881転載されており、人権派の女性弁護士である王宇さんも「婦連解散」とコメントし(律师王宇的微博5.28)、他にも、「長年、婦連がなにか役に立つことをしたということを知らない」、「婦連は表面的には民間団体だが、実際はお役所だ」、「婦連、赤十字、労働組合、政治協商会議。。。。みんな誰のために仕事をしているのか??」「婦連は解散しなくてもいいから、沈躍躍[現在の全国婦連主席]は辞任しろ! 葉海燕が就任しろ!」、「解散に同意する」などのコメントが寄せられています。

もちろん向莉さんは、婦連だけを問題にしているのではなく、「教育部部長・袁貴仁と全国婦連主席・沈躍躍にお尋ねするが、一ヶ月のうちに多くの女児に対する性侵害事件が起きているのに、あなたがたは相変わらず沈黙を守り、一言のお詫びもない。あなた方の良心はどこにあるのか?!」(@花儿在歌唱的微博5.28)というふうに、教育部の責任も問うています。また、コメントの中には、「解散すべきは某組織である」「全国の邪教団体とその支部団体を取り締まれ」といった中国共産党を指しているようにと思われるものもありますし、検閲によって削除された微博もあるので、もっと露骨な発信やコメントもあったのだろうと思います。

4.教育局や小学校に対する葉海燕さんらの抗議活動と葉さんに対する弾圧、行政拘留

万寧市の教育局や小学校前で数人で抗議活動

海南省万寧市では、セックスワーカー支援活動家として著名な葉海燕さんが、5月27日、万寧市教育局の前で「学校にはまだ何人陳在鵬がいるのか? 誰が女の子の安全を守るのか」と大きく書いた紙を持って立ちました(@花儿在歌唱的微博5.27)。また、4人が、「監督の職責失当の局長は辞めろ」と書いた紙を持って立って抗議のアピールをしました(@叶海燕宝贝的微博5.28)

また、同日午後2時からは、葉海燕、向莉、唐吉田(人権派弁護士・男)、王宇(人権派弁護士・女)、単麗華、王建芬、賈霊敏、南伏の各氏が、万寧小学校前で3時間あまり、「学校の環境を浄化せよ」「校長の陳在鵬を法によって処罰せよ」などと書いた紙を持って立って、抗議活動をしました。王宇弁護士は、女性や子どもの権利に関する法律を紹介したチラシを撒きました(@叶海燕宝贝的微博5.27、5.28、@花儿在歌唱的微博5.27)。

葉海燕さんは、「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな! 連絡先電話12338 葉海燕」と大きく書いた紙を持って、立ちました(@叶海燕宝贝的微博5.27、@花儿在歌唱的微博5.27)。「12338」というのは、婦女連合会の権利保護ホットラインの電話番号です。これは、加害者に対する皮肉であるとともに、婦女連合会への皮肉ないし注文を表現しているのかもしれません(9)

葉さんがおこなった「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな!」というメッセージに自分の写真を添えるやり方が流行

葉さんの「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな! 連絡先電話12338」という文言と自分とを写した写真を自らの微博で発信するというやり方は、その後、他のフェミニストにも広がり、5月28日には、鄭楚然さんや李麦子さんがやり(大兔纸啦啦啦的微博5.28、麦子家的微博5.28)、29日には、@夏日的第13章さんがやっています(5.29)。

さらに、女性だけでなく、雷闖さん(5.28)のような男性、阿強さん(5.29)のようなゲイにも広がりました。動物の写真とともに、上のメッセージを掲載した人もいます。連絡先の電話番号に「110」番を書き込んだ人もいます。その他、さまざまな人がやっています(10)

葉さんに対するデマ、非難

一方、葉さんに対して、「葉海燕は男の子に性的侵害をしている」とか「葉海燕はどこそこの政治グループに隷属している」というデマも振りまかれました(叶海燕宝贝的微博5.30)。

葉さんのパフォーマンスについて、「風俗を害する」ものであり、「大衆をあっと言わせて歓心を買おうとする『自己宣伝』」だとして非難する記事も出現し(11)、この記事が、新華網のような代表的ニュースサイトもに転載されるという事態も起きました。

民間女権工作室にまた調査が入る

葉海燕さんに対して、政府当局からの弾圧と思われるものも始まります。

5月29日、葉海燕さんが自宅に電話すると、広西の博白[の民間女権工作室]にまた調査が入ったと言われ、「家には子どもが一人でいる。もし子どもに何か事故があったら、きっと政府部門が関係している。私は、恥知らずな関係部門が、私に対する嫌がらせをストップするよう希望する。もし私が何か違法なことをしたのなら、直接に法律の手続きでやってほしい。私はあなたがたが文明的で合法的なやり方で問題を処理できることを望んでいる」と述べました(叶海燕宝贝的微博5.29)。

婦連の人が家主に葉さんを追い出すように圧力をかける

5月30日には、葉さんは次のように微博で述べます。

9時45分:ついさっき、家主のおばあさんが来た。彼女は、街道居民委員会にも婦連の人がいて、2、3人が一緒に来て、私がいま借りている家を私に貸すなと言ったという。私の女児は近くの学校に通っている。子どもの教育のために、近くの学校に通わせているのだ。いま私が追い出されたら、子どもの勉強は途中で終わってしまう。私は博白[県]の婦連に電話をしたら、彼女たちは、このことに関わっていないと言った。これは、私という市民が立場を表明した代償なのか?


葉さんの家に10人あまりの女たちが来て、葉さんを殴る

10月30日、葉さんは、微博で以下のような発信をします。

11時41分:いま、4、5人の女が私の家に来て、私を殴っている。

11時42分:お手数だが皆さん、警察に通報を。家には私と娘しかいない。

11時58分:みんなで11人ほどいる。男が1人いて、ほかに10人ほど女性がいる。

11時59分:彼らはまだわが家の入口の階段をふさいでいる。皆さん、警察に通報するのを手伝ってください。役に立たなくても、記録をしなければならない。法律という手段で解決する。


Voice of Americaの記者への電話では、葉さんは、彼女(彼)ら11人は、「自分たちの写真を撮って、その写真をネットに掲載した」と言っているが、葉さんは「私は、あなた方の写真を撮っていないし、あなた方の写真を人に撮らせたこともない」と述べたのに、彼女たちが暴力をふるったと言っています。電話からは、騒がしい声が漏れてきて、葉さんが「私は撮っていない、もう一度言うが、私は撮っていない」「あなたが家に来て、私を殴ることがすでに違法だ」と言う声も聞こえて、電話が切れたということです。

その後、6、7分後に電話がつながった時は、警官がドアを開けるように言っている声や葉さんが「110番が通じない」と言って、その警官を怪しんでいる言葉や「私は違法行為はしていない」と言っている声が聞こえてきました(12)

午後1時前、王宇弁護士が、葉さんの家に電話したところ、葉さんの子どもが「お母さんは派出所に連れて行かれた」と話し(律師王宇的微博5.30)、その後、葉さんの行方はわからなくなりました。

警察が、葉さんは「刃物で3人の女性を傷つけた」ので行政拘留にしたと発表

5月31日、広西玉林市警察は、玉林市博白県警察が5月30日に「刃物で3人の女性を故意に傷つけた葉海燕を行政拘留にした」と発表しました。

警察の発表によると、博白県の女性の張某と梁某と覃某という3人の女性が、2012年に葉海燕がインターネット上で彼女たちの旅館を「十元店」(出稼ぎ労働者用の安い売春宿)だとして中傷して、彼女たちの家族の写真をネットに掲載したため、名誉が毀損されたとして、葉海燕に抗議して損害賠償を要求したところ、葉海燕は包丁で4人にけがを負わせたということです(13)

しかし、この発表は、とても人々を納得させるものではないでしょう。ある弁護士も、すぐに、自分のブログで、警察の通告は「いささかうさんくさい」と言っています。すなわち、1)葉海燕のパフォーマンスアートの後、その11人がすぐに家に来たというのは、タイミングがよすぎる。葉海燕とその11人との紛争は去年起きたのに、今になって交渉している、2)当時多くの人が家に来て挑発して、住宅に侵入し、人身に危害を加え、葉海燕はそれにかなわなかった。つまり、刃物を持ったのは防衛のためだったのに、警察が葉だけを罰して他の人を追及しないのは、公平とは言い難い、と指摘しています(14)

実際、同日、王宇弁護士と王全平弁護士が、葉さんの娘さんに事情を聴いたところ、娘さんが学校から帰ってカギをかけずにいたところ、不法に家の中に侵入されて、母親を殴ったり罵ったりしたので、これ以上ひどい怪我をさせられないように、母親が武器を取って正当防衛をしたということでした(律师王宇的微博5.31)。

葉さんの釈放を求める運動

さまざまな人が葉さんの釈放を訴え、フェミニストのグループは、そのための葉書を博白市の派出所や婦女連合会に送る運動もおこなっています(15)。艾暁明・元中山大学教授は、上半身裸の身体に、「私をホテルに連れ込め」「葉海燕を自由にしろ」と書いて、twitterで発信しました(16)

[付記(2013/06/03)]
Togetter「『校長先生、小学生をホテルに連れ込む』事件と女性活動家の逮捕―中国」もKinbricksnowさんによって作成されています。

(1)海南万宁一小校长带4幼女开房 政府职员带2幼女开房」法制网2013年5月13日(来源:法制日报)、「小学校校長と市職員、小学6年生の女児6人に性的暴行―中国海南省」XINHUA.JP 5月14日など。
(2)李思磐「校长开房案:万宁警方是否涉嫌渎职」华商报网络版2013年5月17日。
(3)致海南省公安厅关于万宁市公安局办理“小学校长带女生开房案”涉嫌渎职的公开信
(4)重视6名小学女生生活方式的失范」『潇湘晨报』2013年5月15日。
(5)すでに5月1日に、香港の1908社が、切れ目を入れたスイカを股の間に挟んでヴァギナに見立てるパフォーマンスアートをしているので(叶海燕的微博2013年5月1日)、彼女たちがオリジナルなパフォーマンスアートではないと思います。
(6)广东雷州小学校长涉嫌强奸两女生 被举报后自首」中国新闻网2013年5月23日。
(7)中華人民共和国刑法の第236条(強姦罪)は、「相手が14歳未満の幼女と姦淫する者は、強姦と見なし、重く罰する」としている。強姦は「3年以上10年以下の懲役」で、「情状が劣悪」な場合は「10年以上の懲役・無期懲役・死刑」である。その一方、刑法は、第360条2項(幼女買春罪)では、「14歳未満の幼女を買春する者は、5年以上の有期懲役に処し、あわせて罰金を課す」としている。「有期懲役」は期限が「15年以下」に決まっていますから(刑法第45条)、「幼女買春罪」は、最低刑は強姦よりも重いけれども、「情状が劣悪」な場合でも、「強姦罪」ほどは重く罰せられない。また、中華人民共和国刑法では、「強姦罪」は「公民の人身の権利、民主的権利を侵犯する罪」に属するのに対して、「幼女買春罪」は、「社会の管理と秩序を妨害する罪」に属している。これは、幼女が自分で売春したので、幼女にも問題があったとされているからである。
(8)以上については、「“拿什么保护你?我的孩子!” 广州市民妇联目前举牌表心声 申请政府消息公开 呼吁妇联维护妇女及少年儿童权益」女权之声的微博5月27日 15:44→「广州市民妇联前面举牌表心声 广州市民妇联前面举牌表心声 并申请妇儿工委会政府信息公开」社会性别与发展在中国2013年5月28日。
(9)以上の写真は、「叶海燕抗议性侵女童:开房找我,放过小学生!」(21CN微频道2013年5月28日)でも見られる。
(10)こうした写真は、「叶海燕举牌抗议万宁性侵案 遭殴打被扣押」(社会性别与发展在中国2013年5月31日)にも掲載されている。
(11)郑亚琳「“校长开房找我”哗众取宠式的“自我秀”」紅網2013年5月30日。この件についてはRedio Free Asia(自由亚洲电台)も取り上げています(「女权活动人士举牌抗议校园性侵 官媒批评行动伤风败俗」2013年5月13日)。
(12)叶海燕抗议万宁校长性侵被报复家中遭群殴」Voice of America (美国之音)2013年5月30日。
(13)广西玉林警方:叶海燕故意伤害他人被依法拘留」中国新闻网2013年5月31日。
(14)叶海燕事件」丁金坤法律博客2013年5月31日。
(15)声援叶海燕,寄出明信片 围观即是力量,表态亦能声援」女声网2013年5月31日。
(16)艾晓明「这是我生过养过的身体,为了叶海燕,我豁出去了――救救小学生,反抗性暴力!」艾晓明(xiaocao07)twitter2013年5月31日。

[追記](2013/06/03)
・葉海燕さんが掲げたスローガンの翻訳が、「小学生を解放しろ」となっていましたが、「小学生には手を出すな」に改めました。
・KinbricksnowさんによるTogetterへのリンクを付け加えました。

各地の弁護士・市民が地下鉄会社に対して痴漢防止策の建議・署名運動

6月20日、上海地下鉄第二運営有限公司の公式微博(中国版ツイッター)が、服の下の下着やストッキングが透けて見えている女性の乗客の背中を写した写真を掲載して、「地下鉄に乗るのに、こんな恰好をしたら、痴漢に遭わないほうがおかしい。娘さん、自重してください」と言ったことに対して、女性たちからインターネット上で抗議の声が高まりました。6月24日には、地下鉄の車両の中で、2人の若い女性が、そのうち1人は、全身を黒いベールで覆って、「涼しさは欲しいけれど、痴漢はいらない」と書いたパネルを持ち、もう1人は、乳房の形をした器を胸に付けて、「私はみだら(ふしだら)でもいいが、ハラスメントはしてはならない」と書いたパネルを持つパフォーマンスがおこなわれたりもしました(本ブログの記事「痴漢を女性の服装のせいにする上海地下鉄ブログに対する、ネット内外での女性たちの抗議のうねり」参照)(1)

この動きは、その後、地下鉄運営会社に対して痴漢対策を求める運動となって続いています。

6月 黄溢智弁護士が上海地下鉄に対して痴漢対策について情報公開申請

まず、6月26日、差別反対の活動をしている益仁平センター(北京)の黄溢智弁護士が、上海地下鉄を管理している上海市運輸・港湾管理局と上海申通地下鉄集団有限公司と上海地下鉄二運有限公司の3つの機関に対して、以下の点について情報公開するように申請しました(2)
 ・上海の軌道交通運営には、乗客がセクハラに遭うことを防止する規定や措置はあるか? もしあるならば、それらはどのようなものか?
 ・セクハラの被害に遭った乗客に対して、上海の軌道交通を運営する側とそれを管理する側はどのような救済措置を取るのか?

