2017-11

「中国における企業の社会的責任(CSR)」報告書

 海外事業活動関連協議会(Council for Better Corporate Citizenship:CBCC)は、このところ、毎年、「中国における企業の社会的責任(CSR)」についての報告書を以下のように出しています。
 海外事業活動関連協議会とは、「海外で事業活動をおこなう日系企業が、進出先社会から『良き企業市民』として受けいられれるよう、ステークホルダーズとの良好な関係作りを支援するため、経団連(現 日本経団連)により1989年に設立された団体」だとのことです(ホームページ)。

・『CBCC対話ミッション「中国における企業の社会的責任(CSR)」報告書』(2005年1月)
・『CBCC中国シンポジウム代表団報告書』(2006年4月)
・『CBCC対話ミッション「中国における企業の社会的責任(CSR)」報告書』(2007年3月)

 (詳しくはホームページの「報告書」のコーナー参照。「団長所見」もPDFファイルで読めます。)

 いずれの報告書も、以下の2点がテーマです。
(1)中国におけるCSRについて
(2)日系企業や海外事業活動関連協議会の今後の課題について

 (1)の点も興味深いのですが、私はとくに(2)の点に注目しました。
 なぜなら、中国の農村からの出稼ぎの女性労働者は、低賃金・長時間労働という劣悪な労働条件で働いているのですが、そうした女性労働者はしばしば外資系の企業やそのサプライヤー(下請け)の生産ラインの労働者だからです。すなわち、その労働条件に関しては、日本を含めた外資系の企業も責任を負っているのです。
 実際、このブログでも取り上げた、ユニデンの中国工場における若い女性の出稼ぎ労働者ら1万数千人のストライキ(2004年12月発生。詳細)に関しては、日本総研の創発戦略センターによる「CSR Archves」のニュースレターでも、「中国における日系企業のCSRリスク」として取り上げられています。

 さて、上記の海外事業活動関連協議会の2005年の報告書では、以下のように、サプライ・チェーン・マネジメントの取り組みを急ぐ必要性を提起しています。
 「欧米企業では‥‥各社が世界共通の行動規範に基づき、関連会社及びサプライヤーへの‥‥定期的監査を実施している。監査の方法は業種により異なるが、各社のプログラムに基づき、社内外の監査チームが自社の定める行動規範に即して、サプライヤーにおける職場環境、労働基準などについて監査を行っている。‥‥これに対し、日本企業は、サプライ・チェーン・マネジメントへの取り組みはまだ始まったばかりであり、体制の整備やCSR担当者の任命などが急がれる」

 また、今年3月の報告書では、NGOとの協力の必要性について触れています。
 「欧米系企業は、欧米系NGOや中国の草の根NGOとの間に良好な協力関係を築き、社会貢献活動の推進に活用している。‥‥日系企業も‥‥長期的な視野から中国におけるNGOへの支援や協力を検討すべき時期に来ている」

 欧米系企業のサプライ・チェーン・マネジメントやNGOとの協力は、極めて不十分とはいえ、出稼ぎの女性労働者の労働条件改善に若干の成果を挙げています。ですから、日本の財界系の団体も、そうした取り組みの必要性を指摘したことは重要だと考えます。

 ただし、上で挙げた3つの報告書は、基本的には、海外事業活動関連協議会の代表団が、各地で中国や欧米のCSR関係団体や日本企業と意見交換をした記録にすぎません。けっして日本企業の取り組みについて詳しく述べた報告書ではないのです。出稼ぎの女性労働者の話もほとんど出てきません。
 また、2年前に指摘された「サプライ・チェーン・マネジメントへの取り組み」も、まだ具体化されたという話は聞きません。

 日系企業が中国におけるCSR活動に本気で取り組むためには、市民団体や労働組合がこうした問題に対する取り組みを強めて、企業を監視することが必要なのではないかと思います。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/83-83a57d7a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はtooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpまで。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード