2017-10

『中国家庭研究』第1巻出版

 上海社会科学院家庭研究中心編『中国家庭研究』第1巻が、2006年12月に出版されました(書虫ウェブサイトの中の、この本のデータ)。

 といっても、この本は、すでに発表された代表的な論文を集めたもので、第1巻は、1980―2000年に発表された、社会学と人口科学領域における、中国の家族を研究した論文を収録しています。ですから、読んだことのある論文もかなりありました。
 『社会学研究』から13本、『中国社会科学』から6本、『北京大学学報』『中国社会学』『清華社会学評論』『中国人口科学』から1本づつ、収録されています。
 女性やジェンダーの問題を直接扱った論文も、張翼「中国人口出生性別比的失衡・原因与対策」、李銀河・陳俊傑「個人本位・家本位与生育観念」、佟新「不平等的性別関係的生産与再生産――対中国家庭暴力的分析」など、いろいろ収められています。

 ところで、「序に代えて」で、鄭杭生氏(中国社会学会会長、中国人民大学教授)は、近年、家族研究の学界における地位が低下していることに強い危機感を表明しています。
 鄭氏は、その原因として、以下のような点を挙げています。
 ・「わが国の経済・社会構造の急激な転換」。「この過程で、客観的に、都市化や労働力の移転、階層のアイデンティティ、社会の公平、人口の高齢化、社会保険・保障などの問題が突出し、主観的にも、以前の家族研究の主力が、自らの主な注意をその他の専門領域に移した。」
 ・「1980年と2001年の2度の『婚姻法』の改正と社会的な大討論が終わり、また基層の単位と社区などの公共領域の、個人の私生活に対する関与がしだいに歴史となり、離婚率の上昇がもう道徳の崩壊や社会の不安定の警戒の指標にならなくなった。」
 ・「国内の家族研究の学科の隔離が、以前からの問題である。家族研究は学科を超えた交流や浸透、融合に欠けており、この点が理論的な革新や、複雑で多元的な社会の難題を有効に解決する障害になっている。」

 けれど、現実にはさまざまな重要な家族問題が起こっているのであるから、家族研究を復興しなければならないと鄭氏は説いています。

 しかし、鄭氏の文の題名は「調和[和諧]社会建設の中で家族研究を重視しよう」となっています。この題名は、最近の政権のスローガンをタテマエ的に借用しただけという面もあるでしょうが、婦連などは、「調和社会の建設→その一部として調和家族の建設」という議論をしがちで、女性個人の権利を副次的なものとして扱う傾向もあります。それだけに、研究までもがそうした傾向には陥ってほしくないとは思いました。
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