2017-10

LGBT運動のゲイ中心主義やフェミニズム運動におけるレズビアンの主体性喪失に対する異議申し立て

中国のセクシュアル・マイノリティの人々の運動も、他国同様、ゲイが中心になっている傾向を免れなかった。そうした中、2011年末から、レズビアンらが明確にゲイ中心主義を批判しはじめた。2012年以降活躍している若い行動派フェミニストの中にも、レズビアンやバイセクシュアルのメンバーが多く、そうした動向に同調してきた――ないしは、そうした動きの中からフェミニズムの運動が生まれてきた。しかし、いま、レズビアンの中に、フェミニズム運動においてレズビアンとしての主体性を出せないことを問題にする人も出てきた。

――上記の議論は現在も進行中だが、以上のような状況があると思うので、この点について、以下、述べてみたい。

<目次>
1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博
2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有
3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博

LGBTサイトの理論家のクィア理論批判

2011年8月、LGBTサイト「愛白網」(ただし、1999年に創設された時はゲイサイトで、今日でも記事の内容はかなりゲイ中心である)の理論家であるDamien Lu(星星)さんは、「クィア理論の概念の多くは、セクシュアル・マイノリティたちの権利の推進にとって、破壊的作用がある」と批判した。その理由は、「クィア理論の主要な理論家は、性的指向は非常に可塑的で、固定的ではなく流動的であること考えており、それだけでなく、いかなる性別や性的指向の分類の『レッテル』もみな誤っていると考えている」が、そうした理論的立場に立つと、同性愛者に対する「治療」を容認することになるし、同性婚の根拠は、同性愛が先天的なものであるということなのに、性的指向が可塑的であると考えると、同性愛者差別に反対する立法や同性婚姻法を推進することが難しくなる、というものだった(1)

「美少女戦士レズビアン」の微博(ミニブログ、中国版ツイッター)による反論とLGBT運動の現状批判

2011年12月17日、「美少女戦士レズビアン(*)」の微博[美少女战士拉拉的微博]は、「私たちはレズビアンである。私たちはクィア(**)である。私たちは声を上げなければならない」という発信を皮切りに、上のような議論に対する反論を開始し、上のような議論を生み出す背景についても批判した。

(*)「美少女戦士」は、「美少女戦士セーラームーン」の中国語名(2)。また、「レズビアン」の原語は「拉拉」であり、ここでは仮に「レズビアン」と訳したが、華人拉拉連盟によると、「『拉拉』の定義は、女性の同性愛、バイセクシュアル、女を愛するトランスジェンダーである。トランスジェンダーは自分を拉拉ではないとも認識できるし、自分を拉拉だとも認識できるが、拉拉は『トランスジェンダーは私たちの中には入らない』と言ってはならない」と述べている。「美少女戦士拉拉」の微博も、この定義を引用しつつ、「lesはlesbianの略語だが、『拉拉』の2字は必ずしもそうではない」と述べている(2012.1.28)。

(**)「クィア」については、「美少女戦士レズビアン」の微博は、「性愛の表現方法が伝統的基準とは異なる立場の人を指し、必ずしも同性愛者ではない。多くの同性愛、トランスジェンダー、バイセクシュアル、性愛の方法が伝統的な一夫一婦の異性婚姻とは異なる一部の異性愛者も、クィアという呼称を受け入れる」、「『クィア』は、しだいにジェンダーないしはその他の各面でのレッテル貼りを望まない、分類されることを望まない者の総称になった」(2011.12.18)と説明している。

「美少女戦士レズビアン」は、半月の間に360の微博(ツイート)を発信し、盛んに論争を繰り広げた。

「美少女戦士レズビアン」も、「性的指向は生まれつきなので、変えることができない」という主張は、「同性愛の矯正・治療」に反撃するために、同志(セクシュアル・マイノリティ、LGBTといった意味)運動の戦略として「一つの段階の一つの領域において暫時の成果を収めうる」ことは認めている(2011.12.24)。

「美少女戦士レズビアン」の主張は、2012年1月5日の以下のような発信によくまとめられているように思う(以下は、当日の発信すべてではなく、抜粋です)(3)

第一の分岐は(……)相手方が繰り返し論証しているのは「どのように同性愛が合理的であると証明すれば最も良いのか」ということであり、私たちは、「人は、基本的権利を獲得するために、合理的であると証明される必要はない」と主張している。

そこに隠れた更に大きい分岐は、私たちの運動の目標に対する期待が非常に異なっているということである。私は、運動はすべてのセクシュアル/ジェンダーマイノリティのために権利を勝ち取るものだと考えており、「生まれつきの同性愛」あるいは「科学的に証明された同性愛」のためにだけ権利を勝ち取ることを望んでいるのではない。

私にはある友達がいて、彼女は以前は男に対して強烈な性欲を抱いていたが、50近くになってガールフレンドと付き合い始めたら、男に対する欲望がなくなった。私には別の友だちがいて、小さい時から自分は間違いなくレズビアンだと思ってきたけれど、のちにボーイフレンドと付き合いだしたら、うまくいっている。彼女たちは困惑しているけれども、私は、彼女たちは、現在、なかなか幸せだと思っている。

同性愛が構築されるものであることにマイナス面がある理由は、人類が同性愛の起因を誤解しているということにはなく、近代社会の価値観が、異性婚姻の中の、一夫一婦の、男性主導の性関係だけが正当で、その他――同性愛も、バイセクシュアル・婚姻外の性関係・SM・セックスワーク・トランスジェンダーなどなども――をみな堕落していると考えていることにある。

狭隘な出発点から考えると、いま私たちは努力して、社会に「同性愛も正常だ」と受け入れさせるために、私たちは「生まれつき」の「血統が純正」な同性愛だと言って、その他の性的マイノリティとの区別をはっきりさせなければならない。しかし、クィアがやるべきことは、朝廷の権威を直接問いただして、さまざまな情欲に対して制約をする社会の偏見の根源に挑戦することである。

このように言うことができる:ある人々は、搾取をされているので、自分がいかに這い上がるかを考え、権力を獲得した後には、他の人を支配する。しかし、ある人々は大きな局面を見ることができ、システム全体をひっくり返してこそみんなが徹底的に解放されると考える。ジェンダー不平等、異性愛ヘゲモニー、フェミニズムの関係は、モニカ・ウィティグ「人は女には生まれない」(Monique Witting“One Is Not Born A Women”)を参照してほしい。

性的指向の起因以外にも、人類の各種の態度・行動についての先天論と後天論との論争は、社会科学・自然科学の領域で今に至るまで勝負がついておらず、現在、もっと広く受け入れられているのは、先天論も後天論も部分的な働きをしているというものである。最近、国内のクィア理論に対する最大の誤解は、クィア理論は性的指向に先天的要素があることを否定しているというものである。


また、以下のような発信もしており、問題の背景には、以下のような状況があることもうかがえる。

現在、多くの同志団体は、「私たちはLGBT団体だ」と言いたがる。けれど、けれど……多くの場合、団体の中には、Gしかいない。。。。

なぜ専門のレズビアン団体があるのかについて、本当にしっかり考える必要がある。多くのLGBT団体は実際はゲイ主導の組織であり、女性が一人もいないこともある。同様に、多くの場合、B(バイセクシュアル)がおらず、T(トランスジェンダー)がいない。

大多数のレズビアングループは登録されていない民間団体であるし、一般に「LGBT」とは自称しない。若い男も女もいる1、2の組織を別にすれば。


華人レズビアン連盟の声明

論争の最中の12月25日、華人レズビアン連盟も以下のような声明を発表した(4)。全体として「美少女戦士レズビアン」の考え方を支持した声明だと言えよう。

1.性的指向が生まれつきのものか、後天的に構築されるものかという点に関しては、私たちの多くの取材や意見交換において、その2つの観点/生命の経験が共に現れており、どちらか1つの観点によって、すべての生命の経験をカバーすることはできないと考える。

2.「生まれつき論が現段階の運動の戦略だ」という説については、私たちは、それは危険な観点だと考える。その説は、そのように思っておらず、そのような定義に当てはまらない人々を軽視し、犠牲にする可能性がある。そうした軽視や犠牲は、私たちが身を投じようとしている同志運動ではない。同志運動の出発点は、科学研究によってその生理的な原因を証明することではなく、天賦人権―― 一人一人が、他人を傷つけないという前提の下、自分がどんな人であり、どんな人を愛するか、どのように生活するかを選択できる権利を持っているということにある。(……)

3.クィア理論は、その誕生の日から、周縁の立場から、しだいに主流化している同志運動に挑戦し、多元的な思考と実践をもたらしている。クィア理論は、中国大陸ではまだ充分に紹介や理解がされていないが、私たちはクィア理論に対して開放的な態度を取って、もっと多くの議論が起きることを期待する。

4.現在大陸の同志運動は勢いよく発展しているけれども、私たちは、運動の中にジェンダー視点が乏しいと切実に感じている。声をじゅうぶん上げることができないために、女の同志/レズビアンは、運動の中で常に匿名状態になっている。「同志」と言えば、人々は往々にしてゲイのことしか想定せず、レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどのもっと弱い立場の人々を無視する。また、同志コミュニティの中でも、理論上当然だとされる論述が、事実上、女の同志/レズビアンには適用されない。(以下略)


崔子恩さんらもクィア理論を支持する観点から、議論に参入

「中国初のクィア作家」と言われる崔子恩さん(5)も、「中国の同志運動は、もうクィア理論/文学研究との関係を断ち切ることはできない。二元論は一部のGayに享楽的な生活ができるように誤って思わせることができるけれども、二元論が作り出す独裁と専制は、けっしてそのために抑圧を弱めることはない」(@崔子en的微博2011.12.23)と述べた。

北京クィア映画祭の主席をつとめた楊洋さんも、「自分は、北京クィア映画祭がまだ北京同性愛映画祭だった間は、ずっと本当の帰属感が持てなかった」と述べ(杨oig洋non葱的微博2011.12.24)、それに対して崔子恩さんは「論争の起源は、@美少女戦士拉拉が挑戦した『同志運動の意見の指導者』だった」とコメントした(@崔子en的微博2011.12.24)。

また、崔子恩さんは、12月27日、「午前、同志NGOに輪番制を呼びかけたところ、ある人が私に対する@愛白アカウントのフォローを外した。個人が支配するNGOのようだ」(@崔子en2011.12.27)と述べ、翌日に、「改選しないことは、体制上、腐敗する土壌が生まれることを認めることになる」(同2011.12.28)と指摘、美少女戦士拉拉は「クィア映画祭の輪番主席制度が、参考になる一つのモデルだ」と述べた。

ここでは、「指導者」が権力を持つような、LGBT運動内部の民主主義のあり方も問題にされている。

2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有

2012年は、若い女性を中心にしたフェミニストが、街頭でのパフォーマンスアートや抗議活動、署名運動などの新しい運動を次々におこない始めた年だった(「『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』(中国)年表」参照)。彼女たちの中には、レズビアンやバイセクシュアルが多いが、彼女たちの多くも、「美少女戦士レズビアン」のような視点を支持ないし共有している(6)

シルヴァースタイン講演におけるクィア理論否定に対する抗議をめぐって

2012年4月16日、アメリカのチャールズ・シルヴァースタイン(Charles Silverstein)さんが、北京LGBTセンターが組織した交流会(司会は上述のDamien Lu[星星]さん)で、「クィア理論は10年以内に消滅する」「LGBTの親密なパートナーの間には暴力は存在しない」「アメリカではゲイとレズビアンが親密に隔たりなく共闘している(とくにレズビアンが、ゲイの組織に加入することを「習得」したのち)」といった発言をした(爱白Aibai的微博2012.4.19、灰烬AshWang的微博2012.4.20)。シルヴァースタインさんは、日本でも福田広司ほか訳で『ザ・ニュー・ジョイ・オブ・ゲイ・セックス』(白夜書房 1993年)という本が出ているなど、古くからのアメリカで同性愛者運動をしてこられた方らしいが、新しい運動の動向には疎いようだ。

シルヴァースタインさんに対して、「クィア理論とフェミニズムの視点からLGBTの中の周縁のグループに関心を持つ」ことを謳って結成された「辺辺グループ(边边小组)」が異議を唱えた(「性向自主!反对霸权!——边边小组关于性向问题的立场声明」边边小组的博客2012年4月19日)。

「辺辺グループ」は、呂頻さんや徐玢さんによって結成されたグループだが、若い行動派フェミニストのリーダーの一人である李麦子さんも、この件について取り上げている。李さんは、Damien Lu[星星]さんらがゲストとして呼ばれた4月19日の会で、辺辺小組のメンバーがビラを撒くとともに、ゲストと対話の機会を設けるように望んだのに対して、主催者が故意に質問の機会を与えなかった(予定よりも5分早く終了させた)という出来事を批判している。

李麦子さんが上記の出来事について述べたのは、NGO業界の問題を取り上げた、「あなたに反対する者がいるときは、あなたは再考する必要がある」という文章だ。李さんは、「問題が起きたら、私は対話によって解決しなければならないとずっと思ってきた。大国間の矛盾も、対話によって解決しなければならないのではないか?」と言い、NGO業界において「多くの人が問題から逃避したがり、矛盾を激化させる。こうした思考はまるで中国の『維穏(社会的安定の維持)』のようだ。事件が起こったら、最初は情報を封鎖し、塞ぎ止められなくなってから、やっと問題に対応する」という状態を批判している(7)

このようにNGOの民主主義の問題を問うていることも、前年の崔子恩さんらと同じだ。

クィア理論については、同じく若い行動派フェミニストの鄭楚然さんも、「クィア理論の良さは、反覇権的な理念であり(……)重要なのは、権威者たちがどのように言ったかでも、それらの権威者たちがどのようなキャリアを持っているかでもなく、私たちが主流の覇権的な声tmd[=罵倒語「他妈的」の略語]に圧死しないことである」と述べている(大兔纸啦啦啦的微博2012. 4.19)。

若い行動派フェミニストの主要メンバーは、以下のように、LGBT運動におけるゲイ中心主義や同性愛中心主義も批判している。

LGBT運動の中の男性中心主義批判

李麦子さんは、「同志はゲイと同じではない!」「女の同性愛者は相対的には弱者だが、たしかに存在していて、同じでは全くない」(麦子家的微博2011.12.5)、「多くのゲイもまったく男権的であり、セクマイ圏内のジェンダー不平等問題も深刻である」(同2012.4.27)、「男のセクマイには、セクハラというテーマについてかくも深刻な誤解がある。女性の権益が侵害されたとき、男権社会は集団で被害者に矛先を向け、被害者を非難し、被害者を中傷さえする」(同2012.9.26)と述べている。

バイセクシュアル差別批判

梁小門さんも、男とセックスしたレズビアンに対して「私は真のレズビアンは男とは寝ないと思う。本当に気持ちが悪い」と言った人に対して、「純同性愛ヘゲモニーは、異性愛ヘゲモニーと本質的に同じである。他人に自分たちと同じであることを許さない」と批判した(梁小門的微博2012.8.12)。

3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

「美少女戦士レズビアン」の微博は、2012年7月で更新を停止しており、彼女たちが若い行動派フェミニストの運動をどう評価していたかは十分にはわからないが、全体的には、運動に注目し、評価しているようだ。ただし、「男子トイレ占拠」の際、とくに「ユニセックストイレ」の設置を唱えている(美少女战士拉拉的微博2012.2.23)ことなどは独自の特色だと思う(運動全体の要求の一つにも、ユニセックストイレの設置自体は入っていたが)。

さて、2013年4月、『クィア レズビアン タイムス[酷拉时报(Queer Lala Times)]』というネットマガジンが創刊された。

その「発刊の言葉」は、以下のようなものである(大头「《酷拉时报》发刊词」2013年4月25日)。

私たちはレズビアンであり、女性・「同志」・「同性愛」の名の下に一括して論じられることを拒絶する。

私たちはクィアであり、同性愛/異性愛、男/女、正常/変態という簡単な区分に不満である。私たちは、この複雑な世界にふさわしい多元的な論述を追求し、より差違があって多様な世界を創造することを願う。

私たちは実践者であり、中国のジェンダー/セクシュアリティの運動に身を投じ、多くの組織者たちといっしょに、現実の変化を自ら体験し、人の変化こそが社会運動の最も重要な目的であると信じる。

私たちは論述者であり、言葉の力を信じる。

私たちは、今日の中国で、このような刊行物を発刊するが、直面している問題は多重であり、多様である。

第一に、十年あまりの同志運動はすでに成果を上げ、社会的可視性も、公衆の認識も大きく高まった。とくに大都市で生活し、社会的・経済的地位が比較的高い男女の同志の境遇は改善された。しかし、まだはるかに不十分である。ひとまず権利については措くとしても、多くのLGBTはまだ恐怖と社会的圧力の下で生活しており、得られるべき援助が得られていない。政治環境・公共空間の状態はジャングルのようで、同性愛者・女性に対する差別は広範で赤裸々であり、公衆レベルの闘いは盛んになり始めたばかりで、まだ充分ではない。

第二に、本来平等を追求することを目標にしている同志運動に、さまざまな問題が現れている:ジェンダー観念の弱さ、階層分化、理念の単一性、主流社会への同化など。同志(LGBT)内部の差違は、本来虹色のように多種多様に、細密に現れなければならないのに、「同志」という大きな旗の下に、それらの差違は覆い隠され、単一化され、ゲイ男性化され、主流化されている。

第三に、今日の中国では、市民社会が勢いよく発展しつつあるが、同志運動、ジェンダー/セクシュアリティ運動は社会運動の一部として、どのように他の運動と対話し、どのようにこの変化により広範に参与するのか? どのようにグローバリゼーションの中で、中国本土の現実に対処するのか?


この「発刊の言葉」は、同志(LGBT)運動の問題が非常に幅広く捉えられているとともに、「女性」という一括した捉え方も拒否していることが特徴だ。

続いて掲載された、小燕「LGBT運動誰が先に平等になるのか?――中国のジェンダー/セクシュアリティ運動に関する若干の考察」(小燕「【专题】让谁先平等起来?——关于中国性/别运动的一些观察」2013年5月2日)は、LGBT運動やフェミニズム運動のあり方に対する批判を、より具体的に述べている。以下は、その抜粋だが、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしてみた。

「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、これは有害な運動の理念だと思う。

同志運動は、結局、セクシュアリティとジェンダーにもとづく社会的公正を実現するためのものか、それとも一部分の人の合法性を勝ち取る――「同性婚姻合法化」あるいは「性的指向にもとづく差別に反対する」が私たちの最終的目標なのか?

私たちが同志運動に参加したとき、ある人は「エイズ防止」が同志運動の戦略だと言った。レズビアンの声はそれによって全面的に消されてしまったけれど。その後、ある人は「生まれつき論」が有効な戦略だと言った。なぜなら、「やむをえない」状況ならば受け入れられやすいからだと。さらにその後、彼らは「積極的で肯定的な」同志のイメージの形作ることを始めた。それは、より多くの人に社会的エリートの同志たちを受け入れさせるためだった。

私も、これらの「戦略」がおおむね、ある程度「有効」であることを否定できない。たとえば、同志の社会的可視性を高めるためには有効だろう。しかし、結局、誰が視野に入るようになり、誰がそのために後ろに隠されるのだろうか?  私はこれらの戦略を怖いと感じる。なぜなら、自分が戦略のニーズに合致していないという理由で、いつ運動から放棄されるかわからず、怖いからだ。


私は、2012年のフェミニズム運動について、「レズビアンによって中国のフェミニズム運動の誕生が推進された」と簡単に言おうとは思わないけれども、レズビアンの運動者たちがより強いジェンダー平等意識と社会運動の自覚を持ってこれらのフェミニズムのアクションに参加し、「運動」の形成において重要な役割を演じたことは認めざるをえない。

今年1月、私が上海でのある会議で李麦子
[遠山注:レズビアン]に会ったとき、私は彼女にこのような考え方を話した。その時、麦子は半ば冗談で、半ば緊張して、「もしあなたが発言するときに、『レズビアンが中国のフェミニズムを推進した』と言うのなら、私は『自分は異性愛だ』と言明する」と言った。私は麦子に何故かと問うと、麦子は「そういう言い方は、彼女たちから多くの運動の力を流失させるかもしれないからだ」と述べた。まじめな話、この回答に、私はいささか驚いた。私の心配は焦りに変わった。ひょっとしたら私はもっと繰り返し「私は確固としたフェミニストだ」と表明するべきだったのかもしれないが、私が心配なのは、レズビアンの活動家がこのままフェミニズム運動の中に埋没する、あるいはフェミニズム運動の中の「レズビアン」が主体性を喪失する――この欠落は、戦略的考慮にもとづいて主体に放棄したのかもしれないし、受動的に遮蔽されたのかもしれないが――ことである。

後に、私は会議で、このような観点を出したとき、すぐ「フェミニストレズビアン」たちの反対にあった。(……)会議に参加していた一人のフェミニスト学者は、「これらのフェミニズムの訴えを主張するのは非常に良い。けれども、レズビアンとしての身分を強調するべきではない。レズビアンであることを強調することは、公衆のフェミニズムに対する誤解を生じさせるし、そのような少数派のセクシュアリティは過度に強調するべきではない」と述べた。私が言いたいのは、これこそが私が心配している状況だということだ。


実際は、私が言いたいのは簡単なことである。

第一に、セクシュアリティ/ジェンダーの平等が基本的立場であり、LGBTであれ、フェミニズムであれ、セクシュアリティの権利であれ、どの陣営でも、これが、協力と共生の基礎である。(……)「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、それは有害な運動の理念だと思う。そうした理念は本当の圧迫と分離を作り出して、一部の人に他の一部の人のために道を譲らせ、既にある既得権益を打ち固め、作り出す。

第二に、運動の協力と結びつきは重要だが、主体の異なった訴えも、常に強調されなければならない。LGBTの訴えは異なるし、フェミニズムの訴えとレズビアンの訴えも異なるし、女性内部の訴えも異なる。人は多面的であり、ジェンダー平等の訴えも多面的であり、どの陣営も一枚岩ではない。普遍的に適用できるフェミニズムはなく、普遍的に適用できるセクシュアリティの権利もない。


上の文はフェミニズム運動のあり方も批判しているのだが、「女権之声」も、この文章に「閲読推薦、討論歓迎~」とコメントを付けて紹介しているので(2011.5.3)、中国のフェミニズム運動が、こうした議論を排斥しているわけではないようだ。

次の大頭「周縁の中の周縁に立つ」(大头「【专题】站在边缘的边缘」2013年5月20日)は、「フェミニズムレズビアングループ」を設立した女性の文である(以下の文も抜粋だが、上の文と同じく、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしている)。

なぜ「フェミニズムレズビアングループ」を設立しようと思ったかという理由の一つは、同志運動に、ゲイが主導し、代弁する情況が深刻に現れているからだ。

公衆レベルでも、同志運動内部でも、「同志=ゲイ」、「同性愛=ゲイ」という理解がかなり一般的である。各地で「エイズ防止」の名の下に、大小の多くのゲイの組織が設立されたが、レズビアングループはその下に付属していて、「同志」の名の下に統合され、忘れられた。多くのレズビアンは、ゲイといっしょに会議をした時には発言権がなく、自分の意見が尊重されないという経験をしている。このままでは、レズビアンたちは焦りを感じ、信頼を感じられなくなりそうだった。そのとき、「フェミニズム」が、自己を確立し、ゲイとは異なる意見を確立する出口になった。

この一、二年、女と男の同志の分岐が現れた後、「レズビアンはよくしゃべる」と言う人が出てきた。これは、次の事実を無視している。レズビアンはもう長い間沈黙してきており、やっと話し始めたばかりだ。しかし、ゲイは今なお、至るところで中国のLGBT集団を代弁している(……)多くのゲイを中心とした組織は、現在「LGBT」という名前を付けている。これは流行していて、国際的な慣例にしたがっており、ポリティカル・コレクトであるけれども、「内部の差異を真に尊重し、理解する」というこの言葉の背後の意味を無視している。同時に、クィア理論に反対する組織者が「クィア」という名称を使っている(……)。

周縁の人が自らの権益を勝ち取るとき、一部の人は主流に入り込むことができるが、もっと多くの人が置き去りにされる。この「もっと多くの人」が、周縁の中の周縁である。すなわち、お飾りとしての「LTB」、辺鄙な地区、経済的状況が良くないLGBT、などなどである。同時に、運動の目的が結局、人の解放――個人の自由・自信・理解の獲得であるのか? それともいささかの量化した結果、たとえば同姓婚姻合法化? であるのか? この点から見て、現在の中国の同志運動は、異なった理念が存在しており、まだ討論がまったく不十分である。


フェミニズムのほうを見ると、奇異なことに、フェミニズムのアクションに参加したら、レズビアンたちは、広義の「女性」の中に身を隠してしまう。レズビアンの運命と異性愛の女性の運命は完全に同じであるかのようだが、実際はもちろんそうではない。「性別」と「性的指向」(カムアウトの圧力を考えてみよ)との二重の抑圧が、私たちの身の上にかぶさっている。このことは、レズビアンの、LGBT運動とフェミニズム運動の中での二重の苦境、二重の失声をもたらしている。

それゆえ、私たちは誰であるかをはっきりさせて、「レズビアン」と「フェミニズム」と「同志」との関係をはっきりさせ、自らの主人になって、相互に尊重するという前提の下で異なった運動と同盟を結ぶ、これこそが未来の方向である。私は誰なのか? それは、単なる「フェミニスト」と「同志」との間を移動するレズビアンの組織者ではない。二重(多重)に抑圧された中で生活している一人一人のレズビアンには語らなければならないことがあるのだ。みんなの経験を集めてこそ、運動のあり方が次第にはっきりし、豊富になる。

積極面を言えば、周縁は力を持っている。なぜなら、失うものは、本当に鎖だけだからである。レズビアンは、男権的社会に対して感情上のニーズもなければ、現実的な利益も得られないのだから、幻想を最も持っておらず、それゆえ、最も勇敢で、最も革命性を持っている。性別と性的指向の二重の反逆は、家父長制的体制を揺るがしうるものでもある。その前提は、私たちがもっと勇敢で、もっと自由で、もっと知恵を持たなければならないということである。



本ブログで以前述べたように、中国の若い行動派フェミニストには、レズビアンなどのセクシュアルマイノリティが多いという特徴があるが(「若い行動派フェミニストたちのネットワークの幾つかの特徴」)、上の文を読むと、その背景として、中国では、同志運動の中の男性中心主義に対する反発から、フェミニズム運動が生まれたという面があるように思う。日本では「新左翼運動の性差別への反発からウーマン・リブが生まれた」と言われるが、それと似たようなものなのだろうか?

それはともかく、その後、フェミニズムとレズビアンの問題に関しては、『クィア レズビアン タイムス』でも他の方が自らの経験や考察を発表しているし、若い行動派フェミニストたちの助言者である呂頻さんも応答している(8)。今後どのような形で議論が展開するのかは、同様の問題を抱えていると思われる日本にいる者としても注目に値すると思うので、今後またご紹介したい(こうした問題は、もちろんフェミニズム運動だけの問題ではないし)。中国の場合、当初からレズビアンであること自体は、とくに隠していない(ただし、メディアなどには宣伝しない)という状況なので、興味深い展開が生まれるかもしれないとも思う。

ただ、若い行動派フェミニストたちが4月6日から15日におこなった西北巡講(李麦子ら)の途上でのパフォーマンスアートでは、就職差別反対のアクションが男でも女でもない「東方不敗」の扮装でおこなわれた(前年は「花木蘭」という女性の扮装でおこなった)し、レズビアンの結婚式もおこなった(詳しくは本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」)。こうした変化は、『クィア レズビアン タイムス』で小燕さんや大頭さんがおこなった異議申し立てと何らかの関係があるのかもしれない、と思う。

(1)Damien Lu(星星)「同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?」爱白网。この文は、発表された日時が書かれていないが、別のサイトに掲載されている同じ文(「同主题阅读:同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?zz」)は、2011年8月26日に掲載されている。
(2)この名前を名乗っている理由はよくわからないが、彼女たちが微博の中で、「月に代わって差別をなくす!」(2011.12.18)とか、「風が強い闇夜の深夜、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/この上なく麗らかな明け方、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/薄暗いたそがれに、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/もう黙ってはいられない瞬間には、いつも美少女戦士レズビアンが空から現れる!」(2011.12.18)とか、「私たちは、月に代わって男性を出発点とした言葉をなくさなければならない。私たちは闘いを宣言しているのよ!」(2011.12.19)と述べているところから見ると、「美少女戦士レズビアン」は、「匿名の女性の正義の味方」といった程度の意味のように思われる。
(3)これは、les+の問いに答えたものなので、より詳しくは、「1月5日les+微访问美少女战士拉拉实录」(les+的blog2012年1月6日)参照。また、「美少女战士拉拉的微博」の発信とそれをめぐる議論のある程度の部分は、微博そのものにアクセスしなくとも、「美•少•女战士拉拉的博客」に、「微博精读:拉拉在LGBT社群中的边缘化地位」、「微博精读:“正面”的同性恋形象」、「 微博精读:酷儿本土化」、「微博精读:同运与艾滋病」、「微博精读:跨性别」、「微博精读:性别规范」、「微博精读:同性恋是一种选择?」、「微博精读:双性恋」、「微博精读:同性婚姻」、「微博精读:女大学生“占领男厕所”」、「微博精读:中国的“同志运动”」、「微博精读:酷儿政治」、「微博精读:对拉拉的定义」、「微博精读:同性恋是天生的?」、「微博精读:同性恋的唯一性」、「微博精读:同性恋的“科学”解释」、「以女性主义角度看问题」として、テーマごとにまとめられている。
(4)华人拉拉联盟委员会「华人拉拉联盟关于酷儿理论争论的声明」同語サイト2011年12月25日。
(5)崔子恩については、白水紀子「中国同性愛小説の作家とその周辺」(山田敬三先生古稀記念論集刊行会編『南腔北調論集―――中国文化の伝統と現代』東方書店 2007年)p.548-557に詳しい。その他、私は読めていないが、郭晓飞「本质的还是建构的?――论性倾向平等保护中的“不可改变”进路」2011年12月28日 (来源:『法学家』2009年第1期)と二言「同性恋:本质还是建构?」二言的日志2011年12月25日とが対照的な議論をしているようだ。
(6)彼女たちに大きな影響力を持つ、女性メディアウォッチネットワークの『女声』誌も、すでに論争中から、「美少女戦士レズビアン」の微博が「クィア」論によってレズビアンの代弁者として登場したことや華人レズビアン連盟が上記の声明を発表したことを好意的に報道していた(「“美少女”激荡同志圈」『女声』第105期(2011.12.26-2012.1.3)[word])。
(7)麦子家的微博2012.4.21。李麦子さんがもう一つ、NGO業界の問題の具体的な事例として挙げたのは、恩派(NPI)公益組織発展センターが企画したお見合いの件である。李麦子さんは、このお見合いのプランがジェンダーステロタイプだったので、それに対して多くの人が微博で異議を出したけれども、黙殺されたこと、そこでやむなく、数人の女性が当日ビラまきをしたら、主催者に包囲攻撃され、「場を壊した」と非難されたこと、その後いったんは主催者が「反対者と一緒に総括会議をする」と言いながら、実際は彼らだけで総括会議をしたことを批判している。李麦子さんは、「NGOの間は垣根を打ち破らなければならない」と述べている。この件については、吕频「相亲非公益 “幸福”是迷思?——我为什么质疑“公益相亲会”和“新幸福主义”」2012-04-13も参照。
(8)大兔[鄭楚然]「【专题】在女权圈中,直着进来,弯着出去」酷拉时报2013年5月6日、Stephanie「【专题】女权拉拉——如何消解身份名词」酷拉时报2013年5月14日、文\Holly 编\典典「【专题】 后现代的“玩”身份政治」酷拉时报2013年5月16日、吕频「关于女权和拉拉」社会性別与発展在中国2013年5月22日。

長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に

昨年11月に続く2回目のパレード

5月17日(国際反ホモフォビアデー)の午後2時~4時20分、100人あまり(「だいたい80-100人」と記している人もある)のLGBTの人々とその友人たちが、湖南省長沙市をパレードしました。パレードのコースは、天馬大ホテルを出発して、潇湘大道の沿江風光帯(湘江沿いの景観道路)を行進し、河西大学城、湖南大学を経て、天馬大ホテルに戻るというものでした(1)

彼(彼女)らは、「私は同志(LGBT、性的マイノリティといった意味)だ、私は誇りを持っている(我是同志,我骄傲)」「同志を支え、差別に反対しよう!(撑同志,反歧视)」というスローガンを叫びながら、レインボーフラッグを掲げて、パレードをしました。全国14省から、男子学生50人と女子学生55人が集まったそうです(2)。隊列の中には、「湖南大学愛Smile 協会(湖南大学爱Smile协会)」という、大学内のLGBT関係グループの旗もありました。

発起人の向小寒さんは、「長沙でこのような活動をするのはもう2回目だ」と語りました(3)。1回目の活動は、昨年11月24日におこなわれたパレード(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」)だと思いますが、このときの組織者も向小寒さんでした(4)。しかし、昨年11月のパレードの参加者は21人(30人余りという報道もあるが)だったのですから、今回のパレードの方がはるかに規模は大きかったのです。



今回のパレードは、「同愛ネットワーク(同爱网络[微博])」という湖南・湖北地区の同志向けポータルサイト(「同愛ネットワーク科技有限公司」という会社組織の形をとっている)が主催した、「2013年夏季大陸(長沙)同志反差別活動」でした。

向小寒さんは、4月5日に発表したプランで、すでに以下のような点を決めていました(5)
 ・活動の日――2013年5月17日(金)
 ・活動の性格――「中華人民共和国集会デモ示威法(中华人民共和国集会游行示威法)」の第7条第2款[*]で規定された、同愛ネットワークという企業組織がおこなう文化宣伝活動である([*]集会・デモ・示威は必ず申請して、許可をもらわなければならないが、「国家機関・政党・社会団体・企業事業組織が法律や団体の規約にもとづいて挙行する集会」は、申請する必要がないことを規定している)。
 ・参加する集団――レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびLGBTにフレンドリーな人々。
 ・活動の目的――集団で歩いて、レインボーフラッグを掲げ、スローガンを叫び、宣材をまき、署名を集め、一緒に写真を撮って、メディアで宣伝するなどの方法で、社会の各界に同性愛文化を宣伝し、大衆の理解と支持を獲得する。同時に、より多くの同志団体と個人がこの活動を通じて鼓舞されて、大陸の同志の平等な権利獲得の事業の中に飛び込み、権益を勝ち取ることを希望する。
 ・主催団体――同愛ネットワーク
 ・共催団体――悸花網、純愛社区、同志亦凡人、点Gayspot、出櫃[カミングアウト]バー、深圳交友網、淡藍網、北京LGBTセンター、成都同志、同愛網、同志権益運動、同性愛者の親と友人の会、同語グループ

向小寒さんは、最初は派出所に申請したのですが、デモはできないと言われたため、企業の形を取って街頭で差別反対の宣伝をすることを試みたということです(6)

このようにパレードをなんとか合法のものとしておこなう努力のほか、幅広く共催団体を求めて、大規模なパレードにしようとしていたこともわかります。また、上のビデオをご覧いただければわかるように、川沿いの遊歩道のようなところを行進しているので、交通の邪魔になるようなパレードでもなかったようです。

弾圧

パレードの当日、出発して2時間後、湖南大学のキャンパスに入った時、大学の指導部2人と大学の警備員4人と交通警官3人がパレードの責任者を探して、「これは許可されていないデモだ」と言いましたが、パレードの隊列を解散するようには言わず、そのままパレードは続けられました。

しかし、翌18日の午前2時半ごろ、数名の湖南大学の警備員と私服警官が、向小寒さんら5人を湖南大学の警備室に連れて行って拘留し、携帯電話も取り上げました。彼らはそのまま長沙市公安局岳麓区分局に連れて行かれて、拘留、訊問されました。弁護士がいなかったので黙秘していると、ある警官は、「あんたが何も知らないのなら、おれがあんたを殴っても、俺も知らないと言う」と言って脅したそうです。

そうして岳麓区分局が訊問記録を作ると、午前11時ごろ、彼らのうち4人は釈放されましたが、向小寒さんは、違法デモをしたという理由で12日間拘留されることになりました(7)

5月19日、長沙市公安局岳麓区分局は、「5月17日14時ごろ、向某(男、19歳、沅凌の人)は、公安機関の許可なしに、無断で80余名を組織して、岳麓区潇湘大道・桃子湖路などでデモをした。5月18日、長沙市公安局岳麓分局は、『中華人民共和国集会デモ示威法』第28条第2款第1項の規定[*]にもとづいて、向某を行政拘留12日に処した」と発表しました([*]「申請してない、または申請したがまだ許可を得ていない集会・デモ・示威」に対しては、「公安機関は、この責任者と直接責任を負う者に対して警告あるいは15日以内の拘留に処すことができる」)。(8)

李方平・藺其磊の両弁護士は、5月21日、「長沙の同性愛活動家の“小寒”が行政拘留12日に遭ったことに関する法律的意見書」を発表しました(9)(以下は、その一部の抜き書きです)。

私たちは、小寒(向某の常用名)の行政拘留不服事件の再議の申請および行政訴訟の予定の委託弁護士である。

一 小寒が組織した活動は、「集会デモ示威法」で言う厳格な意味でのデモではなく、街頭で記念日を祝い、差別反対を唱えただけである。

「中華人民共和国集会デモ示威法」第2条は、「中華人民共和国内で集会・デモ・示威をおこなう際は、みな本法を適用する。文化娯楽・スポーツ活動・正常な宗教活動・伝統的民間習俗活動には、本法を適用しない」と規定している。

私たちは、小寒が組織した「国際反ホモフォビアデー」の祝賀活動は、一種の文化娯楽および差別反対の唱導活動であると定義されなければならず、「中華人民共和国集会デモ示威法」によって規制されるべきではないと考える。

二 たとえ小寒が組織した活動がデモだとしても、このように厳しい処罰をするべきではなく、警告と教育で十分である!

わが国が1998年に署名した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第21条は、「平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない」と規定している。

わが国の「集会デモ示威法」は、1989年10月31日に公布施行され、24年来ずっと改正されていない。この法律の市民の集会デモ示威の権利に対する規制は極めて厳格であり、事前に許可を要求するうえ、許可されていない活動には行政処罰を課すこともできる。わが国の公民の集会デモ示威は、許可が必要なだけでなく、許可される数がきわめて僅かである。憲法が規定している市民の集会デモ示威の権利が、「集会デモ示威法」の規制の下で、認可されることが常態ではなく特例になるとき、合法的な市民の集会デモ示威はマレなものになる。政府が、手続きが欠けている(申請していない、または許可を得られなかった)ことを理由にして、市民に対する人身の自由を奪う処罰をすることは、正義ではなく、違憲である。

もし警察がそれでも小寒に誤りがあったと主張するにしても、警告か教育をしさえすれば、それでよいのである。19歳の青年が、初めてこうした公益活動をしたことに対して、どうしてこのような厳重な処罰をする必要があろうか?

とくに警察に人道的な考慮を求めたいのは、小寒の母親は深刻な精神障害であり、小寒が彼女の世話をしているということである。警察はできるだけ早く小寒を釈放して、一日も早く母と子を一緒にしてほしい。


(1)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日、阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(2)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(来源:华声在线)。
(3)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。
(4)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(华声在线)。
(5)小寒「2013年夏季大陆(长沙)同志反歧视活动策划方案」同爱网2013年4月5日。
(6)阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(7)以上は、大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日。
(8)未经许可搞游行 同性恋街头反歧视活动组织者被行拘」红网-潇湘晨报2013年5月20日。
(9)关于长沙同性恋活动人士“小寒”遭行政拘留十二天的法律意见书」同语拉拉资讯的微博5月21日17:24。

「2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」

昨年12月26日、淡藍網(さまざまなセクマイの話題を扱っているが、全体的に見ればゲイサイト)が「2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」を発表しました(「淡蓝网盘点:2012年中国十大同志新闻」淡蓝网2012年12月26日)。

昨年までの10大ニュースは以下のとおりでした。
・「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース
・「『2010年中国10大同性愛ニュース』
・「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』

1.福建初の男性同性愛の結婚式が多くの人の注目を引いた

10月2日、福建の寧徳市柘栄県で、陸忠さん(24)と劉旺強さん(20)との結婚式が公開でおこなわれた。結婚式自体に参列したのは60人ほどだったが、新婦役を数台のオートバイで出迎え、2人の周りには千人にのぼる観衆が集まり、2人はみんなの前で抱き合ったり、キスをしたりした (「视频:福建男同性恋情侣的盛大婚礼」淡蓝网2012年10月3日[来源:海西晨報])。

この件は、日本でもニュースとして取り上げられたほどです(「男性カップルが初の公開同性婚 小さな町は大騒ぎ―福建省」ライブドアニュース[毎日中国経済2012年10月17日]、「公開結婚式を行った同性愛者、見物に1000人以上が集まる―福建省寧徳市」レコードチャイナ2012年10月18日)。

といっても、べつに2人は自分たちのことを革新的だと思っているわけではなく、陸忠さんは「私たちは比較的伝統的で、比較的保守的なので、単純に結婚式をしたいと思っていて、結婚してこそ1つの家族になると感じたのです」と語っています。

また、陸さんは、「私たちは、もともと戸外で結婚式をすると決めていたのですが、その後、脅さました。政府とか、公安局(警察)とかの機関などにです」と語っています。陸さんによると、2人が「閙洞房(友人などが押しかけて、2人をからかいつつ、祝うこと)」をやっているとき、公安局は、あちこちのカラオケ店に行って、カラオケ店の主人に、「2人に会ったら、警察に届けなさい、われわれが捕まえる」と言って回ったということです。また、2人は、当初はあるホテルに宿泊して、そこで「閙洞房」をする予定だったのですが、公安局の圧力がかかって、小さな旅館に変更せざるをえなかったそうです(「婚礼内幕:对话福建结婚同志」淡蓝网2012年10月21日[来源:網易])。まだ、こうした厳しい状況はあるということです。

また、上の記事(「视频:福建男同性恋情侣的盛大婚礼」淡蓝网2012年10月3日[来源:海西晨報])の中のビデオを見ると、集まった人々は、物珍しさ、ないしは興味本位で写真を撮るためにカップルを取り囲んで揉みくちゃにしているようにしか見えません。

2.黄耀明・何韵詩などの有名人が相次いでカミングアウトした

今年4月23日、香港の歌手・黄耀明[アンソニー・ウォン] (wikipedia による説明)が達明一派のコンサートで、世間に「私は同性愛者だ」と公表した。5月、香港の有名なDJでテレビ番組司会者の蘇施黄がテレビの中で平然とカミングアウトし、家族が彼女の別な一面を受け入れてくれていることに感謝した。9月、香港立法会の議員・陳志全(慢必)が同性愛者という身分を対外的に公表し、香港の立法機関の最初の公然たる同性愛者議員になった。9月はまた、香港の船舶王の趙背曾の女児・趙式芝と時計商人の娘の楊如芯の2人が、フランスで民事パートナーシップの手続きをしたことを高らかに宣言し、同性パートナーシップ関係のカップルになった初の有名人になった。11月10日、女性歌手の何韵詩[デニス・ホー]が香港プライドパレードで同性愛者であることを誇り高く宣言した。

黄耀明さんのカミングアウトに関しては、日本のブログの中にも、話題にしている方がいました(「勇敢宣布:『達明一派』のアンソニー・ウォン(黄耀明)が同性愛を正式に公表『僕はゲイです』」華流 チャイナ日和 (又名:華流的一天) 2012年4月25日)。

趙式芝さんの件については、日本ではむしろ、彼女の父親が、娘の男性の結婚相手を見つけるために61億円を払うと言ったことのほうが話題になりました(「娘が同性婚を公表 香港の富豪、趙世曾氏は認めず、61億円で婿探し」yahoo!ニュース[毎日中国経済2012年9月27日])。

以下は、それぞれについての淡藍網の記事です。
・「黄耀明演唱会高调出柜:我是同性恋者」」淡藍網2012年4月23日。
・「艺人苏施黄公开承认同性恋 感激家人接纳」」淡藍網2012年5月13日。
・「香港立法会议员陈志全出柜 誓为同性恋者争平权」淡藍網2012年9月11日。
・「香港名媛赵式芝与同性密友杨如芯结婚」淡藍網2012年9月22日。
・「2012香港同志游行争取平权 何韵诗现场出柜」淡藍網2012年11月10日。

3.杭州の性教育の書物の同性愛者差別が疑われ、編集責任者がお詫びをした

このニュースについては、淡藍網も、「国内のセクシュアル・マイノリティ[同志]たちが、『ホモフォビア』の教材を公然と譴責し、出版した側と交渉したことは、中国のセクシュアル・マイノリティが差別反対の面で受動から能動に変わったことを示している」(1)と高く評価していますし、私も関連記事を読んで、以下で私なりに少し詳しく紹介してみました。

性教育の指導書のホモフォビア

昨年、杭州市教育局は、『青春期, 請家長同行(思春期には、保護者が同行するようにお願いする、といった意味)』(杭州市教育局家長学校総校・杭州市教育科学研究所編、東北師範大学出版社出版 2011年)を「性教育の指導書」として推薦しました。杭州市は、同書を、何回かに分けて中高生の保護者に5万冊贈呈し、学習活動をするつもりであるとも報じられました。

しかし、同書は、「性の逸脱を予防する」という節の中で、「性の逸脱」の一つとして「同性愛」を取り上げていました。同書は、「[同性愛の]大多数は、『後天的』に形成された異常な行為だ」と述べ、「性逸脱の患者は、一般には病院で治療するのが良い」とも言っていました。さらに、「同性愛」についての解説の中で、「同性愛者は、社会の風俗道徳に背いており、そのために彼らは、性格がひねくれて人付き合いがよくなく、奇妙になり、人生観・道徳観において常人と異なるため(……)一般的な社会的心理や社会秩序と協調できない。」「思春期の男の子や女の子は(……)同性愛者のセクハラに警戒・識別・抵抗しなければならない。」「同性愛のもう一つの危険は、各種の伝染病と性病にかかりやすいことである」とも述べていました(p.61-63)。

編集責任者に抗議、改訂を約束させる

『青春期, 請家長同行』はそれほど広く販売されなかったようですが、それでも、この本を手に入れた阿強さんが、自分のミニブログ(微博、「中国版ツイッター」とも呼ばれる)で問題点を指摘し、8月26日には自らのブログ「夫夫生活」でも同様の批判をして、本を回収するよう要求しました(2)。彼の指摘を受けて、他のさまざまな人からも批判の声が上がりました(3)

8月27日には、「同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)」(阿強さんも執行委員の1人)の保護者18名も、連名で杭州市教育局に手紙を出して、本を回収するように求めました(4)

8月29日には、同性愛者の組織である「浙江愛心工作組」の責任者の王龍さんとボランティアの「哥」さんが、杭州市教育科学研究所に赴いて問題を指摘しました(5)。そして、9月2日には、編集責任者で、杭州市教育科学研究所の党委員会書記で、副所長でもある韓似萍さんと面会することができました。

2時間あまりの意見交換の後、韓書記は、自分は同性愛についてあまり知らなくて、本の中の同性愛に関する記述の大部分は抜き書きだったと率直に認め、お詫びをすると述べました。彼女は、12月に出る第2版では、同性愛に関する差別的な個所などを削除するなどの改訂をし、その改訂を通じて、学生や保護者、教育関係者に同性愛についての科学的な情報を伝えたいと述べました。

彼女は、また、同性愛者の人々への理解を深めるために、座談会などの方法で、大学や高校・中学の同性愛の学生の意見を広く聞きたいと言い、王龍さんたちに男児の青春期教育のシンポジウムに出席してもらうように求めました(6)

座談会で詳しく説明、理解を深めさせる

シンポジウムのほうはどうなったのか分かりませんが、王龍さんたちは、11月11日、韓書記の招きで、性的指向とトランスジェンダーの問題についての座談会(「中国性学会青少年性健康教育専門委員会座談会」という形で行われたようです)に参加しました。

座談会には、浙江愛心工作組の王龍さんのほか、ゲイグループ「杭州同志」(サイト)や「ヒマワリの花開く杭州LGBT」(ブログ「向阳花开•杭州LGBT」、豆瓣「向阳花开•杭州」)のメンバー、「クィアフォーラム」(酷儿论坛)というサイトの管理者、LGBTの高校生のボランティア、台湾から交流にやってきていたボランティアなど、多くの人々が参加しました。性教育が専門の北京大学の徐振雷副教授も来ました。

座談会は、午後7時半から9時40分ごろまでおこなわれました。最初は、王龍さんや徐振雷副教授が、「同志」という語の起源や「性的指向と性別とを混同してはならない」といったところから話を始めて、いろいろ説明したようです。しかし、それだけでなく、参加者が、自分や自分の身の回りの経験、たとえば保護者や教師の受容や理解のこと、さまざまな差別やいじめについて語ったことが非常に効果的で、全体として成功したとのことです(7)

私は、中国では既に2001年には、同性愛は「中国精神障害分類と診断標準」から削除されて病気とは見なされなくなったにもかかわらず、いまだにこうした認識の性教育の指導書が作成されたことにまず、驚きました。しかし、それとともに、今回、同性愛者をはじめとしたLGBTの人々の幾つもの草の根のグループが機敏に反撃して改訂を勝ち取り、党の書記との座談会に参加するに至ったことも強く印象に残りました。

(1)淡蓝网盘点:2012年中国十大同志新闻」淡蓝网2012年12月26日。
(2)阿強「来看看杭州教育局编发的“恐同”书籍」夫夫生活2012年8月26日。
(3)杭州性教育书涉嫌歧视同性恋 网友呼吁召回」淡藍網2012年8月26日、「通稿:杭州教育局力推的图书被指内容公开歧视同性恋」夫夫生活2012年8月26日、「杭州教育局力推的图书被指内容公开歧视同性恋」愛白網2012年8月26日(←この中の写真に、『青春期, 請家長同行』の原文が鮮明に写っています)。
(4)同性恋亲友会多位家长写给杭州市教育局的建议信」同性恋亲友会.PFLAG China2012年8月31日。
(5)同志哥「前往杭州市教育科学研究所沟通《青春期请家长同行》教材不妥之处的收获 」杭州同志2012年8月29日。
(6)杭州性教材被指歧视同性恋 主编表达歉意」淡藍網2012年9月6日、「中国性教育图书被指歧视同性恋 权益组织抗议」愛白網2012年9月1日(来源:荷蘭在線)。
(7)この座談会については、参加者の「同志哥」によって(私自身もまだちゃんと読めていないほど)詳細な総括がなされています (「2012年11月11日杭州市教科所性倾向问题座谈会小结」向阳花开•杭州的日记2012年12月19日。座談会の参加の呼びかけは、同志哥「[同言碎语] 杭州市教科所同性恋问题社区座谈会」2012年11月10日)。

4.湖南長沙で初の同志パレードが差別反対を訴えた

→本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」参照。

5.女性同性愛者の献血の禁止令は解除されたが、男どうしで性行為をする者はまだ認められない

→本ブログの記事「中国、女性同性愛者の献血禁止を撤廃」、「女性同性愛者らの組織『同語』、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘」参照。

6.10人の同性愛者の母親が公開状を出し、立法によって性的指向の差別を禁止するよう訴えた

3月8日の国際女性デーに、各地の「同性愛者の母親」が、「同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)」のブログに公開状を発表して、全国人民大会の代表と全国政協の委員に向けて、立法によって子どもたちが差別を受けないようにすることを求めました。

尊敬する全国人民大会の代表と全国政協の委員へ

私たちは全国各地の、子どもが同性愛者である、「同性愛者の母親」と呼ばれる者たちです。私たちの子どもは、性的指向が同性であるために、入学や就業の過程でしょっちゅう差別をされている(学校から退学を求められた子どもさえいる)ために、心に大きな傷を負っており、保護者達も心を痛めているのに、助けを求めるところがありません。

社会学の常識では、同性愛者は人口の3~5%を占めています。すると、中国には約6000万名の同性愛者がいて、その保護者は約1億2000万人いることになります。同性愛者の保護者として常に苦慮し心配しているのは、子どもが入学や就職をしたときに、法律的な保証がないために、差別をされることです。実際、国内の多くのところで、同性愛者が社会的差別が原因で自殺する悲劇が起きています。中国の大多数の家族は一人っ子なので、子どもがいなくなると、家族が破壊され、希望がなくなってしまいます。

私たちの子どもは、性的指向以外は、大多数の人とまったく違いはなく、善良で、自立しており、家族に思いやりがあって、国を愛しており、それぞれの職業でこの国を建設するために役割を発揮しています。けれども、いささかの人の差別によって、彼らの大多数は、家族や友人にも自分が同性愛者であることを言うことができず、生活は圧迫され、心理的・精神的にも苦しめられています。私たちの子どもが社会で生活するには、家族の理解と受容だけではまったく不十分であり、法律を制定して、入学と就職の際に、性的指向によって差別されてないようにしてこそ、私たち保護者は安心できるのです。

私たちは、国家が人種・肌の色・性別・性的指向・宗教・身長・年齢・体重などに関する差別をすることを禁じる内容の「反差別法」をできるだけ早く制定することを提案いたします。反差別法は、私たちの同性愛の子どもを差別から保護するだけでなく、他の弱い立場の人々をも保護することができます。

私たちは、全国人民代表大会の代表と政治協商会議の委員に、1億2000万の「同性愛者の保護者」の声に関心を持ち、耳を傾け、6000万の同性愛者の平等と尊厳に対する渇望をその身になって考えていただき、できるだけ早く「反差別法」を制定していただくように訴えます。

(「10位同志母亲致全国人大代表和全国政协委员的一封公开信」同性恋亲友会.PFLAG China2012年3月8日)

7.北京:同性愛の恋人がバレンタインデーに結婚の登記をしようとしたが、やんわりと断られた

登記所の係員にはやんわりと断られたけれども、登記所の外でキスをして、人々にアピールをしたということです。

資料:「北京:同性恋情侣情人节登记结婚被婉拒」2012年2月14日(来源:苹果日报)。

8.華中科学技術大学の学長:大学は同性愛の学生を差別しない

昨年1月、華中科学技術大学の学長の李培根さんが、学生と交流会をしたときに、学生から同性愛について尋ねられて、「我々の学校では、まだこの問題を討論していないけれども、社会全体が同性愛も理解できるようになり、少なくとも容認する態度になった。我々が若い時には、同性愛は違法だったが、今は時代が変わった。世界の多くの国々が同性愛に対して理解する態度を取るようになった。一般の民衆も以前は反感を持っていたけれども、現在は容認できるようになった。私たちの学校は同性愛を差別していない」と答えたという話です。

しかし、この程度の話が「10大ニュース」の一つなのだということは、まだ大学内でも同性愛者差別は深刻だということを意味しているように思います。

資料:「华中科技大学校长:学校不会歧视同性恋学生」淡藍網2012年1月5日(来源:武汉晚报)。

9.仏山:84歳の退職幹部が性転換をしようとし、トランスジェンダーの権益の保障を望む

10.同性愛の夫が騙して結婚したことを認め、成都の高学歴のゲイの妻が悲しみと憤りで自殺した

910については、本ブログの記事「『第5回(2012年)中国10大セクシュアリティ/ジェンダー事件批評』」の57参照。

なお、私は、上の10大ニュース以外に、以下のニュースも重要だと思いました。

新版の『現代漢語辞典』が、「同志」の語義の中にセクシュアル・マイノリティなどの意味があることを掲載しなかった

新版の『現代漢語辞典』にも、「同志」の語義の中に、「セクシュアル・マイノリティ」(「同性愛者」「ゲイ」「LGBT」と訳したほうがいいことも多いですが)があることが掲載されませんでした。新版には、「宅男」(おたく男)、「宅女」(おたく女)のような新語が採録されたことも話題になったのですから、「同志」の語義の中にそうした意味が掲載されていないのは不合理なように思います。

資料:「新版《现代汉语词典》拒收录“剩男剩女”等词」網易新聞2012年7月15日(来源:央視)、「《现汉》中无“同志”,江蓝生解释“雷人”」荷蘭在線2012年7月16日。

北京紀安徳相談センターが「中国のLGBT組織 合作と発展フォーラム」を開催し、多様なLGBTが集まり、多元的な議論がおこなわれた

6月16日-17日に北京紀安徳(ジェンダー)相談センターが開催した「中国のLGBT組織 合作と発展フォーラム」では、LGBT団体の協力や発展において直面している困難や問題、LGBT運動の理念・戦略・方向についての討論がおこなわれました。全国から53団体、23地区、80人あまりのLGBT組織と個人が出席したということです。

参加人数はそれほど多くないかもしれません。しかし、北京紀安徳相談センター執行主任の魏建剛さんが、歓迎のあいさつの中で、「障害者のセクマイ、FTMとMTFの両方を含むトランスジェンダーの人々、ゲイの妻、同性愛者の母親、SMとセックスワーカー団体の代表を迎えることができて、大変にうれしい」と語っており、さらには老人の同性愛者やバイセクシュアルの代表、新疆やチベットの団体もいらっしゃったそうです。

このように非常に幅広い人々が参加して、「多元的な対話」がおこなわれ、そのうえで相互の協力が模索されたことが、このフォーラムの特徴のように思います。

済南Les工作組のTonyさんは、「皆さんはLGBT団体の指導者なのだから、私が次に来るときには、皆さんに『トランスジェンダーとは何か』という知識を普及しなくてもよいようになることを希望する」と訴えました。また、大連障害者同志ホットラインの盲人の韓震さんは、「私にできるかもしれないことは、皆さんに障害者のセクマイという集団の存在を見てもらうことだ」と述べ、レズビアン団体の「同語」の徐玢さんも、LGBT運動の多元化の必要性を説きました。

設けられた分科会も、「同志運動とジェンダー運動の協力」「周縁の地区での同志運動の発展」「青少年同志組織の発展」「LGBT組織の中の周縁グループ」「エイズ防止運動と同志運動の協力」「異性愛者と同性愛者の協力」といったものでした。こうした分科会では「激烈な討論と誠実な展開」がおこなわれたそうで、このフォーラムが意欲的・挑戦的なものであったことがうかがえます。

資料:全体のまとめは、「2012中国LGBT组织合作与发展论坛 新闻稿」北京纪安德咨询中心サイト2012年6月20日、「2012中国LGBT组织合作与发展论坛召开」同志亦凡人(内容は上と同じだが、写真入り)。さまざまな議論を報告しているのが、王浩「2012中国LGBT组织合作与发展论坛 观察报告」北京纪安德咨询中心微博2012年6月21日。

長沙市で中国大陸初のLGBTパレード

11月24日、湖南省長沙市で、中国大陸初のLGBTパレードがおこなわれました。

このパレードは、午後2時半から、21人(1)(「30人あまり」という報道もある(2))が、黄色や白のTシャツを着て、レインボーフラッグやさまざまな訴えを書いた紙片を持って行進しました。彼(彼女)たちは、南湖大市場を出発して、五一大通りを経由して長沙駅までパレードをし、道行く人にレインボーフラッグなどを配布しました。

記事の中の写真(記事1記事2)を見ると、Tシャツには、「差別反対」とか「カミングアウトしよう」といった言葉が書かれており、紙片には、「Yes.I am gay」、「性は媒介物にすぎない。性別とは無関係だ」、「同性愛≠異類[異類:人類とは種を異にするもの]」といった主張が書かれています。

この写真この写真からは、まさにパレードをしている様子がよくわかります。

パレードの組織者である「向小寒」さんは、事前に準備した300本余りのレインボーフラッグと100余りの記念品は全部なくなり、少なくない市民が支持し、いっしょに記念写真に収まったと述べました。

ただ、紅網の記者が、レインボーフラッグを受け取った20人近くの人に尋ねてみると、中年男性の1人が、これは同性愛を示す旗だと答えましたが、他の人はレインボーフラッグの意味を知らず、スローガンもよく見えなかったと述べました。

青年たちの中には、レインボーフラッグを受け取った後、騒いだりお互いにからかったりしていたのに、記者がインタビューすると、「よく知らない」と口々に言った人たちもいるようです。また、インタビューに応じた人は、みな「同性愛を差別したことはない」と強く言ったということです。

初めてのパレードであり、なかなか困難な条件の下でおこなわれたことがわかります。

パレードに参加した中南大学の学生の「小邪」さんは、自分はけっして性的指向を隠さないけれど、もしパレードのときに知り合いの先生や同級生に会ったら、隠れるかもしれないと述べました。

発起人の「向小寒」さんは、この活動は、先週長沙の公安部[警察]に届けており、これは、大陸の都市の初めての同性愛差別反対のパレードのはずだと語ったということです(3)(べつに車道をパレードしたわけではありませんし、日本のデモのように警官が交通整理をするわけではないのですが、無事におこなわれたことはたしかです)。

ある同性愛者は、同僚にからかわれたことがあって、不快だったと語りました。同性愛の教師やソーシャルワーカーは昇進できない、と指摘する人もいました。同性婚を合法化してほしいと言う人もいました。

沿道の一般市民も、自分は同性愛者ではないが、同性愛者は差別されてはならないと語ったと書いてある記事もあります(4)

なお、今回のパレードについて、メディアは「同性愛街頭游行」と報じており(といっても、報道したメディアは非常に少ないのですが)、記事中にも「同性愛者」という言葉しか出てきません。しかし、写真を見ると、扮装から見ても、トランスジェンダーかな? と思われる人もおり、メディアは一般の人の理解のことを考えて「LGBT」とか「同志」という言葉を使っていないだけの可能性(あるいはメディア自体がLGBTのことを同性愛者としてしか理解していない可能性)も大きいと思います。また、このパレードは、まず間近いなく、外国や台湾、香港のパレードに想を得ていると思いますので、「LGBTパレード」と書かせていただきました。

(1)湖南长沙同性恋街头游行 路人接旗不认“同”」紅網2012年11月24日。
(2)【中华论坛】逆天了! 长沙同性恋街头游行(组图)」中华网论坛2012年11月24日。
(3)以上は、(1)に同じ。
(4)以上は、(2)に同じ。

※写真は、「湖南长沙同性恋街头游行 呼吁公众消除歧视」现在新闻2012年11月26日(来源:现在网-长江商报)、「中国同性恋志愿者街头游行呼消除歧视」第一金融网2012年11月25日(来源:狐捜)にも多い。

北京クィア映画祭についての映画が、関西クィア映画祭2012で上映されます

北京クィア映画祭(北京酷儿影展)については、本ブログでも、簡単にご紹介してきました(「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」「第5回北京クィア映画祭は当局に中止を命じられるも、ゲリラ的に開催」)。

きたる関西クィア映画祭2012(大阪 9/15~17、京都 10/12~14)の中で、「わたしたちの物語 ~ 北京クィア映画祭と十年間の『ゲリラ戦』(我们的故事――北京酷儿影展十年游击战)」(監督:楊洋 2012年)が上映されます。日本語字幕付です。

この作品は、10月13日(土)の11:30(開場11:10)から京大西部講堂(アクセス)で上映されます。42分間の作品です。

以下の制作者による作品紹介が、関西クィア映画祭2012のサイトに掲載されています(邦訳は福永玄弥さん)。

▼開催直前にキャンセル!? 性への偏見と検閲の残る北京で、何度も最大級のトラブルに見舞われる。場所を変え、名前を変え、彼らは闘い続けた。彼らの声がつなぐ、その先は。
▼このドキュメンタリーは、十年間にわたる「ゲリラ戦」をたたかいぬいてきた北京クィア映画祭の物語だ。
 2001年に北京大学で生まれた同映画祭は、中国国内でジェンダーやセクシュアリティをテーマにした唯一の映画祭として非政府団体により運営され、過去十年のあいだ五回にわたり開催されてきた。性的少数者の権利について公に語ることが政治的に困難であり、かつメディア検閲の問題がある中国において、映画祭の歴史はつねにトラブルとともにあった。開催地を北京市西部より東部へ、あるいは都市部から郊外へと「戦線」を転々と移してきた同映画祭は、昨年2011年にはついに北京市内への「凱旋」を果たしたものの、政府の干渉と検閲から逃れるためにゲリラ作戦の手法をとらざるをえなかった。
 本作品は、過去の記録映像をもちいて同映画祭の歴史を回顧するとともに、それにたずさわってきたわたしたちの物語を語る試みでもある。


映画の字幕も福永玄弥さんです。福永さんは、自らのブログでも、この作品を紹介する連載を始めておられます(「『わたしたちの物語 〜 北京クィア映画祭と十年間の「ゲリラ戦」』(連載1)」「わたしたちの敵はどこにいるのか?(連載第2回)」)。

チケットは、この作品を見るだけでしたら、「1回券」(当日1600円、前売1300円)を購入すればいいようですが、プログラム一覧を見ると、他にも興味深い作品が多いようですので、「3回券」や「京都パス」、「関西フリーパス」などを購入するのもいいかな、と思います(「チケットについて」参照)。

その他、詳しくは関西クィア映画祭2012のサイトを見てください。

女性同性愛者らの組織「同語」、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘

すでに本ブログで、この7月から中国が女性同性愛者の献血禁止を撤廃する新しい規定を施行したことや、それまでの女性同性愛者たちの運動についてはお伝えしました。

この件に関しては、その後も中国のメディアで取り上げられているのですが、その中では、男どうしで性行為をする人(MSM)については、相変わらず一律に献血が禁止されていることも話題になっています(1)。それらの報道の中には日本でも紹介されたものもありますが、それをもとに、2ちゃんねるでは、「男性同性愛者の献血、中国では禁止 (´・ω・`)『お前らもゲイの血なんかいらないよな』」とか、「『エイズが染るかも知んないけど差別はいけない』と専門家・・男性同性愛者の輸血解禁訴える」といった差別的なスレッドが立てられたりしていますので(そもそも中国で引き続き禁止されているのは、あくまでMSMの献血であって、男性と性行為をしない男性同性愛者の献血は禁止されていません。また、「エイズが染るかも知んないけど差別はいけない」などと言っている専門家がいるという報道はまったくありません。完全に捏造です)、今回は、この件に関する議論を紹介します。

この件に関しては、7月10日、中国の女性同性愛者らのための民間組織「同語(同语)」が見解(2)を発表して、女性同性愛者の献血が可能になったことを歓迎するとともに、男性どうしで性行為をしたことがある者の献血を一律に禁止していることを批判しました。

その声明の内容を以下、ご紹介します(抄訳であり、はしょっている部分もあります)。

2012年7月1日、衛生部と国家標準化管理委員会が共同で発布した「献血者健康検査要求」(GB 18467-2011国家基準)が正式に施行された。この基準は、もとのGB 18467-2001(1998年発布)に替わるものであり、「同性愛」問題において重大な修正をした。新しい国家基準は、ある特定の身分集団(麻薬を吸引したことがある者、同性愛者など)に対する概括的な禁止令を撤廃し、それに代わってハイリスクな行為を規制したのであり、明確な進歩性を持っている。

