2018-06

中国最大の影響力を持つフェミニズムアカウント「女権の声」抹消とその後の「女権の声」に対する誹謗中傷

<目次>
一 「女権の声」の微博・微信などの削除
1.18万以上のフォローワーを持つ「女権の声」の微博と微信などが削除
2.中国各地の民間フェミニズムの活動をつなぎ、リードしてきた「女権の声」
3.「女権の声」編集部の声明
二 「女権の声」に対する誹謗中傷とそれに対する反論
1.「酷玩実験室」による誹謗中傷(1)
2.「女権の声」編集部の声明
3.鄭楚然の反論(1)
4.「酷玩実験室」による誹謗中傷(2)
5.鄭楚然の反論(2)
6.紀小城の反論――排外的民族主義も指摘
7.猪西西の反論
8.女権の声の弁護士が酷玩実験室に手紙、鄭楚然は名誉棄損で裁判所に訴え
9.鄭楚然の分析――酷玩実験室は「コンテンツファーム」
10.酷玩実験室の事務所を探して訪問――正体を隠し、資金源も謎
11.まとめ

一 「女権の声」の微博・微信などの削除

1.18万以上のフォローワーを持つ「女権の声」の微博と微信などが削除

国際女性デーの3月8日から9日にかけて、中国を代表する民間フェミニズム団体「女権の声」の微博(http://www.weibo.com/genderinchina)と微信が削除された。

その理由について「女権の声」が新浪微博に問い合わせたところ、新浪微博は、「敏感(デリケート)な、規則に違反した情報を発信したから」「関係する法律法規にと政策による」と回答した(1)

しかし、「女権の声」がその頃、なにか特に反政府的な発信をしたわけではない。最後の24時間にどのような発信をしたかは、「女権の声」自身がその記録を画像にしたものを発表しているが(ただし、これもすぐ削除された) (2)、セクハラ反対の活動などを報じていただけだった。

「女権の声」の微博は、18万以上のフォローワーがおり、1日のアクセス数も十数万あった。

「女権の声」は、昨年2月~3月にも、30日間、発信を停止させられたことがある。その際にはサブアカウントである「帰来的女神221」でメッセージを発信していたが、今回は、その「帰来的女神221」も削除された(3)

また、ウェブサイトである「女声網(http://www.genderwatch.cn:801/)」も、つながらなくなった。

さらに、「女権の声」の微博と微信だけでなく、いくつかの関連微博も削除されており、「女権主義貼吧」の微博も2月に削除されている(4)

2.中国各地の民間フェミニズムの活動をつなぎ、リードしてきた「女権の声」

「女権の声」の微博は、2010年にできた。「女権の声」や「女性網」は、中国各地のさまざまなフェミニズムの活動を報じ、国外のフェミニズムについても紹介すると同時に、「女権の声」自身が、以下のようなさまざまな活動において大きな役割を果たしてきた。

2012年
・大学入試の合格ラインの男女差別の問題について教育部や各大学に訴え、翌年には、大幅に是正させる。
・英語学習法「クレイジー・イングリッシュ」創始者・李陽のDV事件に取り組む。

2013年
・DV被害者・李彦の夫殺しの死刑判決を食い止める。
・DV防止法の迅速な制定を求める署名を1万2000筆集める。
・女子大学生・曹菊の就職の性差別裁判の提訴を支援し、1年あまりの努力の末に、提訴を受理させる。

2014年
・DV防止法のパブリックコメント募集の際に、さまざまな提起をおこなう。
・「(肖)美麗のフェミニズムウォーク」(北京~広州)を支援する。

2015年
・大学入試の性差別問題について、3年連続で報告書を出して、女子の入学制限の是正を訴える。
・刑法の「幼女買春罪(幼女強姦より罪が軽い)」の廃止を求める活動がついに実を結ぶ。

2016年
・単身女性の生育権についての報告書を出す。
・多くの省の師範教育で男子学生に対する優待がおこなわれていることを指摘し、是正を求める。

2018年
・70余りの大学の学生や卒業生が、母校にセクハラ防止制度の制定するよう訴えを出す。

以上は、あるネットユーザーがまとめた「女権の声あるいはフェミニスト活動家がやったことの整理」の一部である(5)。しかし、このタイトルにも表れているように、実際は、「女権の声」と中国の民間フェミニズム運動とは切り離せない形でおこなわれてきており、「女権の声」の活動だけを取り出すことは不可能であると言える。

