2017-08

本年の動向4―『男性要解放』出版

 6月 方剛・胡曉紅主編『男性要解放』(山東人民出版社 2006年)出版。

 方剛さんは、北京林業大学人文学院の心理学部の先生です。すでに『男人解放』(華僑出版社 1998年 未見)、『性別的革命』(花城出版社 2002年)などの著作があります(個人でブログも作っておられます)。
 ただ、今回の本はそうした個人的著作とは違って、方剛さんたちが2005年3月から開いている「男性解放サロン」という集まりがもとになってできたものです。「男性解放サロン」とは、学者や学生、各界の人々が集まって、お互い自分の経歴や成長の中からジェンダーの問題を考える集まりであり、まだサイトは持っていませんが、サロンの掲示板(BBS)があります
 もう一人の編者である胡曉紅さんも大学の先生ですが、女性です。このように、この本は女性も加わって作られています(胡曉紅さん自身は「モダニティと男性精神」という、理論的な論文を寄稿しています)。

 さて、方剛さんは以前すでに「男性解放主義者宣言」という宣言を出しています(1)。そこで、次のように言っています。
 「男に関するあらゆる固有の教条、とくに男は強くなければならないという教条を放棄しなければならない。どこでも男の寿命が女より短いのは、この、我々の骨髄に深く入った『男=強者』という観念が男を屠殺するからである。
 彼らは‥‥疲れていても、疲れたとは言わない。なぜなら他の男や女に『彼は男らしくない』と言われるのを恐れるからである。」
 まさにメンズリブの宣言と言えると思います。

 『男性要解放』のほうは、届いたばかりで私もまだ十分読めていないのですが、ざっと見た感じで内容を章ごとに簡単に報告してみます。

 「序 男性解放は逃げることのできない使命である」では、男性解放の定義などが述べられているのですが、ここで注目されるのは、その定義が当初とは少し変わってきたことが述べられていることです。当初はなかった「家父長制文化の女性に対する傷害を自覚的に反省し」という文言が加わっています。これは、「男性解放サロン」が成立した当初、フェミニストから歓迎の声とともに、加害者としての自覚を求める声があがったこと(2)と関係があるのかもしれません。
 かくして方剛さんは、次のような「男性の自覚の二重性」を提唱しています。
 「第一に、男性は、家父長制的な文化と体制が女性を傷つけていることを自覚し、女性が平等と自由の生存空間を獲得するのを援助しなければならない。
 第二に、男性は、家父長制的な文化と体制が、男性を傷つけていることを自覚し、反抗する行動をしなければならない。」

 「第1章 背景と理論:私たちは何のために」の中で、方剛さんは、上の第一の点とも関連する事項として、「男性の自覚日」というものを提起しています(3)
 これは、3月8日の「国際女性デー(婦女節)」と対応しているのですが、単純に「女性の祝日があるから、男性の祝日(男人節)も作れ」というのではなくて(そういう主張をする人もいます)、男性が自らの解放だけでなく、女性に対する圧力を軽減するように社会的責任や家庭責任をもっと引き受けるのを励ますという趣旨を含めたものだそうです。

 「第2章 回顧と自己批判:私たちは自覚している」には、男性解放サロンの活動の一環として、メンバーが自分が子どものころから成長してきたありさまを語り合い、議論した記録が収められています。
 一つのテーマは「家族関係の中のジェンダー問題」であり、「男尊女卑」「両性の気質」「男女の役割」「父親の権威」が話題になっています。
 もう一つのテーマは「異性の衝突の中のジェンダー問題」であり、「男は女より『成功』しなければ、恋愛・結婚に差し支えるのか?」「男が女を守ることは、我々に何をもたらすのか?」「両性のゲームとジェンダーの差異」を話題にしています。

 「第3章 傾聴と思考:私たちは成長している」は、メンズリブをめぐる代表的論者(方剛、栄維毅、藍懐恩[この方は女性ですが、台湾の21男性協会の創始者で、やはりブログを持っておられます])の講演と討論の記録です。

 「第4章 唱導と参与:私たちは行動している」では、たとえば男性解放サロンのメンバーが「女権中国(フェミニズム中国)」というサイトが提唱した「公衆トイレ行動」(女性トイレの少なさを是正する行動)に協力して、調査研究をした記録が収められています。
 ただしこの章の他の文章は直接的な実践の記録でありません(メディアにおけるメンズリブ理解に対する反論や、上で述べた「男人節」に関する論争の記録などです。これらも広義における実践ではありますが)。また日本のメンズリブがやっているような、たとえば男性の暴力の問題に対して男性として実践的に取り組むようなことはまだやっていないようです。
 けれど、この点はサロンが生まれたばかりであることとも関係しているのでしょうし、「行動」に関して独立した章を設けたということは、今後より実践的な行動をしていく用意があることを意味しているのかもしれません。

 なお、全体として感じるのは、中国のメンズリブは活動が学者や学生、文化人中心で広がりに乏しいということです。ただし、この点についても、中国のメンズリブはまだ始まったばかりだからかもしれません。また、中国においては政治的自由が乏しいために、学問的な探求が中心にならざるをえない面もあるのかもしれません。

 いずれにせよ、中国でもメンズリブのグループが結成され、声をあげているということは注目に値することだと思います。

(1)方剛「男性解放主義者宣言」荒林主編『男性批判』広西師範大学出版社、2004年。
(2)呂頻「対男性解放運動的質疑」、栄維毅「性別平等中的男性責任」(ともに『中国婦女報』2005年5月17日)。
(3)方剛「男性運動与女性主義:反父権運動的同盟者」(『中国女性主義』5[2005年秋冬号]ですでに発表したものの再録)。
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