2018-04

BLサイト弾圧に対する抗議のパフォーマンス、情報公開申請、声明など

<目次>
一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道
二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス
三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案
四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

中国では、この4月から「ポルノ・違法サイト取締り」キャンペーンが始まり、その中で、BL(ボーイズラブ)小説を掲載しているサイトも摘発されたと報じられました。それに対して、女性やレズビアンたちから抗議の声が上がっていることなどをご紹介します。あわせて、本年の国際反ホモフォビアデーの状況についても触れます。

一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道

今年4月から、中華人民共和国の4部門(「ポルノ・違法サイト取締り」工作グループ事務局、国家インターネット情報事務局、工業と情報化部、公安部)は、「インターネットを利用して猥褻・ポルノ情報を作成する行為を厳しく取り締まる」特別行動を開始しました(1)

4月4日には、安徽テレビ局が、河南省の警察が、BL小説を掲載していたサイト「耽美小説網(http://dmxhw.com/)」を摘発し、その管理人と作者たちを逮捕したこと、作者の大部分は20歳前後の若い女性だったと報じたことがネットで伝えられました(2)

安徽テレビ報道は、事件の経過を次のように報じています。
――鄭州の公安局の警官が、「耽美小説網」のアクセス数が非常に多いことを不審に思って、VIP会員になってその内容を確認した。インターネットの監視[网监]支隊の副隊長の耿傑は、そのサイトの有料部分の内容は「ポルノ小説が主であり、同性愛・暴力・血なまぐさいものを宣揚していた。それらが描写していたのは、すべてゲイだった。つまり、それらはゲイの恋と性行為の描写だった」と話した。警察は、まずサイトの主催者である王朝挙という男を逮捕した。さらに、彼の住まいから、小説の作者との契約書(クリック数に応じて収益がもらえることなどを決めている)を押収して、各地にいた作者を逮捕した。作者の大部分は20歳前後の若い女性だった(3)

ただし、この動画が報じているのは、2011年1~2月に起きた事件です(この事件については、当時、日本のブログも取り上げています→「中国の鄭州でBL小説サイトが摘発され関係者が大量に逮捕される」「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」2011年3月28日)。

といっても、今回、3年以上も前の事件について報道がなされたということは、今回も取締りの強化がおこなわれることを示しているように思います。

二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス

5月17日の反ホモフォビアデーの前に、北京・広州・信陽・武漢・南京・蘭州・杭州・汕頭・南昌の9市の、9名のさまざまな性的指向の女子学生が、前後して、中国当局の先述の4部門に対して、「わいせつ・ポルノ」情報の具体的基準と同性愛に関する審査基準について情報公開を申請しました。

5月17日の当日には、10市で、自らをレズビアンだと考えている学生たちが、さまざまな広場でパートナーとキスをして、「これがポルノか?」と書いたプラカードを掲げました。

5月17日の、このパフォーマンスに参加した女子大学生の白柏さんは、「BL文学の愛好者として、いつも見ていたサイトが閉鎖されて、その理由がポルノだというので、すっかり落ち込みました。異性愛を題材にした小説も取り締まられていますが、取り締まりの基準は、同性愛小説ほど厳しくありません。このことは、同性愛のネット小説と異性愛のネット小説とでは、審査がダブルスタンダードになっていることを示しています。一部の地方では、同性愛とポルノとを同一視して、サイトを閉鎖しています」と訴えました。

参加者の徐早早さんは、「私自身、女性同性愛者ですが、私はいまのポルノ・違法サイトの取締りは同性愛に対する非常に重大な差別だと思います。多くの地方では、任務を執行するときに、同性愛はみな、わいせつであり、ポルノだとみなして、同性愛を題材にした作品の中の良い内容のものと悪い内容のものとを区別せずに、すべてを取り締まっています。けれども、異性愛のわいせつな作品に対しては、細かく区別して対処しています。このようなタプルスタンダードは、それ自身が差別であり、ただでさえ社会的な弱者である同性愛の人々を、いっそうフレンドリーでない境遇に置くものです」と語りました。

今回の活動の発起人である王可然さんは、耽美小説網の事件で、「インターネット監視隊の耿傑副隊長は明らかに同性愛をポルノの範疇に入れています。明らかにこれは同性愛に対する重大な差別です。一人のレズビアンとして、私はこのような同性愛を差別する言論と行為を容認できません。関係部門は自らの差別的行為を正すよう望みます」と語りました(4)

レズビアンがパフォーマンスをすること自体は、もちろん以前からありました。また、レズビアンが(同性愛者一般や女性一般としてではなく)レズビアンとしてパフォーマンスをすることも2012年ころからおこなわれ始めました(5)

しかし、今回のように全国各地でいっせいにレズビアンがパフォーマンスをすることは、初めてのように思います。

また、以下のような点から見て、今回のパフォーマンスには、2012年から若い女性がパフォーマンスアートなどを繰り広げてきた「ジェンダー平等活動グループ(性別平等工作組)」(その年表や本ブログの関係記事へのリンク)も関わっているように思います。
 ・ジェンダー平等活動グループの猪西西さんが、杭州の女子学生がさまざまな場所でキスをするパフォーマンスをしている写真を自らの微博に掲載している(6)
 ・グループのリーダー的存在である李麦子さんも、インターネットの同性愛小説を弾圧することに抗議しており(7)、この抗議に添付されているキスの写真は本人のものかどうか不明だが、別のツイートで、「レズビアンがキスしているのに出会った」と言って、北京師範大学でのキスのパフォーマンスの写真を自らの微博に掲載して宣伝している(8)
 ・この活動には、「蘭州桜桃フェミニズムレズビアングループ(兰州樱桃女权拉拉小组)」も参加しているが(9)、この小組の設立には李麦子さんもかかわっている(10)
 ・プレスリリースらしきものは、広州のニューメディア女性ネットワーク(新媒体女性网络)の微博で発表されているが(11)、このネットワークはジェンダー平等活動グループに近い知識人である李思磐さんがリーダーである。

三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案

4月30日には、陳亜亜さんが発起人になって、8人のセクソロジー研究者が、「ポルノ・違法サイト取締り」に対する共同提案を発表しています。

この提案は、まず、「現在、多くの国家はポルノ情報に一定の制限を設けている(主に児童に関する情報)けれども(……)人類の性の情報に対するニーズは抑制するのは難しい」と指摘して、今回のような取締りは「長い目で見れば、その効果は僅かである」こと、また「性の自由な表現権と衝突する可能性がある」ことなどを述べています。

その上で、以下のような提案をおこなっています。

1. インターネットのポルノ取締り行動に希望を託すことはやめるべきであり、専門家・学者、従業人員、公衆の意見を広く求め、国際的に成功した経験を参考にして、もっと合理的な管理モデルを探求・実践すべきである。

2. 法律・法規の中の「わいせつ、ポルノ」についての定義を改めて、映画・出版物のレイティング制度を実施し、「ポルノ取締り」の範囲の拡大化を避け、性の自由な表現権を保障すること。

3.青少年の性教育を充実させて、インターネットのポルノ情報に影響を受けやすい人々のために、指導と援助を提供すること。

発起人
陳亜亜(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士)

連署人
方剛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張玉霞(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張静(ジェンダー/セクシュアリティ学者)
郭暁飛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
彭濤(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
斐諭新(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
魏建剛(ジェンダー/セクシュアリティ平等な権利活動家)(12)


研究者たちの提議をめぐる議論

この提案に対して、呂頻さんは、「この提案のレイティング制度については、異論もある。私が思うに、現在のポイントは、国家権力のフェードアウトと言論の自由に承認にあるのであって、重点は、方案にではなく、言論の自由という前提の下で民主的な協議と産業の自律によって方案を達成する手段にこそある」とコメントしています(13)

呂頻さんの批判に対して、陳亜亜さんは、「レイティング制度は、私の初稿にはなかったが、意見を募集したとき、何人かが提起した。私はそれを共通認識にするかどうかを問うたが、返事がなかったので、改稿するときに入れた。個人的に言えば、レイティング制度を入れたほうが、政府がこの意見を受け入れやすいと感じる」と回答しています(14)

また、性教練(性のコーチという意味でしょうか?)陽春さんは、「最も良い性教育は、ポルノ的資料を含めて、すべての性の情報・資料を、各年齢層、各性別、各階層、各性的指向の性を好むすべての人に向けて広く流通させて、得られるようにして、すべての性のタブーを打ち破ることこそが、最も良い性教育だ」とコメントしました(15)

陽春さんに対しては、陳亜亜さんは、「完全に開放することは不可能だ。現在の提案は、実行可能なことを言っているのだけれども、それでも多くのネットユーザーはやはり実行可能ではないと感じているようだ。おそらく、それは、ポルノ取締りの目的が、けっしてポルノに関することだけではないからだろう」と言っています(16)

四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

1.公衆の前でキスをするパフォーマンスは昆明でも

今年の国際反ホモフォビアデーで公衆の前でキスをするパフォーマンスをしたのは、BL小説弾圧に抗議するレズビアンだけではなかったようです。

雲南省の昆明市の南屏街では、「雲南平行」の20人あまりの人々が、午後3時ごろ、レインボー色の傘を差し、レインボーフラッグを手に持って、市民に国際反ホモフォビアデーの意義について説明しました。その後、5組のゲイやレズビアンのカップルが、金碧広場に行って、抱き合い、キスをしました(17)

2.長沙では、プライドウォークは当局の圧力で中止、プライド登山を80人あまりでおこなう

長沙市では、2012年11月24日、中国大陸初のLGBTパレードが2~30人でおこなわれました。2013年5月17日には、ふたたび、100人余りによるLGBTパレードがおこなわれました。いずれも、発起人は向小寒さんという男性でしたが、2013年のパレードのとき、向小寒さんは、無許可デモを行ったという理由で行政拘留12日に処せられました(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」、「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」参照)。

今年の5月17日には、向小寒さんは、長沙市岳陽区で「プライドウォーク」と「LGBT大会」をする計画でした。しかし、向小寒さんが5月6日、北京に行って、ある同性愛組織を正規のNGOとして登録する問題(現在、中国では、同性愛組織は正規のNGOとして登録できない)の会議に参加したら、その会議の9人の参加者はみな人身の自由を制限され、一番長い人は16時間近く拘束されました。さらに、活動の数日前、向小寒さんは警察に呼ばれて、圧力をかけられて、「プライドウォーク」や「LGBT大会」は中止を余儀なくされました。

やむなく今年は、長沙で約80人の大学生と社会人が登山し、歩くという方法で、差別反対の活動をおこないました。彼/彼女たちは、北京・天津・武漢・広東などからやってきて、レインボーフラッグを掲げ、「私は病気ではない。治療は必要じゃない」、「男も女もおおぜい立ち上がった!」、「YES, I am GAY」、「同性婚姻に関心を寄せて、同妻(ゲイの妻)の悲劇をなくそう」といったプラカードを掲げて歩きました(写真は、この記事の中にあります→「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日(18))。休憩時間には、交流もおこないました。参加者は非常に多彩で、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、LGBTを支持する異性愛の友人などがいたとのことです(19)

今年は、山の中の道を歩くという、誰も見ていない、デモとしての役割を果たさないウォークしかできなかったわけです。けれど、微博(中国版ツイッター)など、インターネット上には多数の写真が掲載されましたので、社会に対するアピールにはならなかったとはけっして言えないだろうと思います。

しかし、今年は、北京でも、さまざまな団体が国際反ホモフォビアデーに計画していた活動が圧力をかけられて続々と中止させられたり、LGBT活動家が警察に呼ばれたりしたとのことで、こうした活動にも、いま、寒風が吹いているようです。

(1)中国扫黄打非网」、「扫黄打非・净网2014 专项行动」(Wikipedia)など参照。
(2)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」安徽网2014年 4月4日(来源:安徽卫视)、「河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)、「中国『BL小説執筆者』逮捕で波紋」NewSphere 2014年04月23日。
(3)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)の中の動画参照。
(4)以上は、新媒体女性的微博5月17日 23:31
(5)2013年5月16日、北京で3組の若いレズビアンカップルがキスしているところに、通りがかった男性が「同性愛は死ね!」と言うと、3組のカップルが倒れるパフォーマンスアートをおこなった。倒れたカップルの上には、「ホモフォビアは女同性愛を殺す(恐同杀死女同性恋)」と書いてあるボードが十字に置かれたのだが、「とくに『女同性愛』と言ったのは、女の同性愛は男の同性愛に比べて社会から無視されているので、私たちは『女』という字をはっきりと書かなければならなかった」(発起人の小航)からだという(「年轻女孩“快闪”“装死”反对同性恋歧视」同语2013年5月16日)。 
 また、2012年7月1日には、新しい「献血者健康検査要求」が施行されて、女性同性愛者の献血禁止が撤廃されたのだが、その後、女性同性愛者が公然と献血したという報道はなかった。そこで、新しい「献血者健康検査要求」の施行状況をチェックするため、2013年7月1日、瀋陽・広州・北京・武漢・鄭州の5つの都市のレズビアンが、いっせいに公然と献血した(「同志献血解禁1周年 四城拉拉骄傲献血」网易女人2013年7月1日)。
 上の2つの活動は、20余りの草の根組織が集まった「第2回レインボーメディア賞研修ワークショップ」(第1回は4月に昆明で開催)で、指導者に啓発されつつ、メンバーが計画したとのことである。この研修ワークショップは「レインボーメディア賞」という、優れたLGBT報道に賞を出している団体が主催し、北京紀安徳相談センター、同性愛者の家族と友人の会、同語、女性メディアウォッチネットワークが共催した(「媒体奖培训再结硕果 “女同性恋骄傲献血”五城连动」[動画])。
(6)猪西西爱吃鱼的微博5月17日 10:47
(7)麦子家的微博5月17日 09:05
(8)麦子家的微博5月17日 15:45
(9)兰州樱桃小组的微博5月17日 22:14
(10)本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」参照。
(11)新媒体女性的微博5月17日 23:31
(12)voiceyaya的微博5月1日 00:30
(13)吕频的微博5月5日 00:42
(14)voiceyaya的微博5月7日 14:01
(15)性教练阳春的微博5月5日 01:52
(16)voiceyaya的微博5月5日 08:07
(17)国际不再恐同日 20多位同性恋者昆明闹市拥吻」云南网2014年5月18日。
(18)NGO发展交流网2014年5月20日。同爱网络的微博5月18日 21:56も参照。
(19)以上は、「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日」NGO发展交流网2014年5月20日。

「2013年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」

中国では、近年、年末になると、ゲイサイト「淡藍網」などが、セクシュアル・マイノリティに関する「10大ニュース」を発表するようになったが(本ブログの記事「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」「『2010年中国10大同性愛ニュース』」「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」「『2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」参照)、昨年(2013年)末も、同様に「10大ニュース」が発表されたので、それらをご紹介する。

一 淡藍網による10大ニュース

12月9日、「淡藍網」が、以下の「10大セクシュアル・マイノリティニュース」を発表した(「淡蓝网盘点:2013年中国十大同志新闻」淡蓝网2013年12月9日)。

1.「2人のお年寄り」楊さんと何さんが、友人とネット上の友人が証人になって結婚した

北京のお年寄りのゲイカップルが1月30日、同性婚をおこなったが、その一人の息子が暴力的に乱入した。しかし、2人は愛を固く守ると言った。

楊さんは退職した教師で、何さんはお茶を配達する労働者だったが、お互いに「小宝」、「大宝」と呼び合ってきた。二人が「二人の年寄りの愛情(两个老头的爱情)」というアカウントで、微博(中国版ツイッター)を始めると、楊さんと何さんは話題の人物になり、フォローワーは1万人を超えた。二人が恋心を発表し、結婚する計画を予告すると、何千何万のネットユーザーの熱い議論を巻き起こした。

