本年の動向5―女性の坑内労働
4月 湖南省冷水江市にある炭鉱でガス噴出事故。9名の犠牲者のうち4名が女性。
今年4月、湖南省冷水江市毛易鎮[竹+更]渓村の東塘炭鉱でガス噴出事故が起きました。当日鉱山の中にいた14名のうち6名が女性で、犠牲者9名のうち4名が女性でした。
テレビは、その家族の悲痛な表情を映しました。父母を共になくして孤児になった子どもたちもいました。
事件が起きたあとで湖南省の労働庁などが調べてみたら、同市にある76の鉱山で働いている労働者4713名のうち、249名が女性であることがわかりました。彼女たちは何の訓練も受けずに働いていました(1)。
中国の炭鉱は危険です。毎年何千人も死者が出ています。とくに農村にある小さな炭鉱(郷鎮炭鉱)がとても危険なのです。
中国には女性労働者の保護に関する法規として、1988年に制定された「女性労働者保護規定(女職工労動保護規定)」がありますが、その第5条で、女性の坑内労働は禁止されています。
問題の第一は、違法行為に対する法律上の責任(罰則など)が明確でないことです。
今回の事件でも、上で述べたように多くの女性が坑内労働をしていたのに、現地の政府は放置していました。この点は上の規定だけの問題ではなく中国の官僚主義や腐敗の問題ともかかわりますが‥‥。
第二に、女性が坑内労働をせざるをえない農村の貧困の問題にも注目が集まりました。
今回犠牲になった女性の夫(その人も炭鉱で仕事をしている)は言います。「石炭を掘るのはとても辛くて危険だ。石炭を掘りに行くのは、やむを得ずやってるんで、もしツテがあったら、むしろ出稼ぎに行きたい。でも、家にいる女房にとっては、炭鉱で仕事をすれば収入になるってことで、収入がないよりは結局はいいんだ」(2)。
ある女性は、坑内労働というのは、真っ暗な坑道の中、キャップライトの明かりだけを頼りに汗まみれで真っ黒になって働く辛い仕事だと言います。けれども、一ヶ月で数百から一千元あまりになり、農村の女性にとっては悪くない仕事だったとのことです」(1)。
ある女性は、結婚した後夫婦で新しい家を建てたため、数千元の借金ができました。夫は炭鉱で働いていたのですが、夫の収入は債務や日常の支出に追いつきませんでした。妻もいろいろな仕事をし、一年は北京に出稼ぎに行っていたのですが、たいした稼ぎにはなりませんでした。
子どもが学校に上がる時期が来て支出が急増、妻も炭鉱で働きはじめ、そのまま13年働き続けて今回の事故で犠牲になりました(1)。
上のような報道は、人々に中国の農村の問題、農村の炭鉱の問題に関心を持たせる働きをしました。
ただ、女性メディアモニターネットワークのある人は、今回の報道に足りない点として、「どうしたら女性に就労の機会をもっと多く与えられるか?」、「どうしたら、女性と男性にもっと安全な環境で仕事をさせられるか?」という点にも、もっと関心を持つべきだと指摘します(3)。
上の指摘と重なりますが、呂蘋さんは彼女のブログで、女性の坑内労働を禁止して女性を保護するだけでいいのかという点に疑問を呈します。
彼女は言います。「女性の保護は女性の差別と同義である」、「問題なのは、女性も炭鉱労働をすることではない。問題は、彼女たちが炭鉱にいる男性と同様、必要な労働保護を受けられないことにある」と。
彼女は、ILOが言う「ディーセントワーク(体面労動)」の観点から見れば、「男性であるか女性であるかは、何の区別もない」と指摘します(4)。
つまり第三に、こうしたジェンダーの問題や男性を含めた中国の炭鉱の労働条件自体の劣悪さそれ自体の問題もあります。
この点は、先進工業国に比べて、いまの中国では現実には解決が難しい面があるでしょう。しかしこうした大きな視点も、問題を考えるうえでは大切だと思います。
(1)「冷水江女鉱工13年井下人生」『新京報』2006年5月8日、「東塘鉱難井下竟有6名女工 湖南省婦聯発出強烈譴責」『中国婦女報』2006年4月11日。
(2)「井下為什麼会有女工 湖南冷水江鉱難調査」『中国婦女報』2006年4月15日。
(3)正英「4月:災難新聞中的性別議題」『中国婦女報』2006年5月13日の「伝媒守望」欄。
(4)「女鉱工問題」(5月21日)
