2017-03

女性差別撤廃条約と婦女権益保障法の研修プロジェクト

 今年1月から12月までの間、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターが、中国女性裁判官協会と河北省婦連と雲南省婦連の協力を得て、「政策制定者と法律執行者に対する『女性差別撤廃条約』および『婦女権益保障法』研修」プロジェクトをおこなっています。同センターのサイト内には、このプロジェクトの専用のページも設置されています(「《消除対婦女一切形式歧視公約》《婦女権益保障法》培訓項目」)。
 このプロジェクトは、EUの小型人権プロジェクトの事務局との契約にもとづき、資金援助を受けておこなわれるもののようです(「進行了項目執行的前期準備工作」)。

 上で言う「政策制定者」とは、具体的には、人民代表大会、婦女連合会、労働と社会保障、労働組合、教育などの部門の関係者を指しています。また、「法律執行者」とは、各クラスの裁判所、労働仲裁委員会などの関係者を指しています。
 そうした政策制定者や法律執行者の、女性差別撤廃条約と婦女権益保障法に対する認識と理解を高め、同条約と同法の運用を促進することが、このプロジェクトの目標です。
 具体的には、1.アンケート調査をして、統計と分析をおこなう、2.上で述べた関係者の研修をする、3.シンポジウムを開催する、4.関係メディアで宣伝・報道、5.執行および研修の状況の研究報告の作成を目標にしています。

 このプロジェクトをおこなう理由としては、中国は女性差別撤廃条約を批准し、婦女権益保障法を制定したとはいえ、立法の面でも、法律執行の面でも問題点が多いこと、「とくに法律の執行と司法実践において、法律の執行をする者が婦女権益保障法を法律的に運用することがきわめて少なく、国内法のいささかの不足と空白に対しても、法律の執行をする者が女性差別撤廃条約の原則と精神の運用を試みることがきわめて少ない」ことが挙げられています。
 また、現在、各省・市で婦女権益保障法の施行規則が制定ないし修正中であることや、婦女権益保障法に対する最高人民法院の司法解釈の起草が進行中であることも、このプロジェクトをおこなう一つの理由として挙げられています。

 このプロジェクトはそれほど大規模なものではありません。研修は9回(北京2回、河北の石家荘で4回、雲南の昆明で3回)おこなわれる予定ですが、毎回2日間で40人に対して研修をおこなうとのことであり、合計しても360人が研修を受けるにとどまります(以上は、「《消除対婦女一切形式視公約》及《婦女権益保障法》培訓項目介紹」より)。

 けれども、上のプロジェクトは、昨年8月に国連の女性差別撤廃委員会が、中国では「女性差別撤廃条約は裁判所でまだ援用されたことがない」と指摘し、「女性差別撤廃条約や一般的勧告や関連する国内法を、裁判官・弁護士・検察官などの司法人員の法制教育と研修の内容にする」ように勧告した最終コメント(英語[Concluding comments of the Committee on the Elimination of Discrimination against Women]中国語[消除対婦女歧視委員会的結論意見]。それぞれ11.と12.の箇所参照)に対応した、たいへん意義のあるものだと思います。

 また、婦女権益保障法についても、李秀華さんが調査したところ、裁判官の80%は、婦女権益保障法の内容をよく理解しておらず、たとえば離婚事件の際、判決や調停で使う法律的文献は、婚姻法と民法と最高人民法院の司法解釈だけだったそうです(李秀華「特殊婦女群体婚姻家庭権利之実証研究」劉伯紅主編『女性権利-聚焦《労動法》和《婚姻法》』当代中国出版社、2002年、276頁)。こうした状況を見ると、婦女権益保障法についての研修も、立法者のみならず、法律執行者に対しても重要だと思います。

 さて、具体的に、今年1月の河北省石家荘での研修を見ると、以下のような内容でした。
1)「女性差別撤廃条約」の原則・精神・主な内容、署名の背景と意義
2)「婦女権益保障法」の主な内容、関係部門の「婦女法」執行における職責と任務
3)「河北省『婦女法』施行規則」の修正意見の討論
「在河北省石家荘市挙辨了CEDAW和婦女法的省級培訓班」
 1)~3)からは、中国ではあまりなじみがない女性差別撤廃条約についての話を聞いたというだけでなく、実践的・主体的な研修だったことがうかがえます。
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