それに対して、地下鉄側は、以下のような回答をしました(3)
 ・セクハラ防止の面では、マナーを守った乗車を宣伝しており、乗客の自己保護と安全防備意識を喚起している。
 ・セクハラの被害に遭った乗客に対して上海地下鉄が取っている救済措置はある。それは、「首問責任制(最初に対応した職員が最後まで責任を持って対応する)」原則にもとづいて、職員が乗客を連れて警察に通報し、警察に映像資料の証拠を提供すること、また、警察の処理の結果にもとづいて、あとでフォローアップの報道をして、広範な乗客にマナーを守った乗車をいっそう宣伝することである。

8月 10人の男性弁護士が上海地下鉄に痴漢防止策を建議

8月22日には、上のような回答を踏まえて、全国各地の10人の男性弁護士(*)が、上海申通地下鉄集団有限公司に対して、「上海の軌道交通の運営においてセクハラ防止メカニズムを打ち立てることに関する建議」を提出しました(4)

(*)蒋振偉(上海新華弁護事務所)、朱学毅(上海盛聯弁護事務所)、呂孝権(北京衆沢女性法律相談サービスセンター)、李方平(北京瑞風弁護事務所)、劉徳起(天津安尊弁護事務所)、龐琨(広東徳納弁護事務所)、呉良濤(北京盈科[武漢]弁護事務所)、封頂(江蘇志仁弁護事務所)、蒋韜(北京市君沢君[成都]弁護事務所)、劉書慶(山東東城弁護事務所)

この建議は、まず、「セクハラを防止することは、軌道交通を運営する側の法定の責任である」として、「上海市軌道交通管理条例」第21条が「軌道交通の路線運営機関は、乗客のために、安全で、速い旅客運送業務を提供し、乗客の合法的権利を保障しなければならない」と規定していることや婦女権益保障法がセクハラを禁止しおり、「関係部門は女性に対するセクハラを予防・制止する措置を取らなければならない」と規定していることを紹介しています。

次に、「セクハラと女性の服装との間には必然的な関係はなく、被害者を責めるべきではない」こと、「地下鉄の公式微博は、来歴不明でプライバシーと名誉を侵犯している疑いがある乗客の写真を引用するべきではないし、女性の自重を求めるのは性差別の疑いがある」ことを押さえた後で、以下のような具体的提案をします。

1.セクハラ防止業務制度を制定する。その制度は少なくとも、セクハラ防止の原則、訴えへの対応、職責の分担、処置のプロセス、監督・審査などの内容を含むこと。また、その制度を、下級の会社の従業員の研修と審査に組み込むこと。

2.従業員のセクハラ防止研修をおこなう。研修の中では、次のことをおこなう。・会社にはセクハラを防止する法定の義務があり、従業員は会社を代表してこの義務を履行することが自分の仕事の責任であることを知らせる。・セクハラに関する認識の誤りを正す(「露出が多いとセクハラが増える」など、研究や証拠によって誤りが証明させているいわゆる「常識」を正すことを含む)。・従業員のセクハラ防止業務の分担とプロセスを明確にする。・セクハラ事件に応対する具体的なやり方を訓練する。

3.セクハラの訴えの窓口を設置し、それを公表する。たとえば、ホットラインを設置する、処理の責任者を公表する、地下鉄の目立つ場所に貼る。

4.セクハラ防止の宣伝を強める。地下鉄の中に不法分子を震え上がらせるスローガンを貼る。それと同時に市民に主体的に制止あるいは通報を呼びかける、たとえば、「セクハラは違法行為です、制止と通報にご協力ください」などと。

5.セクハラの「首問責任制(最初に対応した職員が最後まで責任を持って対応する)」を実行する。職員はセクハラの訴えを受けたら、直ちに制止して、加害者を取り押さえ、証拠を固め、すぐに警察に通報して、被害者にその他の必要な援助を提供しなければならない。

6.微博のセクハラ防止の窓口としての機能を強化する。微博でセクハラ防止の訴えの方法を公表し、積極的に返答をし、微博上でのセクハラの訴えを処理する。被害者を責めたり、乗客の私的言論を暴露したりすることを杜絶し、公衆の監督を誠実に受け入れる。


8~9月 他市の地下鉄運営会社にもセクハラ防止策を問い合わせ、痴漢防止策を建議

10人の弁護士のうち、5人は、北京・天津・深圳・成都・南京の地下鉄運営会社に、それぞれの都市の会社にセクハラ防止策についての情報公開を求めました。

たとえば、北京衆沢女性法律相談サービスセンターの呂孝権弁護士は、北京地下鉄公司に情報公開を求めました。しかし、北京地下鉄公司からは、以下のような回答しか返ってきませんでした(5)

北京軌道交通における、セクハラを防止する措置についての返答

呂孝権先生

(中略)

北京地下鉄公司は、地下鉄運営業者として、われわれは一貫して乗客に安全・迅速・快適な乗車環境を提供するよう努力してきた。

あなたが手紙で提出された、軌道交通の運営において乗客が受けるセクハラを予防することに関しては、わが社が問い合わせたところ、わが国のセクハラについて適用される法規は付属文書[遠山注:婦女権益保障法などの規定が書かれている]のとおりであるが、北京の軌道交通の運営の中のセクハラ防止に関する規定はない。

北京市地下鉄運営有限公司企業発展部
2012年9月7日


そこで、呂弁護士は、北京の地下鉄会社に対しても、上海地下鉄に対してと同様に、「北京の軌道交通の運営においてセクハラ防止メカニズムを打ち立てることに関する建議」を送りました(6)

9~10月 広州での運動――学者による情報公開請求とともに、若い女性が先頭に立って署名を集める運動

広州市では、9月、地下鉄で女性のスカートに精液のようなものをかける「射狼」と呼ばれる痴漢が話題になりました(7)。ある被害者はここ3ヶ月の間に4回痴漢に遭ったと話していました(8)

9月21日、梁海媚さんが、genderequalityadvocacyメーリングリストで、広州の地下鉄に公開状を送って、セクハラ防止措置を制定させること、そのために今日中に広州の地下鉄利用者100人の署名を集めることを呼びかけました(9)

9月27日には署名のホームページもできました。その際には、目標は、広州の地下鉄の利用者1000人から署名集めることにされ、署名が1000人集まり次第、地下鉄会社に送信することになりました(10)。9月27日には、『羊城晩報』(「羊城」は広州の別称)でも、この署名運動は報道されました。その記事では、「男子トイレ占拠」や女性の雇用差別反対などパフォーマンスアートをしてきた鄭楚然さんも、自らが痴漢に遭った経験を語っています(11)

その署名の文面は以下のとおりです(12)

広州地下鉄総公司へのセクハラ防止問題についての公開状

広州地下鉄総公司:

私たちは地下鉄に乗る際の安全の問題に関心を持っている広州の地下鉄の乗客である。9月初め、多くの主流メディアが、ある女性が退勤する途中の五羊邨の地下鉄でセクハラに遭ったこと、今回のセクハラは、彼女が最近3ヶ月のうちに遭遇した4回目のセクハラだったことを伝えた。私たちは、地下鉄に乗ったときに不愉快なセクハラにあったことがあるか、または親類や友人がその種の不愉快な経験を話すのを聞いたことがある。これらの事実は、軌道交通の運営に比較的重大なセクハラの現象が存在しており、乗客に安全上の隠れた危険をもたらしていることを示している。私たちは、貴社が軌道交通の運営側として、セクハラを防止する法的責任を負っていると考える。私たちは特にここに連名で、貴社が当地の軌道交通の運営におけるセクハラの予防と救済の関連措置を公開し、同時に、私たちが貴社に提出する建議を採用することを望む。

まず、乗客がセクハラにあうことは、乗車の安全問題の中の、軽視すべきでない一部である。「広州市都市軌道交通管理条例」第21条第2款は、「都市の軌道交通の経営単位は、公共の安全を脅かしたり、軌道交通の治安秩序を乱したりする行為を予防する。都市の軌道交通の中の治安違法犯罪に対して制止し、すぐに公安部門に報告する」と規定している。その本質において、セクハラは他の不慮の事故と同じく、地下鉄運営における重大な安全上の隠れた危険である。さらに、「婦女権益保障法」は、言語・文字・映像・電子情報・肢体の行為などの形態の女性に対するセクハラを禁止しており、関係部門は必要な措置を取って女性に対するセクハラを防止しなければならないとしている。それゆえ、貴公司には乗客の乗車の安全を保障する義務があり、その中にはセクハラを予防・制止する義務が含まれなければならない。

次に、世界各地のセクハラ防止の実践を見渡すと、地下鉄の運営側が必ずかなり重要な役割を果たしている。台湾の捷運(遠山注:台湾主要都市部とその周辺都市を走る地下鉄を主とした高速鉄道網、wikipediaの説明)では、いたるところで「もしあなたがセクハラにあったら、地下鉄のホットラインに電話してください」というセクハラ防止広告を見ることができる。カナダのヨーク地区では、当地の公共交通運営業者や警察と共同で広告を出して「公共交通上で、いかなる言葉でのハラスメント、粗暴な行為、セクハラにあった場合でも、直ちに運転手に助けを求めるか、911に電話してください」と言っている。

各地の地下鉄のセクハラ防止メカニズムが絶えず整備されている今日、私たちは知りたい:当地の軌道交通の運営では、乗客がセクハラに遭うことを予防することに関する規定や措置があるのかどうか? もしあるならば、それらはどのようなものか? セクハラに遭った乗客に対して、軌道交通の運営側はどのような救済措置をとるのか?

私たちは地下鉄の乗客であるだけでなく、公民でもあるので、貴社といっしょに努力して、フレンドリーな乗車環境を作り上げ、十全なセクハラ防止メカニズムを構築できることを望んでいる。それゆえ、私たちは貴社がセクハラ防止の大衆的宣伝を強化し、地下鉄の中に不法分子を震え上がらせるスローガンを貼り、地下鉄テレビ放映を利用してセクハラ防止の公益広告を放送することを希望する。同時に、市民に対して、主体的に制止あるいは通報するよう呼びかける――たとえば「セクハラは違法行為です。制止と通報にご協力ください」というふうに呼びかけることを希望する。乗客がセクハラに遭ったときには、ただちに乗客がハラスメント環境を離脱し、加害者を処罰することを助ける措置(たとえば、通報ボタン、通報ホットライン、警備員の協力など)を取ることができるようにする。公民としては、私たちは、よろこんで地下鉄のセクハラ防止メカニズムのプロセスに参与し、私たちも創意工夫して、良好な乗車環境を作って、私たちの合法的権益をまもる。

以上のとおり申し上げる。

乗車の安全に関心を持つ広州地下鉄の乗客一同


10月10日までに集まった署名は300筆だそうです(13)。署名する人は、広州の地下鉄を利用したことがある人でなければならないので(実際、署名サイトにも、利用している路線を記入する欄があります)、必ずしも簡単には署名が集まらないのだと思いますが、梁海媚さんたちは頑張って集めておられるようです。

なお、9月26日には、中山大学中文系副教授で、中山大学ジェンダー教育フォーラムの柯倩婷さんが、広州市交通委員会、広州地下鉄総公司に対して、以下の2点の情報公開を申請しています(14)
1.広州の地下鉄運営の中で、乗客がセクハラに遭うことを予防することに関する規定や措置はあるか?
2.セクハラにあった乗客に対して、広州地下鉄の主管サイドとして、広州市交通委員会は、どのような救済あるいは協力の措置を取るのか?

各地で地下鉄での痴漢を社会問題に――弁護士や学者だけでなく、一般市民も運動

今から30年近く以前のことになりますが、私も、たまたま全日本学生自治会総連合『未来みつめるヒロインたち――女子大生白書』(汐文社 1983年)に掲載されていた、痴漢の被害を訴える女子大学生の文を読んで、なぜこういう深刻な問題が大きな社会問題として扱われないのだろうかと思って、当時の国鉄に対して、痴漢に警告し、被害者が声を上げやすいような雰囲気を作るように思ったスローガン(「痴漢やめろ」とか「性は人権です」とかいったものを提案したと思う)を書いたポスターなどを作成してほしいと投書したことがあります。もちろんその種のことを考えたのは私1人ではなかったようで、同様の要望はあったようですが、国鉄側は「お客を痴漢扱いするのはどうも」というようなコメントをしていた新聞記事を読んだ記憶があります。

しかし、その後、私のような一時の憤りでない、女性の方々の地道な運動――大阪で言えば、地下鉄御堂筋事件(市営地下鉄車内での痴漢行為を注意した女性が、犯人の2人組に脅されて連れ回された末、強姦された事件)をきっかけにして結成された「性暴力を許さない女の会」(同会による「コラム 地下鉄御堂筋事件[PDF]」(15)がネットで読めます)の運動などが実って、今回中国で提案されているような措置のうちの幾分かは、日本ではすでに実施されていると言えると思います。けれど、いまの日本でも、今回中国で提起されたさまざまな原則がきちんと実現しているとは、とても言えません。

今回、中国で、これまで同国では社会問題として扱われなかった公共交通の中のセクハラ問題について、社会的に対処すべき問題だという認識を広げたことには大きな意義があると思います。

しかも、上海だけにとどまらず、北京・広州などの各地で問題を提起したこと、弁護士や学者の提案だけではなく、一般市民による署名集めとしても運動がおこなれていることも重要だと思います。また、鄭楚然さんが登場しているところからもわかるように、この運動も、今年になってからの女子大学生らの直接行動の流れを汲んでいる部分もあります。

「私はみだらでもいいが、ハラスメントはしてはならない」から、地下鉄会社の対策要求への変化について

ただし、少しだけ気になる点もあります。

6月25日、武嵘嵘さんは、「私はみだら(ふしだら)でいいが、ハラスメントはしてはならない(我可以骚你不能扰)」というスローガンについて、「このスローガンは、女性の服装の自主権を唱えており、セクハラの中に男性の責任がないのかどうかを言っている点が良い」、けれど「大衆のセクハラについての定義はあいまいで、非常に多くの争いがあって、それらの争いによって男性はたやすく私たちの対立者になってしまう」と言い、自分の夫も、「このスローガンは、すべての男性の私たちを支持する声を弱めるかもしれない」と言ったと述べています(16)

男性弁護士10人による上海地下鉄への建議も、上海地下鉄の公式微博を批判する際に、「私たちは、その微博(女性の服装を責めるブログ)は地下鉄会社のセクハラ問題の本質・危険性・地下鉄会社の法定責任についての認識の曖昧さを暴露し、間接的にセクハラ問題における男性と女性との対立を引き起こした。」「男性も女性も同様に、被害者になりうる」などと述べています。述べていること自体は誤りではないものの、男性の出している建議でありながら、男性の加害者的側面についての言及がとくにないということも事実です。

つまり、上のような点から見ると、「男と女の対立」を嫌う立場から、「私はみだら(ふしだら)でいいが、ハラスメントはしてはならない(我可以骚你不能扰)」というスローガンが後景に退いたかのようにも思われるのです。

もちろん地下鉄会社に対する痴漢対策要求運動の中では、そうしたスローガン自体は後景に退いてもいいと思いますし、なにより私には運動の詳しい状況はよくわかりません。ですから、冷静な判断の上での変化なのかもしれませんが、私は、「私はみだら(ふしだら)でいいが~」というスラットウォーク的発想の今後の行方にも注目したいと思います。

(1)この件については、その後、『毎日新聞』2012年7月2日付東京夕刊に隅俊之「上海交差点:薄着をめぐる熱い論戦」という記事が出ました。それほど長い記事ではありませんが、隅記者は、女子大学生の男子トイレ占拠の際も、隅俊之「上海交差点:広州トイレ占拠事件」(2012年3月5日東京夕刊)という、かなりきちんとした記事を書いておられ、見識のある記者のように思います。
(2)北京律师申请公开上海地铁防治性骚扰措施」新網新聞2012年6月26日(来源:法制日報)。
(3)男人也要防性骚扰? 十位男律师联名致信上海地铁」法制網2012年8月23日(来源:羊城晩報)。
(4)10名律师建议地铁出招防性骚扰」北京众泽妇女法律咨询服务中心サイト2012年8月23日、「ミニブログで地下鉄での痴漢防止強化 中国」新華網2012年8月24日(来源:人民網日本語版)。
(5)北京市地铁公司关于北京轨道交通性骚扰防治信息公开申请的答复」北京众泽妇女法律咨询服务中心ブログ2012年9月13日。
(6)吕孝权「关于在北京轨道交通运营中建立性骚扰防治机制的建议」北京众泽妇女法律咨询服务中心サイト2012年9月11日。
(7)广州地铁“射狼”被拘留10日 作案过程曝光」新華網2012年09月17日(来源:広州日報)など。
(8)广州地铁被骚扰女子称3个月遇到4个“色狼”」新華網2012年9月5日(来源:広州日報)。
(9)miriam「【地铁防性骚扰 征集100人签名】」google groups性别平等倡导计划2012年9月21日。
(10)“征集千人签名,建议广州地铁防治性骚扰 ”签名网页和《致广州地铁总公司关于防治性骚扰问题的公开信》现正式公开发布!!!!」google groups性别平等倡导计划2012年9月27日、「征集千人签名,建议广州地铁防治性骚扰」社会性別与発展在中国サイト2012年9月28日(来源:郵件組)。
(11)广州网友征集签名防地铁“射狼” 发起人:收集1000人签名后梳理有效建议送交地铁公司」『羊城晩報』2012年9月27日。
(12)征集千人签名,建议广州地铁防治性骚扰」社会性別与発展在中国サイト2012年9月28日(来源:郵件組)。
(13)嵘嵘「回复: 【性别平等倡导计划】 一个人力量太渺小,全部人力量很巨大(海味求救!) 」google groups性别平等倡导计划2012年10月10日。
(14)近期频见地铁上性骚扰,相关运营方和管理方有无作为? 地铁有没有防“狼”措施 副教授提信息公开申请」『羊城晩報』2012年9月27日。
(15)大阪府の「人権学習シリーズ」vol.6『同じをこえて 差別と平等』 ■その「ちがい」は何のため? 女性専用車両で考える特別な措置‐3.その「ちがい」は何のため? 女性専用車両で考える特別な措置 より。
(16)嵘嵘「【上海地铁二运事件】上海首站行动讨论和下一步计划注意」性别平等倡导计划2012年6月25日。

痴漢を女性の服装のせいにする上海地下鉄の公式微博に対する、ネット内外での女性たちの抗議のうねり

「地下鉄に乗るのにこんな恰好をしたら、痴漢にあわないほうがおかしい」発言に対するネット上の抗議

6月20日、上海地下鉄第二運営有限公司の公式微博(中国版ツイッター)が、「地下鉄に乗るのに、こんな恰好をしたら、痴漢に遭わないほうがおかしい。娘さん、自重してください」という発言とともに、地下鉄のある女性の乗客を後ろから撮影した写真を掲載しました。その女性は、深い青色のワンピースを着ていたのですが、その絹の生地からは、下着とストッキングが透けて見えていました。

翌日以降、「フェミニズムの声(女权之声)」(女性メディアウォッチネットワーク[妇女传媒监测网络]の微博。同ネットワークは、インターネット誌『女声』も刊行している)をはじめとして、多くのネットユーザーが上記の記事に対して抗議の声を上げました。その主な観点は、以下の3点でした。
 1.服装は個人の自由であって、セクハラは権利を侵害する違法行為であり、被害者自身に理由を求めてはならない。
 2.地下鉄の会社は、法にもとづいて乗客の安全を保障すべきであり、被害者のせいにすることは運営機構の法律的責任を回避するものである。
 3.公式の微博は、出所不明で、乗客のプライバシーと名誉を侵犯している疑いがある写真を引用すべきではない(1)

