2017-04

本年の動向6―同性婚姻立法の提案

2月 李銀河、同性婚姻立法を提案。白永梅も、温家宝首相に李銀河の提案を支持する手紙を出す。

 2月に、李銀河さんという著名な女性の性科学者が、同性愛者どうしの結婚を認める法律を制定すること(同性婚姻立法)を提案しました(彼女はすでに2003年と2005年にも提案しています)。
 彼女はこの提案を、全国政治協商会議(全国政協。幅広い人々が政治について話し合う会議。立法権や決定権はない)の常務委員の万鋼さん(同済大学の校長)に送ります。
 彼女は、提案理由として以下の5点を挙げます。
 第一に、現行の法律にもとづけば、同性愛は中国の法律に違反しておらず、同性愛者は各種の権利を有する中華人民共和国の公民であること。
 第二に、同性愛者はマイノリティなので、多くの国家は差別を禁止する法律を設けており、同性の婚姻や家庭のパートナーシップを認めている国も増えていること。
 第三に、同性愛者の関係は、婚姻という形で束縛と保障がなされていないので、一部の同性愛者は意のままに交際して、性病の伝染の可能性を増大させていること。
 第四に、同性愛者どうしの結婚を認めなければ、同性愛者の多くも異性と結婚して出産するので、人口抑制に不利であること。
 第五に、同性愛者の権利を認めたほうが、西洋のように同性愛者のデモや激烈な衝突が起きず、このことは、中国文化の平和で調和を重んじる精神と合致していること。
 同性婚姻を認めるための具体的方法としては、李銀河さんは、第一に、同性婚姻法案を制定するという方法、第二に、中国の婚姻法の「夫妻」という二字を「配偶」に変えて、最初に「配偶」という字が出てくる箇所に「性別不限」という四字を加えるという方法を提案しています(1)

 続いて白永梅さんが、温家宝首相に、李銀河教授の同性婚姻立法の提案を全人代で成立させるように要望する手紙を出します。
 白永梅さんは、レズビアンで大学生です。
 彼女は、同性愛者は異性とむりやり結婚させられることや、同性愛に対する正確な情報がないために家族や友人からも理解されないこと、自分が同性愛者だとわかって同僚や職場の信頼を失い、そのために仕事も失う心配もあることなど、同性愛者の窮状を訴えます。
 また、同性愛者どうしの関係は隠れたものになるため、安定した関係が築けないので頻繁に相手を変えるため、性病やエイズの危険も大きいことも述べます。
 白永梅さんは、同性愛者が無理に異性と結婚することを、「中国最後の包辨婚(本人の意思を無視して親などから強制される結婚)」と表現しており、これは、婚姻法の「婚姻は本人の自由意志による」という原則に背いていると指摘します。
 彼女は同性婚姻立法を求める理由として次の5点を挙げます。
 第一に、同性愛はさまざまな悪名を冠せられてきたので、法律で同性愛を承認することは、同性愛者が堂々と自分の意思で生活する上で重要であること、
 第二に、中国では男性の同性愛者が女性の同性愛者の2倍いるので、彼らどうしの結婚を認めれば、性別の不均衡(中国では男児志向が強いので、男性の方が多い)がもたらす問題を解決する一助になること、
 第三に、国際的にも、同性婚姻を認めている国があること、
 第四に、中国文化の伝統は同性愛を排斥していなかったのであり、ここ数十年、西洋から来た同性愛の「病理化」「罪悪化」が進行したために、人々が同性愛を恐れるになったにすぎないこと、
 第五に、人々は皆幸福な生活を求めること、です(2)

 しかし、全国政治協商会議のスポークスマンの呉建民さんは「同性の結婚は中国では早すぎる」「けっしてすべての西洋の国が同性の結婚を認めているのではなく、アメリカでもすべての州が認めているわけではない」と言って、彼女たちの提案は生かされませんでした(3)

 その後白永梅さんは、自らのブログ名称も「白永梅的同性婚姻立法論壇」と改め、来年の全国人民代表大会や全国政治協商会議に向けてネットで署名などの運動を始めています。その目的は、第一に、全人代や全国政協の議員に同性婚姻立法を提案してもらうこと、第二に、こうした活動を通じて同性愛者に対する社会の理解を深めてもらうことです(4)

 なお、同性愛者に対する差別の是正が、現在のところ「同性婚姻立法」という形をとっていることは、中国にはまだ婚姻制度そのものを批判する意見はほとんど見当らないことと関係があると思います。
 李銀河さんの提案理由の第三~第五の点も、同性愛者個人の権利ではなく、国家・社会の観点に立ったものです。もちろん李銀河さんとしては、今の中国で法律を現実に制定するためには、こうした国家的な観点も主張しておいたほうが良いと考えたのかもしれません。しかしいずれにせよこのことは、中国では(でも)同性愛者が個人として権利を主張することがまだまだ困難であるという状況の反映であることは間違いありません。

 昨年話題になったのは、昨年12月に開催される予定だった同性愛文化節(Gay and Lesbian Culture Festival)が、公安の圧力で中止になったことです。同性愛文化節のためのサイト(5)まで作られており、李銀河さんは「開幕の言葉」も作っていたのですが‥‥。(この件に関しては、北京に滞在している日本の女性のブログ「ふぇみんとろぷす・ぺきねんしす-某女性主義者在北京過日子-」が現地からの情報を伝えるとともに、日本のメディアの対応の鈍さなどを問題にしておられます(6)。)

 こうした状況の中で、同性の婚姻を認める立法が著名な学者や当事者から出され、メディアの一部で話題にもなっていることはやはり重要だと思います。

(1)「同性婚姻提案」2006-03-01(李銀河的博客[ブログ])
(2)「関于同性婚姻立法,致温家宝総理的一封信」2006-02-24(白永梅的博客)
(3)「李銀河同性婚姻立法再受挫 此観点在中国超前」2006-03-05(南方都市報)
(4)「支持同性婚姻立法鑒名帖」2006-07-05(白永梅的博客)
(5)「第一届北京同性恋文化節」HP
(6)「同性恋文化節とその報道」(2005-12-23)
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