2017-09

陳敏『吶喊:中国女性反家庭暴力報告』

 陳敏『吶喊:中国女性反家庭暴力報告』(人民出版社 2007年)が、この5月に出版されました(ネット書店「書虫」のサイトの中のこの本のデータ)。

 構成は以下のとおりです。
第1章 何が家庭内暴力か
第2章 家庭内暴力についてのよくある誤解
第3章 加害者
第4章 被害者
第5章 家庭の暴力的関係の中の子ども
第6章 あなたはどうすべきか

 これは、中国で初めて出版された、家庭内暴力についてのきちんとした啓蒙書だと思います。
 中国では、2000年に研究者などが、家庭内暴力反対ネットワーク(反対家庭暴力網絡)というNGOを結成するなど、近年、家庭内暴力に対する取り組みがすすめられています。家庭内暴力反対ネットワークは、家庭内暴力に関する調査研究、関係者への研修、家庭内暴力防止法の建議稿の作成などをしており、それらは、ジェンダーの視点も取り入れておこなわれています。
 ただし、これまで彼女(彼)らが出版してきた書物は、どちらかと言えば専門家向けのものでした。
 けれど、この本は、一般の人々に家庭内暴力に関する正しい理解を深めてもらうために出版されています。たとえば、この本の第2章は、家庭内暴力に対するさまざまな俗論を批判しています。また第4章は、被害者や本当に自分を変えたい加害者、支援者などに対する実践的な助言を掲載しています。

 著者の陳敏さんは、中国で初めて「バタードウーマンシンドローム」の理論を紹介した人として有名です。陳さんは、その理論を生かして、弁護士としても、家庭内暴力の被害者の女性が夫を殺してしまった事件の弁護などに活躍してきました。「家庭内暴力には調停は適用すべきではない」ということを最初に主張した人でもあります。
 また、被害女性のサポートグループ(受虐婦女支持小組)の顧問やグループ長を8年間、担当してきました。
 この本を出版したのは、陳さんが、家庭内暴力の被害者から「私たち被害者が読む本も書いてほしい」と言われたことや、裁判官が家庭内暴力について理解しているか否かが、被害者の夫殺しの量刑を大きく左右するという経験をしてきたことなどによるものです。

 一般向けの啓蒙書ですから、すでに家庭内暴力についてよく知っている人にとっては、あまり面白い書物ではないかもしれません。
 けれど、挙げられている事例の多くは、サポートグループのメンバーの体験などであり、けっしてどこかの外国の事例の借物ではありません。
 また、こうしたわかりやすい一般向けの書物が出版されたこと自体が、中国の家庭内暴力反対活動の一里塚だと言えるのではないかと思います。

 追記:栄維毅さんの綿密な書評「受暴女性自我救助指南及所有相関人群的必読書――読《吶喊:中国女性反家庭暴力報告》」が家庭内暴力反対ネットワークのサイトに出ています。
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