ところが、上海地下鉄第二運営有限公司の公式微博は、上の記事を反省も撤回もしませんでした。むしろ、「善意の忠告であって、謝る必要はない」とか、肌を露出した服装をするのは「恥知らずである」といったことを主張した、他の地下鉄の公式アカウントや地下鉄の従業員の発言を転載しました。

多くの女性は、自らの経験から、「肌を露出した服装が、セクハラを招く」という「常識」に対して反論しました。彼女たちは、未成年者がセクハラの重要な被害者であること、男性もセクハラに遭うことを指摘しました。また、「肌を露出した気の強そうな娘は、地下鉄では痴漢にあまり遭わない。痴漢の多くは、控えめで弱々しく、おとなしそうな娘を狙う」という声も上がりました(2)

また、「もし『女が薄着をすることが男性の犯罪を誘発する』という言論をほおっておくなら、最終的には、女性はみんな、分厚い衣服を着なければ、外出を許されないということになる。正常な社会では、ある人がたとえ裸で大通りを歩いたとしても、警察に通報されることはあっても、彼女を侵犯することは許されない。これは基本的常識だ」という指摘もありました(3)

地下鉄内で抗議のパフォーマンス――理念は「スラットウォーク」と同じ

6月24日には、上海の地下鉄2号線で、2人の女性が抗議のパフォーマンスをおこないました。そのうちの1人は、全身を黒いベールで覆って、「涼しさは欲しいけれど、痴漢はいらない(要清凉不要色狼)」と書いたパネルを持ちました。もう1人は、黒い頭巾をかぶりつつ、乳房の形をした金属の器を2つ胸に付けて、「私はみだら(ふしだら)でもいいが、ハラスメントはしてはならない(我可以骚你不能扰)」と書いたパネルを持ちました。

[アクションのビデオ(初めはコマーシャルが出ます)]
视频: 我可以骚你不能扰

パフォーマンスをおこなった女性に対して、ネットメディア「網易」の記者がインタビューしているのですが(4)、その女性によると、前日に友人が数人集まった時に、今回の問題に対して何かできるのではないかという話になって、抗議活動をしたということで、それほど計画的なものではなかったようです。また、このアクションは「パフォーマンスアート」と呼ばれているのですが、その点に関しては、「それは重要ではなく、ポイントは、私たちが何を伝えるかだと思います」と語っています。また、2人が顔を隠した大きな理由は、「焦点を、2人が誰かということよりも、私たちのスローガンに当てたかった」ということにあるそうです。

また、「私はみだらでもいいが、ハラスメントはしてはならない(我可以骚你不能扰)」というスローガンについて、記者が、「騒(みだら、ふしだら)」という言葉には貶す意味があることをどう思うか尋ねたところ、その女性は、「この言葉は、極端ではあるが、私たちが伝えたい考え方に非常にぴったりで、実は『スラットウォーク(slutwalk 荡妇游行)(*)』の核心とも一致しています。もちろん多くの人は『なぜ非常に極端な言葉を使うのか?』と言うでしょうが、私は、『騒』という語が私たちの理念をまぎれなく伝えていると思います。『騒』は、身体の権利です」と答えています。

(*) スラットウォーク――カナダのトロントで警官が「性被害を避けるために、女性はふしだらな格好をするべきではない」言ったことをきっかけに始まった運動で、性暴力の被害者の落ち度を責める風潮を批判して、被害者の人権を訴えるために、女性たちが露出度の高い服で行進するもの。2011年4月3日にカナダで始まり、イギリス、オーストラリア、韓国などに広がった(5)。今回の事件をめぐっても、彼女たちの行動以前にも、『南方都市報』の微博が、スラットウォークについて紹介していた。

また、彼女は、「とくに我慢できない」意見として、「男性は下半身で思考する動物だから、それに挑戦するべきでない」という意見を挙げ、「これは、非常にごろつきのロジックだ」と言っています。彼女によると、「私たちが子どもの頃からの性の教育の中には、非常にアンバランスがあり、女性に対しては、抑圧することが主であるのに、男性は、ずっと励まされてきた」とのことで、「文化全体」がそうであって、「私たちの教育は、男性にどのように自分の性の衝動をコントロールするかを教えていない」と語っています。

新聞やテレビでも報道、フェミニズムの論説も

2人のパフォーマンス以後、この事件は、新聞やテレビでも報道されるようになり(6)、この事件を論じた各種の論説も登場しました。

論説はけっして女性(被害者)の立場に立ったものばかりではありませんでしたけれど、「最も責任を負うべき加害者をほおっておいて、とくとくと女性の服装について些末な揚げ足を取るのは、被害に遭った女性に対する二次加害にほかならない」(ジャーナリスト・姚景、『新京報』掲載)といったことを説く論説もありました(7)

また、方剛さん(北京林業大学副教授、同大学セクシュアリティとジェンダー研究所所長)は、自分のブログに「上海の地下鉄の抗議は、すばらしい!」というエントリを書きました(8)

方さんは、「中国の以前の社会的唱道には、パフォーマンスアートの方式はあまり見られなかった。けれど、今年は、良い始まりであり、『男性トイレ占拠』、『李陽[=「クレージーイングリッシュ」という英語の学習法の創始者。妻に対するDVが明るみに出た]に抗議する』、今回の『地下鉄のみだらとハラスメント』を含めて、みな非常に良い」と賞賛します。

方さんは、上海地下鉄の微博について、「結果的にはセクハラを励ますものになるかもしれず、少なくとも女性の身体の自主権、服装権を侵犯している」と批判します。方さんは、アメリカでの裁判を紹介しつつ、「もしある人がベンツを運転していたら、あなたは『この車はすごくいいので、私の占有欲を刺激したから、奪った』と言えるのか? もしある人が大きなダイヤモンドの指輪をしていたら、あなたは『これは値打ちがあって、きれいだから、自分を誘惑したので、私はそれを盗んでもいい』と言えるのか?」と問いかけ、「これら問題に対する回答は議論の余地がないことは明らかなのに、なぜ女性が涼しげな服装をしていたら、『誘惑する』かどうかが議論になるのか?」と問うています。

といっても、上のような点は、方さんを待つまでもなく、すでにネットでは指摘されている点です。しかし、下の発言は、方剛さんならではの言い方でしょう。

女が何を着ようと、女自身のことであり、これは、彼女の、身体の美や服装の美に対する理解である。『男の自然な生理的反応』は、あなた自身のことであり、あなたが自分で反応すればよく、自慰をしようが、性的な幻想をしようが、関係がない。けれど、手で触れることは、他人の権益を侵犯することである。


また、李思磐さん(マカオ大学社会学系博士課程院生)は、『東方早報』で、「服装の審査は、女性の空間を攻撃し抑圧する」という論評を発表しました(9)。李さんは、宋山木強姦事件や女性トイレ不足問題の際にもフェミニズムの立場から論陣を張ったジャーナリストですが(本ブログの記事「山木教育グループ総裁・宋山木の強姦事件をめぐる議論」「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)、今回も、この問題が広く女性のあり方全体への攻撃・抑圧であることを詳しく論じました。

この[=上海地下鉄]微博の言下の意味は、「自重しない」女の乗客は、セクハラをされてもあたりまえだ、というものである。これはけっして新しい論調ではない(……)これは、男の性欲は、いったん刺激されたら、制約を受けずに、他の人を侵犯するのは合理的結果であり、被害を受けた人は、操行を審査されなければならず、もし彼女が「ふしだらな女」ならば、被害は合理的だ、というものである。

女性に対する服装の審査は、「(その場に)ふさわしい」という名目の下に、少なからぬ支持を得ている。これは、女性の身体のすがた、話し方、立ち居振る舞いに対して、従来、男性の視点から、人々が慣れっこになっていて気づかない審査メカニズムがあったからである。一方では、女性は、「女らしく」なければならず、服装や化粧によって女性としての身体的特徴をできるだけ際立たせて、男たちの目や心を楽しませなければならない。もう一方では、「女らしい」ことは女の原罪であり、男性に常軌を逸した行為をさせる原因になるものであり、女たちは、できるだけ手や足を揃えて、空間を収縮させて、「人を惑わせる」・「放蕩である」ことの境界で、もじもじし、絶えず自己審査をし、さまざまな不便に耐えなければならない。

「放蕩な女」に対する審査と称するものは、実際は女性全体に対するものである。なぜなら、このような審査は、すべての女性を「定義される」状態に置くものだからである。(……)

それゆえ、公共空間の管理者が女たちに対して審査のシグナルを発したときには、女性のネットユーザーは、このような保護を名目にした汚辱を拒絶して、資格審査のない公共空間と女たちの身体に対する主権の尊重を要求したのである。


地下鉄側の痴漢対策についての議論も

具体的な痴漢対策を求める意見も出ました。

たとえば、北京の黄溢智弁護士は、上海の地下鉄を管理している上海市交通運輸局と地下鉄を運営している会社に対して、地下鉄のセクハラ対策についての情報公開を求める申請をしました(10)

また、メディアでも国外の地下鉄の痴漢対策が話題になり、女性専用車両を求める意見なども掲載されています(11)

「インターネット上の最初の大規模な性差別反対のアクション」

『女声』誌は、今回の事件について、「これは、インターネット上の最初の大規模な性差別反対のアクションかもしれず、民間で、自発的に団結し、呼応している。これは、現在起きている、新しいバージョンの女性の権利闘争史である」と述べています。

これまでも、鄧玉嬌事件(本ブログの記事「鄧玉嬌事件をめぐって」参照)のときのように、女性の人権に関する事件をめぐって、インターネット上のうねりが起きたことはありました。しかし、鄧玉嬌事件は、女性の人権という文脈よりも、官僚批判や格差社会に対する批判という文脈で議論した人のほうが、はるかに多かったと思います。女性の権利を正面から訴えるネット上のうねりが起きたのは、たしかに今回が最初だろうと思います。

『女声』誌によると、従来は、インターネット上でも「女性の権利の主張はまだ非常に周縁化されており、微博での活発な公共の話題の中には基本的に女性とジェンダーの影はなかった」が、「初歩的変化は2012年初めに出現した。『男性トイレ占拠』が、女性の権利のアクションが新浪微博の話題になった最初かもしれない。わずか一週間後に新浪はこのキーワードでの検索を阻止したけれども、@女権の声は、唯一の民間の女性の権利のプラットフォームのアカウントとして、しだいに同志を集めた」。そして今回、「ずっと弱くて分散していたネット上のフェミニズムの声は、すでに空前の高さに達し、多くの目覚めた人々がすでに出会った」と評価しています。また、「同時に、オフラインの公の行動も継続しておこなわれた」ことや「マスメディア」の役割も指摘しています。

整理すると、『女声』誌の記述からは、今回の運動は、以下のようなものが結びついて展開したことがわかります。
○ネット上の行動
・@女権の声アカウント
・個人アカウント
・友好的メディアのアカウント(@網易女人など)
○オフラインの行動
・パフォーマンスアート
・マスメディア

ネットの匿名投票では上海地下鉄ブログ支持が約7割だが……

上海地下鉄公式ブログの記事については、すでに6月25日の時点で、微博上で3863件の評論が出され、それらは11923回転載されたとのことです(12)。その中には、上のようにフェミニズムのうねりがありました。

ただし、フェミニズムに無理解な意見も多かったですし、ネット上の匿名投票においては、以下の[1][2]で示すように、上海地下鉄公式ブログを支持する意見の方が多く、約7割だったというのも現実です。

[1]新浪サイトが、上海の地下鉄の微博の記事に対する「削除・謝罪要求」について、次の二者択一の形でアンケートをしたところ、以下のような結果でした(6月30日19時24分現在)(13)
 ・「支持する:削除して謝るべきである。服装は個人の私事であり、地下鉄側が無断で公開することは不適切である」――28.3%。
 ・「反対である:削除や謝罪の必要はない。結局は公共の場であり、地下鉄側が善意で忠告することは間違っていない」――71.7%。

[2]新浪微博が、「地下鉄の公式ブログが夏の服装は露出的にしないように呼びかけたこと」について、次の二者択一の形でアンケートをしたところ、以下の結果でした(6月30日現在)(14)
 ・「服装の露出は個人の自由であり、他人が干渉すべきではない」――16273人(31.2%)
 ・「女性の夏の服装は自分を保護する意識を持つべきであり、差別とは無関係である」――35920人(68.8%)

上のアンケートについては、設問のし方に批判が出ていて、ある女性は、[2]のアンケートに対して、「自分の主張は『女性には服装の自由があるべきであり、女性が何を着ていても、セクハラをされるべきではない』というものである」(15)と述べて、自分たちの主張を的確に伝えていないことを批判しています。

こうした設問のし方の問題を含めて、ネット社会はやはり男性社会であるということも露呈したわけです。

ただ、ネットが男社会であることはもちろん日本も同じことで、日本のyahooの匿名の投票あたりだと、もっとアンチフェミニズム的な結果になりそうです。こうした壁を乗り越えることは、日中共通の課題だろうと思います。

(1)以上は、「专题 拒绝“自重”——微博引爆反骚扰辩论(word)」『女声』第116期(2012.6.18—6.25)より。今回の事件については、『女声』の微博が先導的な役割を果たしているだけに、同誌のこの特集が最もまとまっています。本ブログのこの記事も、とくに注記のない部分をはじめとして、この特集に頼っている面が大きいです。
(2)この論点に関しては、Fz「我可以骚,你就能扰?」(東西網)が、これまでの研究をまとめて、以下のように結論付けています。「セクシーであることとセクハラとはあまり関係がない。人々の認識とは逆に、セクシーな服装をすればするほど、セクハラには遭いにくい。なぜなら、セクシーな服装は、女性意識が目覚めた後の自信の体現である面が大きいのに対して、痴漢が探す対象は、往々にして従順で軟弱な女性だからである。セクハラの成因は権力のアンバランスであり、両性の社会的地位が不平等であれば、セクハラを根絶することはできない」
(3)上海地铁请女性自重遭抗议:我可以骚你不能扰」中国新聞網2012年6月25日(来源:CCTV)。
(4)当時人NO.35对话“要骚不骚扰”抗议者」網易新聞。
(5)スラット・ウォーク(SlutWalk):フェミニズムの新しい形」壺齋閑話2011年6月 7日、「スラットウォークロンドン~女性に対する暴力に反対し、性犯罪の被害者の人権擁護を訴えるデモ」2011年6月11日、「英で下着姿の女性らデモ行進 『性犯罪服装のせい』に抗議」共同通信2011年6月13日、「スラット・ウォーク(あばずれの行進)の様子画像集」(NAVERまとめ)など参照。
(6)上海地铁微博称"女生穿太少不被骚扰才怪"引热议」中国新聞網2012年6月26日(来源:法制日報)など。網易女人サイトは、スラットウォークの写真の特集もしました(「荡妇游行:以欢乐反抗污名」網易女人2012年6月26日)。CNNやTHE CHINA PRESS(侨报)も報道しました(「外媒:地铁提醒女性着装防色狼引争议背后」中国新聞網2012年6月27日、「『不適切な服装が痴漢を招く』 地下鉄会社の投稿に非難集中 上海 」CNN2012年6月27日)。日本でも、「『露出多い服だと痴漢に遭いますよ』、地下鉄側の忠告に女性側『何を着ようと勝手』と猛反発―上海市」レコードチャイナ2012年6月25日、「中国、『痴漢防止』呼びかけ写真で騒動」TBSニュース2012年6月27日などの報道がありました。
(7)姚景「地铁公司能指责女乘客着装?」『新京報』2012年6月26日。
(8)方剛「上海地铁抗议,好!」方剛的博客2012年6月25日。
(9)李思磐「着装审查打压女性空间」『東方早報』2012年6月25日。
(10)北京律师申请公开上海地铁防治性骚扰措施」法制網2012年6月26日。
(11)看看国外地铁如何防止性骚扰」東方網2012年6月27日、「多国出狠招治理地铁性骚扰 东京地铁推女性专列」中国新聞網2012年6月27日(来源:広州日報)、「应对地铁性骚扰只有设立女性专用车厢」騰訊新聞2012年6月26日(来源:法制晩報)。
(12)专家称地铁呼吁女性着装自重不应止于提醒」央视《新闻1+1》2012年6月26日。
(13)(新浪調査)「上海地铁请女性“自重” 你怎么看?」新浪網。ただ、6月27日時点では、26.9%:73.1%だったので、ここ3日間で、「支持」の比率が1.4%伸びているなどの微妙な変化はあります。もっとも、下の[2]の「服装の露出は個人の自由であり~」の比率は0.04%しか伸びておらず、ほとんど同じです。
(14)官博呼吁着装自重引抗议―你怎么看着地铁官博呼吁夏日着装勿暴露?」新浪微博。
(15)专题 拒绝“自重”——微博引爆反骚扰辩论(word)」『女声』第116期(2012.6.18—6.25)。

[2012年10月24日追記]文中の脱字を修正し、語句の微細な修正(標語→スローガン)をおこないました。
[2012年12月25日追記]ビデオがリンク切れになったので、別のものに変更しました。