新しい国家基準の5.2.2条「安全な献血者の重要性」によると、「リスクが高い行為をおこなう献血者、たとえば静脈注射による麻薬中毒者だったことがあるとか、男どうしの性行為とか、血液によって伝染する病気(エイズ・C型肝炎・B型肝炎・梅毒など)の危険がある者とかは献血してはならない」。この条項を、もとの国家基準の4.5.3条の「エイズにかかりやすいハイリスクグループ、たとえば麻薬を吸引したことがある者、同性愛者、多くの性のパートナーがいる者」の献血を禁止していた規定と比べると、大きく改善されている。新しい国家基準は、同性愛者の献血を一括して禁止していたのを、男どうしの性行為をする者の献血禁止に改めて、女性同性愛の献血禁止令を緩めた。このことは、同性愛者差別をなくし、女性同性愛者の献血を励まし、血液不足を緩和する上で有利である。

同性愛・バイセクシュアル・トランスジェンダーの者の権益を唱えている民間組織の「同語」は、このたびの「献血者健康検査要求」の改正を歓迎する。私たちは、同性愛者という身分に対してではなく、リスクが高い行為に対して規制をした新しい献血政策は、中国社会の同性愛者たちに対する近年の認知の進歩を体現していると考える。

しかし、新しい政策には、なお若干の不十分な点がある。それは、男どうしで性行為をする者(MSM)に対する永久的な禁止令は、依然として性的指向に対する差別である疑いがあることである。

世界には、「男どうしの性行為」に対する献血を禁止、あるいは延期[原文が「拖延」なのでこう訳しましたが、性行為以後、検査でHIVに対する抗体が検出できない時期が終了するまでは献血を禁止するということ]する政策が広く存在している。しかし、そうした政策も、時代や科学技術の変化などの要因によって、たえず変わってきた。

イギリスもかつては男どうしの性行為に対しては、終身、献血を禁止していたけれども、2011年、この規定は改定された。イギリス保健省のサイトの2011年9月の情報によると、「血液・組織及び臓器安全諮問委員会」は、事実にもとづいて審議をして、男どうしの性行為の永久の献血禁止令を12ヶ月の延期政策に改める決定をした。新しい法律の規定は、過去12ヶ月間に男どうしで性行為をした人は、コンドームを使用したか否かにかかわらず、献血を禁止するというものである(3)。オーストラリアでは、男どうしの性行為に対する献血政策は、つとに2000年に永久禁止から1年間の延期政策に変わっている。2004年には、Michael Cainという名の男性同性愛者が、その政策は差別の疑いがあるという理由で、オーストラリア赤十字を裁判所に訴えた。裁判所は最終的には原告の請求を退けたけれども、時代の発展にしたがって献血政策は不断に審議・修正されなければならないことは認めた。この態度は、オーストラリア赤十字によっても採用された。

現在、南アフリカや日本などの国は、男どうしの性行為に対して、6ヶ月の献血延期政策をとっている。これが、世界中で最も短い献血延期の期限である。そして、EU・イタリア・スペインなどの法律には、男どうしの性行為に関する規定はなく、リスクが高い行為をした人の献血を禁止することを強調しているだけである。

男どうしの性行為をした者の献血禁止令は性的指向による差別と関わりがあるので、その禁止令の改正はなお各国で激しく議論されている。その改正方法には主に2つで、第一は、献血禁止期間を短縮することである。第二に、「男どうしの性行為」という言葉をなくして、かわりに「リスクが高い行為」にすることである。各国で状況が異なるために、この政策の変化のプロセスと方法は完全には同じでないけれども、検査技術の進歩とエイズ流行グループの変化にともなって、献血に関連する禁止令も時代とともに進化しなければならない。「同語」は、中国でも、男どうしで性行為をした者に対する終身の献血禁止令が、時代と科学技術の進歩にしたがって、最終的には過去のものになることを期待している。


他にこうした声明を出している同性愛ないしLGBT関係の団体は見当たらなかったのですが(献血それ自体は、同性愛者にとってそれほど切実な要求ではないからかもしれません)、さまざまな差別に反対する活動をしている陸軍さん(北京益仁平センター常務理事)も、新しい政策が女性同性愛者の献血を認めたことについては評価しつつも、男どうしの性行為をするものを排除したことは、「欠陥」であると指摘しています(4)

この件に関しては、「同語」の見解の中にある「第二」の方法をとるのが一番合理的でしょう。男どうしの性行為でも、セイファーセックスをしている人もいますし、男女間の性行為でも、リスクが高い性行為をしている人もいるわけですから……。

(1)我国女同性恋已可献血 有性行为男同仍被禁」新浪網2012年7月10日(来源:金陵晩報)、この記事の翻訳が、「ゲイの献血禁止 レズの献血禁止令解除 新『献血者健康検査要求』実施――中国」萍水園~KIDのKitschなブログ~2012年07月10日、翻訳ではないが、この記事がもとになっていると考えられるのが、「新献血法、女性同性愛者の献血OKに」人民網日本語版2012年7月10日。また、「解禁“女同”献血引议 专家称女同性恋者献血无危害」鳳凰網2012年7月11日(来源:京華時報)もあります。
(2)【同语发布】解读中国献血新国标:女同性恋献血禁令历经14年终获解除,男男性行为规范有待进一步改进」同语发布 2012年7月10日(同语サイト2012年7月11日掲載)。
(3)原文にはここに注はありませんが、その状況がわかる日本語記事として、「同性愛者の男性にも、献血の機会を提供」(Onlineジャーニー2011年9月13日)があります。
(4)专家称禁男同献血操作性低 解禁女同为接轨国际」人民網2012年7月16日(来源:京華時報)。この人民網の記事の出典である「禁男同献血操作性低 解禁女同为接轨国际」(京華網2012年7月14日)をもとにして書かれたのが、「男性同性愛者の献血禁止とその理由=専門家が差別撤廃訴え―中国」レコードチャイナ2012年7月16日です。ただし、レコードチャイナの記事は、「男性同性愛者」と「男どうしで性行為をする者」とを混同しているという点で、原文の記事とも、社会の現実とも異なっています。

[2012年7月18日追記] 2012年7月16日付レコードチャイナの記事の出典が誤っているというご指摘をコメント欄でいただきました。深くお詫びするとともに、記述を訂正させていただき、レコードチャイナの記事についての記述を、注(1)から注(4)に移動させていただきました。

中国、女性同性愛者の献血禁止を撤廃

中華人民共和国衛生部と中国国家標準化管理委員会が昨年12月に公布した「献血者健康検査要求(献血者健康检查要求[GB18467-2011])」(献血できる条件を定めた規定)が、今年7月1日から施行されました。

以前の規定は、「同性愛者」の献血を禁止していました(献血者健康检查要求[GB18467-2001]の4.5.3)。しかし、この7月1日から施行された新しい規定は、「同性愛者」という身分には言及せず、「男どうしで性行為をする(男男性行為)」者の献血だけを禁止しています(5.2.2)。したがって、新聞も報じているように、少なくとも「女性同性愛者は献血できる」(1)ようになったわけです。

女性の同性愛者とバイセクシュアルの組織のリーダーである嫻さん(ニックネーム)も、この決定を歓迎しています。嫻さんは「以前も同性愛者という身分を隠して献血することはできたけれども、それでも新しい政策は意義がある。それは、私たちの尊厳と献血の差別と関係している」と述べています(2)

以下、この件に関する、これまでの同性愛者の動きを振り返ってみます。

2008年

嫻さんは、2008年の四川大地震の時に、同性愛者は献血できないと知らされたとのことですが、2008年の「中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」(ゲイサイト淡藍網による。以前ご紹介しました)の6番目も、この件を取り上げました。

6.四川大地震後、同性愛者の献血の話題がメディアの関心を集めた原文

5月12日、四川地区で大地震が起き、大量の負傷者への輸血が必要になったため、血液が不足した。同性愛者の献血が話題になり、同性愛者グループの内部でも多くの討論がなされ、若干のメディアの関心を引いた。

6月2日、インドの英字紙Daily News & Analysisの記事“No gay blood in quake aid”(2008/06/02)は、以下のように伝えた。中国のレズビアン雑誌《Les+》は、多くのレズビアンが献血をしようとしたのに、「同性愛者はエイズのハイリスクグループだ」という理由によって、珍しいタイプの血液の人さえも献血を拒否されたこと伝えた。北京のレズビアングループ「同語」は、性的指向を理由として献血を拒否する規定を改正するように訴えた。《Les+》は、レズビアンはけっして感染のハイリスクグループではなく、エイズウイルスやB型肝炎を含めて、ローリスクグループであることを指摘した。この問題に関してはネットで議論になり、同性愛者の献血禁止については賛否両論が出たが、ある人は「血液の安全を保証するには、厳格な血液検査がカギである。」「それなしに献血を禁止するのは、同性愛者に対する差別である」と述べた。



2009年

これも以前に本ブログでご紹介しましたが、2009年5月には、広西レズ聯合社(Guangxi Les Coalition)のレズビアンたちが、女性同性愛者の献血禁止に抗議する意味を込めて、集団で献血をしました(公然と「私たちはレズビアンだ」と名乗って献血したわけではなく、国際反ホモフォビア・トランスフォビア・デーのワッペンを付けたりして献血したということです。Mis S「5.17“無声的抗議──広西蕾絲聯合社拉拉集体献血”」[写真あり](2009年5月19日)、本ブログの記事「中国各地で反ホモフォビア・トランスフォビア・デーの活動」参照)。

2009年7月には、献血を拒否されたレズビアンのLi Yu(李玉?)さんが、差別をなくすことを求めるインターネット署名を募ったところ、少なくとも540名のレズビアンが署名したと報じられました(3)

2010年

彦暁さんのブログ「二人の男の勇気(两个男人的勇气)」が発表した「2010年中国10大同性愛ニュース」(ゲイサイト「淡藍網」にも転載。2010年中国十大同性恋新闻事件)の11番目には、男性同性愛者の献血問題が出てきます。

10+1.同性愛者が献血を拒否され、血液センターの差別を訴えた

6月6日、同性愛者の王梓政が北京西単図書ビルディングの献血スポットで献血しようとしたところ、「『献血法』の規定により、献血できない」と言われた。また、衛生部が出した「献血者健康診断基準」にも、「献血を受ける人の安全を保証するために、同性愛者には献血しないよう訴える」という一条がある(4)

4日後、32歳の王梓政は告訴状を持って海淀法院に行き、北京赤十字血液センターに対して、彼の献血を許可することと、彼の献血を拒否したことについて公に謝罪することを要求した。王は、単純に性的指向だけによって献血できるか否かを判断することは、非常に非科学的であって、自分は公民として、憲法と法律が賦与したすべての合法的な権利と義務を有していると考えた。

海淀法院は一カ月後、「上級の法院の指示を仰いだ結果、立件しないと決定した」と表明したけれども、この事件はそれでも私たちが銘記するに値する。同性愛の献血についての議論は、すでに長い間続いているが、同性愛者が公に法律的支持を求めたのは初めてであり、そのメルクマールとしての意義は忘れられるべきではない。


(関連記事:「中国の裁判所、ゲイ男性の献血訴訟を却下」みやきち日記2010年7月9日)。

今回、新しい「献血者健康検査要求」が出された具体的な背景はわかりませんが、以上のようなさまざまな同性愛者(とくにレズビアン)の動きも一つの要因ではないかと思います。

[追記] 本ブログの記事「女性同性愛者らの組織『同語』、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘」も併せてご覧ください。

(1)献血者健康检查要求新国标将实施 7月1日起60周岁可献血」『城市晩報』2012年5月29日。『人民日報』の記事は、女性同性愛者には言及していませんが(「卫生部发布新规定:无偿献血年龄可延长至60岁」新華網2012年7月3日)、レズビアン系やLGBT系のサイトは、『城市晩報』の記事を、「女性同性愛者が献血できるようになった」という見出しを付けて転載しています(「【拉拉资讯】献血者检查新国标将实施 女同性恋者可献血」右域拉拉女同资讯2012年6月6日、「献血者健康检查要求新国标将实施 女同性恋者可献血」愛白網2012年6月6日)。また、ザ・タイムズ・オブ・インディア(世界最大の英字紙)やデイリー・ビースト(ニュースサイト)も、「中国がレズビアンが献血することを認めた」という見出しで報じています(次の注2および「China Allows Lesbian Blood Donors」The Daily Beast2012.7.6)。
(2)China permits lesbians to donate bloodThe Times of India,2012.7.3→中国語訳付き「中国允许女同性恋献血」三泰虎2012年7月3日。
(3)Lesbian donors take action over being shunned”By Shan Juan (China Daily)2009-07-28→(中国語訳)「禁止女同性恋者献血规定亟待修改」中国日報網2009年7月28日。そのほか、China Dailyの記事をもとにした記事として、「中国で女性同性愛者が抗議活動―『法により献血禁止』」サーチナ2009年7月28日、「中国のレズビアンたちが請願、『わたしたちにも献血させて』」AFP2009年7月29日。
(4)1997年に公布され、1998年に施行された「中華人民共和国献血法(中华人民共和国献血法)」自体は、献血者には健康検査をする必要があると述べているだけですが、同時に施行された「献血者健康検査基準(献血者健康检查标准)」の六の18が同性愛者の献血を禁じていました。