しかし、その幸福であるべき結婚式は順調にはいかなかった。その1人の息子が突然闖入して、テーブルをひっくり返したり、賓客を殴ったりしたため、予定していたいたネットでの中継を余儀なくされたのだ。

二人のお年寄りは、こうしたことが起きたために「私たちの尊厳が失われて、苦痛だった」、「なぜ赤の他人が私たちを祝福してくれるのに、実の息子がそうできないのか」と嘆いたが、「愛を固く守る」と言った。

[資料]
・「老年同性恋人秀婚纱照 撑同志反歧视」淡蓝网2013年1月20日。
・「外媒:中国老年同志宣示同性恋情 引网友热议」淡蓝网2013年1月26日(来源:参考消息)。
・「北京“两个老头”举办同性婚礼 遭儿子闹场」淡蓝网2013年1月31日。

2.香港で「1人が1枚の写真」によって、LGBTを支持して差別に反対した。黄耀明が立法会で発言した

香港の芸能人の黄耀明(アンソニー・ウォン)と何韵詩(デニス・ホー)が去年カミングアウトした後、LGBTの権利を擁護するための組織として「大愛同盟(Big Love Alliance)[facebook]」を立ち上げた。彼らは連名で、facebookと微博で「1人が1枚の写真で、LGBTをサポートして差別に反対するアクション」を起こした。2人は率先して「撑同志 反歧视(LGBTを支え、差別に反対する)」というスローガンを手に持った写真を公表し、多くの人が後に続いた。

2月18日には、黄耀明が、「大愛同盟」の代表という身分で、香港の立法会の政制事務委員会の会議に出席した。彼は、香港の政府に対して、できるだけ早く、性的指向による差別に反対する立法について、公開の意見募集をおこなって、「国際人権規約」の中の「性的指向の違いによる差別をなくす」という規定を実現するよう訴えた。

黄耀明は、その席で、「去年の11月、性的指向による差別に反対する立法の意見募集が否決されたので、私は非常に傷ついた。香港政府が先頭に立って意見募集や立法をしない以上、私は香港市民として、『大愛同盟』を結成し、積極的に公衆とコミュニケーションをして、同性愛者がこの社会で被っている差別と偏見について説明したい。欧米の国々は、同性愛者の平等な権利のために、より高いレベルに歩みを進めているのに、香港は国際的大都会であるにもかかわらず、差別に反対するための討論や意見の募集さえ始めることができておらず、まして立法はできていない。私は、このことは、国際的大都会として恥だと思う」と訴えた。

[資料]
・「黄耀明何韵诗成立同志组织 推动反歧视」淡蓝网2013年1月13日。
・「黄耀明首次在立法会为同性恋权益发声」淡蓝网2013年2月18日[淡蓝网综合]。

3.多くの人々が人民代表大会の代表に手紙を送って、同性婚を認める立法をするように訴えた

2013年の両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の期間に、100人余りの同性愛者の父母が人民代表大会の代表[日本で言う議員]に手紙を送って、同性婚姻を認める法律を作るように訴えた。彼らは、同性愛者である自分の子どもが承認と尊厳を得られることや、新しい「婚姻法」の下で平等な婚姻権を得られることを望んでいる。また、著名な社会学者の李銀河も、ふたたび同性婚姻法案を人民代表大会の代表に提出した。

広州市の同性愛者の大学生の梁文輝は、百名の人民代表大会の代表に郵便を出して、代表たちに、「両会」で同性婚姻立法の議案を提出するように訴えた。彼は自分の手で100通の手紙に切手を貼って、一通一通、ポストに投函した。

全国人民代表大会の代表の呉青は、取材を受けたとき、同性愛と異性愛には区別はないから、同性婚に賛成すると述べた。

[資料]
・「2013两会在即 李银河盼递交同性婚姻合法化提案」淡蓝网2013年2月17日[淡蓝网综合]。
・「百余同志父母致信人大代表 呼吁为同性婚姻立法」淡蓝网2013年2月26日。
・「广东大三男同性恋致信全国人大代表」『南方日報』2013年2月28日。

4.アイスランドの女性首相が夫人とともに訪中し、中国側は礼儀正しく応対した

4月17日、アイスランドの女性首相のシグルザルドッティルが夫人を伴って中国を訪問した(アイスランドは2010年に同性どうしの結婚も可能になった)。中国の中央テレビは、夕方のニュース番組で、シグルザルドッティルが、中国側が首相と夫人を友好的に応接していることに感謝しているシーンを放送し、彼女と夫人のレオスドッティルが一緒に座っている写真も放送した。これは史上ほとんど前例がないことだった。

このアイスランドの「ファースト婦婦」はいっしょに故宮を参観した。また、首相夫人は、北京外国語大学にも行って、アイスランド語を学んでいる中国の学生と交流した。

[資料]
・「冰岛总理夫妇的中国行」北青网2013年4月30日。

5.長沙のLGBT差別反対パレードの組織者が12日拘留された後、釈放された

→本ブログの記事「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」参照。

6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた

淡藍グループが開発したゲイの交友のためのアプリケーション「Blued」のユーザーが200万を突破した。Bluedは、LBS(位置情報サービス)にもとづくゲイの社交のためのアプリケーションで、位置情報による交友機能のほかに、友だちグループの概念を取り入れ、音声・画像・地理座標の発信など、微信(中国大手IT企業テンセント[騰訊]が作った無料インスタントメッセンジャーアプリ[Wikipediaによる説明])の基本的機能に近いものを実現した。さらにゲイニュースや小説、ゲイの活動の送信もおこなっている。

Bluedが年初に上海中路資本の300万ドルのエンジェル投資を獲得したことは、科学技術界が多元的価値観を重視したことをはっきり示した。わが国の法律法規の整備と社会意識の進歩にともなって、もっと多くの創業投資企業がゲイ向け商品に対して関心を持つようになるであろう。

[資料]
・「直男玩不转的创业:同志交友应用Blued获数百万投资」淡蓝网2013年9月15日
・「同志社交应用Blued用户突破200万 将推女同版Pinkd」淡蓝网2013年12月2日(来源:36氪)
・Steven Millward“Blued, a gay dude flirting app from China, picks up 2 million users and plans lesbian app next” December 2, 2013→「中国のゲイ向け交流アプリ『Blued』が200万ユーザを獲得、レズビアン向けアプリも計画中」THE BRIDGE2013年12月11日。

7.90歳の「中国の良い外祖母」が同性愛者の外孫を勇敢に支持した

90歳の外祖母が同性愛者を支持しているビデオが、8月からインターネットで人気を集め、幅広い関心を得た。ビデオの中の福州のおばあさんはネットの友人に「中国の良い外祖母」という名を与えられた。

この慈愛に満ちたお年寄りは、「差別反対、権利を勝ち取ろう!」というボール紙を手に持って籐椅子に座って、自分の外孫が良いボーイフレンドを見つけて幸福な生活をすることを願っている。

この「中国の良い外祖母」は、国内で最も高齢の公に同性愛者を支持している親族であり、多くのネット仲間が彼女に対する敬意を書き込み、内外のメディアも報道した。

[資料(ビデオ)]
・「90岁外婆拍视频支持同性恋外孙」新浪新闻中心2013年8月16日(来源:信息时报)。

8.台湾の多元成家立法が対立を引き起こした

台湾パートナーシップ権推進連盟が起草した「多元成家民法修正案」が9月に法務部門に提出された。その修正案には、同性婚姻、パートナーシップ制度、家族制度、養子縁組などの内容が含まれていた。

支持者は、台湾社会には既に多くの異なった形態の家族が存在しているにもかかわらず、彼らの関係がまだ法律的な保障が得られていないために、生活上の困難がもたらされていると述べている。だから、法律は「成家(結婚)」にもっと幅広い選択肢――同性愛者に対してだけでなく、「同性婚姻合法化」だけでもない――を与えるべきであると主張している。

この草案は台湾の宗教団体の反対を引き起こし、幾千幾万の支持者と反対者が11月30日、街頭に出て対峙した。

いま多元成家草案の中の「婚姻の平等な権利」はすでに一読を通過した。もし三読を通過すれば、台湾は「多元的性別の婚姻権」の先駆けになる(台湾の立法手順)。

9.同性愛者の母親がファーストレディに手紙を出して、社会的差別の解消を訴えた

11月17日、深圳の董お母さん、江西の小濤お母さん、貴州の雲お母さんなど、5人の同性愛者の母親が、EMS(Express Mail Service)で「彭麗媛(=習近平夫人)さんへの手紙」を出した。

5人の母親がファーストレディの彭麗媛に手紙を出したのは、学校で性の安全の教育を強化することや、できるだけ早く「差別反対法」を制定して、同性愛者たちへの社会の偏見と差別をなくすことを訴えるためだった。

彼女たちは、彭麗媛がWHOのエイズ予防・治療親善大使になって、エイズ防止活動に活躍していることを歓迎しつつ、ゲイのエイズ感染率が比較的高いのは、社会の偏見や差別が重要な原因であることなどを述べて、差別を解消するように訴えた。

[資料]
・「中国同志母亲致信第一夫人 呼吁消除社会歧视」淡蓝网2013年11月23日。
・「習氏の好感度アップ、妻も一役 エイズ予防活動に参加」朝日新聞デジタル2012年12月3日。

10.長沙LGBTセンターがNGOの登録を拒否され、行政再議を申し立てた

11月11日、長沙LGBTセンター準備委員会の責任者の向小寒が民政登記を申請したが、長沙市民政局は「指導部が決裁しない」という理由で拒絶したので、向小寒は、湖南省民政庁と民政部に対して、その理由について情報公開を申請した。

11月29日、向小寒は、湖南省民政庁の公式の回答を受け取ったが、そこには以下のように記されていた。

1.「中華人民共和国婚姻法」第5条に「結婚は必ず男女の完全な自由意志によらなければならない」と規定されており、婚姻は必ず一人の男と一人の女によるものでなければならない。すなわち、「婚姻法」は同性の結婚や恋愛の関係を認めていない。それゆえ、同性愛の社会的組織には法律的基礎がない。

2.「社会団体登記管理条例」第4条は、「社会団体は必ず憲法・法律・法規及び国家政策を順守しなければならず、社会の道徳気風に反してはならない」と規定している。同性愛は、わが国の伝統文化や精神文明に反するので、成り立ちえない。


このことは、12月6日付け『ニューヨークタイムス』でも「Homosexuality ‘Against Spiritual Civilization,’ Hunan Government Says(同性愛は「精神文明に反する」と湖南省政府は言う)」という見出しで報じられた。

[資料]
・「长沙同志中心申请注册 官方回复 “同性恋违背社会道德风尚”」同爱网2013年11月29日。
・“Homosexuality ‘Against Spiritual Civilization,’ Hunan Government SaysNew York Times December 6, 2013→小寒「纽约时报就“湖南民政部门发表同性恋违背精文明建设言论”进行报道」同爱网2013年12月6日。

二 「同志亦凡人」による10大ニュース

「同志亦凡人(Queer Comrades)」という、LGBTのためにインターネットビデオを作成している団体も、12月31日、10大ニュースを発表した(「千人近いネット友だちが共同で選出した」とのことだ)。こちらの10大ニュースはビデオで発表されており、今年1月6日には、中国語と英語の字幕付きのものも発表された(「2013中国十大同志新闻 字幕版」←最初は広告が出ます)。

以下をご覧いただければわかるように、「同志亦凡人」の10大ニュースのうち7件は「淡藍網」のものと重なっているので、重なっていない3件についてだけ、ご紹介する。

1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した

7月1日、瀋陽・広州・北京・武漢・鄭州の5つの都市のレズビアンが、いっせいに誇りを持って献血した。

昨年7月1日、新しい「献血者健康検査要求(献血者健康检查要求[GB18467-2011])」(献血できる条件を定めた規定)が施行された。以前の規定は、「同性愛者」の献血を禁止していたが(献血者健康检查要求[GB18467-2001]の4.5.3)、新しい規定は、「同性愛者」という身分には言及せず、「男どうしで性行為をする(男男性行為)」者の献血だけを禁止した(5.2.2)。すなわち、少なくとも女性同性愛者は献血できるようになった(本ブログの記事「中国、女性同性愛者の献血禁止を撤廃」、「女性同性愛者らの組織『同語』、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘」参照)。

しかし、その後1年間たっても、レズビアンが公然と献血したという報道はなかったので、新しい「献血者健康検査要求」の施行状況をチェックする必要があった。

24歳の小航とfreeと猪西西(いずれも仮名)は、いま北京で仕事をしているレズビアンだ。彼女たちは、新しい「献血者健康検査要求」の施行1周年にあたって、自ら献血することにした。

彼女たちは、「女性同性愛者は誇りを持って献血する(女同性恋骄傲献血)」というスローガンを書いたTシャツを着て、献血をしようとした。

しかし、彼女たちが東直門の交通のカナメにある採血スポットで献血しようとしたら、そのスタッフに拒否された。freeと小航が体重計に乗ったとき、2人とも[規定の]45㎏を超えた数字が出たのだが、スタッフは、2人が身に着けているスローガンを見つけると、「体重計が壊れた」と言い、「体重が不合格」という理由で彼女たちの献血を拒否した。そこで、やむなく海淀区の北京血液センターに行って、そこでついに献血に成功した。

小航は、「同性愛者はずっと多くの汚名を負わされてきた。たとえば、同性愛者は病気だとか、同性愛者の血は不健康だ、などと。レズビアンの献血の解禁は、レズビアンの健康上の汚名を取り除いた。私は、このことをもっと多くの人に知ってもらえるように尽力したい」と語った。

この活動は、6月29~30日に開催された、20余りの草の根組織が集まった「第2回レインボーメディア賞研修ワークショップ」(第1回は4月に昆明で開催)で、指導者に啓発されつつ、メンバーが計画したものだ。この研修ワークショップは「レインボーメディア賞」という、優れたLGBT報道に賞を出している団体が主催したもので(共催は、北京紀安徳[ジェンダー]相談センター、同性愛者の家族と友人の会、同語、女性メディアウォッチネットワーク)、プレスリリースの書き方、メディアに対する働きかけの方法、ニューメディアでの発信の技術などを教える研修のようだ。

この研修の模様や瀋陽での献血の現場の状況を伝えるビデオが「媒体奖培训再结硕果 “女同性恋骄傲献血”五城连动-字幕版 」(同志亦凡人)である(中国語と英語の字幕付き)。

[資料]
・「同志献血解禁1周年 四城拉拉骄傲献血」网易女人2013年7月1日。
・「 2013中国彩虹媒体奖LGBT媒体倡导工作坊(沈阳站)招募启事」中国彩虹媒体奖的博客2013年5月10日。