台湾刑法の「性自主妨害罪」の改正草案をめぐって

 台湾では、昨年夏以降、子どもに対する性犯罪の量刑の問題をきっかけに、刑法の「性自主妨害罪」の章の改正や裁判官のあり方が問題になっています。

1.1999年に「強姦罪」から「強制性交罪」へ:男性も対象にするとともに、被害者の「意思に反する」ことを要件に

 まず、「中華民国刑法」の第16章「性自主妨害罪[妨害性自主罪]」について紹介しておきます。この章には、以下のような条文があります(抜粋)。

第221条(強制性交罪)
 男女に対して暴力・脅迫・恐迫・催眠術またはその他のその意思に反する方法によって性交をした者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。
 前項の未遂犯はこれを罰する。

第222条(加重強制性交罪)
 前条の罪を犯し、以下の状況の一つがある者は、7年以上の有期懲役に処する。
 一、2人以上が共同でこれを犯す者
 二、14歳未満の男女に対してこれを犯す者
 (以下略)

第224条(強制わいせつ罪)
 男女に対して暴力・脅迫・恐迫・催眠術またはその他のその意思に反する方法でわいせつ行為をした者は、6ヵ月以上5年以下の有期懲役に処す。

第224-1条(加重強制わいせつ罪)
 前条の罪を犯し、第222条第1項の各款の状況がある者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。 

第227条(14歳未満・16歳未満との性交罪・わいせつ罪)
 14歳未満の男女と性交した者は、3年以上10年以下の有期懲役に処す。
 14歳未満の男女とわいせつ行為をした者は、6ヵ月以上5年以下の有期懲役に処す。
 14歳以上16歳未満の男女と性交した者は、7年以下の有期懲役に処す。
 14歳以上16歳未満の男女とわいせつ行為をした者は、3年以下の有期懲役に処す。

 「性自主妨害罪」という章は、1999年4月に中華民国刑法が改正された際に設けられた章です。それまでは、第16章は「良俗妨害罪[妨害風化罪]」でした。第221条の「強制性交罪」も、以前は「強姦罪」という名称で、その条文も「女性に対して暴力・脅迫・薬剤・催眠術またはその他方法によって、抵抗できなくして姦淫した者は、強姦罪として、5年以上の懲役に処す。14歳未満の女子と姦淫した者は、強姦罪と見なす。前2項の未遂犯はこれを罰する。」というものでした。

 すなわち、1999年の改正によって、以下の点が変わったということです(1)
 ・保護される法益が、「良俗[風化]」から「性の自主性」になった。
 ・性交やわいせつの強制が、「女性」に対する犯罪ではなく、「男女」に対する犯罪になった。
 ・処罰される行為が、「姦淫」から、「性交」に変わり、口による性交、肛門による性交、異物の挿入なども含まれるようになった。
 ・罪の構成要件が、「抵抗できないようにする[至致使不能抗拒]」から「その意思に反する[違反其意願]」に変わった(この点は、第224条の強制わいせつ罪も同じ)。

 この改正の背景には、女性団体の運動があったことは言うまでもありません。

2.子どもに対する性犯罪の量刑に抗議する「白バラ運動」→最高法院、「7歳未満の児童と性交した者は懲役7年以上」という決議

 昨年2月、6歳の女の子に性暴力をふるったある男を検察は第222条の強制性交罪として起訴しました。しかし、8月15日、高雄地方法院(裁判所)は「女の子が抵抗しなかった」として第227条の、14歳未満の男女との性交罪に改め、3年2ヶ月という軽い刑に処しました。

 また、9月1日には、3歳の女の子に対する性犯罪で起訴された男が、一審、二審では女の子が「やめて」と泣き叫んだとして7年2ヶ月の重刑が下されたにも関わらず、最高裁では証拠不十分で無罪となりました。

 この2つの事件が報道されると、ネット上での非難が爆発、facebookで裁判官の解任を求める署名活動がおこなわれ、わずか3週間で28万人の賛同が寄せられました(最終的には30万人以上になった)。また、ネット上で結成された「正義連盟(正義聯盟)」が「白バラ運動(白玫塊運動、白バラは子どもの純潔を示す)」という抗議活動を開始しました(2)

 正義連盟の趣旨は、以下のようなものでした(3)
1.政府当局に、でたらめな判決が被害者とその家族にもたらす二次被害を重視するように呼びかける。
2.裁判官の任用・評価・退場のメカニズムを推進する。
3.司法の案件審理のメカニズムを改め、陪審団方式で審理することを提案する。
(以下略。)

 こうした動きに押されて、9月3日、中華民国司法院(wikipediaによる説明)は、法務部に7歳未満の児童に対する罰則を強化するよう提案したことを表明しました(4)。9月7日には、最高法院(裁判所)が刑事法廷会議を開き、7歳未満の児童と性交した者は、一律に7年以上の懲役の判決を下すという決議をしました(7歳から14歳までは、現行どおり、児童の同意があれば、3年以上10年以下)。この決議は、実質的には下級審にも拘束力を持ちます(5)

 9月25日には、「正義連盟」が呼びかけ、性暴力の問題に取り組んできた勵馨社会福利基金会現代婦女基金会なども賛同して、「9.25白バラ運動集会」が開催されました。この集会は、下のような要求を掲げて、1万5千人余りが総統府前のケタガラン大道でデモと集会をしました。
 1.性侵害の保護の対象を、7歳以下から14歳以下に拡大する。また、心身の障害者も対象に含める。
 2.子どもの性侵害事件についての専門家証人制度を設立する。性的侵害を受けた児童には、捜査および裁判の段階で、児童の心理の専門家が被害者に付き添う(*)。
 3.「裁判官・検察官評価法」を制定し、適任でない者には憲法による終身職の保障を受けさせないようにする。

 (*)勵馨社会福利基金会は、以下の理由で専門家証人制度が必要だと述べています。
 ・性侵害の被害者は、必ずしもはっきりした生理的な傷を負っているとは限らないし、目に見える証拠があるとは限らない。だから、公平に訴訟をおこなうには、被害者が受けた心理的な傷を評価することが必要である。
 ・性侵害の被害者は、必ずしも明らかな暴力的な脅迫を受けたとは限らず、しばしば加害者に権力や地位があるために、抵抗できなかったり、協力させられたりする。そのため、専門家の証人の協力によって、被害者が被害を受けた時の心理状態を明らかにすることが必要である(6)
 現在は、そういう制度がないため、1、2人の裁判官が専門家の証人を求めたことがあるだけで、大多数の裁判官は、不必要だとするそうです(7)

 この集会に参加した大人は「司法の死」を示す黒い服を着、子どもは「純潔」を示す白い上着を着て、手に手に白いバラを持ってアピールしました(8)

 この集会のテレビ報道は、以下のようでした。
・[公視中晝新聞(要求撤換恐龍法官 白玫瑰上凱道) 2010-09-26]

・[中天新聞 925白玫瑰運動]


 同じ9月25日、総統府の公共事務室も声明を発表し、馬英九総統はこの問題を重視しており、性侵害の保護の対象を広げること、「裁判官法」の早期成立をめざすことなどを表明しました(9)

女性団体の訴え――被害者保護や裁判官の研修を重視

 従来から性的侵害の問題に取り組んできた「現代婦女基金会」は、9月25日の集会に参加した際、以下の「6つの訴え」を発表しました。
 1.性侵害の法規を速やかに改定する。
 2.性侵害専門の法廷を設立する。
 3.訴訟での被害者の地位を向上させる。
 4.司法官の研修を強化する。
 5.性犯罪者の診療の専門家を育成する。
 6.性犯罪者の監視とコントロールを実現する(10)

 現代婦女基金会は、以下のように述べています(11)

 「現代婦女基金会は、長年、暴力の被害に遭った女性を助けてきた過程で、司法関係者に性侵害についての専門的知識が欠けているために、あまりにも多くの誤った判決や軽い判決が下されてきたことに気づいた。それゆえ(……)性侵害の犯罪の法律改正作業をしなければならないだけでなく、裁判官の専門的資質も同時に向上させることが求められている。」

 「刑法の『性自主妨害罪』の章はとっくに民国88年[1999年]に改正され、『抵抗できないようにする』という要件は『その意思に反する』に改められたのに、われわれの司法官は、まだ被害者を『抵抗できないようにする』ことを判決の主な根拠にしている。(……)統計資料では、性侵害事件の6割以上はよく知っている者の犯罪であり、子どもに対する性侵害事件はさらにそうである。子どもを主に性的侵害の対象にする多くの加害者は、児童が常に身辺に接触できる対象であり、彼らは、子どもが幼くて抵抗できないか、抵抗することを知らないために、脅すか利益で誘いさえすれば、身体的暴力をあまり必要とせずに、たやすく子どもを傷つけることができる。子どもが拒絶の声を上げないのは、子どもがわかっていないからであり、『いやだ』と言うのは、子どもにとっては拒絶を示す最大の反抗であり、手足で必死に反抗して傷を負うことがないのは、幼くて反抗する力がないからである!」

 「このほか、一般の成人の性的侵害の案件でも、裁判官はジェンダー意識が欠乏しており、女性が性的侵害に直面したときの恐怖を理解していない。司法の関心はまだ、被害者が強力に反抗したかどうかや、身体にひどい傷を負ったか否かにある。被害者は常に『あなたはその時何をしていたのか?』『あなたはなぜすぐに離れなかったのか?』『なぜ大声で叫ばなかったのか?』『なぜ加害者を攻撃しなかったのか?』『なぜすぐに警察に届けなかったのか?』などの一連の質問をされる。ジェンダーの観点から見れば、女性は小さい時から伝統的な性別役割の教育をされ、すぐに攻撃性や能動性を持てるように訓練されていない。性的侵害が女性に与える恐怖や汚名化も、女性が司法に告訴したり声を上げたりしない主な原因である。」

 「10年前すでに、現代婦女基金会は、性侵害事件の司法の二次被害についての調査をおこなったが、多くの性侵害の被害者の弁護士はみな次のように考えている:司法システムには、被害者を保護するソフト・ハードの設備が欠けているだけでなく、司法業務従事者には性侵害というテーマについての専門知識がないために、被害者は法廷で立証の仕事に責任を負わなければならず、性的被害に遭ったという事実を裁判官に説得しなければならない。そのため、被害者は性侵害事件の細かな内容を絶えず繰り返して述べなければならず、心身に二次被害を受ける。そのことが多くの性侵害の被害者に司法の正義の前に歩みを進めることを間接的に妨げている。勇敢に司法に訴えた被害者も、裁判官が性的侵害の専門的認識がなく、訓練されていないので、間違った判決や軽い判決が下される。」

 「私たちは、司法院が『性侵害専門法廷』を設立しなければならないと訴えている。本会は現在『犯罪被害者保護法』の修正草案を完成させることに着手しており、これによって、性侵害の被害者の訴訟での地位を高めることを望んでいる。」(10)

 「白バラ運動」は、裁判官批判が軸で、その名称などから見ると、「子どもの純潔を守る」運動という色彩もあるようですが、女性団体は、「性暴力の被害者の保護」という視点を重視しているようで、具体的には、上のように性被害についての裁判官の研修などを求めています。9月25日の集会で掲げられた、専門家証人制度の要求も、女性団体の要求を反映している面があるのかもしれません。

3.法務部、性自主妨害罪の罰則を強化するとともに、強制性交罪の要件から被害者の「意思に反する」を削除する草案を作成→女性団体は「意思に反する」の削除などに反対

 2011年1月10日、法務部は、以下の(1)(2)の「性自主妨害罪」の改正草案を完成させ、それを審査するために行政院に送ったと報じられました(12)

(1)罰則を強化する
第221条(強制性交罪)
 「3年以上、10年以下」の有期懲役→「5年以上」の有期懲役
第224条(強制わいせつ罪)
 「6カ月以上、5年以下」の有期懲役→「1年以上、7年以下」の有期懲役
第227条(14歳未満・16歳未満との性交罪・わいせつ罪)
 「14歳以上、16歳未満の男女と性交した者は、7年以下の有期懲役に処する」→「12歳以上16歳以下の男女と性交した者は、1年以上、7年以下の有期懲役に処する」

(2)性自主妨害罪から「その[=被害者の]意思に反する」という要件を削除する 
 その意図は、法改正のための会議に参与した人によると、「裁判官が量刑をするとき、被告の犯罪の手段の軽重だけを考慮すればよくして、証明しようがない被害者の意思への違反の有無によって、被告に軽い判決を出す状況を減らす」ということだと報じられました。

 女性団体は、上の(1)の点についても必ずしも評価していません。勵馨社会福利事業基金会の紀惠容執行長は、刑罰を強化すると、裁判官が有罪判決を下しにくくなるので、審理の際により多くの証拠が求められ、被害者が立証することが困難になるのではないかという危惧を述べています(13)。また、現代婦女基金会の頼芳玉弁護士は、被害者の年齢が1ヵ月でも高ければ適用しないのはおかしいし、2人の子どもが無邪気に性行為をした場合はどうなるのかという問題もあると言っています(14)。尤美女弁護士も、「性侵害犯に対する判決が軽いのは、裁判官が比較的軽い条文を採用することに問題があるのであって、『年齢で一律に扱う』ことには反対である」と述べています(15)

 また、婦女新知基金会現代婦女基金会勵馨社会福利事業基金会台北市晩晴婦女協会台灣少年權益與福利促進聯盟台北市女性権益促進会は、共同で記者会見をし、法改正の手続きが民主的原則に違反していることを批判しました。これらの団体によると、法務部は2010年9月に1回、特定の民間団体と専門家を招いて公聴会をしただけであり、その後は、この問題に関心を持つ民間団体や民衆には、意見を述べるパイプが何もなかったそうです。今年1月になって、やっとニュースを通じて法務部の一部の修正意見を知ることができただけで、改正案の本文や改正理由はまだ知ることができていない状況だそうです(16)

 2月には、それらの女性団体が連名でおおむね下のような声明を発表して、署名を募り、同月22日には立法院前で抗議行動をおこないました(17)

法務部が性急に法改正することに反対であり、民主的審議の精神を実行すべきである
 (略…上述)

「意思に反する」という要件の削除に強く反対する
 1999年、刑法に「性自主妨害罪」の章を増訂して、性の自主権を保護する精神を確立したと同時に、刑法221条の強制性交罪の構成要件を、「抵抗できないようにさせる[致使不能抗拒]」ことから「意思に反する[違反意願]」ことに改めた。その目的は、家父長制的な思考を除去し、個々人の自主的な意思を正視することにあった。しかるに、法務部は、民衆の不満を早くなだめるために、軽率に「意思に反する」という要件を削除して、性自主妨害罪の章を、再び被害者の自主的権益を無視するものにし、「性の自主権を擁護する」という重要な精神もすっかり失わせた。
 このほか、私たちがさらに憂慮するのは、そのことによって、全国の性侵害の通報量の7割を占める知り合いによる性暴力が、暴力・脅迫などの強制の要件に符合しないために、性自主妨害罪から、いっそう除外されやすくなることである。たとえば昨年2月、かつてのボーイフレンドがかつてのガールフレンドに性的侵害をした事件について、台中法院は、女性側が強力に拒絶しなかったという理由で、無罪の判決を下したが、これは、被害者の自主的意思がまったく重視されなかった結果である。類似の判例は日増しに増えており、私たちは、このような法改正は、保護を拡大する効果がないだけでなく、むしろ性の自主権の保障の範囲を大きく縮小すると考える。

法務部は民意をもてあそんでおり、法改正は、民衆の不満が向けられた点を根本的には解決できない
 去年の女児の性侵害事件が引き起こした社会の反発は、その原因の一部は、裁判官が具体的なケースについて適切な処罰ができなかったことにある。しかし、現行法の規定によれば、裁判官が裁量する際に、重く処罰することができるのであって、裁判官の量刑の不当さに対しては、刑の重さを引き上げて、裁量の範囲を縮小することだけを解決方法にしてはならない。刑の重さの取り決めは犯罪の情状の軽重と符合しており、軽率に一部の条文の刑の重さを引き上げたり、引き下げたりすることは、刑法の刑罰全体の軽重のバランスを崩し、刑法の体系を混乱させる。

 私たちは、以下の主張を提出する。

 1.立法院は審議をしばらく猶予するべきであり、けっして性自主妨害罪の章の修正草案を軽率に通過させてはならない。
 2.私たちは「家に閉じこもって車を造る」法改正をただちに停止して、社会的な参与を拡大してコンセンサスを形成し、民主的審議の精神を実現することを要求する。
 3.性侵害罪の法改正は、見知らぬ人の性暴力にだけ着目して、性侵害犯罪の多数を占める顔見知りの暴力の被害者を犠牲にしてはならない。


発起団体
婦女新知基金会現代婦女基金会勵馨社会福利事業基金会台北市晩晴婦女協会台灣少年權益與福利促進聯盟白玫瑰社會關懷協會

連署団体
上記6団体のほか、婦女救援社会福利事業基金会台湾女人連線主婦聯盟環境保護基金会台湾性別平等教育協会高雄市婦女新知協会台湾女性学学会台湾大学婦女研究室

 こうした声にもかかわらず、3月10日、修正草案は行政院会(閣議)を通過しました。

 法務部は、「現行の刑法の強制性交罪の成立要件は、行為者が客観的に『被害者に抵抗できないようにする』ことのほか、『被害者の主観的意思に反する』ことを必要としているが、反していない場合や被害者の意思が証明しようがない時は、強制性交罪によって制裁しようがない」などと言って、「意思に反する」という要件の削除を正当化しています(18)