※この件については、「中国の女性同性愛者献血差別について(作成中)」(RyOTAの日記 2009年8月3日)もご参照ください。日本でも1990年代まであった女性同性愛者献血差別や、世界の男性同性愛者の献血(差別)についての規定もまとめてあります。

学校における性的指向などによるいじめに関する調査

5月17日は、国際反ホモフォビア・トランスフォビア・デー(International Day Against Homophobia & Ttansphobia, IDAHO)(Wikipediaの説明)でしたが、この日を前にした5月14日、中国大陸初の、学校でのホモフォビア・トランスフォビアについての調査結果が発表されました。

この調査をおこなったのは、「愛白文化教育センター(爱白文化教育中心)」と「北京LGBTセンター(北京同志中心)」と「広州『同城』コミュニティー(広州“同城”社区)」という3つのLGBTのための民間団体です。今年4月から5月にかけて、性的指向やジェンダー身分による学校でのいじめについて、インターネットをつうじてオンライン調査をおこないました(1)

調査結果(2)

この調査では、421名の初級中学(日本で言う中学)、高級中学(日本で言う高校)、大学、職業中学の学生から回答を得ました。回答者の4/5近くは、同性愛者かバイセクシュアルでした(「性別」としては、男性50%、女性47%、トランスジェンダー1.4%、不明1.2%)。

回答内容は、以下のようでした。

性的指向やジェンダーによって学校で何らかのいじめにあったことがある―77%
・言語による攻撃(あだ名、嘲笑、悪意のからかいなど)にあった―44%
・身体に対する攻撃(殴る蹴る、平手打ち、押したり足を引っかけたりして倒される、髪の毛を引っ張られる) にあった―10%
・同級生か先生にセクハラされた(服を脱がされる、秘部を触られる、裸の写真を撮られる)―7.6%

学校でのいじめによって、学業上マイナスの影響があった―59%
・退学に追い込まれた―3%
心理的・精神的にマイナスの影響があった―63%
・憂鬱になった―42%、・憤怒、報復を考える―26%、・不眠―19%、・長い間おじけ恐れる状態―16%
身体的に軽傷・重傷を負った―5%
大酒を飲んだ、自傷した、自殺を試みた、感情の抑圧によって見知らぬ人と性行為をした―26%

いじめにあったとき、他の人のサポートを求めたことがある―33%
 そのうちの72%―関係が良い同年齢の人に助けを求めた

性的指向とジェンダー身分によるいじめをなくすためにやるべきこと(3つ選択、上位から)
・大衆的メディアが宣伝・提唱して反対する―76%
・国家の政策を改善して明確に禁止する―60%
・学校で関連するカリキュラムを開設する―44%
・学校にサポートグループを設立して、いじめに関心を寄せ、被害者をサポートする―43%

いじめの具体的な事例

この調査結果は、中国国内のマスコミでは、『南方都市報』が報じましたが(新浪網なども転載した)(3)、同紙は、学校内のいじめの実例として、以下の2人の方のお話を掲載しています。

○冰封さん(ゲイ)の場合

高校のときから寄宿舎住まいを始めた冰封さんは、学級委員長をつとめていたのですが、彼がゲイであることがわかったら、「変態、人妖、女みたいだ」と罵られるようになりました。それでも、冰封さんはみんなに認められようと努力したのですが、誰も彼の言うことを聞かなくなり、寄宿舎に帰ったら、机の上に「変態、ゴミ」といった文字がびっしりと書いてあったこともありました。

合唱コンクールの前の音楽の授業のとき、冰封さんはステージの上からみんなをまとめようとしたのですが、例によって、誰も言うことを聞きません。先生が来て、「このクラスは、男子が何人で、女子が何人なのか?」と尋ねると、ある男子生徒が「僕たちのクラスには、男子が22.5人と、女子が22.5人います」と答え、クラス全員がどっと笑いました。冰封さんは教室を出ると、グラウンドで号泣しました。その後は、彼はもうクラスの仕事をしなくなり、みんなに溶け込もうという努力もしなくなりました。

冰封さんは、当時は、人生には希望がないように感じ、高校3年になっても、大学に進学する気持ちにはなれませんでした。

○杉杉さん(レズビアン)の場合

杉杉さんは、今年大学を卒業したばかりの女性ですが、高校のとき、ガールフレンドへの手紙が見つかったので、家族に自分の性的指向をカミングアウトせざるをえなくなりました。それから4年間の同居期間中、杉杉さんの母親は、1週間に何度も彼女を殴るようになりました。机の上の電気スタンドで頭を殴ったために、杉杉さんに傷跡が残ったこともありました。

杉杉さんの母親は衛生学校の先生だったのに、「同性愛は病気だ」と思い込んで、彼女を精神病院に連れて行って、医者に診せました。医者も、母親の話を聞いて「性的指向を変える」薬を出したので、杉杉さんは怒って医者と口論をしたため、「同性愛の治療」からは逃げ出すことができました(中国でも、2001年には「同性愛」は、「精神障害分類と診断標準」から削除されて、病気とはみなされなくなったはずなのですが、実態としては、こうしたこともあるようです)。

けれども、家族は杉杉さんを監視するために、彼女の性的指向やガールフレンドとの交際を多くの先生に知らせたため、彼女のプライバシーは誰もが知るところとなりました。

その後、杉杉さんは、学校でさまざまな事実無根の噂を立てられ、同級生たちは、彼女が堪えられないような嘲弄とまなざしを浴びせました。杉杉さんは、男子生徒に、ガールフレンドが送ってきた写真を破かれ、便所に捨てられたこともありました。

杉杉さんは、以前は明朗な女子生徒だったのですが、同級生と話をしなくなり、ときには授業をさぼるようになりました。大学入試の数日前にも、母親は、杉杉さんとガールフレンドが連絡を取っているのを知って、刃物を持ち出して「死ね」と言い、もみ合ってるときに、杉杉さんは人差し指の動脈を切ってしまい、入試は失敗しました。

杉杉さんは復学しましたが、以前の同級生に「杉杉さんは、よく女子トイレに行って、盗撮をしている」というデマを流されました。杉杉さんは、全世界が彼女に背を向けたように感じ、どうしたら死ねるかを毎日考えるようになり、飛び降り自殺をしようとして止められました。その後も、いつもナイフで手の指を切るようになりました。

大学入学後は、同級生たちの思想が比較的開放的だったので、クラスの中でカミングアウトでき、同級生たちのとの関係も正常で、少しずつ暮らしやすくなりました。今は、できれば同性愛の団体に入って、現状を変えるために何かしたいと思っています。

大学ではLGBTのための団体が設立され始めているが……

2006年10月、中山大学に大陸初のLGBTのための正式の学生団体である「レインボー社(彩虹社)」が設立されましたが(本ブログの記事「同性愛者などの人権のための初の正式の学生団体」)、圧力がかかって、翌年には活動を停止しました。

といっても、必ずしも大学などに公認された正式の団体ではないようですが、2006年には、今回の調査をおこなったLGBTQの青年・学生のための「広州『同城』コミュニティー(広州“同城”社区)」や福建師範大学の「同心社」も設立されており、2009年には中国青年政治学院の「愛知社」が設立されました。2005年に設立された復旦大学の「知和社」は、ジェンダー全般に取り組んでいますが、LGBTに重点を置いているようです(4)

これらの学生の団体は、ミーティングや講座をはじめとしてさまざまな活動をしており(そうした活動については今度またご報告したいと思います)、大学では、少なくとも場所によっては、ある程度開放的な雰囲気もあるようです。

難しい中学・高校でのLGBTに関する教育、教師の研修に活路を見出す

しかしながら、広州「同城」コミュニティの責任者の豆豆さんは、「大学4年生でも、同性愛を理解していない人はまだ大勢います。まして高校や職業学校、インターネットを頻繁に使っていない中小都市や農村では、学校でのホモフォビアの状況はさらに深刻です。NGOなどのリソースを送り込むことも非常に難しいのです」と語っています。

愛白文化教育センターや広州「同城」コミュニティは、かつて北京と広州の高校で、研修や講座、サロンをやろうとしたこともあるそうですが、「大学に比べても、中学・高校で性教育を推進するのはまだ難しい」と「愛白」の責任者の江暉さんは語ります。数年前、江さんたちがボランティアの学生に活動ポスターを中学や高校の学校の中に張ってもらったところ、学校側が発見して、張った者を調査して処罰するように求めたそうです。

そうしたことがあったので、「愛白」は、その後は、高校の教師の研修のほうに力を入れるようになりました。たとえば、国家計画出産委員会の下級機関である「青リンゴの家」と協力して、中学・高校で性教育をしている先生や師範大学の学生の研修をしたそうです。また、今年8月からは、「愛白」と「同城」と北京LGBTセンターは、ユネスコと協力して、雲南で高校の先生の研修を始めるといいます(5)

もちろん日本でも深刻な問題

円山てのるさんが「日本での同性愛者の自殺予防対策の現状」(g-lad xx)で述べておられるように、最近、アメリカでゲイの少年の自殺が社会問題として報道されて注目を集めました。日本ではまだ社会問題として報道されていないものの、すでに「REACH Online 2005」という調査などで、セクシュアルマイノリティのいじめ被害や自殺未遂が多いことが明らかになっています。

円山さんも紹介しておられることですが、「REACH Online 2005」によると、ゲイ・バイセクシュアル男性の54.5%は、学校教育現場で「ホモ、おかま」などの言葉による暴力被害を受けたことがあり(3-4「いじめ被害、避難場としての保健室、性被害」)、65%はこれまでに自殺を考えたことがあり、15%前後は実際に自殺未遂の経験があった(3-5「心の健康状態―抑うつ、自尊感情―、自殺を考えたこと」)とのことです。また、「わが国における若者の自殺未遂経験割合とその関連要因に関する研究」でも、「セクシュアルマイノリティの自殺未遂率は異性愛者の約6倍に相当する」という結果が出ているといいます。

今回の愛白文化教育センターや広州「同城」コミュニティーによる調査は、中国でも同様の問題があることを明らかにしたと言えます。『南方都市報』に掲載されていた具体的な事例はひどいものですが、日本でも自殺に追い込まれる方が少なくないということは、その背景には驚くような実態がたくさんあることを意味しているのだろうな、と思います。

(1)調査票は「基于性取向、性别身份校园欺凌行为在线调查」愛白網、調査を始める際の呼びかけは、「【MY Action】同城&爱白 全国基于性取向、性别身份校园欺凌行为在线调查」"朋友公益"同城社区ブログ2012年4月18日。
(2)中国校园恐同调查发布 多数学生曾遭欺凌」愛白網2012年5月14日、「【MY News】同城与爱白的中国校园恐同调查数据在京发布」"朋友公益"同城社区ブログ2012年5月19日、「校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日、「调查显示:大陆校园内因性倾向遭欺凌现象堪忧」歐洲時報2012年5月14日。
(3)校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日。大陸以外ではマカオ日報が報じ(「內地校園性向欺凌普遍」澳門日報2012年5月15日)、Gay Star Newsも報じています(“Over three-quarters of Chinese gay students bullied at school”Gay Star News2012.5.17)。
(4)その他、たとえば、北京大学でも、CGSA-College Gay Student Allianceという団体が2004年に設立されて、北京大学への登録は批准されなかったものの、活動を続けていたそうですが、2006年には活動を停止したそうです(江晖「校园环境下LGBT学生的生存状态和活动空间」童戈・何晓培・郭雅琦・毛燕凌・郭晓飞合編『中国“同志”人群生态报告(一)』北京纪安德咨询中心 2008年 p.295-296)。
(5)以上は、「校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日。

LGBT報道のあり方を提案するハンドブック刊行

 昨年11月、レズビアンなどの組織(*)であるles+が中心になって、『LGBTメディア報道提案ハンドブック』を刊行しました。発行部数は「1000部」と記してありますが、最近、PDFでも全文が読めるようになりました(LGBT媒体报道建议手册)。このハンドブックは、「LGBTというテーマに関心を持つ中国のジャーナリストに対して適時に、正確な情報を提供する」ことを目指した冊子です。

 (*)正確には、「中国の拉拉(女同性愛、女バイセクシュアル、女を愛するトランスジェンダー)に向けた文化宣伝非営利民間組織」と記されています。

 ドメスティック・バイオレンスに関しては、すでに家庭内暴力反対ネットワークが2003年に「家庭内暴力報道専門準則(家庭暴力报道专业准则)」を作成していますし、ジャーナリストの研修のためのハンドブック(馮媛編著『媒体工作者培训手册』中国社会科学出版社 2004年)も作成されていますが、LGBTに関する報道についてのハンドブックが作成されたのは、もちろん今回が初めてです。

ハンドブックの内容

 このハンドブックの構成は、以下のとおりです。
 第1章 LGBTに関する用語の解説
 第2章 LGBTに関するFAQ
 第3章 中国のメディアの現在のLGBT報道の実際の状況
 第4章 ニュースメディアと探究する――何が社会的価値のあるLGBTの題材か
 第5章 LGBT関係のリソース

 第1章「LGBTに関する用語の解説」は、用語の解説にくわえて、外国のメディア(AP通信、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト)のガイドラインなども紹介しています。

 第2章「LGBTに関するFAQ」は、「常識篇」「科学篇」「法律篇」に分かれています。

 第1章と第2章は、2009年にレズビアンなどの組織「同語」が出した『同性愛ABC――ジェンダーと性的指向に関する基本的知識と問答(同性恋ABC――关于性别和性倾向的基本知识与问答[PDF])』と類似した個所が多いのですが(もちろんこの本については、参考文献として名前が挙げられています)、今回のハンドブックの方が詳しいです。