2.淡藍がホモフォビアの教材を暴露した

5月17日、淡藍網が「あなたの身辺のホモフォビアの教材を暴露する」という発表をおこない、13本の教材についてホモフォビアを指摘した。その13本の教材は、人民教育出版社の『生命教育』、広東高等教育出版社の『大学生心理健康教育』、南京林業大学出版社の『大学生の生殖と健康教育読本』、民族出版社の『心理カウンセラー(基礎知識)』などの教材または一般向けの啓蒙書である。

さらに、10余りの団体(淡藍公益、同性愛者の親と友人の会、北京紀安徳相談センター、北京LGBTセンター、同語など)が連名で「教育出版機構・大学・教育者への公開書簡」を発表し、教材からホモフォビア的な内容をなくすように訴えた。

[資料]
・「淡蓝5•17系列活动:揭露你身边的恐同教材」淡蓝网2013年5月25日。

3.北京の高齢のゲイカップルが同性結婚をした

4.黄耀明が立法会に出席した

5.長沙の5月17日の活動が成功したが、組織者は拘留された

6.台湾/香港プライドパレード

10月26日と11月9日、台湾と香港でそれぞれLGBTパレードが挙行され、ともにパレードの参加人数の記録を作った。今回の香港のパレードには大陸からさまざまな団体が参加し、その中には同性愛者の父母の団体もあった。

7.中国の良い外祖母が外孫をサポートした

8.全国人民代表大会の呉青が同性婚に賛成した

9.アイスランドの女性首相が夫人とともに訪中した

10.百人余りの同性愛者の母親が人民代表大会の代表に手紙を出して、同性婚姻立法を訴えた


四 全体として感じること

「10大ニュース」の選定について

2つの「10大ニュース」を比べてみると、「淡藍網」による10大ニュースには入っていて、「同志亦凡人」による10大ニュースには入っていないのが、「6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた」、「9.同性愛者の母親がファーストレディに手紙を出して、社会的差別の解消を訴えた」、「10.長沙LGBTセンターがNGOの登録を拒否され、行政再議を申し立てた」の3件である。

逆に、「同志亦凡人」による10大ニュースには入っていて、「淡藍網」による10大ニュースには入っていないのが、「1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した」「2.淡藍がホモフォビアの教材を暴露した」「6.台湾/香港プライドパレード」である。

以前、私は、「淡藍網」はゲイサイトとしての性格が強いせいか、その10大ニュースは、若干、ゲイ中心の傾向があると思うと述べた(「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』」)。そのことは、今回の「10大ニュース」の選定においても、「淡藍網」のみが選定した「6.ゲイのためのモバイルアプリケーションが投資を獲得し、科学技術界が多元的価値観を認めた」などはゲイに関するニュースであり、「同志亦凡人」のみが選定した中の「1.レズビアンが5つの都市でいっせいに誇りを持って献血した」がレズビアンに関するニュースであることに現れているように思う。

また、「淡藍網」も「同志亦凡人」も同性愛の話題が大半だが、それ以外の「バイセクシュアル」や「トランスジェンダー」の話題はなかったのか、と思う。たとえば、本ブログで、「バイセクシュアルの運動が現れはじめる」で述べたような、バイセクシュアル関係の新しい動きを取り上げてもよかったのではないだろうか?
また、同性婚に話題が偏り気味の感じもしないではない。

明るい出来事、セクシュアル・マイノリティの権利にとって前進である出来事が多いが……

とはいえ、「10大ニュース」を全体として見ると、明るい出来事、セクシュアル・マイノリティの権利にとって新たな前進である出来事が多い。

その一方、湖南省当局が「同性愛は、わが国の伝統文化や精神文明に反する」と言ってNGOの登記を拒否したりとか、Tシャツに「同性愛」と書いてあるのを見たとたんに「体重計が壊れた」と言って献血を拒否するなど、旧い体制や意識も強力に残存していることがわかる。

また、企業がゲイ向け商品に注目したことは、それ自体は明るいニュースだが、セクシュアル・マイノリティ間の経済的・社会的格差が今後顕在化してくることを示しているとも思う。

バイセクシュアルの運動が現れはじめる

私は、2010年、本ブログで、台湾には2007年6月に設立された「Bi the Way」というバイセクシュアル団体があるけれども、まだ本土には明確なバイセクシュアル団体はなく、バイセクシュアルとしての活動は僅かしかないという状況をご紹介しました(「各地のセクシュアル・マイノリティのサイト(3)──バイセクシュアル」)。

しかし、今年の夏以降、中国本土でも、バイセクシュアルとしての運動が出現しつつあるように思います。以下、時系列順に見ていきます。

1.第6回北京クィア映画祭でバイセクシュアルに関する企画

6月19日~23日、第6回北京クィア映画祭(同映画祭のサイト[中国語])がおこなわれました。今回の映画祭は、事前に周到に準備していたため、北京の市街地でおこなわれたクィア映画祭としては、初めて当局からの取り締まりにも遭わずに、順調におこなわれました(1)。今回の映画祭では、当時中国に在住しておられた福永玄弥さんらが「関西クィア映画祭」を特集した企画をおこなったことにより、日本からの参加者との交流も目立ちました(2)。下は、今回の映画祭についてのビデオです。



この映画祭では、「マイノリティの中のマイノリティ」に注目した企画もおこなわれ(你看见了吗? Did you see me?)、その一環として、6月21日午後、「バイセクシュアル」をテーマとした企画が行われました。この企画では、《Bisexual revolution(双性恋革命)》(フランス)というドキュメンタリー映画を上映した後、「あなたは見たか? バイセクシュアル革命」と名づれられたフォーラムがおこなわれました。そこでは、蘇茜(バイセクシュアルとして早くから中国のLGBT運動に参加してきた人)、Alex Tso(ブラジルのバイセクシュアル団体Bi-sidesの創始者の1人)、韋婷婷(=Waiting。北京紀安徳ジェンダープロジェクト責任者、バイセクシュアル)、汪梅子(映画の字幕の翻訳者)、ひびのまこと(バイセクシュアル。関西クィア映画祭代表)の各氏が、この映画とバイセクシュアルについて討論しました。

蘇茜さんは、「バイセクシュアル」は時代遅れな言葉であると言います。蘇さんは、「クィア(酷儿)」や「セクシュアル・ライツ(性权)」のほうが、「バイセクシュアル」より有用で、時代に合っているし、身分的な分類をする必要がない言葉なので、カミングアウトする必要もないと述べました。ひびのまことさんも、「バイセクシュアル」という概念は、男女の二元的な区別を強調しているので、現在は「パンセクシュアル[泛性恋](pansexualまたはomnisexual)」と「ポモセクシュアル[后现代性恋](pomosexual)」という語を使っていると語りました。

このフォーラムをレポートした人も、異性愛/同性愛の二元的構造の中では、そのどちらでもないバイセクシュアルは「無視されるか、歪曲される」という現状を嘆き、「パンセクシュアル」概念は二元的ジェンダー論の枠組みを打破していると述べています(3)

2.北京LGBTセンターと北京レズビアンセンターでバイセクシュアルの集い

8月8日には、北京LGBTセンターで初めてバイセクシュアルの集いがおこなわれました。この集いは、北京LGBTセンターと北京紀安徳ジェンダーセンターとが共同でおこなったものです。

この集いには35人が集まりました。彼/彼女らは、バイセクシュアルだったり、バイセクシュアルな欲望や経験があったり、そうした友人がいたり、この問題に関心がある同性愛や異性愛の人々でした。この集会で、バイセクシュアルが「最も嫌な言葉」を挙げてもらったところ、次の12の言葉が集まりました(俗語なども含まれているせいか、私に正確に意味が取れなかった箇所もありましたので、以下はだいたいの内容です)。

1.バイセクシュアルは乱交だ
2.変態、浮気者、ゲイのうちのカス、裏切者
3.あなたは、自分が本当は何者なのかがわかっているのか?(自分が同性愛だとはっきりわかっていない人だと思われているということ)
4.あなたはいくつなの?(男性中心主義的なゲイがいやで「真の愛」を求めたら、「真の愛」を求める考え方は、幼稚だという意味で言われた)
5.バイセクシュアルは腐れマンコ
6.バイセクシュアルは妥協だ(自分が同性愛だと認める勇気がない)
7.あなたは気持ち悪くないの?(レズビアンから男とセックスすることをこのように言われた)
8.世の中になんでバイセクシュアルのような怪物がいるのか。
9.あなたは、自分のことがよくわかっていない同性愛者だ。
10.あなたがそうすることは正しくない。
11.お父さん・お母さんに反抗するためにやっているんだ(父母の言葉)
12.たとえ同性愛であっても、バイセクシュアルよりはいい。

「乱交」「変態」などの言葉は、かつては同性愛者が異性愛者から言われたことだったのが、今では同性愛者がLGBTの中のマイノリティに対して言っていると、この集いを呼びかけた韋婷婷(=Waiting)さんは指摘しています。

韋婷婷さんは、「バイセクシュアルだけを議論するのでは不十分だ。なぜなら、私たちが恋をするのは、男でも女でもないトランスジェンダーかもしれず、パンセクシュアルかもしれず、情欲の中を行き来するクィアかもしれない。バイセクシュアルとは言われたくない、まだ命名されていない(もしかすると、命名される必要もない)関係や欲望かもしれない。『バイセクシュアル』という命名さえ必要ないと言うひともいる」とも述べています(4)

この集会は、「第1回」と名づけられているように、今後も継続して続けるつもりのようで、集会の趣旨説明には、この「グループ(小组)の目標」として、「バイセクシュアルの交流を促進し、バイセクシュアルが声を上げる」、「バイセクシュアルの議題を探究し、セクシュアリティ/ジェンダーの多元的平等を促進する」、「セクシュアリティ/ジェンダーの垣根を打ち破り、多様な可能性を探索する」ということが挙げられています。

このグループの「具体的行動」としては、「バイセクシュアルが定期的に交流し、集会をする」、「バイセクシュアルサロン――映画鑑賞/テーマ討論」「さまざまな社会的グループに参与し、社会的グループと公衆の中でバイセクシュアルの姿が見えるようにする」ということが挙げてあります(5)

9月6日には、北京レズビアンセンター(もと北京レズビアンサロン)でも、同じく北京紀安徳センターとの共催で、バイセクシュアル集会がおこなわれました。呼びかけ人も、同じく韋婷婷さんです(6)

3.2つのセンターでは、バイセクシュアルのパーティーも開催

9月23日には、北京レズビアンセンターで、バイセクシュアルパーティーが開かれました。やはり韋婷婷さんが主催したもので、呼びかけ人は、韋さんと猪川猫二餅さん、caesaさんでした(7)

9月27日には、北京LGBTセンターが、バイセクシュアルどうしがお相手を見つけるパーティーを開催しました(8)

4.広州でもバイセクシュアル小集会

10月19日、女友組(広州のレズビアン団体(9)博客微博)が広州LGBTセンターでバイセクシュアルの小集会を開催しました。

この集会は、バイセクシュアルについての短編映画を見た後で、バイセクシュアルとしての経験を分かち合い、北京での集会同様に、バイセクシュアルにとって最も嫌なことを出し合って交流する、というものでした(10)。写真を見ると、17~18人の方が集まったようです(11)

この集会の呼びかけ文や趣旨説明には、「双/泛性恋(パイ/パンセクシュアル)として~」「双/泛性恋としての自己認識」という文言も使われており、「泛性恋」という言葉が、実際にも使われ始めていることがうかがえます(12)

5.リーフレット『バイセクシュアルABC』

また、女性の同性愛者やバイセクシュアルのグループ「同語」は、『同性愛ABC(同性恋ABC)』に加えて、『バイセクシュアルABC(双性恋ABC)』というリーフレットを作成しました(13)。このことが「同語」のウェブサイトに掲示されたのは11月ですが、8月13日には、そのリーフレットの写真が「バイセクシュアル」という微博のアカウント(双性恋_bi的微博)に掲載されていますので(14)、8月頃には完成していたものと思われます。

6.「r&Bバイセクシュアルグループ」設立

9月4日には、「r&Bバイセクシュアルグループ(r&B双性恋团体)」というグループが発表されています。このグループは、2007年にできたネット上のバイセクシュアルグループ「双生活」のメンバーと同志(LGBT)運動の中の何人かのメンバーがいっしょに設立したもので、今後、オンライン・オフラインで活動するとのことです。「r」は、半分曲がっていてストレートではないという意味で、自分たちが偽装した同性愛者でも、異性愛者の一時の迷いでもないことを示しているそうです。「B」は、「バイセクシュアル」の「B」です。

このグループは、まず、バイセクシュアルたちに、自らの体験を募集して、バイセクシュアルの真の姿を知ってもらおうとしています(15)

7.第5回香港プライドパレードに、初めてバイセクシュアルの隊列

11月9日、第5回香港プライドパレードが実施されました。今回のパレードは、主催者側発表で5200人(警察側発表でもピーク時で4500人)が参加するという、パレード史上最大の規模のものになりました。また、機会平等委員会(性差別条例などの執行に責任を持つ法定機構)の主席が初めてパレードに参加しました(16)

今回参加した約50団体のうちの20団体は本土の団体だったといいますが(17)、斯蒂夫妮(ステファニー、住所は香港になっていますが、広州でのバイセクシュアル小集会でも話をしています)さんと韋婷婷さんが初めてバイセクシュアルとしての隊列を作って行進しました(18)。といっても、その隊列は、ごく少人数(その2人だけ?)だったようですが、彼女たちは「Bi Pride」のプラカードを持って行進しました。そのプラカードには、「We'er not confused.」「You'er just ignorant」(私たちが混乱しているのじゃなくて、あなたたちが無知なのだ)という、同性愛者や異性愛者からのバイセクシュアル差別に抗議する文言が書かれていました(19)

以上、中国本土でも、バイセクシュアルとしての活動が、現実世界でも目に見える形で現れてきたという状況をご報告しました。あくまで一部の大都市の話であり、多くの国にも存在するとはいえ、日本には現在は存在しない(のではないかと思う)「バイセクシュアル」を掲げた運動が起きていることは注目に値すると思います。