4.その他の要求は、積み残されたまま

 その一方で、、白バラ運動や女性団体が訴えてきた、以下のようなさまざまな問題が残されたままです。

裁判官教育

 正義聯盟が2010年11月~12月の「性自主妨害罪」の判決652件を分析したところ、性侵害事件において刑が軽いことは変わっていませんでした。正義連盟によると、この問題は裁判所全体の現象であり、最低刑期+6ヵ月以下の判決が62%で、判決の35%は法定の刑期よりも低かったということです。また、減刑の理由として、「被告の公務員としての生涯に影響しないようにする」とか、「完全な家庭を保持するため」とかいった不合理なものが見られました。裁判官は、司法院の「控訴率」「維持率」に関する要求に縛られ、自分の業績の上げるために、独立した裁判をしていないとも指摘されています(19)

 現代婦女基金会の頼芳玉弁護士は、「民間団体は、裁判官の専門教育を強化して、性侵害事件に対する正しい認識を持たせることを訴えてきたのに、法務部は民間団体の訴えの重点を理解していない」と述べており(20)、同基金会の姚淑文執行長も、「法改正の前提として、裁判官の専門の研修を強化しなければならない」と言っています(21)

裁判官の審査

 白バラ運動をきっかけに、「裁判官法」の草案も出されたようですが、民間団体の「裁判官検察官評価推進連盟(法官檢察官評鑑法推動聯盟)」によると、その草案の評価は「ブラックボックス」的な評価(公表されないなど)にすぎず、現状よりも後退している面もあるとのことです(22)

専門家証人制度、専門法廷

 以前から女性団体が言ってきた、専門家証人制度や専門法廷の必要性は訴えられていますが(23)、まだ形になっていないようです。

ミーガン法

 白バラ運動は、昨年から、台湾版「ミーガン法」(ウィキペディアの説明)の制定も目指し、署名運動を展開しています。2010年11月20日、「白バラ運動」は、2回目の集会をケタガラン大道でおこないました。この集会には、200人足らずしか集まりませんでしたが、台湾版「ミーガン法」の制定を訴えました(24)

2010-11-20公視晚間新聞(白玫瑰返凱道 催生台版梅根法案)


 内政部も、2011年1月、「性侵害犯罪防止法(性侵害犯罪防治法)」の改正草案を作成して、犯罪者に対する「地域コミュニティの監視・コントロールを強化する」として、性侵害事件を起こし、かつ高い再犯の危険があると評価され、かつ刑の後に強制治療の適用の対象になっていない者*については、姓名や写真、判決の要旨を公告すると表明しました(*2006年7月以降に犯罪を犯した者は、現行刑法91条の1の規定により、刑期が終わった後、強制治療の対象になるので、対象は、2006年6月以前に犯罪を犯した者)(25)

 白バラ運動も、この点に関する要求を強めているようです(26)。現代婦女基金会も「性犯罪者の監視とコントロール」を言っていましたし、勵馨社会福利事業基金会は、台湾版ミーガン法を制定することに積極的です(27)

 しかし、台湾人権促進会台灣人權促進會は、公告制度は人権侵害である上、再犯率を低下させる証明もなく、他にも方法はあるとして、反対意見を提出しています(28)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 全体としてみると、昨年来、子どもに対する性暴力の問題をめぐって「白バラ」運動が盛り上がったけれども、政府の対応は、重罰化が中心で、女性団体が以前から訴えていた裁判官の研修の強化とか、被害者保護といった点は軽視されたままであり、むしろ被害者の「意思」を軽視する法改正がなされようとしています。台湾人権促進会が憂慮しているミーガン法(29)の件を含めて、「人権」という観点からは好ましくない事態が生じかねない状況のようです。

 台湾は、10年以上前に「強姦罪」から「強制性交罪」への転換を実現したことは日本に比べて先進的だと思うのですが、その転換の意義が政府や裁判官には充分浸透していなかったのでしょうか? 「白バラ」運動も、大きな集会を成功させたことは注目されるのですが、「子どもの純潔」を掲げる運動であることの限界もあるのかもしれません。

(1)刑法『妨害性自主罪』修訂的評估與展望」網氏女性電子報第29期。
(2)以上については、「【アジア発!Breaking News】子どもが『NO』と言わなければ無罪? 子どもへの性犯罪を裁けない法律に、国民の怒り爆発。(台湾)」techinsight2010年9月10日。「99年兒童性侵司法輕判事件」(勵馨社会福利事業基金会サイト9月13日)も参照。
(3)關於正義聯盟」正義聯盟サイト。
(4)司法院建議修法 性侵幼童罪加重」『自由時報』2010年9月4日、「性侵7歲以下幼童 司法院建議修法重刑」今日新聞網2010年9月4日。
(5)最高法院刑庭決議 性侵7歲以下幼童最低判7年」『自由時報』2010年9月7日、youtube「最高院決議 性侵7歲以下幼童 重判7年以上 2010.09.08」、「最高裁『7歳未満の子供への性犯罪は刑罰を加重』と決議」国民党ニュースネットワーク2010年9月8日。
(6)不容許恐龍法官再胡搞--受性侵兒需要你的協助」勵馨社会福利事業基金会サイト2010年9月3日。
(7)紀惠容「【勵馨觀點】我們需要人性的司法審理系統」勵馨2010年9月23日。
(8)以上のこの集会についての記述は、「925白玫瑰運動集會」維基百科、「促司改 白玫瑰凱道怒放」『自由時報』2010年9月26日、「性犯罪の被害児童を守ろうと訴える 白バラ運動デモ集会」国民党ニュースネットワーク2010年9月27日より。
(9)性侵輕判 白玫瑰籲司改總統高度重視」今日新聞網2010年9月25日、「總統府正面回應 曾香蕉回嗆」『自由時報』2010年9月26日。
(10)白玫瑰運動-現代婦女基金會六大訴求」現代婦女基金会サイト
(11)法官漠視被害人與家屬的痛,法官的專業與性別意識在哪裡?」現代婦女基金会サイト
(12)法部草案送出/嚴懲性侵犯 刑期5年起跳」『自由時報』2011年1月10日。
(13)加重性侵刑 婦幼團體看法不一」中央社2011年1月9日。
(14)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(15)性侵未滿12歲兒童 至少判5年」『自由時報』2010年10月13日。
(16)婦團砲轟 性侵修法閉門造車」『立報』2011年1月12日、「性侵修法霧煞煞,被害權益嘸底看 行政院會暫緩審議,儘速擴大召開公聽會」婦女新知基金会サイト2011年1月28日。
(17)【我要連署】堅決反對立法院通過妨害性自主的恐龍法條」婦女新知基金会サイト2011年2月21日、「【記者會】堅決反對立法院通過妨害性自主的恐龍法條」婦女新知基金会サイト2011年2月22日(写真あり)、「性侵修法 竟擬刪『違反意願』」『台湾立報』2011年2月21日、「婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日(写真あり)。
(18)強制性交需違意願 將刪除」『台湾立報』2011年3月10日。
(19)性侵輕判嚴重 民團怒批司法院是恐龍院」『自由時報』2011年2月14日、「刑法妨害性自主章法院輕判之研究分析報告[word]」(正義聯盟志工分析整理、中華民国100年[2011年]2月14日発表)。
(20)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(21)性侵未滿12歲兒童 至少判5年」『自由時報』2010年10月13日。
(22)司改團體痛批法官法初審 更保障恐龍法官」『自由時報』2011年1月12日。
(23)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(24)白玫瑰連署 推『台版梅根法』」『蘋果日報』2010年10月31日、「推台版梅根法案 白玫瑰再上凱道」『自由時報』2010年11月21日。
(25)內政部部務會報通過『性侵害犯罪防治法』部分條文修正草案,強化性罪犯社區監控機制,近日將函報行政院審查」内政部サイト2011年1月28日。
(26)白玫瑰:政府需落實性侵矯治」『台湾立報』2011年3月23日。
(27)白玫瑰運動 11/20 重返凱道,不容許性侵加害人再犯! 」勵馨社会福利事業基金会サイト2010年11月19日。
(28)公布性侵前科個資 無助維護安全」、「針對內政部『性侵害犯罪防治法』部分 修正案説帖」台湾人権促進会サイト。
(29)台湾とは直接関係ありませんが、アメリカ在住のmacskaさんは、多くの資料をもとにしてミーガン法についてのまとめサイトを作成し、同法は「有害無益」であることを主張しておられます(ミーガン法のまとめ @macska dot org)。

男性に対する強姦事件の判決をめぐって

男性に対する強姦が刑事責任を追及されたのは初めて。しかし、強姦罪では処罰されなかった

 2010年5月、42歳の男性の警備員が、宿舎で18歳の男性の同僚を「強姦」しました。そのとき、被害者は軽傷を負いました。この事件について、北京市朝陽区法院は、加害者に、故意傷害罪で懲役1年の判決を下しました(裁判中に加害者が被害者に2万元の賠償をしたので、比較的軽い刑になったそうです)。1月4日付の『法制晩報』などがこのことを伝えました(1)

 男性を強姦した人が刑事責任を追及されたは今回が初めてだそうですが、強姦罪で処罰されたわけではありませんでした。中国の刑法の強姦罪は「暴力・脅迫もしくはその他の手段を用いて、女性を強姦する」(2)ことを指しており、男性に対する強姦には適用されません。

 男性が強姦された場合、「大多数の処理の結果は『処罰できずに、金の賠償ですまされ、賠償すらされないこともある』」という状況だそうです。治安管理処罰法によって行政拘留に処せられることはありますが、刑法が適用されたことはありませんでした(3)。今回、刑法が適用されたので、北京中広維天法律サービスセンターの蘆争さんは、「これは、わが国の法律上一定の進歩を意味している」と述べつつも、「まだはるかに不十分だ」と言っています(4)

 今回、加害者が刑法で処罰されたのは、被害者に傷を負わせていて、かつその傷の程度が傷害罪が適用できるほどのものだったからです。ネット上での意見の多くも、「もし被害者が強姦された後に軽傷を負っていなかったなら、どうだったのか?」と疑問を呈しています(5)

 また、故意傷害罪の刑期は、「3年以下」と規定されています(もし重傷を負わせたら、3年以上になりますが)(6)。かりに女性に対する強姦だったら、刑法の規定により、強姦罪だけで3年以上の懲役に処せられ、それに故意傷害罪も加わるために、さらに重い刑罰になるのですから、軽傷を負わせている場合でも、女性に対する強姦に比べて、男性に対する強姦の刑罰は軽いのです。

1997年に「流氓罪」が廃止されたことの功罪

 1979年に中華人民共和国建国後、初めて制定された中国の刑法には「流氓[ごろつき、無頼漢といった意味]罪」があり(7)、これがしばしば男性間の性行為を処罰する口実にもされてきました。ただし、1984年に最高人民法院が出した司法解釈では、男性間の性行為で「流氓罪」に当たるのは、「幼い児童を鶏姦するもの、少年を無理やり鶏姦するもの、暴力・脅迫などの手段によって、たびたび鶏姦し、情状が悪いもの」だとされました。つまり、男性間の性行為のうち、児童に対する性行為と性行為の強要だけを処罰すると決められたのです。もっとも、合意のうえでの男性間の性行為についても、刑法上の犯罪とはされなくとも、政治や行政レベルでの弾圧、たとえば公職からの追放や行政拘留などに処せられてきたのですが、とにかく、この刑法が適用されていた時代は、男性に対する強姦も、いちおう刑法上の処罰の対象になっていたわけです。

 しかし、1997年に刑法が改正された際、「流氓罪」は削除されました。それによって、同性間の性行為が処罰される危険は減ったのですが、その一方で、1984年の司法解釈のもとになった条文がなくなったために、男性間の強姦についても刑法上の犯罪とはされなくなったのです。

 このように同性間の強姦の被害者が法律的な保護を受けられない一方、国家は、被害者がいない同性間の売買春については、異性間の売買春同様に厳重に取り締まっています(8)

中国でも、男性の性被害に関する法的問題は指摘されているが……

 今回の事件に関して、新聞紙上で、王威さんという人は、「性が侵犯されない権利は、明らかに性別の差異によって区別されるべきではない。権利があれば、救済がなければならず、男性の正当で合法的な権利が『意思に反して』侵害されたときには、法によって、法律的な保護と救済が得られる必要がある。
 人間の心理と精神に対する『強姦』の傷は、人間の身体に対する傷よりもはるかに大きく、『強姦』された男性の心の傷は、強姦された女性に比べてまさるとも劣らないかもしれず、その人格の尊厳が受けた侮辱は、常人が想像しうるところではない。だから、男性が『強姦』されることも、同様に重大な社会的危険性を有している」と指摘しています。

 王威さんは、また、「国外では、多くの国家の刑法あるいは司法実践は、とっくに強姦における加害者と被害者の性別を強調しなくなっている。たとえば、ドイツの1975年刑法の強姦罪は、まだ『女性に強要する』ことを指していたが、1998年の新しい刑法は『他人に強要する』とだけ規定した。フランスの1994年に改正された刑法は、強姦罪の被害者を『他人』と明文で規定しており、それはすなわち男も女も含むという意味である。イタリアの現行刑法も、強姦罪の被害者を『他人』とだけ規定しており、もう性別役割を強調していない。わが国の台湾地区の『性の自主を妨害する罪の章』(9)も強姦罪の対象を『女性』から『男女』に拡充した。わが国の内地でも、現実の生活で男子が強姦される事件は、けっしてごくまれではない。それゆえ、筆者は、男性に対して強姦をする行為を犯罪と規定して取り締まり、法律的手段で男性の性の権利を保護することは、非常に必要だと考える」と述べています(10)

 今回にかぎらず、男性間の強姦事件を報じた新聞記事では、必ずさまざまな専門家が、男性間の強姦が法律的に空白になっている問題を指摘してきました(11)

 以前このブログでも触れたように、男性学研究者の方剛さんも、男性に対するセクハラの問題を取り上げています。

 広東大同弁護士事務所主任の朱永平さんによると、中国の人民代表大会や政治協商会議にも、毎年、刑法のこの点を改正する提案はポツポツ出ているそうですが、一定の勢力を形成するまでには至っていないということです。朱さんは、「これは、このような事件が結局少数であるからであり、まだ社会的な危険性が上層部と法律制定者を動かす状況にまで到達していないからだ」「中国では、法律の改正や立法は、もっと多くの有力な判例が必要だ」と述べています(12)

 ご存じのとおり、日本でも、強姦罪が適用される被害者は「女子」と規定されており(刑法177条)、その点では中国と同じです。

 1年ほど以前、日本で性暴力の問題に取り組んでいるブログ「『あなたは悪くない』別館」に、「男性サバイバーからのメッセージ」(2009年12月17日)が掲載されました。この男性サバイバーは、学校で男性教師に性暴力を受けたのに、警察には「男がそんな被害にあうわけがない」と信じてもらえず、司法関係者や援助職の人からは「男なのに情けない」「男なら平気だろう」と言われたこと、教師を訴えたら、周囲にひどい迫害をされて「オカマ、オカマ」と罵られたという経験を語っています。その後、彼は「性虐待を受けた自分は負け犬だ。強い人間になるには自分も加害するしかない」と考えて下級生に暴行しようと思ったり※、女性サバイバーを中傷したりしたとのことで、彼は、「男らしさ」の呪縛が男性被害者をも苦しめていること、自分は男性被害者にも強かん罪を適用させる運動をしているが、当の男性自身が無関心であること(分かりやすい男性差別なのに、ネットで「男性差別」と騒ぐわりに無関心)を指摘しています。

 私は上の文章を読んで、男性の性被害の問題の深刻さをはじめて知りました。男性の性被害の問題もジェンダーと深くかかわっていることも、わかりました。調べてみると、玄野武人さんのサイト「If He Is Raped」にも、「強姦罪の改正にかんする提言 ~男性性被害者の立場から~[PDF]」(2009.1.8)をはじめ、さまざまな文が掲載されています。たとえば、このサイトは、「男性の性的虐待についての『事実と偏見(神話)』」も取り上げており、その1つとして、「性虐待を受けた少年は、犠牲者がさらなる犠牲者を生みだすように、他人に対し性虐待を繰り返す」という偏見を取り上げて、「加害者のなかには過去に性虐待された体験を持つものが多いということは事実だが、男性性被害者の大半は加害をしていない。ギルガンとベッカー、ハンターの調査によると、被害に遭ったことを誰かに話していて、信じてもらえ、サポートを受けることができている場合は、加害はしないことが明らかになっている」ということを述べています(上の※に関係する問題なので、書いておきました)。玄野さんは、2001年から始まった男性サバイバーの自助グループもやっておられるようです。

