2017-10

今年から『中国婦女報』に農民女性を扱う「郷土中国」欄

 中華全国婦女連合会の機関紙『中国婦女報』は、今年1月から紙面の構成をかなり変えました。

 『中国婦女報』は現在、週6日刊で、8面からなる新聞です。
 その後半の4面は特定のテーマに当てられる場合が多く、そのテーマは曜日ごとに決まっています。

 1月の紙面変更でかなり目立つのは、毎週土曜日の後半の4つの面が、農村女性をテーマにした「郷土中国」になったことです。
 「郷土中国」刊行開始にあたっては、「中国女性の80%は農村女性であり、中国農村の60%以上の労働力は女性である」と述べられています。読者としては、農村の末端の婦連幹部や農村女性が念頭に置かれているようです。

 誰が「郷土中国」の責任者なのかな? と思って見ると、「郷土中国」という題字の下に、「全国農村女性『双学双比(=基礎的教養を学び、科学技術を学び、発展を比べ、貢献を比べる)』指導グループ、全国農村巾幗(=女性)建功指導グループの指導」とあります。この点から見ると、全体としては農業生産に対する女性の貢献というテーマが重視されるのでしょう。
 ただし、編集長[主編]は宋美婭さんというフェミニスト的色彩が強い人です。実際、女性の人権という観点も少しは盛り込まれるようです。

「郷土中国」の構成は以下のようになっています。
 第1面(『中国婦女報』全体で数えれば第5面)は「要聞・新事」と題して、女性に関するニュースや調査などを紹介しています。
 第2面は「興業・致富」であり、女性が農業生産によって富を実現することがテーマ、
 第3面は「議事・説法」であり、農村や農民をめぐるさまざまなトラブルを論じ、法を説くことがテーマ、
 第4面は「千家・万戸」であり、実際にあったいろいろなストーリーを紹介するようです。

 1月6日付け紙面から、記事を二つ紹介してみます。
 第1面は、「郷土中国」刊行開始に当たっての婦連の幹部の挨拶がメインですが、左下にやや小さいながら、「2006年の『三農(=農業・農村・農民)』女性ニュース」(1)という記事がありました。そこでは、以下の4件のニュースが挙げられています。
 1.「一万名の農村女性の新農村建設参与アンケート調査」
 2.「村の外に嫁に出た娘(出嫁女)28名が村民委員会を訴える」
 3.「湖南の『女村官』プロジェクトが地方政府創新賞を獲得」
 4.「江永の女書が初めて、非物質的な文化遺産に入る」
 1の「新農村建設」というのは、中国政府が三農問題を解決するために打ち出した構想のことですが、後に述べる第2面に関連記事があります。
 2.は、村民委員会が「未婚の娘は結婚して村の外に出るから、彼女たちには土地を与えない」という決定などをしたことをめぐる裁判で、次回、紹介します。
 3.は、村民委員会の委員に女性を多く送り込むプロジェクトが湖南省でかなりの成功を収めた話で、次の1月13日付一面で詳しく報じられていました(村民委員会の委員の30%を女性が占めたそうです。女性委員の地位や待遇は男性よりまだ低いなど、問題は残っているようですが)(2)
 4.は、日本では遠藤織枝さんが詳しく研究しておられる、女書(女文字)(遠藤氏のサイト「女書世界」)のことです。

 第2面には、「農村女性に10の願いがある」(3)という記事があります。
 「10の願い」とは、だいたい以下のような内容です。
 (1)農業生産発展のための資金や技術、プロジェクト(農村女性の最大の困難は、資金がないこと)
 (2)生産や販売のための実用的な情報や技術指導
 (3)その土地で、農業でない職業につくこと(家族をかかえているために、出稼ぎには行けない女性が多い)
 (4)良い家を建てること
 (5)子どもの教育費が安くなること
 (6)政府が合作医療と養老保険の問題を解決すること(農村の女性には金がなくて医者にかかれない人が多い)
 (7)政府が栽培や養殖のための技術訓練を提供すること
 (8)政府が農村の「汚い・乱れている・悪い」を処理すること(生活環境の改善)
 (9)婦連の組織が、富を実現する情報を提供すること
 (10)婦連の組織が法律的援助(女性の権利やDVに関して)を提供すること
 この記事は、上の1.で挙げた「新しい農村建設」をテーマにしたアンケート調査の中の質問をもとにしています。ですから、この記事にもそうした方向のバイアスがかかっているようにも見えます。しかしそれなりに実態を反映している面もあると思いました。

 第3面と第4面は、1月13日付け紙面から紹介します。
 第3面には、出稼ぎの農民労働者が、賃金の未払いに対して大変な苦労をして賃金を取り戻す話が出ています。
 編者は、この話は「農民労働者に対するわが国の司法手続きと一部の法律執行人員の軽視と冷たさ」を示しているとコメントしています(4)

 第4面には、農民がブログを作っているということで、戴向陽(男性)の「農民の声」というブログが取り上げられています(5)

 『中国婦女報』は、少なくともこれまで農民の読者はほとんどおらず、農村関係の記事もあまり多いとは言えなかったと思います。
 今回、週刊「郷土中国」が開設されたことは、中国共産党が「三農問題の重視」を唱えていることや、農業労働力の多くが女性になったことと関係しているのでしょう。
 ただし、まだまだ農民女性の記事は多いとはいえませんし、また、『中国婦女報』なのですから、もう少し女性の独自の権利についての記事を増やしてもよいのではないかとも感じますが‥‥。

 なお、今年から『中国婦女報』の「女界報道」面(月~金曜の第3面)に、小さいながら時々「NGO」コーナーが開設されたことも、目につきました(もちろんこれまでも、NGOについての記事は掲載されてきましたが)。

(1)「2006─“三農”婦女新聞」『中国婦女報』2007年1月6日。
(2)「99.3%:湖南女村官比例居全国之首」『中国婦女報』2007年1月13日。
(3)「農村婦女有十盼」『中国婦女報』2007年1月6日。
(4)「討薪路上,跑細腿傷透心」『中国婦女報』2007年1月13日。
(5)「農民博客 農民説」『中国婦女報』2007年1月13日。
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