(1)第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」同志亦凡人(写真あり)、「第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」北京酷儿影展2013年10月28日。第1回から第4回については、本ブログの記事「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」参照、第5回については、本ブログの記事「第5回北京クィア映画祭は当局に中止を命じられるも、ゲリラ的に開催」参照。なお、この映画祭については、《わたしたちの物語 ~ 北京クィア映画祭と十年間の「ゲリラ戦」》という映画があります(福永玄弥さんがこの映画を関西クィア映画祭で上映なさいました)。
(2)福永玄弥さんは「朋あり、友邦より来たる――関西クィア映画祭精選(有朋自友邦来)」というシリーズを企画なさったのですが、北京クィア映画祭のサイトには、福永さんからのメッセージも中国語と英語で掲載されています(福永玄弥「《中日两国间的性别少数人群合作可能吗?》」)。その中で上映されたイノウエカナ監督の《あん、あん、あん》上映終了後には、日本からいらっしゃったイノウエさんが、《あん、あん、あん》は日本で上映したときは一部で誤解や批判を受けたのに、北京クィア映画祭では歓迎されたので、思わず声を上げてお泣きになったという場面あったようです(上記「第六届北京酷儿影展顺利闭幕 组织者表示有点不可思议」)。他には、《THE LITTLE GIRL IN ME 僕の中のオトコの娘》(窪田将治監督)、《すいっちん バイブ新世紀》(ササタニーチェ監督)が上映されたようです。また、開会式でも、関西クィア映画祭の代表である「ひびのまこと」さんが同映画祭について紹介するとともに、現在の日中関係の困難についても語りつつ、しかし、両国の民間交流はその流れに逆らってすすめていこう、北京クィア映画祭と関西クィア映画祭は互いに学び合い、切磋しあって、ともに進歩していこう、といったことを述べられたようです(以上は、「第六届北京酷儿影展成功举办(图)」淡蓝网2013年6月24日)。なお、福永さんは、この映画祭について、今後より詳しいご報告をなさることと思いますが、すでに『女たちの21世紀』75号に「中国で北京クィア映画祭(第6回)が開催」という短文を書いていらしゃいますし、自らのブログ「銀色の道」では、「北京クィア映画祭ノート(1) 」を書き始めておられます。
(3)包包 阿木「双性恋,你看见了吗?——第六届北京酷儿影展双性恋影像侧记」女声网2013年7月3日。
(4)以上は、Waiting「 Ta们最讨厌的12句话,你中枪了吗?——双性恋聚会侧记」《酷拉时报》2013年8月14日。
(5)以上は、「2013年8月8日【双性恋聚会】第一期:双性恋,今晚我们说故事」北京同志中心的博客2013年8月2日。
(6)北京9月6日 女同中心:你好 我是双性恋-聚会」同语2013年9月4日(来源:北京女同志中心)。
(7)北京女同志中心的微博9月21日 10:22
(8)2013年9月27日【非双勿扰】城中第一次双性恋速配约会活动!」北京同志中心的博客2013年9月20日。
(9)2009年10月に結成されたグループで、当初は広州同城青少年リソースセンターに下に付属していたが、2013年3月8日、独立して運営するようになったとのことです(「2013女友组招新公告」女友组的博客2013年9月2日)。
(10)【10.19女友组, 广州!双性恋集结号!】」女友组的博客2013年10月7日。
(11)斯蒂夫妮的微博10月19日 19:55
(12)(10)と同じ。
(13)同语免费赠送多元性别教育资料」同语2013年11月7日。
(14)双性恋_bi的微博8月13日 14:26
(15)双性恋_bi的微博【r&B双性恋团体】9月3日 18:02
(16)同志遊行五千人 反對歧視爭取權益 平機會主席首參與」『香港成报』2013年11月10日。
(17)5200人破紀錄 走出來爭平權 」『蘋果日報』2013年11月11日。
(18)斯蒂夫妮的微博11月8日 21:01
(19)斯蒂夫妮的微博11月10日 01:27

LGBT運動のゲイ中心主義やフェミニズム運動におけるレズビアンの主体性喪失に対する異議申し立て

中国のセクシュアル・マイノリティの人々の運動も、他国同様、ゲイが中心になっている傾向を免れなかった。そうした中、2011年末から、レズビアンらが明確にゲイ中心主義を批判しはじめた。2012年以降活躍している若い行動派フェミニストの中にも、レズビアンやバイセクシュアルのメンバーが多く、そうした動向に同調してきた――ないしは、そうした動きの中からフェミニズムの運動が生まれてきた。しかし、いま、レズビアンの中に、フェミニズム運動においてレズビアンとしての主体性を出せないことを問題にする人も出てきた。

――上記の議論は現在も進行中だが、以上のような状況があると思うので、この点について、以下、述べてみたい。

<目次>
1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博
2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有
3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博

LGBTサイトの理論家のクィア理論批判

2011年8月、LGBTサイト「愛白網」(ただし、1999年に創設された時はゲイサイトで、今日でも記事の内容はかなりゲイ中心である)の理論家であるDamien Lu(星星)さんは、「クィア理論の概念の多くは、セクシュアル・マイノリティたちの権利の推進にとって、破壊的作用がある」と批判した。その理由は、「クィア理論の主要な理論家は、性的指向は非常に可塑的で、固定的ではなく流動的であること考えており、それだけでなく、いかなる性別や性的指向の分類の『レッテル』もみな誤っていると考えている」が、そうした理論的立場に立つと、同性愛者に対する「治療」を容認することになるし、同性婚の根拠は、同性愛が先天的なものであるということなのに、性的指向が可塑的であると考えると、同性愛者差別に反対する立法や同性婚姻法を推進することが難しくなる、というものだった(1)

「美少女戦士レズビアン」の微博(ミニブログ、中国版ツイッター)による反論とLGBT運動の現状批判

2011年12月17日、「美少女戦士レズビアン(*)」の微博[美少女战士拉拉的微博]は、「私たちはレズビアンである。私たちはクィア(**)である。私たちは声を上げなければならない」という発信を皮切りに、上のような議論に対する反論を開始し、上のような議論を生み出す背景についても批判した。

(*)「美少女戦士」は、「美少女戦士セーラームーン」の中国語名(2)。また、「レズビアン」の原語は「拉拉」であり、ここでは仮に「レズビアン」と訳したが、華人拉拉連盟によると、「『拉拉』の定義は、女性の同性愛、バイセクシュアル、女を愛するトランスジェンダーである。トランスジェンダーは自分を拉拉ではないとも認識できるし、自分を拉拉だとも認識できるが、拉拉は『トランスジェンダーは私たちの中には入らない』と言ってはならない」と述べている。「美少女戦士拉拉」の微博も、この定義を引用しつつ、「lesはlesbianの略語だが、『拉拉』の2字は必ずしもそうではない」と述べている(2012.1.28)。

(**)「クィア」については、「美少女戦士レズビアン」の微博は、「性愛の表現方法が伝統的基準とは異なる立場の人を指し、必ずしも同性愛者ではない。多くの同性愛、トランスジェンダー、バイセクシュアル、性愛の方法が伝統的な一夫一婦の異性婚姻とは異なる一部の異性愛者も、クィアという呼称を受け入れる」、「『クィア』は、しだいにジェンダーないしはその他の各面でのレッテル貼りを望まない、分類されることを望まない者の総称になった」(2011.12.18)と説明している。

「美少女戦士レズビアン」は、半月の間に360の微博(ツイート)を発信し、盛んに論争を繰り広げた。

「美少女戦士レズビアン」も、「性的指向は生まれつきなので、変えることができない」という主張は、「同性愛の矯正・治療」に反撃するために、同志(セクシュアル・マイノリティ、LGBTといった意味)運動の戦略として「一つの段階の一つの領域において暫時の成果を収めうる」ことは認めている(2011.12.24)。

「美少女戦士レズビアン」の主張は、2012年1月5日の以下のような発信によくまとめられているように思う(以下は、当日の発信すべてではなく、抜粋です)(3)

第一の分岐は(……)相手方が繰り返し論証しているのは「どのように同性愛が合理的であると証明すれば最も良いのか」ということであり、私たちは、「人は、基本的権利を獲得するために、合理的であると証明される必要はない」と主張している。

そこに隠れた更に大きい分岐は、私たちの運動の目標に対する期待が非常に異なっているということである。私は、運動はすべてのセクシュアル/ジェンダーマイノリティのために権利を勝ち取るものだと考えており、「生まれつきの同性愛」あるいは「科学的に証明された同性愛」のためにだけ権利を勝ち取ることを望んでいるのではない。

私にはある友達がいて、彼女は以前は男に対して強烈な性欲を抱いていたが、50近くになってガールフレンドと付き合い始めたら、男に対する欲望がなくなった。私には別の友だちがいて、小さい時から自分は間違いなくレズビアンだと思ってきたけれど、のちにボーイフレンドと付き合いだしたら、うまくいっている。彼女たちは困惑しているけれども、私は、彼女たちは、現在、なかなか幸せだと思っている。

同性愛が構築されるものであることにマイナス面がある理由は、人類が同性愛の起因を誤解しているということにはなく、近代社会の価値観が、異性婚姻の中の、一夫一婦の、男性主導の性関係だけが正当で、その他――同性愛も、バイセクシュアル・婚姻外の性関係・SM・セックスワーク・トランスジェンダーなどなども――をみな堕落していると考えていることにある。

狭隘な出発点から考えると、いま私たちは努力して、社会に「同性愛も正常だ」と受け入れさせるために、私たちは「生まれつき」の「血統が純正」な同性愛だと言って、その他の性的マイノリティとの区別をはっきりさせなければならない。しかし、クィアがやるべきことは、朝廷の権威を直接問いただして、さまざまな情欲に対して制約をする社会の偏見の根源に挑戦することである。

このように言うことができる:ある人々は、搾取をされているので、自分がいかに這い上がるかを考え、権力を獲得した後には、他の人を支配する。しかし、ある人々は大きな局面を見ることができ、システム全体をひっくり返してこそみんなが徹底的に解放されると考える。ジェンダー不平等、異性愛ヘゲモニー、フェミニズムの関係は、モニカ・ウィティグ「人は女には生まれない」(Monique Witting“One Is Not Born A Women”)を参照してほしい。

性的指向の起因以外にも、人類の各種の態度・行動についての先天論と後天論との論争は、社会科学・自然科学の領域で今に至るまで勝負がついておらず、現在、もっと広く受け入れられているのは、先天論も後天論も部分的な働きをしているというものである。最近、国内のクィア理論に対する最大の誤解は、クィア理論は性的指向に先天的要素があることを否定しているというものである。


また、以下のような発信もしており、問題の背景には、以下のような状況があることもうかがえる。

現在、多くの同志団体は、「私たちはLGBT団体だ」と言いたがる。けれど、けれど……多くの場合、団体の中には、Gしかいない。。。。

なぜ専門のレズビアン団体があるのかについて、本当にしっかり考える必要がある。多くのLGBT団体は実際はゲイ主導の組織であり、女性が一人もいないこともある。同様に、多くの場合、B(バイセクシュアル)がおらず、T(トランスジェンダー)がいない。

大多数のレズビアングループは登録されていない民間団体であるし、一般に「LGBT」とは自称しない。若い男も女もいる1、2の組織を別にすれば。


華人レズビアン連盟の声明

論争の最中の12月25日、華人レズビアン連盟も以下のような声明を発表した(4)。全体として「美少女戦士レズビアン」の考え方を支持した声明だと言えよう。

1.性的指向が生まれつきのものか、後天的に構築されるものかという点に関しては、私たちの多くの取材や意見交換において、その2つの観点/生命の経験が共に現れており、どちらか1つの観点によって、すべての生命の経験をカバーすることはできないと考える。

2.「生まれつき論が現段階の運動の戦略だ」という説については、私たちは、それは危険な観点だと考える。その説は、そのように思っておらず、そのような定義に当てはまらない人々を軽視し、犠牲にする可能性がある。そうした軽視や犠牲は、私たちが身を投じようとしている同志運動ではない。同志運動の出発点は、科学研究によってその生理的な原因を証明することではなく、天賦人権―― 一人一人が、他人を傷つけないという前提の下、自分がどんな人であり、どんな人を愛するか、どのように生活するかを選択できる権利を持っているということにある。(……)

3.クィア理論は、その誕生の日から、周縁の立場から、しだいに主流化している同志運動に挑戦し、多元的な思考と実践をもたらしている。クィア理論は、中国大陸ではまだ充分に紹介や理解がされていないが、私たちはクィア理論に対して開放的な態度を取って、もっと多くの議論が起きることを期待する。

4.現在大陸の同志運動は勢いよく発展しているけれども、私たちは、運動の中にジェンダー視点が乏しいと切実に感じている。声をじゅうぶん上げることができないために、女の同志/レズビアンは、運動の中で常に匿名状態になっている。「同志」と言えば、人々は往々にしてゲイのことしか想定せず、レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどのもっと弱い立場の人々を無視する。また、同志コミュニティの中でも、理論上当然だとされる論述が、事実上、女の同志/レズビアンには適用されない。(以下略)


崔子恩さんらもクィア理論を支持する観点から、議論に参入

「中国初のクィア作家」と言われる崔子恩さん(5)も、「中国の同志運動は、もうクィア理論/文学研究との関係を断ち切ることはできない。二元論は一部のGayに享楽的な生活ができるように誤って思わせることができるけれども、二元論が作り出す独裁と専制は、けっしてそのために抑圧を弱めることはない」(@崔子en的微博2011.12.23)と述べた。

北京クィア映画祭の主席をつとめた楊洋さんも、「自分は、北京クィア映画祭がまだ北京同性愛映画祭だった間は、ずっと本当の帰属感が持てなかった」と述べ(杨oig洋non葱的微博2011.12.24)、それに対して崔子恩さんは「論争の起源は、@美少女戦士拉拉が挑戦した『同志運動の意見の指導者』だった」とコメントした(@崔子en的微博2011.12.24)。

また、崔子恩さんは、12月27日、「午前、同志NGOに輪番制を呼びかけたところ、ある人が私に対する@愛白アカウントのフォローを外した。個人が支配するNGOのようだ」(@崔子en2011.12.27)と述べ、翌日に、「改選しないことは、体制上、腐敗する土壌が生まれることを認めることになる」(同2011.12.28)と指摘、美少女戦士拉拉は「クィア映画祭の輪番主席制度が、参考になる一つのモデルだ」と述べた。

ここでは、「指導者」が権力を持つような、LGBT運動内部の民主主義のあり方も問題にされている。

2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有

2012年は、若い女性を中心にしたフェミニストが、街頭でのパフォーマンスアートや抗議活動、署名運動などの新しい運動を次々におこない始めた年だった(「『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』(中国)年表」参照)。彼女たちの中には、レズビアンやバイセクシュアルが多いが、彼女たちの多くも、「美少女戦士レズビアン」のような視点を支持ないし共有している(6)

シルヴァースタイン講演におけるクィア理論否定に対する抗議をめぐって

2012年4月16日、アメリカのチャールズ・シルヴァースタイン(Charles Silverstein)さんが、北京LGBTセンターが組織した交流会(司会は上述のDamien Lu[星星]さん)で、「クィア理論は10年以内に消滅する」「LGBTの親密なパートナーの間には暴力は存在しない」「アメリカではゲイとレズビアンが親密に隔たりなく共闘している(とくにレズビアンが、ゲイの組織に加入することを「習得」したのち)」といった発言をした(爱白Aibai的微博2012.4.19、灰烬AshWang的微博2012.4.20)。シルヴァースタインさんは、日本でも福田広司ほか訳で『ザ・ニュー・ジョイ・オブ・ゲイ・セックス』(白夜書房 1993年)という本が出ているなど、古くからのアメリカで同性愛者運動をしてこられた方らしいが、新しい運動の動向には疎いようだ。

シルヴァースタインさんに対して、「クィア理論とフェミニズムの視点からLGBTの中の周縁のグループに関心を持つ」ことを謳って結成された「辺辺グループ(边边小组)」が異議を唱えた(「性向自主!反对霸权!——边边小组关于性向问题的立场声明」边边小组的博客2012年4月19日)。

「辺辺グループ」は、呂頻さんや徐玢さんによって結成されたグループだが、若い行動派フェミニストのリーダーの一人である李麦子さんも、この件について取り上げている。李さんは、Damien Lu[星星]さんらがゲストとして呼ばれた4月19日の会で、辺辺小組のメンバーがビラを撒くとともに、ゲストと対話の機会を設けるように望んだのに対して、主催者が故意に質問の機会を与えなかった(予定よりも5分早く終了させた)という出来事を批判している。