 中国では、私の知る限り、男性の性被害者自身の動きはまだ見当たりませんが、日中共通の課題だと思います。

(1)“强奸”男性致人伤首追刑责」『法制晩報』2011年1月4日、「42歳男が18歳男性をレイプ『中国初の刑事責任』強姦罪は不適」サーチナ2011年1月5日。
(2)中華人民共和国刑法(中华人民共和国刑法)第236条は以下のように定めています。
 「暴力・脅迫もしくはその他の手段を用いて、女性を強姦した者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。
 14歳未満の幼女を姦淫した者は、強姦罪とみなし、重く処罰する。
 女性を強姦、または幼女を姦淫し、以下の情状の1つを有する者は、10年以上の有期懲役、無期懲役または死刑に処する。
 (1)女性を強姦、または幼女を姦淫し、情状が悪質である者。
 (2)多数の女性を強姦、または多数の幼女を姦淫した者。
 (3)公共の場所において公衆の面前で女性を強姦し、幼女を姦淫した者。
 (4)2人以上で輪姦した者。
 (5)被害者に重傷を負わせる、死亡させる、またはその他の重大な結果を引き起こした者。」
(3)以上は、「男性被同性强奸无法治罪 呼吁扩大强奸罪内涵」『南方日報』2011年1月6日。
(4)(1)に同じ。
(5)(3)に同じ。
(6)中華人民共和国刑法(中华人民共和国刑法)第234条は以下のように定めています。
 「故意に人の身体に傷害を負わせた者は、3年以下の有期懲役、拘留、または管制に処する。
 前項の罪を犯し、人に重傷を負わせた者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。人を死亡させ、または特に残忍に手段を用いて人に重傷を負わせ、または著しい身体障害を生じさせた者は、10年以上の有期懲役、無期懲役または死刑に処する。本法に別に規定されている場合は、その規定により処罰する。」
(7)中華人民共和国刑法(1979年制定、1980年施行のもの)第160条は、以下のように規定していました。
 「大勢の人を集めて殴り合い、難癖をつけて喧嘩を仕掛け騒動を起こし、女性を侮辱し、或いはその他の無頼活動をして、公共の秩序を破壊し、情状の悪い者は、7年以下の有期懲役、拘留、あるいは管制に処す。
 無頼集団の首謀者は、7年以上の有期懲役に処す。」
(8)この節は、郭曉飛「中国“同志”人群的法律环境――以案例为中心」『性別与健康[PDF]』第10期(2008年12月)9-11頁による。
(9)中華民国刑法第16章「妨害性自主罪」参照。最初の方だけ試みに訳すと――
 「第221条 男女に対して暴力・脅迫・脅し・催眠術またはその他の意志に反する方法で性交をした者は、3年以上10年以下の有期懲役に処す。
 前項の未遂犯はこれを罰す。
 第222条 前条の罪を犯し、以下の状況の1つを有する者は、7年以上の有期懲役に処す。
 一、2人以上の共同犯の者。
 二、14歳未満の男女に対してこれを犯した者。
 三、(以下略)」
(10)王威「“强奸男性被判刑”原是“标题党”」捜狐新聞2011年1月5日(来源:検察日報)、『中国婦女報」にもほぼ同文が掲載されています(王威「性权利不应因性别不同而有所差别」『中国婦女報』2011年1月6日)。
(11)(8)に同じ。
(12)(3)に同じ。

婚姻内での強姦罪を否定する判決とその論理

 一昨年、広東省仏山市で、ある女性が夫に強姦されたことを告発しましたが、昨年、裁判所は無罪の判決を下しました。

事件の経過

 2010年12月に『広州日報』が報道したところでは、事件は以下のようなものでした。

 李某さん(男)と張某さん(女)は、2005年9月、結婚しました。しかし、2009年初めから、2人は離婚騒ぎを起こすようになり、3月からは、同じ家の中の別の部屋に住むようになりました。

 4月8日、2人は家の中でまたケンカをし、そのとき、李さんは張さんと無理やり性的な関係を持ちました。その際、カーテンが半分開いており、張さんが反抗する叫び声が隣に住む人にまで聞こえたので、隣の人は警察を呼び、警官は2人から調書を取りました。

 翌日、張さんは夫が牢に入れられることを恐れて、派出所に行って李さんの責任を追及しないように言ったものの、4月21日、張さんは警察に夫の刑事責任を追及するよう要求し、同日、裁判所に離婚訴訟も起こしました(1)

無罪判決――夫婦には「同居の義務があり、性生活は夫婦の共同生活の構成部分である」、夫を強姦罪で処罰するのは「わが国の倫理風俗と合致しない」

 広東省仏山市順徳区法院は、夫の強姦について、「無罪」の判決を下しました。その理由は、以下のとおりです。

 正常な婚姻関係の存続期間においては、夫婦のいずれの一方も、もう一方に対して同居の義務があるが、性生活は夫婦の共同生活の構成部分である。このような状態において妻と無理やり性的関係を持った夫を強姦罪によって刑に処するのは、事実および法律に反し、またわが国の倫理・風俗と合致しないので、夫を強姦罪の主体にすべきではない。

 この事例を見ると、被告人の李某と妻の張某とは『離婚で騒いでいた』とはいえ、双方は当時はまだ裁判所に訴訟を起こしたり、民政部門に行って関連する手続きをしたりはしていなかった。事件が発生した後になって、はじめて張某は被告人の李某と感情が破綻したことを理由にして離婚訴訟を起こした。それゆえ、法律の規定にもとづけば、被告人の李某が強姦罪をおかしたとは認定できない。

 (裁判官の補足の話)婚姻状況が正常でない情況、たとえば別居したり、離婚訴訟を提起している期間は、双方はすでに法律的に保護された夫婦関係にはなく、夫婦間の権利と義務は基本的に終わって、夫婦関係はすでに不確定な状態にある。この時には、夫が妻の意思に反して妻と無理やり性的関係を持つことは、他の女性を強姦する社会的危害と本質的区別はなく、強姦罪として処罰することが法理と情理に合致している(2)


 呂頻さんによると、最高人民法院はすでに判例選集の形式で、「婚姻関係が正常に存続していない期間」、すなわち離婚訴訟期間などの場合しか、夫は強姦罪の主体になりえないと説明しているそうです。それに対しては、つとに「婚姻関係が正常に存続している(いない)期間」という概念は法律的根拠のない曖昧な概念であるという指摘がなされているそうですが(3)

さまざまな婚姻内強姦罪否定論とそれに対する反論

 今回、この判決をめぐって、新聞紙上などでも、判決を支持して「一般に婚姻内では強姦罪は成立しない」とする主張やそれに対する反論が掲載されました。

○「性行為は配偶者間の権利であり、義務でもある。」「法律は夫婦間の性行為の時間・地点・方式・方法に干渉しない。」

 中国刑法学会理事で華南理工大学法学院副院長の徐松林教授は、以下のように述べました。

 わが国の刑法学の理論の通説によると、「婚姻内強姦」の行為は一般に「強姦罪」によって処罰するべきできはない。主な理由は、以下の3つである。

 第一に、婚姻関係が存続している期間は、性生活は夫婦生活の重要な内容である。性行為は配偶者間の権利であり、義務でもある。夫婦間の性行為は法律の保護を受け、法律は夫婦間の性行為の時間・地点・方式・方法に干渉しない。

 第二に、夫婦生活には、たしかに一方が相手が望んでいない状況の下で性行為を強要する状況があるけれども、これは夫婦間の性道徳の問題にすぎない。強制した側は道徳的な譴責を受けなければならないが、犯罪ではない。強制された側は、夫婦生活の不調和を理由にして離婚の訴えを起こすことができる。

 第三に、一方が配偶者の意思に反して性的関係を強要した場合、もし情状が劣悪ならば、「強姦罪」にはならないとはいえ、他の犯罪になりうる。もし一方が長期にわたって暴力を使って配偶者に性的関係を強制し、配偶者の心身に重大な傷害を作り出したのなら、具体的状況にもとづき、「虐待罪」あるいは「故意傷害罪」に当たるとして処罰できる。

 しかし、「婚姻内強姦」は一定の条件の合致するとき、「強姦罪」によって責任を追及できる。それには主に2つの状況がある。
 1.双方が結婚証を受け取ったけれども、共同生活をまだ開始していない(農村では俗に「過門(輿入れ)」と言う)。この時に、一方が結婚を後悔して離婚訴訟を起こしているのに、もう一方が暴力を使って性的関係を強制し、被害者の心身が重大な障害を受けた場合。
 2.双方の感情が破綻して、長い間別居しており、離婚訴訟がおこわれている間に、一方が暴力を使って相手に対して性的関係を強制し、被害者の心身が重大な障害を受けた場合。

 上述の2つの状況が強姦になるのは、主に夫婦生活は「形式」(結婚省を受け取る)だけではなく、「実質」(共同で生活する)が必要だからである。(……)

 この事件については、李某と張某は長い間別居していたのではない。同じ室内で別のベッドで寝ていたことは「別居」とは見なせない。感情もまだ破綻しておらず、暴力行為も離婚訴訟の期間ではなく、離婚訴訟の前に発生しており、そのうえ張某は事件発生後の翌日、派出所に行って李某のためにとりなしているという情状もある。刑法の謙抑の理念および「婚姻内強姦」の基本的法理により、この事件は「強姦罪」として処罰するべきではない(4)


反論①――性の自由と性の尊厳は人格権だから、本人だけが行使できる。一方が他方の人格を支配する権利はなく、どちらの人格も義務の客体にはなりえない。

 徐松林教授の主張に対しては、次のような反論が出ました。

 「私には、『性行為は配偶者間の権利であり、義務である』という主張の法律的根拠がどこにあるのか、まるでわからない。」「わが国の婚姻法をひもといても、筆者には、性行為は『配偶者間の権利であり、義務である』というような条文を見つけることはできなかった。」

 「民法の人格権の理論では、性の自由と性の尊厳は、人格権の重要な構成部分である。人格権が財産権と異なるのは、本人だけが自由に行使できて、いかなる他人の支配も受けないことである。この認識にもとづけば、たとえ男女が夫婦の関係になっても、彼らは依然として各自の人格を有しており、どちらにも、もう一方の人格を支配する権利はない。また、どちらの人格も、義務の客体にはなりえない。妻を夫の『性奴隷』とする概念、『夫は妻に強制してよく、妻は夫に性的サービスを提供する義務がある』という観念は、封建的な腐りきった観念であり、とっくに現代の民法理論が打ち捨てた、現代の文明社会に合致しない倫理観念である。」(5)

反論②――「個人のプライバシー」だと言うが、家族成員間にも傷害・虐待・遺棄などの罪が、被害者を保護するためにある

 徐松林教授は、「法律は夫婦間の性行為の時間・地点・方式・方法に干渉しない」と述べましたが、ほかにも、「婚姻・家庭の結合は、セックスの関係も含んだ結合であり、夫婦の間でどのようにセックスをするかや、セックスの回数は感情の上のことであり、非常に微妙で、公権力が捉まえうることではない」(6)と述べる人もいました。

 こうした、性行為をすべて夫婦間のプライバシー扱いして法律の介入ほ否定する議論に対しても、中国政法大学の呉丹紅准教授は、以下のように反論がしました。

 「性生活は個人のプライバシーの範疇であり、個人あるいは家庭の自治領域であり、公権がいったん私権の空間に介入することには危機感を覚えると考える人もいる。しかし私個人は、婚姻内強姦を言い渡すことと、公権力と私権の衝突とは無関係だと考える。刑法は社会に危害を与えるいかなる行為も懲罰する。家族のメンバーの間に起きた傷害・虐待・遺棄などの罪は、まさに被害者を保護するものではないのか? 夫が暴力的手段で妻に性行為を強制し、重大な結果を引き起こした場合は、それ自身が刑法の保護の範囲であり、なんら新しい罪を創設する必要はない。/当然、公権力の濫用を防ぐためには、婚姻内強姦の規定を『告訴があった場合だけ処理する』とし、起訴を決定する権力を被害者に持たせることもできる。」(7)

○妻が夫を陥れる危険があるから「家庭の調和や社会の安定にとって不利」

 楊濤さんは、「家庭の調和や社会の安定」という観点から、次のように述べました。

 法律は必ず家庭と社会秩序の安定を考慮しなければならない。(……)もし婚姻内強姦罪を一方の頭上に高く掲げて、もう一方が『性』を相手を報復・懲罰する手段にしたら、家庭の調和・安定と長期にわたる社会の安定にとって不利である。家庭の安定という角度から見ても、随意に『婚姻内強姦の罪』を規定すべきではない。(8)


反論――妻が夫を陥れる可能性は、妻が婚姻内強姦に遭ったのに法律の保護が得られない可能性よりはるかに小さい。

 呉丹紅准教授は、それに対して、以下のように反論しています。

 「この理由も早くから『夫は[強姦罪を]免除する』という刑法の立法者が心配した点で、すなわち夫が妻に陥れられないように保護するということである。このような仮設の状況においては、妻は夫に対する不満や恨みの報復によって強姦を訴える。けれど、強調しなければならないのは、強姦罪の認定は、被害者の陳述以外に、物証など他の証拠が必要であり、たった一つの証拠では強姦罪は認定されないということである。実際には強姦が起きていないのに告発をする者は、誣告罪になる危険があるだけでなく、証拠が足りないという問題もあるため、成功する可能性はあまりない。私の見るところ、夫が陥れられる可能性は、婚姻内強姦に遭ったのに法律の保護が得られない女性が傷つく可能性よりも、はるかに小さい。」(9)

 以上のような婚姻内におけるの成立強姦罪を否定する主張は、要するに、夫婦の一体性やプライバシー、「家族の安定」、公私の分離を強調するものでした。また、「権利と義務」を一般的に論じることによって男女間の力関係を覆い隠したり、妻が夫を陥れるという危機感を表明したりしたりするもので、その意味で男性(夫)中心主義的なものだとも言えましょう。

○「血は水よりも濃い」「和を以て貴しとなす」という「中華民族の伝統的観念」を尊重すべき

 判決にも、夫を強姦罪で処罰するのは「わが国の倫理風俗と合致しない」とありましたが、はっきり「中華民族の伝統」を言う人もいました。

「わが国は肉親の情の関係が非常に濃い国家であり、『血は水よりも濃い』『和を以て貴しとなす』は中華民族の伝統的観念である。わが国の現在の情況の下で、『婚姻内強姦』事件を処理する際は、必ず中華民族の伝統文化を尊重し、また事件の処理の社会的効果を重視しなければならない。(……)家庭は社会の細胞であり、肉親の情の関係が非常に濃い家庭の雰囲気の中では、婚姻関係が正常に存続している期間は、どの妻も家庭を破壊して自分の夫を監獄に入れようとは思わない。(……)夫が出獄したのちは、妻に対する恨みから、正常な婚姻家庭が引き続き揺らぎ破壊される。事件処理のこのような効果は、国家と社会も期待することろではない。このように考えると、筆者は、わが国で『婚姻内強姦』事件を処理する際は、『夫は免除』を原則とし、『夫も同じ罪』を例外にすべきだと主張する。」(10)


 けれど、もちろん「夫は[強姦罪を]免除」してきたのは、中国に限った話ではありません。呉丹紅さんが「国外の刑法でも、『夫は免除』という伝統はある」、「中国の前近代であれ、西洋の前近代であれ、伝統的社会は女性を男性の家族に付属した私有物と見なして、夫の性の特権が女性の性に対する意志を遮断した。これが『夫は免除』立法の社会的基礎である」(11)と述べているとおりです。

 また、もちろん日本と中国は違いますが、「血は水よりも濃い」や「和を以て貴しとなす」が強調される点は日本も同じなので、単なるナショナリズム的な主張であるように思います。

長年の議論にもかかわらず変わらない中国の立法と司法。「わが国の倫理・風俗」とは何か?