ちなみに、本ブログを検索してみたら、本文中に「女権の声」が36か所、注記には「女権之声」の微博が125か所、「女声網」が52か所出てくる。注記で出典を示す際は、当然オリジナルな文章を掲載するようにしているので、「女権の声」が転載したことによって私が知った文章を含めれば、もちろん上の何倍にもなろう。

「女権の声」の微博や微信などがなくなった影響は非常に大きいと言えよう。

3月中頃、「女権の声」とかかわってきた人のうち数人が、人里離れた山の近くで、色とりどりの服と頭巾で全身を覆って、「『女権の声』の葬式」のパフォーマンスアートをおこなった。その幟には「女権不死」と書かれていた(6)

3.「女権の声」編集部の声明

3月12日、「女権の声」の編集部は、以下のような声明を出した(抜粋)。

一、私たちが3月8日の国際女性デーの期間に発信した書き込みは、みな女性の権利とセクハラ反対をテーマとしたものだった。私たちはすべての書き込みをインターネット上で発信しており、誰でも見ることができる。その中には、なんら公共の利益に反する内容はなく、新浪微博の回答は、私たちのどこが法律や規則に反しているのかを指摘できていない。それゆえ、私たちは封鎖という結果を受け入れることを拒否する。

二、女権の声は、中国のソーシャルメディアにおいて、誰もが認める最も影響力を持つ、フェミニズムを伝え唱導する場だったのであり、その唯一の目的は、女性の権利を訴えることだった。これまで8年間、幸いにして多くの仲間たちがともに歩み、私たちとともに中国のフェミニズムの事業の進歩を見守り、創造してきた。私たちが消え去ることによって、中国のインターネットの正義の声を失わせることはできない。

三、私たちはすべての合法的手段によって、私たちの微博と微信のアカウントを取り戻す。私たちはすべての仲間たち、読者、社会の公正に関心を持つ友人たちに、この事件に関心を持ち、私たちの訴えを援助し、私たちにできるだけのサポートをお願いする(7)

これを受けて、多くのアカウントから「女権の声」に対する声援や抗議が出されたが、そうしたものさえ、次々に削除された(8)

もちろん他にもフェミニストのアカウント自体は多数あり、その後も、大学における反セクハラの活動などは続けられている。

しかし、女権の声の微博・微信、女声網の消滅の影響は大きいように思う。少なくとも、インターネット上で見るかぎり、その後の中国のフェミニズム運動は、今のところ沈滞気味である。

二 「女権の声」に対する誹謗中傷とそれに対する反論

「女権の声」の発信が封じられた後、インターネット上に登場したのが、「女権の声」に対する誹謗中傷である。なぜ「誹謗中傷」と呼ぶのかといえば、誤った事実認識と論理的誤謬にもとづく主張だからだ。以下では、その点を含めて、誹謗中傷の内容とそれに対する反論をご紹介する(文中敬称略)。

1.「酷玩実験室」による誹謗中傷(1)

3月16日、「酷玩実験室」というサイトで「蛋蛋姐」という人物が「外国の男から金を取り、中国の女子学生にセックスをさせる? 中国には、なんとこんな『フェミニズム組織』がある」という文章を発表した(9)

「酷玩実験室」というのは、後でも述べるように、扇情的なタイトルと事実をゆがめた内容によってアクセス数を稼いでいるサイトのようだ。中国の検索エンジン「百度」から、百度の従業員に対する名誉棄損で訴えられたこともある。

以下は、その文章からの抜粋を中心にした、その要旨である(ゴシック体は原文のもの)。支離滅裂な文章のように見えるかもしれないが、それは実際にそうだからで、あくまでその文章に沿った抜粋であり、要約である。

私は、「偽フェミニズム」が、なんとブラックな産業チェーンを形成しているとは思わなかった。

一群の人々が「フェミニズム」の名の下に組織的な売春をおこなっており、事情を知らない中国の女子学生を、外国人の男に売りとばしている

「マリー女王」というフェミニストは、中国の男を罵りつくし、「中国の男はこんなに程度が低いから、外国の男を探そう!」と言って、外国の男を紹介している。ところが、その際、外国の男から金をとっている。つまり、中国の女子学生は正常な交際だと思っているが、外国の男は、自分は買春していると思っているかもしれないのだ。

なぜ「フェミニズム」は中国の男を辱め罵るのか? なぜ「外国の男との交友」が、売春組織になるのか?

