2017-06

子どもの性的侵犯に直面した家族の経験の研究

 龍迪『性之恥,還是傷之痛:中国家外児童性侵犯家庭経験探索性研究(性の恥か、傷の痛みか:中国の家の外での子どもの性的侵犯に関する家族の経験の探索的研究)』(広西師範大学出版社 2007年)が、今年5月に出版されました(ネット書店「書虫」のデータペースの中のこの本のデータ)。
 英文名は「Child Sexual Abuse: Shame or Hurt」で、副題は「An exploratory study of the experiences of rural chinese families facing an extry-familial child seual abuse ploblem upon disclosure」と訳されています。

 著者の龍迪さんは、北京理工大学ソーシャルワーク部助教授、同大学の家族ソーシャルワーク研究センター主任だとのことです。
 2001年から2005年では、香港中文大学ソーシャルワーク学部の大学院で研究なさいました。この本は、博士論文を出版したものです。

 この本の構成は以下のとおりです。
第一篇 研究のバックグラウンド
 第一章 序論
 第二章 文献回顧
 第三章 初歩的な概念枠組み
 第四章 研究方法
第二篇 家庭の物語
 第五章 敬家:「この子はしつけないといけない!」
 第六章 沈家:「生活にまた意欲がわいてきた。」
 第七章 李家:「目の前に少しも明かりが見えない。」
 第八章 周家:「誰も、彼女が心の中で何を考えているのかわからない。」
 第九章 呉家:「子どもに後遺症はない。」
 第十章 張家:「そのことは言うな。そのうち忘れるだろう。」
 第十一章 六つの家の絵巻の全体
第三篇 研究者の理解
 第十二章 討論
結語
あとがき

 まだざっと見ただけですが、各章ごとに大づかみな内容を紹介します。
 まず、第一章では、中国本土でも子どもの性的侵犯の被害者は少なくないのに、援助を求めるところがないこと、それゆえ子どもの性侵犯の防止と治療のための専門的サービスの基礎になるように、この研究をしたことが述べられています。
 第二章では、この問題に関する西洋や香港の先行研究を概観しています。それらの研究によると、子どもの性的侵犯に対しては家族のサポートが重要であるにもかかわらず、子どもの性的侵犯によって家族のサポート力が傷つけられるとのことです。また、中国においては、「孝道」や「貞操」概念が、被害者や家族を責める文化を構築してきたと述べています。
 第三章では、この研究は、社会構築主義を哲学的基礎にして、「システム―個人―文化(ジェンダー)―抵抗力」という多角的な視点の枠組みによって、広範な社会―歴史―文化的背景の下での、中国の子どもの性的侵犯についての家族の経験を探求するものであることを述べています。
 第四章では、社会構築主義の研究方法について述べたうえで、この研究のサンプルは、中国の北方のある農村で、男性教師から性的侵犯を受けてきた小学校の女子生徒6人の家族であることを述べます。資料収集の方法は、個人や家族に対するインタビュー、参与的観察などです。現地調査を3回にわたっておこない(1回目から3回目までの期間は6カ月)、その間の変化も探りました。
 第五章~第十章では、6つの家族について、それぞれ、もともとの家族の状況、性的侵犯がわかったプロセス、家族の対応の策略と行動、トラウマの経験、家族関係の変化、家の外のシステムの影響、その後のトラウマの状況、専門的なサービスに対する需要などを記述・分析しています。
 第十一章では、それらを総括しています。そこでは、子どもの性的侵犯は、女児本人にトラウマを負わせるだけでなく、家族全体に影響することや、友好的でない村の世論やサポートをしない制度的システムがいっそう家族のサポートを弱め、女児とその家族のトラウマを強化することが述べられています。専門的サービスに対する要求などについても考察されています。
 第十二章では、この研究の理論的意義と限界、貢献、今後の研究方向、実践的意義と具体的な提案について述べられています。たとえば具体的な提案としては、中国の現行刑法が処女膜の損壊の程度を問題にしていて、個人の身体権や男児の性的侵害を無視していることを改める、侵犯者に対する処罰だけでなく、彼らの教育や被害者のサポートや、そのための専門的な訓練をした人員の養成が必要であることなどが述べられています。
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