李麦子さんが上記の出来事について述べたのは、NGO業界の問題を取り上げた、「あなたに反対する者がいるときは、あなたは再考する必要がある」という文章だ。李さんは、「問題が起きたら、私は対話によって解決しなければならないとずっと思ってきた。大国間の矛盾も、対話によって解決しなければならないのではないか?」と言い、NGO業界において「多くの人が問題から逃避したがり、矛盾を激化させる。こうした思考はまるで中国の『維穏(社会的安定の維持)』のようだ。事件が起こったら、最初は情報を封鎖し、塞ぎ止められなくなってから、やっと問題に対応する」という状態を批判している(7)

このようにNGOの民主主義の問題を問うていることも、前年の崔子恩さんらと同じだ。

クィア理論については、同じく若い行動派フェミニストの鄭楚然さんも、「クィア理論の良さは、反覇権的な理念であり(……)重要なのは、権威者たちがどのように言ったかでも、それらの権威者たちがどのようなキャリアを持っているかでもなく、私たちが主流の覇権的な声tmd[=罵倒語「他妈的」の略語]に圧死しないことである」と述べている(大兔纸啦啦啦的微博2012. 4.19)。

若い行動派フェミニストの主要メンバーは、以下のように、LGBT運動におけるゲイ中心主義や同性愛中心主義も批判している。

LGBT運動の中の男性中心主義批判

李麦子さんは、「同志はゲイと同じではない!」「女の同性愛者は相対的には弱者だが、たしかに存在していて、同じでは全くない」(麦子家的微博2011.12.5)、「多くのゲイもまったく男権的であり、セクマイ圏内のジェンダー不平等問題も深刻である」(同2012.4.27)、「男のセクマイには、セクハラというテーマについてかくも深刻な誤解がある。女性の権益が侵害されたとき、男権社会は集団で被害者に矛先を向け、被害者を非難し、被害者を中傷さえする」(同2012.9.26)と述べている。

バイセクシュアル差別批判

梁小門さんも、男とセックスしたレズビアンに対して「私は真のレズビアンは男とは寝ないと思う。本当に気持ちが悪い」と言った人に対して、「純同性愛ヘゲモニーは、異性愛ヘゲモニーと本質的に同じである。他人に自分たちと同じであることを許さない」と批判した(梁小門的微博2012.8.12)。

3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

「美少女戦士レズビアン」の微博は、2012年7月で更新を停止しており、彼女たちが若い行動派フェミニストの運動をどう評価していたかは十分にはわからないが、全体的には、運動に注目し、評価しているようだ。ただし、「男子トイレ占拠」の際、とくに「ユニセックストイレ」の設置を唱えている(美少女战士拉拉的微博2012.2.23)ことなどは独自の特色だと思う(運動全体の要求の一つにも、ユニセックストイレの設置自体は入っていたが)。

さて、2013年4月、『クィア レズビアン タイムス[酷拉时报(Queer Lala Times)]』というネットマガジンが創刊された。

その「発刊の言葉」は、以下のようなものである(大头「《酷拉时报》发刊词」2013年4月25日)。

私たちはレズビアンであり、女性・「同志」・「同性愛」の名の下に一括して論じられることを拒絶する。

私たちはクィアであり、同性愛/異性愛、男/女、正常/変態という簡単な区分に不満である。私たちは、この複雑な世界にふさわしい多元的な論述を追求し、より差違があって多様な世界を創造することを願う。

私たちは実践者であり、中国のジェンダー/セクシュアリティの運動に身を投じ、多くの組織者たちといっしょに、現実の変化を自ら体験し、人の変化こそが社会運動の最も重要な目的であると信じる。

私たちは論述者であり、言葉の力を信じる。

私たちは、今日の中国で、このような刊行物を発刊するが、直面している問題は多重であり、多様である。

第一に、十年あまりの同志運動はすでに成果を上げ、社会的可視性も、公衆の認識も大きく高まった。とくに大都市で生活し、社会的・経済的地位が比較的高い男女の同志の境遇は改善された。しかし、まだはるかに不十分である。ひとまず権利については措くとしても、多くのLGBTはまだ恐怖と社会的圧力の下で生活しており、得られるべき援助が得られていない。政治環境・公共空間の状態はジャングルのようで、同性愛者・女性に対する差別は広範で赤裸々であり、公衆レベルの闘いは盛んになり始めたばかりで、まだ充分ではない。

第二に、本来平等を追求することを目標にしている同志運動に、さまざまな問題が現れている:ジェンダー観念の弱さ、階層分化、理念の単一性、主流社会への同化など。同志(LGBT)内部の差違は、本来虹色のように多種多様に、細密に現れなければならないのに、「同志」という大きな旗の下に、それらの差違は覆い隠され、単一化され、ゲイ男性化され、主流化されている。

第三に、今日の中国では、市民社会が勢いよく発展しつつあるが、同志運動、ジェンダー/セクシュアリティ運動は社会運動の一部として、どのように他の運動と対話し、どのようにこの変化により広範に参与するのか? どのようにグローバリゼーションの中で、中国本土の現実に対処するのか?


この「発刊の言葉」は、同志(LGBT)運動の問題が非常に幅広く捉えられているとともに、「女性」という一括した捉え方も拒否していることが特徴だ。

続いて掲載された、小燕「LGBT運動誰が先に平等になるのか?――中国のジェンダー/セクシュアリティ運動に関する若干の考察」(小燕「【专题】让谁先平等起来?——关于中国性/别运动的一些观察」2013年5月2日)は、LGBT運動やフェミニズム運動のあり方に対する批判を、より具体的に述べている。以下は、その抜粋だが、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしてみた。

「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、これは有害な運動の理念だと思う。

同志運動は、結局、セクシュアリティとジェンダーにもとづく社会的公正を実現するためのものか、それとも一部分の人の合法性を勝ち取る――「同性婚姻合法化」あるいは「性的指向にもとづく差別に反対する」が私たちの最終的目標なのか?

私たちが同志運動に参加したとき、ある人は「エイズ防止」が同志運動の戦略だと言った。レズビアンの声はそれによって全面的に消されてしまったけれど。その後、ある人は「生まれつき論」が有効な戦略だと言った。なぜなら、「やむをえない」状況ならば受け入れられやすいからだと。さらにその後、彼らは「積極的で肯定的な」同志のイメージの形作ることを始めた。それは、より多くの人に社会的エリートの同志たちを受け入れさせるためだった。

私も、これらの「戦略」がおおむね、ある程度「有効」であることを否定できない。たとえば、同志の社会的可視性を高めるためには有効だろう。しかし、結局、誰が視野に入るようになり、誰がそのために後ろに隠されるのだろうか?  私はこれらの戦略を怖いと感じる。なぜなら、自分が戦略のニーズに合致していないという理由で、いつ運動から放棄されるかわからず、怖いからだ。


私は、2012年のフェミニズム運動について、「レズビアンによって中国のフェミニズム運動の誕生が推進された」と簡単に言おうとは思わないけれども、レズビアンの運動者たちがより強いジェンダー平等意識と社会運動の自覚を持ってこれらのフェミニズムのアクションに参加し、「運動」の形成において重要な役割を演じたことは認めざるをえない。

今年1月、私が上海でのある会議で李麦子
[遠山注:レズビアン]に会ったとき、私は彼女にこのような考え方を話した。その時、麦子は半ば冗談で、半ば緊張して、「もしあなたが発言するときに、『レズビアンが中国のフェミニズムを推進した』と言うのなら、私は『自分は異性愛だ』と言明する」と言った。私は麦子に何故かと問うと、麦子は「そういう言い方は、彼女たちから多くの運動の力を流失させるかもしれないからだ」と述べた。まじめな話、この回答に、私はいささか驚いた。私の心配は焦りに変わった。ひょっとしたら私はもっと繰り返し「私は確固としたフェミニストだ」と表明するべきだったのかもしれないが、私が心配なのは、レズビアンの活動家がこのままフェミニズム運動の中に埋没する、あるいはフェミニズム運動の中の「レズビアン」が主体性を喪失する――この欠落は、戦略的考慮にもとづいて主体に放棄したのかもしれないし、受動的に遮蔽されたのかもしれないが――ことである。

後に、私は会議で、このような観点を出したとき、すぐ「フェミニストレズビアン」たちの反対にあった。(……)会議に参加していた一人のフェミニスト学者は、「これらのフェミニズムの訴えを主張するのは非常に良い。けれども、レズビアンとしての身分を強調するべきではない。レズビアンであることを強調することは、公衆のフェミニズムに対する誤解を生じさせるし、そのような少数派のセクシュアリティは過度に強調するべきではない」と述べた。私が言いたいのは、これこそが私が心配している状況だということだ。


実際は、私が言いたいのは簡単なことである。

第一に、セクシュアリティ/ジェンダーの平等が基本的立場であり、LGBTであれ、フェミニズムであれ、セクシュアリティの権利であれ、どの陣営でも、これが、協力と共生の基礎である。(……)「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、それは有害な運動の理念だと思う。そうした理念は本当の圧迫と分離を作り出して、一部の人に他の一部の人のために道を譲らせ、既にある既得権益を打ち固め、作り出す。

第二に、運動の協力と結びつきは重要だが、主体の異なった訴えも、常に強調されなければならない。LGBTの訴えは異なるし、フェミニズムの訴えとレズビアンの訴えも異なるし、女性内部の訴えも異なる。人は多面的であり、ジェンダー平等の訴えも多面的であり、どの陣営も一枚岩ではない。普遍的に適用できるフェミニズムはなく、普遍的に適用できるセクシュアリティの権利もない。


上の文はフェミニズム運動のあり方も批判しているのだが、「女権之声」も、この文章に「閲読推薦、討論歓迎~」とコメントを付けて紹介しているので(2011.5.3)、中国のフェミニズム運動が、こうした議論を排斥しているわけではないようだ。

次の大頭「周縁の中の周縁に立つ」(大头「【专题】站在边缘的边缘」2013年5月20日)は、「フェミニズムレズビアングループ」を設立した女性の文である(以下の文も抜粋だが、上の文と同じく、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしている)。

なぜ「フェミニズムレズビアングループ」を設立しようと思ったかという理由の一つは、同志運動に、ゲイが主導し、代弁する情況が深刻に現れているからだ。

公衆レベルでも、同志運動内部でも、「同志=ゲイ」、「同性愛=ゲイ」という理解がかなり一般的である。各地で「エイズ防止」の名の下に、大小の多くのゲイの組織が設立されたが、レズビアングループはその下に付属していて、「同志」の名の下に統合され、忘れられた。多くのレズビアンは、ゲイといっしょに会議をした時には発言権がなく、自分の意見が尊重されないという経験をしている。このままでは、レズビアンたちは焦りを感じ、信頼を感じられなくなりそうだった。そのとき、「フェミニズム」が、自己を確立し、ゲイとは異なる意見を確立する出口になった。

この一、二年、女と男の同志の分岐が現れた後、「レズビアンはよくしゃべる」と言う人が出てきた。これは、次の事実を無視している。レズビアンはもう長い間沈黙してきており、やっと話し始めたばかりだ。しかし、ゲイは今なお、至るところで中国のLGBT集団を代弁している(……)多くのゲイを中心とした組織は、現在「LGBT」という名前を付けている。これは流行していて、国際的な慣例にしたがっており、ポリティカル・コレクトであるけれども、「内部の差異を真に尊重し、理解する」というこの言葉の背後の意味を無視している。同時に、クィア理論に反対する組織者が「クィア」という名称を使っている(……)。

周縁の人が自らの権益を勝ち取るとき、一部の人は主流に入り込むことができるが、もっと多くの人が置き去りにされる。この「もっと多くの人」が、周縁の中の周縁である。すなわち、お飾りとしての「LTB」、辺鄙な地区、経済的状況が良くないLGBT、などなどである。同時に、運動の目的が結局、人の解放――個人の自由・自信・理解の獲得であるのか? それともいささかの量化した結果、たとえば同姓婚姻合法化? であるのか? この点から見て、現在の中国の同志運動は、異なった理念が存在しており、まだ討論がまったく不十分である。


フェミニズムのほうを見ると、奇異なことに、フェミニズムのアクションに参加したら、レズビアンたちは、広義の「女性」の中に身を隠してしまう。レズビアンの運命と異性愛の女性の運命は完全に同じであるかのようだが、実際はもちろんそうではない。「性別」と「性的指向」(カムアウトの圧力を考えてみよ)との二重の抑圧が、私たちの身の上にかぶさっている。このことは、レズビアンの、LGBT運動とフェミニズム運動の中での二重の苦境、二重の失声をもたらしている。

それゆえ、私たちは誰であるかをはっきりさせて、「レズビアン」と「フェミニズム」と「同志」との関係をはっきりさせ、自らの主人になって、相互に尊重するという前提の下で異なった運動と同盟を結ぶ、これこそが未来の方向である。私は誰なのか? それは、単なる「フェミニスト」と「同志」との間を移動するレズビアンの組織者ではない。二重(多重)に抑圧された中で生活している一人一人のレズビアンには語らなければならないことがあるのだ。みんなの経験を集めてこそ、運動のあり方が次第にはっきりし、豊富になる。

積極面を言えば、周縁は力を持っている。なぜなら、失うものは、本当に鎖だけだからである。レズビアンは、男権的社会に対して感情上のニーズもなければ、現実的な利益も得られないのだから、幻想を最も持っておらず、それゆえ、最も勇敢で、最も革命性を持っている。性別と性的指向の二重の反逆は、家父長制的体制を揺るがしうるものでもある。その前提は、私たちがもっと勇敢で、もっと自由で、もっと知恵を持たなければならないということである。



本ブログで以前述べたように、中国の若い行動派フェミニストには、レズビアンなどのセクシュアルマイノリティが多いという特徴があるが(「若い行動派フェミニストたちのネットワークの幾つかの特徴」)、上の文を読むと、その背景として、中国では、同志運動の中の男性中心主義に対する反発から、フェミニズム運動が生まれたという面があるように思う。日本では「新左翼運動の性差別への反発からウーマン・リブが生まれた」と言われるが、それと似たようなものなのだろうか?