その原因は非常に複雑だが、私は、現在、中国の多くの大きなフェミニズム組織の背後に、欧米の勢力の影があることを発見した。彼女たちはフェミニズムの名の下に、暴利をむさぼり、欧米の国家のために破壊活動をしている。そのため、真に女性の平等な権利のために奔走している人は、必要な補助を得られていない。その非常に有名なフェミニズム組織は、「女権の声」である。

彼女たちの資金援助者は、なんとフォード財団である。

女権の声の組織の中に、鄭楚然という者がいる。彼女はフェミニズム運動以外、何の仕事をしておらず、フルタイムのフェミニズム活動家である。2015年、彼女は騒動挑発により、警察に30日あまり拘留された。彼女が拘留されたとき、ヒラリー[・クリントン] がそれにかこつけて、中国が人権を侵害し、民主を抑圧していると非難した。中国の小さな民間組織の首領に対して(……)なんとヒラリークラスの者が関心を寄せたのである。ヒラリーだけではない。このような思想的に何の功績もない人を、欧米メディアのBBCは、世界の百大思想家と評したのである。

また、彼女たちは普段から政府を攻撃しており、私たちの国家を分裂させようとしている。たとえば、女権の声という組織にいる著名なフェミニズムの闘士・洪理達(Leta Hong Fincher)は、著名な香港のメディアであるHong Kong Free Pressの言論を転載したことがあり、チベット独立・香港独立・台湾独立の言論を発表したことさえある(として『ガーディアン』の記事を提示している)。彼女はいつも鄭楚然といっしょに活動している。

私にはわからない。もし彼女たちが本当に単なるフェミニストならば、なぜ国家を分裂させる言論を発表しなければならないのか?

外国の金主は中国人に金を与えたら、必ずお返しを求める。彼らが中国の「フェミニズム組織」に金を与えるとき、どのような利益が得られるだろうか?

私たちは、自分が知らないうちに、他の下心を持った人に洗脳されたり、自分が知らないうちに、外国の男に売られて、金を稼がせたりしないよう警戒しなければならない。

2.「女権の声」編集部の声明

3月17日、「女権の声」編集部は、以下のような声明を出した(抜粋) (10)

3月16日夕方、微信アカウント「酷玩実験室」が発表した文章は、ネット上の「売春ブラック産業」のうわさと「女権の声」とを無理やり関連づけるとともに、「女権の声」とその仲間たちに対して、さまざまな誹謗中傷をしている。

「女権の声」といわゆる「売春ブラック産業」とは何の関係もない。この類のいかなる論法も完全な誹謗である。「女権の声」の活動は、他の違法行為にもなんら関わっていない。

私たちは、弁護士の援助を得て、法律的手段をとってこの問題を処理する準備をしている。

3月9日に「女権の声」の微博と微信が、無辜にアカウントが封鎖されたことによって、私たちは声をあげる場を失い、また、大量の歴史的資料を失い、さらに、多くの他の女権関係のアカウントとスレッドがゆえなく削除された。これが、デマが流されているにもかかわらず、みんなが私たちの回答を見ることができない根本的原因である。私たちはすでに中央インターネット安全と情報化指導グループ事務局に訴えを出した。

この回答もすぐに削除された。この後は、主に「女権の声」の関係していた女性たち個々人が反論することになる。

3.鄭楚然の反論(1)

3月20日には、鄭楚然が反論を出した(以下は、要旨) (11)

「酷玩実験室」は大量のロジックの誤りと事実と異なる情報を使って、罪名を私になすりつけている。その罪名は具体的には何なのか?