 第3章「中国のメディアの現在のLGBT報道の実際の状況」では、まず、「ジャーナリストの経験の分かち合い」として、以下の報道について、それぞれ、記者が自らの取材の経験について語っています。

 ・段吉玲「女人来提案 同性婚姻应该合法化?(女性からの提案 同性婚姻を合法化すべきか?)」網易2011年2月23日~3月16日…(李銀河氏の提案をめぐってさまざまな論者が議論)
 ・梅佳「中国同性恋者婚姻现状调查:期待合法化的繁华故事(中国の同性愛者の婚姻の現状調査)」『中国日報(China Daily)』2009年4月16日
 ・張鑫明「同志爱运动(同性愛スポーツ)」『体育画報(Sports Ilustrated)』2011年第2期(总第119期)1月21日…(ザ・ワールド・アウトゲームズという世界の同性愛者のスポーツ大会へ中国選手が参加したことについて)
 ・王小屋「我的孩子是同志(私の子どもは同性愛者です)」『心理月刊』2008年3月刊…(同性愛者とその親との関係について)
 ・蒋明倬「爱人同志」『南都週刊』2011年度第18期…(中国と世界の同性愛者の生存状態について)。
 ・麻冬曉[Joy Ma]「In China, Lesbians Try To Win Favor With Roses」National Public Radio2008年8月21日…(中国のレズビアンについて)
 ・唐小松「柏林,边缘人的都城(ベルリン、周縁人の都市)」「面对」2011年4月15日出版,GQSTYLE 春夏号、「躯壳:4位80后艺术家的自我想象(肉体:3人の80年代生まれの芸術家の自己想像)」2011 年10月15日出版,GQ STYLE秋冬号

 たとえば、『中国日報』の梅佳さんの場合、最初は自分もLGBTの人々に対して漠然とした観念しか持っていなかったけれど、記事を書く際に、取材対象に対して不必要な誤解や失礼がないよう、予め関連資料を読んだ後、法律や社会学、心理学の専門家にインタビューして、その後にLGBT団体に取材をしたので、取材が順調にいったという経験を述べています。

 次に「メディアに関するFAQ の解説」として、4つの質問が取り上げられています。
 1.メディアが同性愛を報道することは、ある程度タブーになっているけれども、タブーに抵触しないギリギリの限度の報道をするとすれば、その限度はどこにあるのか? どのようにして限度を把握するのか?
 2.特定のテーマで記事を作成するとき、どのようにして同性愛者たちの存在と立場を包含するのか?
 3.猟奇的(珍しいものをあさる)視角による報道にならないためにはどうすればいいのか?
 4.どのようにして、価値のある取材の素材やインタビューの相手を見つけるのか?

 これらの質問について、それぞれ、ジャーナリストが答えています。

 たとえば、1の質問に対しては、唐小松さんは、「中国の法律には『メディアが同性愛を報道する際の禁止事項』はないので、メディアは自己規制する必要はない」と答えています。その一方、王小屋さんは、LGBTの報道については、「宣伝しない、奨励しない、唱道しない(不宣传、不鼓励、不倡导)」という政策があり、それがメディアの現実の状況だ」と答えています。

 3の質問に対しては、王小屋さんは、たとえば「LGBTの父母の育て方を尋ねるのは、『家庭の教育によって子どもがLGBTになる』という論理が背後にあるので、避けなければならない」と述べ、自分が推奨する方法として、「パートナーとの付き合い方を論じるときには、同性愛パートナーも取材するというふうに、LGBTの人々を、社会のさまざまな通常のカテゴリーの中に登場させる」方法を紹介しています。

 第4章「ニュースメディアと探究する――何が社会的価値のあるLGBTの題材か」では、まず、「LGBTメディア報道カレンダー」という一覧表によって、LGBTについて報道する機会になる祝日が挙げてあります。

 挙げられている祝日の中には、「国際反フォモフォビア・デー(国际不再恐同日)」(5月17日)や「バイセクシュアル・デー(双性恋庆祝日)」(9月23日)、「ナショナル・カミングアウト・デー(全国出柜日)」(10月11日)、「トランスジェンダー追悼の日(跨性别纪念日)」(11月20日)などのLGBTに関する祝日だけでなく、母の日、父の日、春節(旧正月)のような一般の祝日も取り上げられています。母の日や父の日には、レズビアンマザーやゲイの父親にも触れることを提案しています。春節は、郷里に帰って父母と(旧)正月を迎える時期なので、LGBTの人々が「結婚しなさい」という圧力に直面する時期でもあるので、LGBTと父母と関係について報道することを提案しています。

 次に、LGBTに関するさまざまなテーマについて、それぞれの「定義」や「背景」(LGBTが置かれている状況)、「ニュースのポイント」、「報道(のやり方)の提案」、「よくある間違い」、「参考になる報道」、「リソース」(ウェブページなど)などが挙げられています。

 ここで扱われているテーマは、「同性婚姻」「同性の親密な関係」「形式的婚姻」「LGBTと家庭」「学校の中のLGBT青少年」「職場におけるLGBT」「LGBTの公共空間/駆逐されるLGBTたち/LGBTのセックスワーカー」「LGBTの養老」「性的指向を変える治療」「LGBTが関係する犯罪の報道」「HIV・エイズとLGBT集団」「レズビアン」「トランスジェンダー」です。

 たとえば、「形式的婚姻[形式婚姻]」については、その「定義」として、「男性同性愛者と女性同性愛者とが、社会と家庭からの婚姻の圧力を防ぐためにおこなう婚姻。形式的婚姻には多くのパターンがあり、法律的意義を持った本当に婚姻から、象徴として結婚式を挙げるだけのものまである」と書かれています。「ニュースのポイント」としては、形式的婚姻の場合、「子どもが要るか要らないかが、最大の難題である。もう一つの難題は、親戚や友人の前では長年異性愛の夫婦を装わなければならないことである」と述べ、さらに「経済の独立、人身の安全[=婚姻内での性暴力は強姦とは見なされないことなど]、父母の扶養、自分のパートナーと形式的婚姻の対象との関係」などにも問題が生じる可能性を指摘しています。「よくある間違い」としては、「形式的婚姻=無性結婚」という理解が挙げられており、「双方が子どもを作ることを約束している場合は、性行為が発生することもある」と指摘しています。

 「報道に対する提案」というのは、たとえば、「職場におけるLGBT」の項目では、「国際的な会社の同性愛者に対する福利待遇」を報道したり、「同性愛者であるために会社を辞めさせられた話」に注目したりすることを提案しています。また、「レズビアン」の項目では、「メディアが同性愛に関する報道をするときは、同性愛を男性同性愛と同一視せずに、レズビアンの存在が見えるようにしてほしい」と書かれています。

 特にLGBTの犯罪報道に対する注文が目立ちます。犯罪報道の際に「同様な状況の下で、『異性愛の』とか『ストレートの』と言わないならば、ある関係や感情に『同性愛』とか『バイセクシュアル』というレッテルを貼ることは避ける」こととか(1)、「同性愛者やバイセクシュアル、トランスジェンダーの人が浴場や公園で犯罪行為をして被告になった際は、他の同類の事件の被告と同じように扱ってほしい」ということなどが書かれています。

 第5章の「LGBT関係のリソース」では、さまざまなLGBT関係の団体の簡単な紹介やそれぞれのウェブサイト、連絡先が書かれています。「LGBTを理解するための10の映画と書籍」も紹介されています。取材の際には、このリストを活用してほしいということです。

 この章も充実しており、私が知らなかった団体もかなりありました。

ハンドブックの特色

 このハンドブックの第一の特色は、単なる「準則」や「ガイドライン」ではなく、ましてや「べからず集」「言い換え集」でもなく、「提案(建議)」である点にあると思います。

 この点は、「提案」という用語だけの問題ではなく、このハンドブックの内容自体、第1章の用語集や第2章のFAQには計10ページ余りしか紙幅を割いていないのに対して、第3章以降の具体的な事実・状況・題材を紹介する部分に約60ページも割いていることにもあらわれています。また、ジャーナリスト自身が自分の経験を語っている点も、彼らにとって説得力を増しているのではないでしょうか。メディアが自己防衛のために作ったようなハンドブックとは質が違うように思います。

 このハンドブックの第二の特色は、上の点とも関連しますが、LGBT団体と、LGBTや女性の視点からメディアを検証する団体(個人)、ジャーナリストたちが協力して作成した点だと思います。

 ハンドブックの末尾に謝辞が書かれており、そこには、「LGBTとNGO機構」と「メディア業務従事者とメディア研究者」の名前が挙げられているのですが、「LGBTとNGO機構」としては、2005年に結成されたレズビアンなどの組織「同語」、1999年に結成されたLGBT組織(当初はゲイのグループ)の「愛白」、2008年に結成さた「同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)」といったLGBT系の団体のほか、1996年に結成された「女性メディアウオッチネットワーク(女性传媒监测网络)」(女性の立場からメディアを検証・変革する団体)も名前を連ねており、さらに、最近設立された「新視角同性愛報道ウォッチネットワーク」や「中国レインボーメディア賞」の名前も挙げられています。

 「新視角同性愛報道ウォッチネットワーク(新视角同性恋观察网络)」というのは、2010年7月に設立された団体で、中国における同性愛報道をウオッチし、改善することを目的としています。LGBT組織のPR能力を高めるための研修などもしているようです(2)

 また、「中国レインボーメディア賞(中国彩虹媒体奖2011)」というのは、中国のさまざまなLGBT機構が2011年から始めた賞で、LGBT報道に貢献した作品・機構・人物を表彰するものです(3)

 謝辞に書かれている「メディア業務従事者とメディア研究者」としては、馮媛さん(『中国婦女報』記者、ジェンダーメディアウォッチネットワーク[性别传媒监测网络]発起人)、呂頻さん(女性メディアウォッチネットワーク[女性传媒监测网络]代表、『女声』編集者)および、第3章で登場した人々をはじめとした多くのジャーナリストたち(4)の名前が書いてあります。

 つまり、LGBT団体(個人)だけで作成したハンドブックではなく、LGBTの視点からメディアを検証する団体、ジャーナリストの力もあって出来たハンドブックであるわけです。

 このハンドブックの第三の特色は、レズビアンやフェミニストが果たしている役割がかなり大きいことではないかと思います。

 このハンドブック自体、Les+というレズビアン団体が作成したものです。また、「女性メディアウオッチネットワーク」や呂頻さん、馮媛さんのようなフェミニストも、役割を果たしています。こうした点は、セクシュアル・マイノリティをめぐる運動も、とかく男性中心・ゲイ中心になりがちな、一般的に見られる――中国でもそうした傾向はある(5)――あり方とは異なっているように思います。

 第四に、このハンドブックは、上で触れたように、「新視角同性愛報道ウォッチネットワーク」とか「中国レインボーメディア賞」といった2010年以降の「LGBTとメディア」についての運動の蓄積を反映しています。その意味で、中国におけるLGBTとメディアの運動の現在の到達点とも言えるだろうと思います。

(1)たとえば、日本でも、恋愛関係のもつれの結果の殺人事件に対して、「○○被告に懲役15年の判決 東京・品川の同性愛殺人」(MSN産経ニュース2007.10.22)(下線は遠山)という見出しを付けたり(「同居女性刺殺『同性愛』報道:おかしくないですか」白鳥一声2007/10/23)、イギリスの財務担当相が経費の不正使用で辞任した事件のことを、「英新政権、同性愛の財務担当相が辞任」(読売2010.5.30)(下線は遠山)という見出しで報道したり――その恋人宅の賃料を必要経費として請求していたことが問題だったのですが、とくに同性を強調する必要はないはずなのに、それを見出しにまでしている――(「読売の見出しがヒドい」Imaginary Lines2010-06-01)したことが、ブログでも批判されています。
(2)2011年11月には、les+、同語、女性メディアウォッチネットワークとの共催で、LGBTメディアPR能力研修ワークショップをおこなっています(「同志媒体公关工作坊 影像纪录」女声網2011年11月23日)。
(3)「中国レインボーメディア賞」の組織委員会のメンバーは、愛白、北京紀安徳(ジェンダー)諮詢センター(1997年に開始された北京同志ホットラインから発展し、現在はLGBTのためのさまざまな調査研究などをしている団体)、北京LGBTセンター、les+、淡藍網(ゲイサイト)、同性愛者の親と友人の会、同語、同志亦凡人(LGBTに関するビデオなどを発表する団体)です。「最優秀ニュース作品」の選考委員は、李銀河、呂頻、Dinah Gardner、崔子恩、方剛、蒋欣の各氏です。
 初年度は、『法治周末』の記事「我国首份女同性恋“家暴”调查报告出炉 问题不容忽视(わが国初の女性同性愛『DV』調査発表 問題は軽視できない)」(法治周末2010年1月7日)やこのハンドブックの第3章で紹介されている記事が選ばれました。表彰された機構は、『南方周末』とChina Daily、人物は、繰り返し同性婚姻合法化を提案している李銀河さんが選ばれました。
(4)他に、任珏(『家庭』雑誌記者)家庭、焦蓓(『南華早報(South China Morning Post)』記者)、張蕾(『環球時報(Global Times)』記者)、李幸菲(『TIMEOUT』雑誌記者)のお名前も挙がっています。
(5)拙稿「中国におけるセクシュアル・マイノリティをめぐる政策と運動」『近きに在りて』第58号(2010年11月)参照。

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遠山日出也

Author:遠山日出也
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 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
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