それはともかく、その後、フェミニズムとレズビアンの問題に関しては、『クィア レズビアン タイムス』でも他の方が自らの経験や考察を発表しているし、若い行動派フェミニストたちの助言者である呂頻さんも応答している(8)。今後どのような形で議論が展開するのかは、同様の問題を抱えていると思われる日本にいる者としても注目に値すると思うので、今後またご紹介したい(こうした問題は、もちろんフェミニズム運動だけの問題ではないし)。中国の場合、当初からレズビアンであること自体は、とくに隠していない(ただし、メディアなどには宣伝しない)という状況なので、興味深い展開が生まれるかもしれないとも思う。

ただ、若い行動派フェミニストたちが4月6日から15日におこなった西北巡講(李麦子ら)の途上でのパフォーマンスアートでは、就職差別反対のアクションが男でも女でもない「東方不敗」の扮装でおこなわれた(前年は「花木蘭」という女性の扮装でおこなった)し、レズビアンの結婚式もおこなった(詳しくは本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」)。こうした変化は、『クィア レズビアン タイムス』で小燕さんや大頭さんがおこなった異議申し立てと何らかの関係があるのかもしれない、と思う。

(1)Damien Lu(星星)「同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?」爱白网。この文は、発表された日時が書かれていないが、別のサイトに掲載されている同じ文(「同主题阅读:同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?zz」)は、2011年8月26日に掲載されている。
(2)この名前を名乗っている理由はよくわからないが、彼女たちが微博の中で、「月に代わって差別をなくす!」(2011.12.18)とか、「風が強い闇夜の深夜、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/この上なく麗らかな明け方、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/薄暗いたそがれに、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/もう黙ってはいられない瞬間には、いつも美少女戦士レズビアンが空から現れる!」(2011.12.18)とか、「私たちは、月に代わって男性を出発点とした言葉をなくさなければならない。私たちは闘いを宣言しているのよ!」(2011.12.19)と述べているところから見ると、「美少女戦士レズビアン」は、「匿名の女性の正義の味方」といった程度の意味のように思われる。
(3)これは、les+の問いに答えたものなので、より詳しくは、「1月5日les+微访问美少女战士拉拉实录」(les+的blog2012年1月6日)参照。また、「美少女战士拉拉的微博」の発信とそれをめぐる議論のある程度の部分は、微博そのものにアクセスしなくとも、「美•少•女战士拉拉的博客」に、「微博精读:拉拉在LGBT社群中的边缘化地位」、「微博精读:“正面”的同性恋形象」、「 微博精读:酷儿本土化」、「微博精读:同运与艾滋病」、「微博精读:跨性别」、「微博精读:性别规范」、「微博精读:同性恋是一种选择?」、「微博精读:双性恋」、「微博精读:同性婚姻」、「微博精读:女大学生“占领男厕所”」、「微博精读:中国的“同志运动”」、「微博精读:酷儿政治」、「微博精读:对拉拉的定义」、「微博精读:同性恋是天生的?」、「微博精读:同性恋的唯一性」、「微博精读:同性恋的“科学”解释」、「以女性主义角度看问题」として、テーマごとにまとめられている。
(4)华人拉拉联盟委员会「华人拉拉联盟关于酷儿理论争论的声明」同語サイト2011年12月25日。
(5)崔子恩については、白水紀子「中国同性愛小説の作家とその周辺」(山田敬三先生古稀記念論集刊行会編『南腔北調論集―――中国文化の伝統と現代』東方書店 2007年)p.548-557に詳しい。その他、私は読めていないが、郭晓飞「本质的还是建构的?――论性倾向平等保护中的“不可改变”进路」2011年12月28日 (来源:『法学家』2009年第1期)と二言「同性恋:本质还是建构?」二言的日志2011年12月25日とが対照的な議論をしているようだ。
(6)彼女たちに大きな影響力を持つ、女性メディアウォッチネットワークの『女声』誌も、すでに論争中から、「美少女戦士レズビアン」の微博が「クィア」論によってレズビアンの代弁者として登場したことや華人レズビアン連盟が上記の声明を発表したことを好意的に報道していた(「“美少女”激荡同志圈」『女声』第105期(2011.12.26-2012.1.3)[word])。
(7)麦子家的微博2012.4.21。李麦子さんがもう一つ、NGO業界の問題の具体的な事例として挙げたのは、恩派(NPI)公益組織発展センターが企画したお見合いの件である。李麦子さんは、このお見合いのプランがジェンダーステロタイプだったので、それに対して多くの人が微博で異議を出したけれども、黙殺されたこと、そこでやむなく、数人の女性が当日ビラまきをしたら、主催者に包囲攻撃され、「場を壊した」と非難されたこと、その後いったんは主催者が「反対者と一緒に総括会議をする」と言いながら、実際は彼らだけで総括会議をしたことを批判している。李麦子さんは、「NGOの間は垣根を打ち破らなければならない」と述べている。この件については、吕频「相亲非公益 “幸福”是迷思?——我为什么质疑“公益相亲会”和“新幸福主义”」2012-04-13も参照。
(8)大兔[鄭楚然]「【专题】在女权圈中,直着进来,弯着出去」酷拉时报2013年5月6日、Stephanie「【专题】女权拉拉——如何消解身份名词」酷拉时报2013年5月14日、文\Holly 编\典典「【专题】 后现代的“玩”身份政治」酷拉时报2013年5月16日、吕频「关于女权和拉拉」社会性別与発展在中国2013年5月22日。

長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に

昨年11月に続く2回目のパレード

5月17日(国際反ホモフォビアデー)の午後2時~4時20分、100人あまり(「だいたい80-100人」と記している人もある)のLGBTの人々とその友人たちが、湖南省長沙市をパレードしました。パレードのコースは、天馬大ホテルを出発して、潇湘大道の沿江風光帯(湘江沿いの景観道路)を行進し、河西大学城、湖南大学を経て、天馬大ホテルに戻るというものでした(1)

彼(彼女)らは、「私は同志(LGBT、性的マイノリティといった意味)だ、私は誇りを持っている(我是同志,我骄傲)」「同志を支え、差別に反対しよう!(撑同志,反歧视)」というスローガンを叫びながら、レインボーフラッグを掲げて、パレードをしました。全国14省から、男子学生50人と女子学生55人が集まったそうです(2)。隊列の中には、「湖南大学愛Smile 協会(湖南大学爱Smile协会)」という、大学内のLGBT関係グループの旗もありました。

発起人の向小寒さんは、「長沙でこのような活動をするのはもう2回目だ」と語りました(3)。1回目の活動は、昨年11月24日におこなわれたパレード(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」)だと思いますが、このときの組織者も向小寒さんでした(4)。しかし、昨年11月のパレードの参加者は21人(30人余りという報道もあるが)だったのですから、今回のパレードの方がはるかに規模は大きかったのです。



今回のパレードは、「同愛ネットワーク(同爱网络[微博])」という湖南・湖北地区の同志向けポータルサイト(「同愛ネットワーク科技有限公司」という会社組織の形をとっている)が主催した、「2013年夏季大陸(長沙)同志反差別活動」でした。

向小寒さんは、4月5日に発表したプランで、すでに以下のような点を決めていました(5)
 ・活動の日――2013年5月17日(金)
 ・活動の性格――「中華人民共和国集会デモ示威法(中华人民共和国集会游行示威法)」の第7条第2款[*]で規定された、同愛ネットワークという企業組織がおこなう文化宣伝活動である([*]集会・デモ・示威は必ず申請して、許可をもらわなければならないが、「国家機関・政党・社会団体・企業事業組織が法律や団体の規約にもとづいて挙行する集会」は、申請する必要がないことを規定している)。
 ・参加する集団――レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびLGBTにフレンドリーな人々。
 ・活動の目的――集団で歩いて、レインボーフラッグを掲げ、スローガンを叫び、宣材をまき、署名を集め、一緒に写真を撮って、メディアで宣伝するなどの方法で、社会の各界に同性愛文化を宣伝し、大衆の理解と支持を獲得する。同時に、より多くの同志団体と個人がこの活動を通じて鼓舞されて、大陸の同志の平等な権利獲得の事業の中に飛び込み、権益を勝ち取ることを希望する。
 ・主催団体――同愛ネットワーク
 ・共催団体――悸花網、純愛社区、同志亦凡人、点Gayspot、出櫃[カミングアウト]バー、深圳交友網、淡藍網、北京LGBTセンター、成都同志、同愛網、同志権益運動、同性愛者の親と友人の会、同語グループ

向小寒さんは、最初は派出所に申請したのですが、デモはできないと言われたため、企業の形を取って街頭で差別反対の宣伝をすることを試みたということです(6)

このようにパレードをなんとか合法のものとしておこなう努力のほか、幅広く共催団体を求めて、大規模なパレードにしようとしていたこともわかります。また、上のビデオをご覧いただければわかるように、川沿いの遊歩道のようなところを行進しているので、交通の邪魔になるようなパレードでもなかったようです。

弾圧

パレードの当日、出発して2時間後、湖南大学のキャンパスに入った時、大学の指導部2人と大学の警備員4人と交通警官3人がパレードの責任者を探して、「これは許可されていないデモだ」と言いましたが、パレードの隊列を解散するようには言わず、そのままパレードは続けられました。

しかし、翌18日の午前2時半ごろ、数名の湖南大学の警備員と私服警官が、向小寒さんら5人を湖南大学の警備室に連れて行って拘留し、携帯電話も取り上げました。彼らはそのまま長沙市公安局岳麓区分局に連れて行かれて、拘留、訊問されました。弁護士がいなかったので黙秘していると、ある警官は、「あんたが何も知らないのなら、おれがあんたを殴っても、俺も知らないと言う」と言って脅したそうです。

そうして岳麓区分局が訊問記録を作ると、午前11時ごろ、彼らのうち4人は釈放されましたが、向小寒さんは、違法デモをしたという理由で12日間拘留されることになりました(7)

5月19日、長沙市公安局岳麓区分局は、「5月17日14時ごろ、向某(男、19歳、沅凌の人)は、公安機関の許可なしに、無断で80余名を組織して、岳麓区潇湘大道・桃子湖路などでデモをした。5月18日、長沙市公安局岳麓分局は、『中華人民共和国集会デモ示威法』第28条第2款第1項の規定[*]にもとづいて、向某を行政拘留12日に処した」と発表しました([*]「申請してない、または申請したがまだ許可を得ていない集会・デモ・示威」に対しては、「公安機関は、この責任者と直接責任を負う者に対して警告あるいは15日以内の拘留に処すことができる」)。(8)

李方平・藺其磊の両弁護士は、5月21日、「長沙の同性愛活動家の“小寒”が行政拘留12日に遭ったことに関する法律的意見書」を発表しました(9)(以下は、その一部の抜き書きです)。

私たちは、小寒(向某の常用名)の行政拘留不服事件の再議の申請および行政訴訟の予定の委託弁護士である。

一 小寒が組織した活動は、「集会デモ示威法」で言う厳格な意味でのデモではなく、街頭で記念日を祝い、差別反対を唱えただけである。

「中華人民共和国集会デモ示威法」第2条は、「中華人民共和国内で集会・デモ・示威をおこなう際は、みな本法を適用する。文化娯楽・スポーツ活動・正常な宗教活動・伝統的民間習俗活動には、本法を適用しない」と規定している。

私たちは、小寒が組織した「国際反ホモフォビアデー」の祝賀活動は、一種の文化娯楽および差別反対の唱導活動であると定義されなければならず、「中華人民共和国集会デモ示威法」によって規制されるべきではないと考える。

二 たとえ小寒が組織した活動がデモだとしても、このように厳しい処罰をするべきではなく、警告と教育で十分である!

わが国が1998年に署名した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第21条は、「平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない」と規定している。

わが国の「集会デモ示威法」は、1989年10月31日に公布施行され、24年来ずっと改正されていない。この法律の市民の集会デモ示威の権利に対する規制は極めて厳格であり、事前に許可を要求するうえ、許可されていない活動には行政処罰を課すこともできる。わが国の公民の集会デモ示威は、許可が必要なだけでなく、許可される数がきわめて僅かである。憲法が規定している市民の集会デモ示威の権利が、「集会デモ示威法」の規制の下で、認可されることが常態ではなく特例になるとき、合法的な市民の集会デモ示威はマレなものになる。政府が、手続きが欠けている(申請していない、または許可を得られなかった)ことを理由にして、市民に対する人身の自由を奪う処罰をすることは、正義ではなく、違憲である。

もし警察がそれでも小寒に誤りがあったと主張するにしても、警告か教育をしさえすれば、それでよいのである。19歳の青年が、初めてこうした公益活動をしたことに対して、どうしてこのような厳重な処罰をする必要があろうか?

とくに警察に人道的な考慮を求めたいのは、小寒の母親は深刻な精神障害であり、小寒が彼女の世話をしているということである。警察はできるだけ早く小寒を釈放して、一日も早く母と子を一緒にしてほしい。


(1)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日、阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(2)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(来源:华声在线)。
(3)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。
(4)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(华声在线)。
(5)小寒「2013年夏季大陆(长沙)同志反歧视活动策划方案」同爱网2013年4月5日。
(6)阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(7)以上は、大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日。
(8)未经许可搞游行 同性恋街头反歧视活动组织者被行拘」红网-潇湘晨报2013年5月20日。
(9)关于长沙同性恋活动人士“小寒”遭行政拘留十二天的法律意见书」同语拉拉资讯的微博5月21日17:24。

「2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」

昨年12月26日、淡藍網(さまざまなセクマイの話題を扱っているが、全体的に見ればゲイサイト)が「2012年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」を発表しました(「淡蓝网盘点:2012年中国十大同志新闻」淡蓝网2012年12月26日)。

昨年までの10大ニュースは以下のとおりでした。
・「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース
・「『2010年中国10大同性愛ニュース』
・「『2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース』

1.福建初の男性同性愛の結婚式が多くの人の注目を引いた

10月2日、福建の寧徳市柘栄県で、陸忠さん(24)と劉旺強さん(20)との結婚式が公開でおこなわれた。結婚式自体に参列したのは60人ほどだったが、新婦役を数台のオートバイで出迎え、2人の周りには千人にのぼる観衆が集まり、2人はみんなの前で抱き合ったり、キスをしたりした (「视频:福建男同性恋情侣的盛大婚礼」淡蓝网2012年10月3日[来源:海西晨報])。

この件は、日本でもニュースとして取り上げられたほどです(「男性カップルが初の公開同性婚 小さな町は大騒ぎ―福建省」ライブドアニュース[毎日中国経済2012年10月17日]、「公開結婚式を行った同性愛者、見物に1000人以上が集まる―福建省寧徳市」レコードチャイナ2012年10月18日)。

といっても、べつに2人は自分たちのことを革新的だと思っているわけではなく、陸忠さんは「私たちは比較的伝統的で、比較的保守的なので、単純に結婚式をしたいと思っていて、結婚してこそ1つの家族になると感じたのです」と語っています。

また、陸さんは、「私たちは、もともと戸外で結婚式をすると決めていたのですが、その後、脅さました。政府とか、公安局(警察)とかの機関などにです」と語っています。陸さんによると、2人が「閙洞房(友人などが押しかけて、2人をからかいつつ、祝うこと)」をやっているとき、公安局は、あちこちのカラオケ店に行って、カラオケ店の主人に、「2人に会ったら、警察に届けなさい、われわれが捕まえる」と言って回ったということです。また、2人は、当初はあるホテルに宿泊して、そこで「閙洞房」をする予定だったのですが、公安局の圧力がかかって、小さな旅館に変更せざるをえなかったそうです(「婚礼内幕:对话福建结婚同志」淡蓝网2012年10月21日[来源:網易])。まだ、こうした厳しい状況はあるということです。

また、上の記事(「视频:福建男同性恋情侣的盛大婚礼」淡蓝网2012年10月3日[来源:海西晨報])の中のビデオを見ると、集まった人々は、物珍しさ、ないしは興味本位で写真を撮るためにカップルを取り囲んで揉みくちゃにしているようにしか見えません。

2.黄耀明・何韵詩などの有名人が相次いでカミングアウトした

今年4月23日、香港の歌手・黄耀明[アンソニー・ウォン] (wikipedia による説明)が達明一派のコンサートで、世間に「私は同性愛者だ」と公表した。5月、香港の有名なDJでテレビ番組司会者の蘇施黄がテレビの中で平然とカミングアウトし、家族が彼女の別な一面を受け入れてくれていることに感謝した。9月、香港立法会の議員・陳志全(慢必)が同性愛者という身分を対外的に公表し、香港の立法機関の最初の公然たる同性愛者議員になった。9月はまた、香港の船舶王の趙背曾の女児・趙式芝と時計商人の娘の楊如芯の2人が、フランスで民事パートナーシップの手続きをしたことを高らかに宣言し、同性パートナーシップ関係のカップルになった初の有名人になった。11月10日、女性歌手の何韵詩[デニス・ホー]が香港プライドパレードで同性愛者であることを誇り高く宣言した。