フェミニズムの旗を掲げて、外国人の男の買春を助けたことか? しかし、全文のどこにも、その仲介者がフェミニストであることを示す資料はない。たとえ彼/彼女がフェミニストだとしても、私にはなんの関係もない。

私は、「酷玩実験室」が、どのようにロジックの誤りと事実でない情報によって、私を誹謗しているかを述べよう。

その文章は、まず、誤った関連づけによって、「ある人が売春の仲介をした」ことと「鄭楚然」とを関連づけている。

次に、文章は大量の事実でない情報を採用している。

1.私は「女権の声」の職員/「首領」だったことはない。

2.文章は、鄭楚然は「フルタイムのフェミニスト活動家」で何の仕事もしていないと言っている。しかし、私は有名なパーティーのプランナーであり、淘宝店(インタネット上の店舗)の店主であり、ゲーム式教学設計の協力者であり、コラムニストであり、文化・創造産業の責任者である。毎日多くの仕事をしながら、同時に男女平等という基本的国策の宣伝をしているのである。

3.文章は、私が騒動挑発で警察に30日あまり拘留されたと言っている。しかし、文章は、私の冤罪事件は、検察院に却下されて、逮捕が認められなかったことを言っていない。逮捕が認められなかった理由は証拠不十分だったからである。つまり、私には前科はなく、法を犯したことはない。このような半分の情報を隠した記述は、中国の法律に対する蔑視である。

4.私はBBCに世界の百大思想家として評価されたことはない。

5.私は洪理達(香港生まれのアメリカ人)に会ったことはない。

6.酷玩実験室の一番ひどいのは、英語が得意でない読者をだましていることだ。洪理達が転載した『ガーディアン』には、どこにも香港独立・台湾独立・チベット独立の記述はない。

以上は、非常に低級なデマである。他に、以下のようなロジックの誤りがある。

1.恐怖にあおる――読者の「欧米」の二文字に対する恐怖を単純に利用し、陽謀(腹蔵のない陰謀)論的に関連機構を攻撃する。

文書は「女権の声に資金援助をしているのはフォード財団である」と述べているが、フォード財団の中国の公式サイトを見ると、2006年から2017年の間に、フェミニズム機構だけでなく、清華大学・北京大学・中国科学院・雲南社会科学院など17481機構に援助をしている。また、フォード財団は2017年6月30日に北京市公安局に登記を完了している。

2.原因についての誤謬

この世界には、「権謀術数」「利益」だけを見て、「正義」「道理」を見ない人がいる。私は、ヒラリーからの声援はどうでもよい。自分がやったことに誤りがないことを自分が知っていれば、それでいいのだ。その37日間に、私は多くの侮辱を受けた。ジェンダー平等を唱えたために、私は獄舎でじっとさせられ、髪は抜け落ち、関節は傷つき、その後にまた、あなたのような人たちに汚名を着せられているのだ。

3.藁人形の誤り――藁人形を立てて、その藁人形を打倒すれば、相手も打倒されると考える。

文章の中の「売春組織」は、明らかに酷玩実験室が立てた藁人形である。私と何の関係もない藁人形を立てて、全力で打倒し、その後で、「フェミニズム組織は外国から金をもらって中国を破壊している」という論断が成立することを宣言している。

今、女権の声が封じられ、多くのフェミニストは発言を禁じられている。さまざまな誹謗中傷にあって、私たちはたえずデマに反論しているが、デマを言う者の文章はずっと残っているのに、デマに対する反論はすぐに削除される。デマを言う者の背後には、結局のところ、どんな恐るべき男権勢力があるのか? 酷玩実験室は、本来科学技術のアカウントだが、今はこのような文章を発表して汚名を着せ、デマを流している。どんな勢力から資金をもらっているのか?

4.酷玩実験室による誹謗中傷(2)

3月23日にも、酷玩実験室は、「香港独立の、偽フェミニストが集まった『準邪教』、私が罵っているのはおまえだ! 女権の声!」という文章を発表した(12)

この文章は、まず、色とりどりの服と頭巾で全身を覆った人が「女権の声」の葬式をしている写真を示して、「これは邪教だ」と言う。

次に、16日に出した文章と同様に、「『女権の声』という組織は国際女性デーのときに、微博を封鎖されたが、(……)広範なネットユーザーがみるところ、背後の原因は、だいたいのところ、外国の資金を受け取って、偽フェミニズムの衣をまとって、実際は国家を分裂させていることにある」と述べる。