 呂頻さんは、次のように述べています。

 「あるべき人権の角度から言えば、人権の保障には公私の領域の区別はなく、家庭内暴力の懲罰の強さは、一般の人の間の暴力と同等であるべきだということは、1993年のウィーン会議が『女性の権利は人権である』と提起して以来、すでに国際的な共通認識である。『夫に対しては強姦罪を免除する』ことを廃止することは、国際的な法律改革の趨勢であり、アメリカ・イギリス・ドイツ・台湾……調べることができただけでも、これらの国家と地区はすでに近年、夫は強姦罪の主体にならないという規定と実践を廃止した。中国では、ここ十年余り、関連する法理についての弁論はかなり激しく、婚姻内の強姦を懲罰する観点のほうが明らかに優勢であるのに、立法者と司法者は、このような弁論に対して耳を塞いで聞こうとしない。立法の面では、新刑法はすでに8回改正されたのに、この点は何ら変わっていない。司法の面で興味深く話されるのは、相変わらず、1997年の夫が強姦罪で執行猶予に処せられたという例[注:離婚訴訟中]であり、大部分の婚姻内の強姦は法の網を逃れてのうのうとしており、まったく法律の手続きにさえ入っていない。」

 「秘密は、順徳区法院が強調している『わが国の倫理風俗』にもあるのかもしれない。なぜ婚姻内強姦を懲罰することが中国の倫理風俗を反するのか? 『娶った嫁と買った馬は、乗ろうが殴ろうが思うまま』、こうした伝統的倫理は、当然婚姻内強姦を承認しない。しかし、私たちは、それはとっくに時代遅れで、唾棄されるべきものだと考えたのである。――いや、実は、それはまだなくなっておらず、婚姻内強姦という問題においては、妻は無条件に夫に従わねばらなず、夫は妻を性の道具にしてよいという思想が、まだ中国の法律と司法の実践を支配しているのだ。」(12)

 呂頻さんも述べているように、婚姻内強姦の問題は、1990年代から中国でも繰り返し議論されてきました。1990年に『婦女生活』誌で婚姻内強姦が議論された際に李循さんが書いた論文は日本語にも翻訳されています(田畑佐和子訳「『婚姻内強姦』についての私の意見――女性の人権としての性――」秋山洋子・江上幸子・田畑佐和子・前山加奈子編訳『中国の女性学』頸草書房 1998年)。李循さんの論文も併せてお読みいただければわかりますが、その頃から、論争の内容もあまり変わっていないようです。

 ただ、今回のように、実際に婚姻内強姦を訴えたことがニュースになり議論を巻き起こしたのは、少なくとも近年においては私の記憶にはありません。今回、そのぶん、婚姻内強姦否定派の論理も新聞をにぎわしたわけですが、「性行為は配偶者間の権利であり、義務でもある」という言葉は、加害者にとっては「強姦する権利」、被害者にとっては「強姦される義務」ということに他ならないわけですから、本当に怖いと思いますが、婚姻内強姦に対する司法の姿勢は日本も中国とほとんど変わらない水準ですし(13)、もちろん他人事ではないと感じます。

(1)男子“婚内强奸”被判无罪 专家称性也是义务」人民網2010年12月7日(来源:広州日報)。
(2)同上。
(3)呂頻「“婚内无奸”?——法律仍在赦免暴力」網易女人2010年12月8日。
(4)专家谈“婚内强奸”认定:须具体问题具体分析」中国新聞網2010年12月6日(来源:人民法院報)。
(5)婚内强奸不是罪很荒唐!」網易新聞2010年12月8日(来源:新京報)。
(6)楊濤「“婚内强奸”罪与罚须平衡各方利益」華声在線2010年12月9日。
(7)吴丹红:婚内强奸定罪,这个可以有」南方報業網2010年12月21日。
(8)(6)に同じ。
(9)(7)に同じ。
(10)法制时评:“婚内强奸”的罪与非罪」網易新聞2010年12月10日(来源:広西新聞網)。
(11)(7)に同じ。
(12)(3)に同じ。
(13)もっとも、今、ネットで検索してみると、2007年に「[婚姻関係の]破綻の有無にかかわらず,夫婦間でも強姦罪が成立することを正面から認めた東京高裁の裁判例」があるとのことです(その裁判が扱った事件自体は、すでに婚姻関係が破綻していたそうですが)(hakuriku「妻に対する強姦罪の成立」2009-05-09)。

鄧玉嬌事件の判決をめぐって

判決の内容

 6月16日、湖北省巴東県法院は、鄧玉嬌事件(この事件について本ブログの記事)の判決を下しました。その内容は、「鄧玉嬌の行為は過剰防衛であり、故意傷害罪になる。けれど、自首という情状があり、監察医によると、鄧玉嬌の刑事責任能力は一部、限定されているので、処罰を免除する」というものでした。鄧玉嬌さんは自由の身になりました。

インターネットや世論の力

 インターネット(新華網)の投票では、90%以上の人々が判決を支持しました(1)。鄧玉嬌さんが自由の身になったのは、鄧玉嬌さんに声援を送った「ネットの勝利」だという声も上がっています(2)

 新聞記事にも、「社会の世論が司法の公正さを推進した」と主張したものがありました。その記事は、「厳しい監督の下でこそ、司法は権力の介入を遮ることができるのであり、不断に進歩し、日々整備され、公正な方向に向かうのである」と指摘しています(3)

 けれど、今回は運よくインターネットやメディアの注目を集めたけれど、そうでない場合のことを考えると楽観できないとか、事件の中での警察の不審な動き(以前の本ブログの記事で少し触れました)については調査や追及がなされていないといったことを指摘する人もいます。その人は、「鄧玉嬌事件は、現在までのところ、コンマ、せいぜいのセミコロンを打ったとしかいえず、ピリオドを打つにはまだ遠い。社会全体の法治化と公平正義の実現は、たった今、小さな一歩を踏み出したにすぎない」と述べています(4)

 また、当然ながら、ネット世論の危うさ(専門的知識の乏しさなど)を戒める人もいます(5)

判決内容に関する疑問

 また、鄧玉嬌さんが自由の身になったことは喜びつつも、判決の内容については、批判する意見が少なくありません。

 判決は鄧玉嬌さんに対する「不法な侵害」は認めたのですが、華良さんという人は、「『不法な侵害』とは、結局のところ、女性に対する悪ふざけなのか、強姦未遂なのか」と問うています。鄧貴大と黄徳智らは、鄧玉嬌に「異性入浴」を要求して、鄧玉嬌を引っ張り、鄧玉嬌がそれを振り払って、断ると、鄧玉嬌について休憩室にまで入って行き、2人一緒になって口汚く罵り、顔や肩を手で打った。鄧玉嬌が休憩室から出ようとしたら、また引き戻し、もう一度鄧玉嬌が離れようとしたら、ソファーの上に押し倒した。鄧玉嬌が鄧貴大を両足で蹴って立ち上がったら、また力づくでソファーの上に押し倒した。「こうした連続した動作は、単に異性入浴を要求する行為なのか、それとも典型的な強姦行為なのか」と。

 華良さんは、裁判所は「強姦未遂を、あいまいな『不法な侵害』に変え、正当防衛を『過剰防衛』を変えた」のであり、「裁判所は、民意と権勢の間を揺れ動き、民意に配慮しつつも、権勢にも釈明をしたのだ」と述べています(6)
 
 もちろん、正当防衛か否かという件については、判決を擁護する法学者もおり、意見はさまざまです(7)。しかし、「四人組」や人権活動家の弁護にも携わってきて、「人権弁護士」として著名な張思之弁護士も、・女1人に対して男3人であること、・連続して暴力をふるっていること、・ナイフで護身しようとして、揉み合っているうちに不幸にして急所に刺さったことなどから見て、正当防衛だと主張し、判決を擁護する学者を批判しています(8)

 また、方貳さんという人は、「加害者の行為は『押した』とか『押さえた』というものであり、暴力の程度から見るとそれほど重大ではない。しかし、老若男女関係なしに同一の基準を適用してはいけない。鄧玉嬌は体重50kgにも満たない女性であり、刃物を使わなければ逃れる道はなかった」といった主張をしました。この主張は、「正当防衛」概念の中のジェンダー問題を指摘したと言えるかもしれません(9)

 また、鄧玉嬌さんは「処罰を免除された」といっても、前科が残ると今後の仕事などに不利な場合もあるから、控訴するべきだと考える弁護士もいました(10)(鄧玉嬌さん自身は、なにより自由の身になれたからでしょうか、判決を受諾していますが(11))。

官僚と民衆との階層的断裂

 先日の記事でも述べたように、鄧玉嬌さんは英雄視されました。その背景には、中国社会の階層の断裂があると多くの記事が指摘しています。

 たとえば、鄧聿文さんは、現在、政治・性・金銭の権力を持っている「官僚を代表とする権勢階層」と「底辺の民衆を主とする弱者層」との対立が「一触即発の形勢」になっていると述べています。そのため、多くの人が、鄧玉嬌を「暴力に抗した英雄」として捉え、死んだ公務員には同情しなかったのだと指摘しています。

 鄧聿文さんは次のように言います。「官民の対立が今日の状況にまで達したのは、社会の矛盾が不断に蓄積された必然的結果である。30年来、中国が経済建設を推進した過程では、けっして本当には政府とその官僚の権力を制約してこなかったし、本当には民衆に権力を与えてこなかった。そのため、民衆の各種権益は重大な侵害を受けてきた。とくに社会の底辺の弱者集団は、制度と構造の変遷の犠牲になり、改革と発展の成果を享受した集団の外に排除されて、沈黙した希望なき集団になっている。」「それゆえ、社会の断裂を埋め、悪化した官と民との対立関係を修復するには、政治改革をすすめ、公民の政治的権利を人民に返さなければならない」。

 鄧聿文さんは中央党校の『学習時報』の仕事をしている人ですが、「政府の権力を規範化し、制約」しなければ「この社会はもっと多くの衝突が起きるかもしれない」と言います。鄧聿文さんが具体的に求めているのは、すでに発表されている国家人権行動計画(2009-2010)を「本当に実行」することであり、なにかラディカルなことを言っているわけではないのですが……(12)

 また、畢詩成さんは、今後は、以上で述べたような「官と民の間の溝」のほかに、公衆の司法に対する不信感という「公衆と司法の間の溝」なども解消しなければならないことを指摘しています(13)

 また、もちろん判決の後も、具体的なジェンダー問題について注目した記事も出ています。ある記事は、「異性入浴」のようなことを提供する場所は中国に少なくとも1万か所あると推測し、鄧玉嬌のような女性だけでなく、実際にセックスサービスをしている女性の権益はどうなっているかや、そうした仕事を辞めようとした場合、いかほどの選択肢があるかを問うています。そして、台湾ではセックスワーカーが公然と自らの権益をアピールしているのに、我々の地では、大多数の人は彼女たちに無関心で、まして実際の行動はしておらず、「平等で寛容な社会」への道は遠いと指摘しています(14)

 ただし、全国婦連や女性NGOが、なにか判決に対する声明を出す、というようなことはしないようです。

(1)九成網友支持鄧玉嬌案判決」『新民晩報』2009年6月18日。
(2)たとえば、「鄧玉嬌案:網民的勝利!」21CN社区2009-6-16。もっともこの記事は、判決を全面的に肯定しているわけではありませんが、喬志峰「鄧玉嬌案的“勝利”譲人感到幾分沈重」(鳳凰網2009-6-16)の中にも、「インターネット上には、長らくなかった喜び祝う気分があふれている。『中国は不断に進歩している』『法制史上の一里塚だ』『インターネットの力は偉大だ』」という記述があります。
(3)薛世君「鄧玉嬌案:民意助推司法公正」『南方日報』2009年6月18日。
(4)喬志峰「鄧玉嬌案的“勝利”譲人感到幾分沈重」鳳凰網2009-6-16。
(5)王琳「鄧玉嬌案中的網絡輿情反思」鳳凰網2009-6-17。
(6)華良「鄧玉嬌案,只有妥協没有公正」荊楚網2009年6月17日。また、馬天帥「鄧玉嬌免刑責結果正義大于程序正義」(四川新聞網2009-6-18)は、「裁判所の判決の事実認定がはっきりせず、判決の道理の説明が不明である。民意から言っても、公衆が求めたのは、単なる刑事責任の免除ではなく、公正で合理的な判決であった。」「もし民意が鄧玉嬌事件の判決の結果に満足しているとしたら、そのような満足は別の恐るべき結果をもたらしかねない。すなわち『司法の結果の正義は手続きの正義よりも大きい』という」。「手続きの正義が欠けているか、損なわれている前提の下では、結果の正義は意味がない。鄧玉嬌事件を例にすると、一見、鄧玉嬌が勝利したようだが、実際は彼女の勝利ははっきりせず、なお有罪の身である」と指摘しています。
(7)専家評析鄧玉嬌案」(『湖北日報』2009年6月18日)など。
(8)張思之「就鄧玉嬌案一審判決答《南華早報》」『南華早報』2009年6月22日。
(9)方貳「从鄧玉嬌案看婦女保護的悪」鳳凰網2009-6-17。
(10)律師建議鄧玉嬌上訴消除刑事案底」『第一財経日報』2009年6月17日。
(11)鄧玉嬌服刑」新華網2009-6-17。
(12)鄧聿文「中国官民対立中的権利訴求」聯合早報網2009-6-19。「是什麼導致了鄧玉嬌的悲劇」(『新京報』2009年6月18日)も中国社会の階層の断裂の問題に注目しています。
(13)畢詩成「鄧玉嬌案塵埃落定,社会隔膜尚待化解」鳳凰網2009-6-18
(14)你関心提供“異性洗浴服務”的她們嗎?」『南方日報』2009年6月17日。

鄧玉嬌事件をめぐって

事件のあらまし

 5月10日、湖北省巴東県の野三関鎮の政府に勤務している3人の男性が、その鎮(小さな町)のホテルの浴場で足の手入れをするサービスをしていた鄧玉嬌という女性(22歳)に、「特殊なサービス」を要求しました。鄧玉嬌がそれを断ると、2度にわたって彼女をソファーの上に押し倒しました。鄧玉嬌は身を起こすと、修脚刀(足の手入れをするのに用いる小刀)で、鎮の企業誘致室の主任だった男性(44歳)を死なせ、残りの男性2人も腕にケガをしました。鄧玉嬌は、警察に電話をして、自首しました(1)

 この事件に対しては、社会の各界やインターネットで大きな反響が起きています。まだ事態は進行中で、連日様々な意見が発表されており、フォローしきれていませんが、私の目についたものを紹介します。

官僚が弱者を踏みにじることへの怒り

 この事件が大きな反響を呼んだの一つの理由は、習水県の少女に対する性侵害事件(本ブログの記事)と同様、強い立場の役人が弱者を踏みにじっていること、そうした官僚の横暴や腐敗への怒りです(2)

 警察の動きにも不審な点がありました。警察は、性侵犯の証拠になる鄧玉嬌の下着を10日間もほおったままにしていました。警察が下着を押収する直前に、母親が突然、鄧の下着を洗いました。また、母親は、最初に頼んだ弁護士をその後解任したのですが、その経過も不自然で、こうした母親の行動の背後には警察などからの圧力があるのではないかという疑いも、多くの人が指摘しています(3)

 そうした世論もあってのことでしょうが、ケガをした2人の役人に対しても、免職など、党や行政の規律にもとづく処分が下されました(4)

正当防衛か否か

 鄧玉嬌の行為に関しては「正当防衛だ」という声が数多く出されました(5)。しかし、検察は、「過剰防衛」だと判断し(6)、鄧玉嬌を「故意傷害罪」で起訴しました(7)

 しかし、「強姦に対しては無限防衛権が認められるので、過剰防衛ではない」という意見も出ています(8)

「烈女」という賞賛

 鄧玉嬌に対しては、官僚への怒りもあって、「女の英雄だ」という賞賛が多いのですが、「烈女(貞節を守るために命をかけた女性)」だという賞賛もありました。なかには、わざわざ野三関鎮に行って、「烈女碑」を建てることを求める人まで現れました。当然、そうした賞賛には批判の声も上がりましたが……(9)

 その一方、中国人民大学の性社会学研究所のサイトに掲載された文章は、「強姦を判定する唯一の基準は、『相手の意思に反している』こと」であり、「その『相手』には、一般の女性と売春をしている女性との区別はない」「強姦する者が夫であるか否かも区別しない」と述べたうえで、「もし彼女が本当に売春婦だったとしても、このように多くのインターネット仲間の声援を得られただろうか?」と問いかけています(10)

NGOの声明

 この事件に関しては、5月末から6月初めにかけて、いくつかのNGOが声明を出しました。

1 中国法学会DV反対ネットワーク(5月30日)

 中国法学会DV反対ネットワークは、だいたい以下のような内容の声明を出しました(11)

(1)鄧玉嬌が性的侵害にあったか否かをきちんと調べよ
 正当防衛か否かを決めるには、「鄧玉嬌が人を刺したとき、どのような状況に置かれていたか」を調べて明らかにしなければならない。警察は「鄧玉嬌は強姦されていない」と言うが、強姦でなくても性的侵害を受けていれば、犯罪である。警察は、説明がまちまちで、かつ簡単すぎる。

(2)専門的人員を引き抜いて事件処理の力を強め、必要なら他の土地が事件処理することも考慮せよ
 警察は、必要な調査や証拠収集を明らかにおろそかにしている。また、「特殊なサービスの強要」というようなことを軽々しく言っており、なにか「消費上のトラブル」であるかのようで、人身の安全や女性の権益の保護という精神にもとっている。現地の警察まかせにせずに、鄧玉嬌事件に専門的人員を投入すべきだ。

(3)鄧玉嬌にもっと多くの救済を提供せよ
 法律や心理、医療など、多くの面から社会的な援助をするべきである。

(4)女性の人格的尊厳を尊重し、鄧玉嬌たちが男権社会の娯楽の対象にならないようにせよ
 「特殊なサービス」を強要する男たちの目には、女性の精神と身体は「商品」なのである。この事件の背後には、一部の地区、一部の職業では、女性は「色情の符号」になっているという状況がある。女性蔑視をなくし、娯楽場所の色情取引をくい止め、管理しなければ、鄧玉嬌事件は他の土地で繰り返されるかもしれない!