今年4月、湖南省冷水江市毛易鎮[竹+更]渓村の東塘炭鉱でガス噴出事故が起きました。当日鉱山の中にいた14名のうち6名が女性で、犠牲者9名のうち4名が女性でした。
テレビは、その家族の悲痛な表情を映しました。父母を共になくして孤児になった子どもたちもいました。
事件が起きたあとで湖南省の労働庁などが調べてみたら、同市にある76の鉱山で働いている労働者4713名のうち、249名が女性であることがわかりました。彼女たちは何の訓練も受けずに働いていました(1)。
中国の炭鉱は危険です。毎年何千人も死者が出ています。とくに農村にある小さな炭鉱(郷鎮炭鉱)がとても危険なのです。
中国には女性労働者の保護に関する法規として、1988年に制定された「女性労働者保護規定(女職工労動保護規定)」がありますが、その第5条で、女性の坑内労働は禁止されています。
問題の第一は、違法行為に対する法律上の責任(罰則など)が明確でないことです。
今回の事件でも、上で述べたように多くの女性が坑内労働をしていたのに、現地の政府は放置していました。この点は上の規定だけの問題ではなく中国の官僚主義や腐敗の問題ともかかわりますが‥‥。
第二に、女性が坑内労働をせざるをえない農村の貧困の問題にも注目が集まりました。
今回犠牲になった女性の夫(その人も炭鉱で仕事をしている)は言います。「石炭を掘るのはとても辛くて危険だ。石炭を掘りに行くのは、やむを得ずやってるんで、もしツテがあったら、むしろ出稼ぎに行きたい。でも、家にいる女房にとっては、炭鉱で仕事をすれば収入になるってことで、収入がないよりは結局はいいんだ」(2)。
ある女性は、坑内労働というのは、真っ暗な坑道の中、キャップライトの明かりだけを頼りに汗まみれで真っ黒になって働く辛い仕事だと言います。けれども、一ヶ月で数百から一千元あまりになり、農村の女性にとっては悪くない仕事だったとのことです」(1)。
ある女性は、結婚した後夫婦で新しい家を建てたため、数千元の借金ができました。夫は炭鉱で働いていたのですが、夫の収入は債務や日常の支出に追いつきませんでした。妻もいろいろな仕事をし、一年は北京に出稼ぎに行っていたのですが、たいした稼ぎにはなりませんでした。
子どもが学校に上がる時期が来て支出が急増、妻も炭鉱で働きはじめ、そのまま13年働き続けて今回の事故で犠牲になりました(1)。
上のような報道は、人々に中国の農村の問題、農村の炭鉱の問題に関心を持たせる働きをしました。
ただ、女性メディアモニターネットワークのある人は、今回の報道に足りない点として、「どうしたら女性に就労の機会をもっと多く与えられるか?」、「どうしたら、女性と男性にもっと安全な環境で仕事をさせられるか?」という点にも、もっと関心を持つべきだと指摘します(3)。
上の指摘と重なりますが、呂蘋さんは彼女のブログで、女性の坑内労働を禁止して女性を保護するだけでいいのかという点に疑問を呈します。
彼女は言います。「女性の保護は女性の差別と同義である」、「問題なのは、女性も炭鉱労働をすることではない。問題は、彼女たちが炭鉱にいる男性と同様、必要な労働保護を受けられないことにある」と。
彼女は、ILOが言う「ディーセントワーク(体面労動)」の観点から見れば、「男性であるか女性であるかは、何の区別もない」と指摘します(4)。
つまり第三に、こうしたジェンダーの問題や男性を含めた中国の炭鉱の労働条件自体の劣悪さそれ自体の問題もあります。
この点は、先進工業国に比べて、いまの中国では現実には解決が難しい面があるでしょう。しかしこうした大きな視点も、問題を考えるうえでは大切だと思います。
(1)「冷水江女鉱工13年井下人生」『新京報』2006年5月8日、「東塘鉱難井下竟有6名女工 湖南省婦聯発出強烈譴責」『中国婦女報』2006年4月11日。
(2)「井下為什麼会有女工 湖南冷水江鉱難調査」『中国婦女報』2006年4月15日。
(3)正英「4月:災難新聞中的性別議題」『中国婦女報』2006年5月13日の「伝媒守望」欄。
(4)「女鉱工問題」(5月21日)
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