また、6年ほど前、ある人が「イスラム国家では、女性は離婚できない」と書いたのに対して、「女権の声」の微博が「イスラム国家は、現在は法律上は、それほど野蛮ではない。現在は、女性は法律的理由に合致していれば離婚できる」と述べたことを捉えて、「女権の声は、公然とイスラム国家の女性の権利の問題は大きくないと言っている。」「外国の男性ならすべてOKで、中国の男性に対しては、あれこれとひどく責める。これが二重基準でなくて何なのか?」と述べる。

また、フォード財団からの資金援助に関しては「女権の声の微博が封じられて以後、彼女たちは『フォード財団』の文字を消した! やましいところがないのなら、なぜ削除するのか?」と言う。

鄭楚然の釈放についても、「BBCのウェブサイトには、鄭楚然の釈放は、『イギリスの外務省の介入』によるもので、ECやアメリカの力もあったと明確に書いてある。一人の『フェミニスト』が騒動挑発によって入獄したことが、なんとイギリスの外務省、EC、アメリカを騒がせたのだ! BBCが賞を出したことと併せて考えると、鄭楚然とイギリスとはどんな関係があるのか? 言わなければならないのではないか?」と言う。

さらに、洪理達がツイッターでは、たしかに台湾独立・香港独立の主張をしていることを述べる。

そして、最後に「中国の利益を売りとばして、欧米社会で紳士になろうとするな。歴史上の数限りない漢奸の末路は、最終的には欧米社会の走狗になるしかないのだ!」と宣言する。

5.鄭楚然の反論(2)

3月23日、鄭楚然は、「あえて酷玩実験室に問う、なぜ私たちの愛国の心を消費してアクセスを稼ぐのか?」という文を発表した。そこには、以下のようなことが書かれている(抜粋) (13)

「香港人の洪理達が国家を分裂させている」と言うが、洪理達は、アメリカ人である。酷玩実験室の創始者・朱紫輝は以前アイセック(AIESEC、Association Internationale des Etudiants en Sciences Economiques et Commerciales、国際経済商学学生協会)にいた。アイセックは多国籍企業とも協力している。多国籍企業の中には、児童労働者の搾取が問題になっている企業もある。酷玩の神ロジックでは、朱紫輝は児童労働者の搾取を支持していることにならないか?

私はと言えば、アメリカのトランプに対して、公然と、反セクハラ、反メールショービニズムの警告をしたことがある!

酷玩実験室は、みんなの愛国心を利用して、10万+の文章をひねり出している。アクセス数は広告費につながるのであり、賃金と株式配当につながる。商売はインターネットではありふれた行為である。

酷玩実験室は、平等を求めるフェミニストを人民大衆から切り離して汚名を着せている。読者の愛国の気持ちを利用して、自分のアクセス数を増やしている。

酷玩実験室がやっているのは、理性的に思考するネットユーザーを排除して、暴力的で論拠を見ず、道理を重んじない戦闘力の強い読者を残して、彼らを確実なファンにして、そのブランドとアクセス数を維持することである。そうしたやり方をしていたら、私たちの社会のネット環境は、憎しみやデマ、暴力に満ちたものになり、一切の反対意見は「狂犬」だとされ、一切の理性的思考は「愛国でない」とされ、一切の討論は白でなければ黒だと言うものに変わってしまう。

6.紀小城の反論――排外的民族主義も指摘

3月24日、紀小城も反論をした(14)

紀小城の反論も、すでに上で紹介した反論と重なる部分が大きいが、以下のようなことも述べている。

・蛋蛋姐(以下、蛋)の先生である潘綏銘もフォード財団の資金援助を受けている。

・鄭楚然らの拘留には、何の道理もなかった。だから、このときは、ヒラリーだけでなく、アメリカの副大統領・バイデン、国務長官のケリーも公に釈放を要求した。カナダ・ドイツ・イギリス・ECの外務省は、みな声明を出して中国に圧力をかけた。アメリカ・日本・韓国・インドなど10あまりの国や地区のフェミニスト団体は街頭でデモをした。国際フェミニズム団体である「女性の権利と発展協会(AWID)」は、国連が同年9月に中国と世界女性サミットを共催する計画を再考する呼びかけさえおこなった。

・もし蛋と蛋の読者が「中国の問題については、外国勢力の口出しは許されない」と思っているとしたら、一つ例を挙げよう。2015年、ISISが二名の日本人の人質によって身代金を要求したときは、中国の外務省のスポークスパーソンは「人質が安全に釈放されるよう望む」と言っている。蛋、人の権利に国境はないのだ。