黄耀明さんのカミングアウトに関しては、日本のブログの中にも、話題にしている方がいました(「勇敢宣布:『達明一派』のアンソニー・ウォン(黄耀明)が同性愛を正式に公表『僕はゲイです』」華流 チャイナ日和 (又名:華流的一天) 2012年4月25日)。

趙式芝さんの件については、日本ではむしろ、彼女の父親が、娘の男性の結婚相手を見つけるために61億円を払うと言ったことのほうが話題になりました(「娘が同性婚を公表 香港の富豪、趙世曾氏は認めず、61億円で婿探し」yahoo!ニュース[毎日中国経済2012年9月27日])。

以下は、それぞれについての淡藍網の記事です。
・「黄耀明演唱会高调出柜:我是同性恋者」」淡藍網2012年4月23日。
・「艺人苏施黄公开承认同性恋 感激家人接纳」」淡藍網2012年5月13日。
・「香港立法会议员陈志全出柜 誓为同性恋者争平权」淡藍網2012年9月11日。
・「香港名媛赵式芝与同性密友杨如芯结婚」淡藍網2012年9月22日。
・「2012香港同志游行争取平权 何韵诗现场出柜」淡藍網2012年11月10日。

3.杭州の性教育の書物の同性愛者差別が疑われ、編集責任者がお詫びをした

このニュースについては、淡藍網も、「国内のセクシュアル・マイノリティ[同志]たちが、『ホモフォビア』の教材を公然と譴責し、出版した側と交渉したことは、中国のセクシュアル・マイノリティが差別反対の面で受動から能動に変わったことを示している」(1)と高く評価していますし、私も関連記事を読んで、以下で私なりに少し詳しく紹介してみました。

性教育の指導書のホモフォビア

昨年、杭州市教育局は、『青春期, 請家長同行(思春期には、保護者が同行するようにお願いする、といった意味)』(杭州市教育局家長学校総校・杭州市教育科学研究所編、東北師範大学出版社出版 2011年)を「性教育の指導書」として推薦しました。杭州市は、同書を、何回かに分けて中高生の保護者に5万冊贈呈し、学習活動をするつもりであるとも報じられました。

しかし、同書は、「性の逸脱を予防する」という節の中で、「性の逸脱」の一つとして「同性愛」を取り上げていました。同書は、「[同性愛の]大多数は、『後天的』に形成された異常な行為だ」と述べ、「性逸脱の患者は、一般には病院で治療するのが良い」とも言っていました。さらに、「同性愛」についての解説の中で、「同性愛者は、社会の風俗道徳に背いており、そのために彼らは、性格がひねくれて人付き合いがよくなく、奇妙になり、人生観・道徳観において常人と異なるため(……)一般的な社会的心理や社会秩序と協調できない。」「思春期の男の子や女の子は(……)同性愛者のセクハラに警戒・識別・抵抗しなければならない。」「同性愛のもう一つの危険は、各種の伝染病と性病にかかりやすいことである」とも述べていました(p.61-63)。

編集責任者に抗議、改訂を約束させる

『青春期, 請家長同行』はそれほど広く販売されなかったようですが、それでも、この本を手に入れた阿強さんが、自分のミニブログ(微博、「中国版ツイッター」とも呼ばれる)で問題点を指摘し、8月26日には自らのブログ「夫夫生活」でも同様の批判をして、本を回収するよう要求しました(2)。彼の指摘を受けて、他のさまざまな人からも批判の声が上がりました(3)

8月27日には、「同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)」(阿強さんも執行委員の1人)の保護者18名も、連名で杭州市教育局に手紙を出して、本を回収するように求めました(4)

8月29日には、同性愛者の組織である「浙江愛心工作組」の責任者の王龍さんとボランティアの「哥」さんが、杭州市教育科学研究所に赴いて問題を指摘しました(5)。そして、9月2日には、編集責任者で、杭州市教育科学研究所の党委員会書記で、副所長でもある韓似萍さんと面会することができました。

2時間あまりの意見交換の後、韓書記は、自分は同性愛についてあまり知らなくて、本の中の同性愛に関する記述の大部分は抜き書きだったと率直に認め、お詫びをすると述べました。彼女は、12月に出る第2版では、同性愛に関する差別的な個所などを削除するなどの改訂をし、その改訂を通じて、学生や保護者、教育関係者に同性愛についての科学的な情報を伝えたいと述べました。

彼女は、また、同性愛者の人々への理解を深めるために、座談会などの方法で、大学や高校・中学の同性愛の学生の意見を広く聞きたいと言い、王龍さんたちに男児の青春期教育のシンポジウムに出席してもらうように求めました(6)

座談会で詳しく説明、理解を深めさせる

シンポジウムのほうはどうなったのか分かりませんが、王龍さんたちは、11月11日、韓書記の招きで、性的指向とトランスジェンダーの問題についての座談会(「中国性学会青少年性健康教育専門委員会座談会」という形で行われたようです)に参加しました。

座談会には、浙江愛心工作組の王龍さんのほか、ゲイグループ「杭州同志」(サイト)や「ヒマワリの花開く杭州LGBT」(ブログ「向阳花开•杭州LGBT」、豆瓣「向阳花开•杭州」)のメンバー、「クィアフォーラム」(酷儿论坛)というサイトの管理者、LGBTの高校生のボランティア、台湾から交流にやってきていたボランティアなど、多くの人々が参加しました。性教育が専門の北京大学の徐振雷副教授も来ました。

座談会は、午後7時半から9時40分ごろまでおこなわれました。最初は、王龍さんや徐振雷副教授が、「同志」という語の起源や「性的指向と性別とを混同してはならない」といったところから話を始めて、いろいろ説明したようです。しかし、それだけでなく、参加者が、自分や自分の身の回りの経験、たとえば保護者や教師の受容や理解のこと、さまざまな差別やいじめについて語ったことが非常に効果的で、全体として成功したとのことです(7)

私は、中国では既に2001年には、同性愛は「中国精神障害分類と診断標準」から削除されて病気とは見なされなくなったにもかかわらず、いまだにこうした認識の性教育の指導書が作成されたことにまず、驚きました。しかし、それとともに、今回、同性愛者をはじめとしたLGBTの人々の幾つもの草の根のグループが機敏に反撃して改訂を勝ち取り、党の書記との座談会に参加するに至ったことも強く印象に残りました。

(1)淡蓝网盘点:2012年中国十大同志新闻」淡蓝网2012年12月26日。
(2)阿強「来看看杭州教育局编发的“恐同”书籍」夫夫生活2012年8月26日。
(3)杭州性教育书涉嫌歧视同性恋 网友呼吁召回」淡藍網2012年8月26日、「通稿:杭州教育局力推的图书被指内容公开歧视同性恋」夫夫生活2012年8月26日、「杭州教育局力推的图书被指内容公开歧视同性恋」愛白網2012年8月26日(←この中の写真に、『青春期, 請家長同行』の原文が鮮明に写っています)。
(4)同性恋亲友会多位家长写给杭州市教育局的建议信」同性恋亲友会.PFLAG China2012年8月31日。
(5)同志哥「前往杭州市教育科学研究所沟通《青春期请家长同行》教材不妥之处的收获 」杭州同志2012年8月29日。
(6)杭州性教材被指歧视同性恋 主编表达歉意」淡藍網2012年9月6日、「中国性教育图书被指歧视同性恋 权益组织抗议」愛白網2012年9月1日(来源:荷蘭在線)。
(7)この座談会については、参加者の「同志哥」によって(私自身もまだちゃんと読めていないほど)詳細な総括がなされています (「2012年11月11日杭州市教科所性倾向问题座谈会小结」向阳花开•杭州的日记2012年12月19日。座談会の参加の呼びかけは、同志哥「[同言碎语] 杭州市教科所同性恋问题社区座谈会」2012年11月10日)。

4.湖南長沙で初の同志パレードが差別反対を訴えた

→本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」参照。

5.女性同性愛者の献血の禁止令は解除されたが、男どうしで性行為をする者はまだ認められない

→本ブログの記事「中国、女性同性愛者の献血禁止を撤廃」、「女性同性愛者らの組織『同語』、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘」参照。

6.10人の同性愛者の母親が公開状を出し、立法によって性的指向の差別を禁止するよう訴えた

3月8日の国際女性デーに、各地の「同性愛者の母親」が、「同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)」のブログに公開状を発表して、全国人民大会の代表と全国政協の委員に向けて、立法によって子どもたちが差別を受けないようにすることを求めました。

尊敬する全国人民大会の代表と全国政協の委員へ

私たちは全国各地の、子どもが同性愛者である、「同性愛者の母親」と呼ばれる者たちです。私たちの子どもは、性的指向が同性であるために、入学や就業の過程でしょっちゅう差別をされている(学校から退学を求められた子どもさえいる)ために、心に大きな傷を負っており、保護者達も心を痛めているのに、助けを求めるところがありません。

社会学の常識では、同性愛者は人口の3~5%を占めています。すると、中国には約6000万名の同性愛者がいて、その保護者は約1億2000万人いることになります。同性愛者の保護者として常に苦慮し心配しているのは、子どもが入学や就職をしたときに、法律的な保証がないために、差別をされることです。実際、国内の多くのところで、同性愛者が社会的差別が原因で自殺する悲劇が起きています。中国の大多数の家族は一人っ子なので、子どもがいなくなると、家族が破壊され、希望がなくなってしまいます。

私たちの子どもは、性的指向以外は、大多数の人とまったく違いはなく、善良で、自立しており、家族に思いやりがあって、国を愛しており、それぞれの職業でこの国を建設するために役割を発揮しています。けれども、いささかの人の差別によって、彼らの大多数は、家族や友人にも自分が同性愛者であることを言うことができず、生活は圧迫され、心理的・精神的にも苦しめられています。私たちの子どもが社会で生活するには、家族の理解と受容だけではまったく不十分であり、法律を制定して、入学と就職の際に、性的指向によって差別されてないようにしてこそ、私たち保護者は安心できるのです。

私たちは、国家が人種・肌の色・性別・性的指向・宗教・身長・年齢・体重などに関する差別をすることを禁じる内容の「反差別法」をできるだけ早く制定することを提案いたします。反差別法は、私たちの同性愛の子どもを差別から保護するだけでなく、他の弱い立場の人々をも保護することができます。

私たちは、全国人民代表大会の代表と政治協商会議の委員に、1億2000万の「同性愛者の保護者」の声に関心を持ち、耳を傾け、6000万の同性愛者の平等と尊厳に対する渇望をその身になって考えていただき、できるだけ早く「反差別法」を制定していただくように訴えます。

(「10位同志母亲致全国人大代表和全国政协委员的一封公开信」同性恋亲友会.PFLAG China2012年3月8日)

7.北京:同性愛の恋人がバレンタインデーに結婚の登記をしようとしたが、やんわりと断られた

登記所の係員にはやんわりと断られたけれども、登記所の外でキスをして、人々にアピールをしたということです。

資料:「北京:同性恋情侣情人节登记结婚被婉拒」2012年2月14日(来源:苹果日报)。

8.華中科学技術大学の学長:大学は同性愛の学生を差別しない

昨年1月、華中科学技術大学の学長の李培根さんが、学生と交流会をしたときに、学生から同性愛について尋ねられて、「我々の学校では、まだこの問題を討論していないけれども、社会全体が同性愛も理解できるようになり、少なくとも容認する態度になった。我々が若い時には、同性愛は違法だったが、今は時代が変わった。世界の多くの国々が同性愛に対して理解する態度を取るようになった。一般の民衆も以前は反感を持っていたけれども、現在は容認できるようになった。私たちの学校は同性愛を差別していない」と答えたという話です。

しかし、この程度の話が「10大ニュース」の一つなのだということは、まだ大学内でも同性愛者差別は深刻だということを意味しているように思います。

資料:「华中科技大学校长:学校不会歧视同性恋学生」淡藍網2012年1月5日(来源:武汉晚报)。

9.仏山:84歳の退職幹部が性転換をしようとし、トランスジェンダーの権益の保障を望む

10.同性愛の夫が騙して結婚したことを認め、成都の高学歴のゲイの妻が悲しみと憤りで自殺した

910については、本ブログの記事「『第5回(2012年)中国10大セクシュアリティ/ジェンダー事件批評』」の57参照。

なお、私は、上の10大ニュース以外に、以下のニュースも重要だと思いました。

新版の『現代漢語辞典』が、「同志」の語義の中にセクシュアル・マイノリティなどの意味があることを掲載しなかった

新版の『現代漢語辞典』にも、「同志」の語義の中に、「セクシュアル・マイノリティ」(「同性愛者」「ゲイ」「LGBT」と訳したほうがいいことも多いですが)があることが掲載されませんでした。新版には、「宅男」(おたく男)、「宅女」(おたく女)のような新語が採録されたことも話題になったのですから、「同志」の語義の中にそうした意味が掲載されていないのは不合理なように思います。

資料:「新版《现代汉语词典》拒收录“剩男剩女”等词」網易新聞2012年7月15日(来源:央視)、「《现汉》中无“同志”,江蓝生解释“雷人”」荷蘭在線2012年7月16日。

北京紀安徳相談センターが「中国のLGBT組織 合作と発展フォーラム」を開催し、多様なLGBTが集まり、多元的な議論がおこなわれた

6月16日-17日に北京紀安徳(ジェンダー)相談センターが開催した「中国のLGBT組織 合作と発展フォーラム」では、LGBT団体の協力や発展において直面している困難や問題、LGBT運動の理念・戦略・方向についての討論がおこなわれました。全国から53団体、23地区、80人あまりのLGBT組織と個人が出席したということです。

参加人数はそれほど多くないかもしれません。しかし、北京紀安徳相談センター執行主任の魏建剛さんが、歓迎のあいさつの中で、「障害者のセクマイ、FTMとMTFの両方を含むトランスジェンダーの人々、ゲイの妻、同性愛者の母親、SMとセックスワーカー団体の代表を迎えることができて、大変にうれしい」と語っており、さらには老人の同性愛者やバイセクシュアルの代表、新疆やチベットの団体もいらっしゃったそうです。

このように非常に幅広い人々が参加して、「多元的な対話」がおこなわれ、そのうえで相互の協力が模索されたことが、このフォーラムの特徴のように思います。

済南Les工作組のTonyさんは、「皆さんはLGBT団体の指導者なのだから、私が次に来るときには、皆さんに『トランスジェンダーとは何か』という知識を普及しなくてもよいようになることを希望する」と訴えました。また、大連障害者同志ホットラインの盲人の韓震さんは、「私にできるかもしれないことは、皆さんに障害者のセクマイという集団の存在を見てもらうことだ」と述べ、レズビアン団体の「同語」の徐玢さんも、LGBT運動の多元化の必要性を説きました。

設けられた分科会も、「同志運動とジェンダー運動の協力」「周縁の地区での同志運動の発展」「青少年同志組織の発展」「LGBT組織の中の周縁グループ」「エイズ防止運動と同志運動の協力」「異性愛者と同性愛者の協力」といったものでした。こうした分科会では「激烈な討論と誠実な展開」がおこなわれたそうで、このフォーラムが意欲的・挑戦的なものであったことがうかがえます。

資料:全体のまとめは、「2012中国LGBT组织合作与发展论坛 新闻稿」北京纪安德咨询中心サイト2012年6月20日、「2012中国LGBT组织合作与发展论坛召开」同志亦凡人(内容は上と同じだが、写真入り)。さまざまな議論を報告しているのが、王浩「2012中国LGBT组织合作与发展论坛 观察报告」北京纪安德咨询中心微博2012年6月21日。

長沙市で中国大陸初のLGBTパレード

11月24日、湖南省長沙市で、中国大陸初のLGBTパレードがおこなわれました。

このパレードは、午後2時半から、21人(1)(「30人あまり」という報道もある(2))が、黄色や白のTシャツを着て、レインボーフラッグやさまざまな訴えを書いた紙片を持って行進しました。彼(彼女)たちは、南湖大市場を出発して、五一大通りを経由して長沙駅までパレードをし、道行く人にレインボーフラッグなどを配布しました。

記事の中の写真(記事1記事2)を見ると、Tシャツには、「差別反対」とか「カミングアウトしよう」といった言葉が書かれており、紙片には、「Yes.I am gay」、「性は媒介物にすぎない。性別とは無関係だ」、「同性愛≠異類[異類:人類とは種を異にするもの]」といった主張が書かれています。

この写真この写真からは、まさにパレードをしている様子がよくわかります。

パレードの組織者である「向小寒」さんは、事前に準備した300本余りのレインボーフラッグと100余りの記念品は全部なくなり、少なくない市民が支持し、いっしょに記念写真に収まったと述べました。

ただ、紅網の記者が、レインボーフラッグを受け取った20人近くの人に尋ねてみると、中年男性の1人が、これは同性愛を示す旗だと答えましたが、他の人はレインボーフラッグの意味を知らず、スローガンもよく見えなかったと述べました。

青年たちの中には、レインボーフラッグを受け取った後、騒いだりお互いにからかったりしていたのに、記者がインタビューすると、「よく知らない」と口々に言った人たちもいるようです。また、インタビューに応じた人は、みな「同性愛を差別したことはない」と強く言ったということです。

初めてのパレードであり、なかなか困難な条件の下でおこなわれたことがわかります。

パレードに参加した中南大学の学生の「小邪」さんは、自分はけっして性的指向を隠さないけれど、もしパレードのときに知り合いの先生や同級生に会ったら、隠れるかもしれないと述べました。

発起人の「向小寒」さんは、この活動は、先週長沙の公安部[警察]に届けており、これは、大陸の都市の初めての同性愛差別反対のパレードのはずだと語ったということです(3)(べつに車道をパレードしたわけではありませんし、日本のデモのように警官が交通整理をするわけではないのですが、無事におこなわれたことはたしかです)。

ある同性愛者は、同僚にからかわれたことがあって、不快だったと語りました。同性愛の教師やソーシャルワーカーは昇進できない、と指摘する人もいました。同性婚を合法化してほしいと言う人もいました。

沿道の一般市民も、自分は同性愛者ではないが、同性愛者は差別されてはならないと語ったと書いてある記事もあります(4)

なお、今回のパレードについて、メディアは「同性愛街頭游行」と報じており(といっても、報道したメディアは非常に少ないのですが)、記事中にも「同性愛者」という言葉しか出てきません。しかし、写真を見ると、扮装から見ても、トランスジェンダーかな? と思われる人もおり、メディアは一般の人の理解のことを考えて「LGBT」とか「同志」という言葉を使っていないだけの可能性(あるいはメディア自体がLGBTのことを同性愛者としてしか理解していない可能性)も大きいと思います。また、このパレードは、まず間近いなく、外国や台湾、香港のパレードに想を得ていると思いますので、「LGBTパレード」と書かせていただきました。

(1)湖南长沙同性恋街头游行 路人接旗不认“同”」紅網2012年11月24日。
(2)【中华论坛】逆天了! 长沙同性恋街头游行(组图)」中华网论坛2012年11月24日。
(3)以上は、(1)に同じ。
(4)以上は、(2)に同じ。

※写真は、「湖南长沙同性恋街头游行 呼吁公众消除歧视」现在新闻2012年11月26日(来源:现在网-长江商报)、「中国同性恋志愿者街头游行呼消除歧视」第一金融网2012年11月25日(来源:狐捜)にも多い。

北京クィア映画祭についての映画が、関西クィア映画祭2012で上映されます

北京クィア映画祭(北京酷儿影展)については、本ブログでも、簡単にご紹介してきました(「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」「第5回北京クィア映画祭は当局に中止を命じられるも、ゲリラ的に開催」)。

きたる関西クィア映画祭2012(大阪 9/15~17、京都 10/12~14)の中で、「わたしたちの物語 ~ 北京クィア映画祭と十年間の『ゲリラ戦』(我们的故事――北京酷儿影展十年游击战)」(監督:楊洋 2012年)が上映されます。日本語字幕付です。

この作品は、10月13日(土)の11:30(開場11:10)から京大西部講堂(アクセス)で上映されます。42分間の作品です。

以下の制作者による作品紹介が、関西クィア映画祭2012のサイトに掲載されています(邦訳は福永玄弥さん)。

▼開催直前にキャンセル!? 性への偏見と検閲の残る北京で、何度も最大級のトラブルに見舞われる。場所を変え、名前を変え、彼らは闘い続けた。彼らの声がつなぐ、その先は。
▼このドキュメンタリーは、十年間にわたる「ゲリラ戦」をたたかいぬいてきた北京クィア映画祭の物語だ。
 2001年に北京大学で生まれた同映画祭は、中国国内でジェンダーやセクシュアリティをテーマにした唯一の映画祭として非政府団体により運営され、過去十年のあいだ五回にわたり開催されてきた。性的少数者の権利について公に語ることが政治的に困難であり、かつメディア検閲の問題がある中国において、映画祭の歴史はつねにトラブルとともにあった。開催地を北京市西部より東部へ、あるいは都市部から郊外へと「戦線」を転々と移してきた同映画祭は、昨年2011年にはついに北京市内への「凱旋」を果たしたものの、政府の干渉と検閲から逃れるためにゲリラ作戦の手法をとらざるをえなかった。
 本作品は、過去の記録映像をもちいて同映画祭の歴史を回顧するとともに、それにたずさわってきたわたしたちの物語を語る試みでもある。


映画の字幕も福永玄弥さんです。福永さんは、自らのブログでも、この作品を紹介する連載を始めておられます(「『わたしたちの物語 〜 北京クィア映画祭と十年間の「ゲリラ戦」』(連載1)」「わたしたちの敵はどこにいるのか?(連載第2回)」)。

チケットは、この作品を見るだけでしたら、「1回券」(当日1600円、前売1300円)を購入すればいいようですが、プログラム一覧を見ると、他にも興味深い作品が多いようですので、「3回券」や「京都パス」、「関西フリーパス」などを購入するのもいいかな、と思います(「チケットについて」参照)。

その他、詳しくは関西クィア映画祭2012のサイトを見てください。

女性同性愛者らの組織「同語」、新献血政策に対して見解――男性同性愛者に対する政策の問題点も指摘

すでに本ブログで、この7月から中国が女性同性愛者の献血禁止を撤廃する新しい規定を施行したことや、それまでの女性同性愛者たちの運動についてはお伝えしました。

この件に関しては、その後も中国のメディアで取り上げられているのですが、その中では、男どうしで性行為をする人(MSM)については、相変わらず一律に献血が禁止されていることも話題になっています(1)。それらの報道の中には日本でも紹介されたものもありますが、それをもとに、2ちゃんねるでは、「男性同性愛者の献血、中国では禁止 (´・ω・`)『お前らもゲイの血なんかいらないよな』」とか、「『エイズが染るかも知んないけど差別はいけない』と専門家・・男性同性愛者の輸血解禁訴える」といった差別的なスレッドが立てられたりしていますので(そもそも中国で引き続き禁止されているのは、あくまでMSMの献血であって、男性と性行為をしない男性同性愛者の献血は禁止されていません。また、「エイズが染るかも知んないけど差別はいけない」などと言っている専門家がいるという報道はまったくありません。完全に捏造です)、今回は、この件に関する議論を紹介します。

この件に関しては、7月10日、中国の女性同性愛者らのための民間組織「同語(同语)」が見解(2)を発表して、女性同性愛者の献血が可能になったことを歓迎するとともに、男性どうしで性行為をしたことがある者の献血を一律に禁止していることを批判しました。

その声明の内容を以下、ご紹介します(抄訳であり、はしょっている部分もあります)。

2012年7月1日、衛生部と国家標準化管理委員会が共同で発布した「献血者健康検査要求」(GB 18467-2011国家基準)が正式に施行された。この基準は、もとのGB 18467-2001(1998年発布)に替わるものであり、「同性愛」問題において重大な修正をした。新しい国家基準は、ある特定の身分集団(麻薬を吸引したことがある者、同性愛者など)に対する概括的な禁止令を撤廃し、それに代わってハイリスクな行為を規制したのであり、明確な進歩性を持っている。

新しい国家基準の5.2.2条「安全な献血者の重要性」によると、「リスクが高い行為をおこなう献血者、たとえば静脈注射による麻薬中毒者だったことがあるとか、男どうしの性行為とか、血液によって伝染する病気(エイズ・C型肝炎・B型肝炎・梅毒など)の危険がある者とかは献血してはならない」。この条項を、もとの国家基準の4.5.3条の「エイズにかかりやすいハイリスクグループ、たとえば麻薬を吸引したことがある者、同性愛者、多くの性のパートナーがいる者」の献血を禁止していた規定と比べると、大きく改善されている。新しい国家基準は、同性愛者の献血を一括して禁止していたのを、男どうしの性行為をする者の献血禁止に改めて、女性同性愛の献血禁止令を緩めた。このことは、同性愛者差別をなくし、女性同性愛者の献血を励まし、血液不足を緩和する上で有利である。

同性愛・バイセクシュアル・トランスジェンダーの者の権益を唱えている民間組織の「同語」は、このたびの「献血者健康検査要求」の改正を歓迎する。私たちは、同性愛者という身分に対してではなく、リスクが高い行為に対して規制をした新しい献血政策は、中国社会の同性愛者たちに対する近年の認知の進歩を体現していると考える。

しかし、新しい政策には、なお若干の不十分な点がある。それは、男どうしで性行為をする者(MSM)に対する永久的な禁止令は、依然として性的指向に対する差別である疑いがあることである。

世界には、「男どうしの性行為」に対する献血を禁止、あるいは延期[原文が「拖延」なのでこう訳しましたが、性行為以後、検査でHIVに対する抗体が検出できない時期が終了するまでは献血を禁止するということ]する政策が広く存在している。しかし、そうした政策も、時代や科学技術の変化などの要因によって、たえず変わってきた。

イギリスもかつては男どうしの性行為に対しては、終身、献血を禁止していたけれども、2011年、この規定は改定された。イギリス保健省のサイトの2011年9月の情報によると、「血液・組織及び臓器安全諮問委員会」は、事実にもとづいて審議をして、男どうしの性行為の永久の献血禁止令を12ヶ月の延期政策に改める決定をした。新しい法律の規定は、過去12ヶ月間に男どうしで性行為をした人は、コンドームを使用したか否かにかかわらず、献血を禁止するというものである(3)。オーストラリアでは、男どうしの性行為に対する献血政策は、つとに2000年に永久禁止から1年間の延期政策に変わっている。2004年には、Michael Cainという名の男性同性愛者が、その政策は差別の疑いがあるという理由で、オーストラリア赤十字を裁判所に訴えた。裁判所は最終的には原告の請求を退けたけれども、時代の発展にしたがって献血政策は不断に審議・修正されなければならないことは認めた。この態度は、オーストラリア赤十字によっても採用された。

現在、南アフリカや日本などの国は、男どうしの性行為に対して、6ヶ月の献血延期政策をとっている。これが、世界中で最も短い献血延期の期限である。そして、EU・イタリア・スペインなどの法律には、男どうしの性行為に関する規定はなく、リスクが高い行為をした人の献血を禁止することを強調しているだけである。

男どうしの性行為をした者の献血禁止令は性的指向による差別と関わりがあるので、その禁止令の改正はなお各国で激しく議論されている。その改正方法には主に2つで、第一は、献血禁止期間を短縮することである。第二に、「男どうしの性行為」という言葉をなくして、かわりに「リスクが高い行為」にすることである。各国で状況が異なるために、この政策の変化のプロセスと方法は完全には同じでないけれども、検査技術の進歩とエイズ流行グループの変化にともなって、献血に関連する禁止令も時代とともに進化しなければならない。「同語」は、中国でも、男どうしで性行為をした者に対する終身の献血禁止令が、時代と科学技術の進歩にしたがって、最終的には過去のものになることを期待している。


他にこうした声明を出している同性愛ないしLGBT関係の団体は見当たらなかったのですが(献血それ自体は、同性愛者にとってそれほど切実な要求ではないからかもしれません)、さまざまな差別に反対する活動をしている陸軍さん(北京益仁平センター常務理事)も、新しい政策が女性同性愛者の献血を認めたことについては評価しつつも、男どうしの性行為をするものを排除したことは、「欠陥」であると指摘しています(4)

この件に関しては、「同語」の見解の中にある「第二」の方法をとるのが一番合理的でしょう。男どうしの性行為でも、セイファーセックスをしている人もいますし、男女間の性行為でも、リスクが高い性行為をしている人もいるわけですから……。

(1)我国女同性恋已可献血 有性行为男同仍被禁」新浪網2012年7月10日(来源:金陵晩報)、この記事の翻訳が、「ゲイの献血禁止 レズの献血禁止令解除 新『献血者健康検査要求』実施――中国」萍水園~KIDのKitschなブログ~2012年07月10日、翻訳ではないが、この記事がもとになっていると考えられるのが、「新献血法、女性同性愛者の献血OKに」人民網日本語版2012年7月10日。また、「解禁“女同”献血引议 专家称女同性恋者献血无危害」鳳凰網2012年7月11日(来源:京華時報)もあります。
(2)【同语发布】解读中国献血新国标:女同性恋献血禁令历经14年终获解除,男男性行为规范有待进一步改进」同语发布 2012年7月10日(同语サイト2012年7月11日掲載)。
(3)原文にはここに注はありませんが、その状況がわかる日本語記事として、「同性愛者の男性にも、献血の機会を提供」(Onlineジャーニー2011年9月13日)があります。
(4)专家称禁男同献血操作性低 解禁女同为接轨国际」人民網2012年7月16日(来源:京華時報)。この人民網の記事の出典である「禁男同献血操作性低 解禁女同为接轨国际」(京華網2012年7月14日)をもとにして書かれたのが、「男性同性愛者の献血禁止とその理由=専門家が差別撤廃訴え―中国」レコードチャイナ2012年7月16日です。ただし、レコードチャイナの記事は、「男性同性愛者」と「男どうしで性行為をする者」とを混同しているという点で、原文の記事とも、社会の現実とも異なっています。

[2012年7月18日追記] 2012年7月16日付レコードチャイナの記事の出典が誤っているというご指摘をコメント欄でいただきました。深くお詫びするとともに、記述を訂正させていただき、レコードチャイナの記事についての記述を、注(1)から注(4)に移動させていただきました。

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