2 北京大学法学院女性研究・サービスセンター(6月2日)

 北京大学法学院女性研究・サービスセンターの声明(12)は、警察が「過剰防衛」であるという結論を下したことについて、「鄧玉嬌は『故意殺人罪』『故意傷害罪』などの罪名によって……彼女の最も美しい青春の歳月を牢獄で過ごすかもしれない」と憂慮しています。

 また、同センターの声明は、この事件が「男権社会の下での女性蔑視」を示していると述べるとともに、鄧玉嬌が「社会の底辺で生活している打工妹(農村からの出稼ぎ女性)」であることに注目して、以下のように述べています。
 「社会の底辺でもがき、発言権を失った弱者集団――打工妹は屈服するしかない!」「打工妹が受けている性差別と傷害は、この点だけはまったくない。労働権、婚姻・家庭の権利、土地の権益などの各面において、重大なジェンダー差別が見られる。彼女たちに対しては、政府と社会のさらに多くの、さらに全面的な関心が払われなければならない」

3 北京紅楓女性心理相談サービスセンター(6月8日)

 北京紅楓女性心理相談サービスセンターは、鄧玉嬌が娯楽場所でのサービス員だったことから、「仕事場でのセクハラ防止法の制定が一刻も猶予できない」という声明を発表しました(この点に関して同センターなどがおこなった調査については、本ブログでも、以前取り上げました[職場におけるセクハラの調査とセクハラ防止法の提案])(13)

女子学生のアピール

 この事件に対しては、女子大学生の中からも行動が起こります。中華女子学院の女子学生たち42名は、5月24日、この事件を公正に処理することを求めるとともに、国家や政府に対して女性の権益や人格の尊厳を守るように訴えるアピールを発表しました(14)

 そのうちの1人の蘭玉姣さん(自分の名前が「鄧玉嬌」と発音が似ているので、親近感を感じたそうです)は、同じ日に、北京のあるビルの前で、体に白い布に何重にも巻き付けて、横たわり、もがくというパフォーマンスをしました。これは、女性が何重にも束縛されていることを示すもので、そばには「誰」「都」「可」「能」「成」「為」「鄧」「玉」「嬌」(誰もが鄧玉嬌になるかもしれない)という9つの文字を書いた紙を置きました(15)

全国婦連への批判と全国婦連の声明

 しかし、中華全国婦女連合会(全国婦連)は、この事件に対して沈黙していました。

 その点に関して、ネットなどで強い批判が起きました。たとえば、作家の梅桑楡さんは、5月19日、全国婦連が沈黙していることに対して、電話をかけて問いただし、それを録音した記録を自分のブログで発表しましました。さらに、学者や作家ら8人の連名で、全国婦連に対する公開状を書きました(「全国婦聯権益部対玉嬌案的態度」、「就鄧玉嬌案致全国婦聯的公開信」)。

 こうした声に押されてでしょうか、全国婦連は、5月22日、「全国婦連は、鄧玉嬌事件を非常に重視している」「私たちは関係部門が法によって公正に処理することを信じ、この事件の進展を注意深く見守る」という声明を発表しました(16)

 こうした事態について、呂頻さんは自分のブログで意見を書きました。かいつまんで紹介します。

 「全国婦連がまだ説が定まっていない個別の事件ついて態度を表明したというのは、尋常のことではない。」

 「従来はこのような事件が発生しても、こうした[全国婦連や全国総工会のような]大衆団体からは、公の声明はほとんど聞かれなかった。」「これらの団体の実際の活動と、公言している職責とは整合していない。こうした団体は、けっして真に政府と別の立場や機能を有しておらず、多くの場合、それらが果たす役割は、政府のために、対象になる集団に結びついて動員するだけあリ、その活動方式は行政化・官僚化しており……そのイデオロギーも保守的すぎて、今なおセックスワーカーなどの周縁的な集団に対しては、半ば公然と排斥する態度をとっている」

 「長い間、それらの中国特有の政府的な大衆団体は、中国式の深く追求できない曖昧さを形成してきた。」「問題なのは、それらが占有しているのが、膨大な組織システムを維持するのに必要な大量の公共の資源だけでなく、その他の権利保護組織が成長する空間だということである。」「有為であることを願う者は、その地位を得られず、地位がある者[=婦連などの大衆団体]は往々にして大したことをしていない」。

 「鄧玉嬌事件をめぐる世論は、ついにこの曖昧さをある程度暴き出した。公衆の問責意識の向上は、権力機関に向かって責任を問うだけでなく、大衆団体に向かっても責任を問い始めた。」

 「ある人は、全国婦連の声明は外交辞令のようだと言うが、まずは積極的な現象である」。とはいえ、「全国婦連は、声明の中で関係部門が法によって公正に鄧玉嬌事件を処理すると信じると述べているが、法による公正さは、けっして自然発生的に実現するものではなく……権力機関に対する監督と牽制が必要である。鄧玉嬌事件において、何千何万の公衆が共同で声を上げる方式で団結してこの過程を推進している。彼らは、これらの大衆団体にも真に権利保護という自分の職責に立ち返って、自己の制度的資源を運用して、有為であるように願っている。」(17)

 鄧玉嬌事件に関する考察は、現在も次々に発表されており、昨日も「湖南女性/ジェンダー学と文学フォーラム」のサイトに、この事件に対するジェンダー視点にもとづく論評を特集したページが作成されました(「鄧玉嬌案:婦女権利何処尋――社会性別評論専題」)。今後もこの事件には注目していこうと思います。

(1)女服務員拒“特殊服務”刺死官員」『中国婦女報』2009年5月14日。
(2)同上や「民衆因何為鄧玉嬌鳴不平」(『南方都市報』2009年5月12日)など。
(3)皇甫天:高級司法機関応及早介入“鄧玉嬌案”」西部網2009-05-27、「女服務員刺死官員案玉嬌母親挙動譲人費解」『法律界』2009年5月26日、「関于鄧玉嬌一案的声明──夏霖 夏楠」(2009年5月25日)聴雨軒的博客、「鄧玉嬌案進展追踪:鄧玉嬌母親后面的幽霊是誰?」2009-05-26中国青年網
(4)警方認定鄧玉嬌防衛過当 巴東県厳処両名渉案人――黄徳智被撤職辞退並被治安拘留 鄧中佳被撤職辞退」『法制日報』2009年6月1日。
(5)たとえば、「法律視野下一個女性公民的正当防衛」『中国婦女報』2009年5月19日。
(6)警方認定鄧玉嬌防衛過当 巴東県厳処両名渉案人――黄徳智被撤職辞退並被治安拘留 鄧中佳被撤職辞退」『法制日報』2009年6月1日。
(7)鄧玉嬌案被訴至巴東県法院 被訴渉嫌故意傷害罪」金羊網2009-06-07
(8)強奸与無限防衛権」『南方周末』2009年6月8日。
(9)侯金亮:別急着為鄧玉嬌立“烈女碑”」(2009年5月26日)紅網
(10)鄧玉嬌抗暴:這個問題必須説清楚」中国人民大学性社会学研究所HP
(11)中国法学会反対家庭暴力網絡「対鄧玉嬌案的呼吁(2009年5月31日)」中国法学会反対家庭暴力網絡HP
(12)北京大学法学院婦女研究与服務中心「中心的声明:譲玉嬌的悲劇不再重演!!(2009年6月2日)
(13)北京紅楓婦女心理諮詢服務中心「関注鄧玉嬌案 制定《工作場所性騒擾防治法》刻不容緩(2009.6.8)」北京紅楓婦女心理諮詢服務中心HP
(14)42名女大学生就“鄧玉嬌”事件発起倡議書呼吁尊重女性」(2009-6-1)NGO発展交流網
(15)北京益仁平中心「女大学生受鄧玉嬌事件啓発創作行為芸術」(2009-5-27)NGO発展交流網(写真多数)
(16)全国婦聯高度重視鄧玉嬌事件並将密切関注事件進展」中国婦女網2009年5月22日(現在は消えていますが、「同語」HPが保存している画面)。
(17)呂頻「公衆為何希望婦聯介入鄧玉嬌案」(2009年5月25日)朝陽路上BLOG。6月11日現在、呂頻さんのこのブログは消えています。ひょっとしたら、この記事の婦連批判と関係があるのかもしれません(追記:その後、再び見られるようになりました)。全国婦連女性研究所のサイトなどに似た文が掲載されていますが(「公衆為何希望婦聯介入鄧玉嬌案」)、婦連などの大衆団体を厳しく批判した2つの段落(上で引用した「従来は~」と「長い間~」で始まる文言が含まれる段落です)はカットされています。

女児に対する性侵害事件と法律問題

 2007年10月~2008年8月、貴州省遵義市習水県で、無職の女性(袁莉、37歳)が、中学を中退した少年(15歳)・少女(14歳)の2人と共謀して、多くの女子生徒(主に中学生)を脅迫して売春させていました。被害にあった女子生徒の11人は、みな18歳未満で、そのうち3名は14歳未満でした。

 女子生徒たちは脅迫されたり、騙されたりして辺鄙な所に連れて行かれて、麻薬を注射されたり、裸の写真を撮られたり、殴られるなどして脅迫され、売春を強要されていました。もらっていたお金も、20元、50元という小銭にすぎませんでした(1)

 今年4月から、この事件の裁判が始まりました。

公務員の腐敗

 今回とくに問題になったのは、起訴された21名のうち、5名は幹部クラスの公務員(県人事労働・社会保障局幹部、移民事務所主任、土地管理所所長、鎮の司法所幹部、職業高級中学教師、県の人民代表)であったことです。袁莉被告人は以前、旅館をやっており、その時にこうした公務員とも知り合ったため、買春をあっせんしたようです。

 また、現地の警察は事件を摘発せず、被害にあった子どもの保護者が事件を届け出ても、放置していました。事件を処理する際にも、「一般の売買春事件」として処理しようとしました(2)。その背景に、癒着や贈収賄がなかったかという疑問も出ています(3)

「幼女買春(嫖宿幼女)罪」と「強姦罪」

 検察は、幼女を買春した者たちを、「強姦罪」ではなく、「幼女買春(嫖宿幼女)罪」(4)で起訴しました。この点にも批判が出ています。

 中華人民共和国刑法の第236条(強姦罪)は、「相手が14歳未満の幼女と姦淫する者は、強姦と見なし、重く罰する」としています。強姦は「3年以上10年以下の懲役」で、「情状が劣悪」な場合は「10年以上の懲役・無期懲役・死刑」です。

 その一方、刑法は、第360条2項(幼女買春罪)では、「14歳未満の幼女を買春する者は、5年以上の有期懲役に処し、あわせて罰金を課す」としています。「有期懲役」は期限が「15年以下」に決まっていますから(刑法第45条)、「幼女買春罪」は、最低刑は強姦よりも重いけれども、「情状が劣悪」な場合でも、「強姦罪」ほどは重く罰せらません。

 また、中華人民共和国刑法では、「強姦罪」は「公民の人身の権利、民主的権利を侵犯する罪」に属するのに対して、「幼女買春罪」は、「社会の管理と秩序を妨害する罪」に属しています。これは、幼女が自分で売春したので、幼女にも問題があったとされているからです。しかし、今回の場合は、そもそも事件の経緯から見ても、女子生徒たちは、まぎれもない性侵犯の犠牲者でした(以上は、(5))。

 世論の批判があったためか、検察はいったん訴訟を取り下げ、「審理の過程で新しい事実と証拠を発見した」として、「補充捜査」をおこない、その上で改めて起訴をしました。しかし、検察は、袁莉被告人の罪名を「強制売春罪」に改めたものの、その他の被告人の罪名は、「幼女買春罪」のままでした(6)

 北京青少年法律援助・研究センター主任で、中華全国弁護士協会未成年者保護専門委員会主任の佟麗華さんは、そもそも「幼女買春罪」というものは廃止して、14歳以下の幼女との性行為は、すべて強姦罪にすべきだと主張しています。なぜなら、「幼女買春罪は、行為者が、相手が14歳未満の幼女であることを知っているか、そうかもしれないと知っていて、なお性関係を発生させるものであり、幼女姦淫の犯罪の構成に符合している」からです(7)

 昨年の全国政治協商会議でも、劉白駒委員が「刑法を改正し、『幼女買春』を強姦罪として処罰する提案」を出しています。劉委員は、「『幼女買春罪』は、幼女に『売春』する行為能力があることを認めているけれども、刑法236条の規定にもとづけば、性関係に対する幼女の同意は、彼女と性交した人の強姦罪の刑事責任を免除する根拠にはなりえない」と主張し、さらに「現実から見て、大多数の幼女の『売春』は強制されたものである」と指摘しています(8)

未成年に対する性侵害をめぐる他の法律的問題

 佟麗華さんは、他にも、未成年に対する性侵害に関する法律上の問題点を指摘しています。また、最近、北京青少年法律援助・研究センターは「性侵犯事件未成年被害者シンポジウム」を開催しましたが、そこでもさまざまな問題が指摘されました(9)。それらは、以下のようなものです。

 ・捜査段階で、未成年の被害者が被害の状況を繰り返し質問されることによって、二次被害・三次被害を被っている。被害者に対する質問は、できるだけ一回にとどめるとともに、質問のやり方を考慮したり、専門家の補助を得たりするべきである。「公安機関が未成年者の違法犯罪事件を処理する規定(公安機関辨理未成年人違法犯罪案件的規定)」を改正して、被害者の権利を保護するようにすべきだ。

 ・未成年者の性被害は、被害者の年齢が小さく、隠蔽されていることが多くて、しばしば未成年の被害者の陳述だけが証拠なので、立件が難しいという状況がある。現在は、立件の基準が厳しすぎ、一部の立証責任を被害者に転嫁している。立件の基準を調整し、少なくともまず捜査した後に、起訴するか否かを決めるべきである。

 ・被害者が精神的損害賠償を獲得する上で最大の障害は、最高人民法院が次のように規定していることである:「刑事事件の被害者が、被告人の犯罪行為によって受けた精神的損失のために起こした付帯民事訴訟、あるいは被害者が別に起こした精神的損害賠償の民事訴訟は、人民法院は受理しない」。精神的損害賠償に関して、法律で規定すべきである。

 ・未成年者の性被害は隠蔽されているので、医者や教師など、未成年者と接触が多い人に通報の義務を課すべきではないか。

 ・刑事訴訟法の規定では、被害者は、開廷の時刻や場所について知るとか、法廷での尋問で事件の内容を述べるとか、裁判長の許可を得て被告人や証人に質問できるなど、さまざまな権利が保障されている。しかし、未成年の被害者のそうした権利はしばしば無視されている(10)。とくに若干の基層や辺鄙な地区では、被害者が訴訟の進展状況や判決さえ知らないこともある。未成年の被害者が代理の弁護士を必ず指定できるよう、法律の中で指定代理制度を確立すべきである。

(1)貴州習水県多名公職人員渉嫖宿年幼女生(図)」『中国青年報』2009年4月3日。この事件に関しては、特集を組んでいるサイトもあり(「貴州嫖宿事件」鳳凰網、「貴州習水部分官員渉嫌“嫖幼案”」騰訊新聞)、日本のネットでも、「公務員宿舎で中学生11人に…! 衝撃の児童売買春、公判始まる─貴州省」(レコードチャイナ2009-04-12)という記事が出ています。
(2)公職人員嫖宿幼女法不容」大河網2009年4月8日。
(3)李英鋒「習水案:理応像“鉱難”一様問責」『中国婦女報』2009年4月18日。
(4)「幼女買春罪」とは、14歳未満の幼女を買春する罪。幼女が主体的に自ら望む、またはある種の原因で売春活動に従事している状況の下で、売春している者が幼女であることを知りながら買春の行為をおこなうこと。
(5)劉昌松「“強奸”変“嫖幼”,厳打還是放縦」『新京報』2009年4月7日、張栄麗「准確定是伸張正義的前提」『中国婦女報』2009年4月16日、李英鋒「掲穿“定罪嫖宿更厳癘”的謊言」『揚子晩報』2009年4月6日、【地方官僚VS人民】“犯した罪より面子が重い?”売春事件の刑事罰」サーチナ2009/04/08。ただし、法律をそのまま適用すれば、やはり「幼女買春罪」であるという指摘もあります(「習水侵害幼女案適用法律剣指何方」新華報業網2009-5-4)。
(6)貴州習水嫖宿幼女案発現新事実和証据 検方撤訴」『法制晩報』2009年4月22日、「習水嫖宿幼女案改由遵義市検察院提起公訴」新華網2009-5-17(『中国婦女報』2009年5月18日)、「順義検察院有関負責人就習水嫖宿幼女案基礎答問」法制日報2009年5月18日。
(7)専家建議取消嫖宿幼女案 均按強奸罪厳懲」『中国青年報』2009年4月13日。包蹇「習水案:誰選択了“明擺着的漏洞”?」(人民網2009年5月18日)も、強姦罪と幼女買春罪の境界が曖昧で、法律の抜け穴になっていると指摘しています。
(8)政協委員呼吁嫖宿幼女罪納入強奸罪 厳癘打撃犯罪」中国新聞網2009年4月20日。李克傑「从習水案看嫖宿幼女罪立法欠陥」(『燕超都市報』2009年4月11日)も、「刑法は、強姦(幼女)罪を規定するときは、あらかじめ、幼女(の)……性交の意思の表明は無効であるという基本的前提を置いている。その一方で、幼女買春罪を規定するときは、この前提を全面的に否定して、金銭または財産と取引する性交の意思を有効と認定し、そのために行為者に対する処罰を軽減しており、矛盾していると言うべきである」と述べています。
(9)法律存缺陥 未成年被害人很受傷」『法制日報』2009年5月9日。
(10)習水県の事件では、被害者の父親にも、開廷の日時を知らせておらず、入廷しようとしても許可されなかった事例がありました(「“習水嫖宿幼女案”受害者家属至今不知案件詳情」『広州日報』2009年4月14日)。

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