・蛋は、「女権の声」の抗議行動に「邪教」というレッテルを貼った理由は、彼女たちが抗議行動で顔を覆った衣装を使ったからにすぎない。これは、顔を出すことに一定の危険があったからである。

・蛋は「女権の声」の微博はイスラム国家の女性の境遇に寛容だと言っているが、それは、ある微博が「イスラム国家の女性は離婚できない」「もし離婚しようとしたら、石を投げられて殺される」と言ったのに対して、「法律上は女性が離婚することは禁止されていない」「石打ちの刑は同性愛と姦通に対してのものだ」と言っているだけである。この非常に明晰な微博が、蛋から見ると、「彼女たちはこのように完全な男性覇権の法律をOKだと思っている」となってしまうのでは、蛋の語学水準が文字の仕事をするのにふさわしいかどうか疑わしい。

・蛋は、「女権の声の微博が封じられて以後、彼女たちは『フォード財団』の文字を消した」と言っているが、実際は、ずっと以前に協力組織についての箇所はみな削除している。

紀小城は最後に、「愛国」というテーマについて、以下のように論じる。

「最近、ある原因で、多くの芸能人や会社、組織が自覚的に『愛国』の旗を高く掲げており、若干のセルフメディアも、民族主義を売り物にしていると指摘されている。私は、愛国という商売も当然あっていいし、社会に団結を呼びかける点ではいいところもあるが、酷玩のような嘘をつくやりかたでやってはならないと思う。そうでなければ、『毎日メラミンを一杯飲めば、中国人は丈夫になる(「毎日牛乳を飲めば、中国人は丈夫になる」というスローガンのもじり。牛乳にメラミンが混じっていた事件にもとづく)』と言うのと同じになる。また、酷玩のように人に濡れ衣を着せるやり方でやってはならない。そうでなければ、文革中の紅衛兵と同じになる。まして酷玩のような憎しみを扇動する方法でやってはならない。『女権の声』は男女平等を唱え、セクシュアルハラスメントと性暴力に反対している。もしそれらに対する憎しみならば、あなたは鏡で自分の面構えを見ることができるのか?

国家の間には利益の衝突があるのは国際社会の普遍的現象である。しかし、そのことと国際組織のインターナショナルな協力とは別問題だ。蛋、あなたは両者をいっしょくたにして、排外的な狭隘な民族主義を鼓吹している。これは、あなたの国家が奉じている多角的な原則の主張に背いている。」

7.猪西西の反論

3月24日、猪西西も反論を出した(15)

その反論は、上記のさまざまな反論と重なる部分が多い。たとえば、鄭楚然が釈放されたことについて、そのことは、政府部門が「騒動挑発」罪が成立しないことを認めたということなのだから、「騒動挑発」によって鄭楚然を中傷することは、司法の公正を信じないことになることを述べるなどしている。

ただ、猪西西は、酷玩実験室の文章について、最初は「少しでもフェミニズムを知っている人なら信じないようなでたらめであり、なにも心配はない」と思っていたという。しかし、猪西西は、「私は『少しでもフェミニズムを知っている人』の数を高く見積もりすぎており、この『文章』の影響力を低く見積もっていた。私はそれがすぐに多くのところに転載されるのを見た」と述べており、けっして楽観を許さない事態であることを語っている。

8.女権の声の弁護士が酷玩実験室に手紙、鄭楚然は名誉棄損で裁判所に訴え

3月26日の夕方、女権の声は、親会社の北京趣智阿尓法科技術有限公司と酷玩実験室の蛋蛋姐に対して、以下の2点を要求する弁護士の手紙を正式に出した。

一、酷玩実験室の2つの文を当日中に削除すること。また、転載した他のメディアに削除するよう通知するなどして、悪い影響をなくすよう手段を尽くすこと。

二、2つの文章と同じ場と字数で、「女権の声」と社会公衆に対して謝罪すること(謝罪文は委託者[弁護士]の同意を得ること) (16)

3月29日には、鄭楚然が、酷玩実験室を名誉棄損で裁判所に訴えた。広州市越秀区人民法院は、この提訴を受理した(17)

9.鄭楚然の分析――酷玩実験室は「コンテンツファーム」

また、鄭楚然は、蛋蛋姐(以下、蛋と略す)と酷玩実験室について、以下のように分析している(18)

蛋が中国人民大学で勉強していたとき、ある大先生[潘綏銘]の授業を受け、それを非常に賞賛している。また、蛋は、その先生の影響で、「私は今も同性愛と売春合法化を支持しており、売買春一掃のようなことには絶対反対である」と言っていた。これは、今回、売買春を非難しているのと全く異なる。

また、酷玩実験室は、蛋を「18歳の美少女」と称する一方で、蛋について、「大学院は浙江大学だった」と言っている。「ということは、18歳で大学院を修了した。。。?」(鄭楚然)。

つまり、蛋蛋姐は「設定によってできた『バーチャルな人物だ』」。

鄭楚然は、ある人の指摘にもとづき、酷玩実験室のタイトルの付け方や執筆方式は、「コンテンツファーム」だと述べている。つまり、誇張された、あるいは扇情的な文言をタイトルにして、読者の好奇心を引きつける。同時に、とくにSNSに依拠して宣伝し、内容の正確性の確認を重視しない。そうしたやり方でアクセス数を稼ぐサイトであるということである。

10.酷玩実験室の事務所を探して訪問――正体を隠し、資金源も謎

「女権の声」が酷玩実験室に出した弁護士の手紙には、なんの返事もなかった。そこで、3月30日、3人の熱心な「女権の声」の読者が、酷玩の責任者に会いに行った。

まず、3人は酷玩実験室の事務所の住所として書かれていた、中関村(IT産業や研究所が集積しているところ)の「創客空間」というビルに行ってみた。しかし、そこには「酷玩実験室」と書かれたプレートが掛っていただけで、受付は「酷玩実験室は1年あまり前に、望東に引っ越した」と言った。

そこで、地図アプリ上で、望東にある酷玩の住所を探したら、「モトローラビル(摩托罗拉大厦羅拉)」にあったので、そこに行った。しかし、そこの受付も、「酷玩はしばらく前に引っ越した」と言った。ところが、3人が新しい住所を尋ねたら、その受付は、警戒するような口調で、「あなたたちはどういう人?」と言った。私たちは「私たちは酷玩の読者です」と言ったが、「私たちはあなた方には住所は教えられない。どんな用事があるのか?」と言いつつ、こっそり3人の後ろ姿を撮って、誰かに送ろうとした。3人は厳重に抗議して、受付に携帯の写真を削除させた。

その後、3人は、新しい住所をどうにかして探り当てた。そこは、超高級オフィスビルである「保利国際広場」の9階だった。酷玩実験室は、なんら大きな商売をしておらず、毎日アクセス数が多い文章を書いているだけの「科学技術会社」なのに、その金は、いったいどこから出ているのか? と3人は疑問に思った。

3人は、ビルの管理人に、「私たちは女権の声の読者です。弁護士の手紙に返事がないことについて、酷玩と面談したい」と言ったら、管理人は酷玩に連絡を取り、彼らにすぐ降りてくるように言った。

長い間待たされて、ようやく1人、酷玩の人が下りてきた。しかし、彼は、自分の名前は秘密で、職位も秘密だと言い、声も、やっと聞きとれる程度の小声だった。

彼は、「弁護士の手紙は、弁護士事務所に返事をするのに、なんであなた方と話をするのか」と言った。それに対して、3人は、「返事はしたのか」と尋ねたが、答えは返ってこなかった。

そこに突然、数人の酷玩の職員がやってきて、「私たちは弁護士の手紙は受け取っていない! 受け取っていない、受け取っていないといったら、受け取っていない!」と言った。

3人は「EMSはすでに、署名して受け取り済みだと通知されている。なんで受け取っていないなどということがあるのか!」と言ったが、彼らは逃げて行った。

初めに来た酷玩の人は「自分は酷玩の責任者ではない。責任者は不在だ」と言うので、責任者は誰かと尋ねると、「あなたには言わない~あなたには言わない~みんな秘密だ~」と言った。

ビルの受付によると、登記された会社名は「字節跳動」であり、最初は「酷玩実験室」だとは知らなかったという。

管理人によると、酷玩実験室では、現在、ごく少数の人数しか仕事をしておらず、あたかもまだ引っ越しを終えていないかのようであり、別の場所でも仕事をしているのではないかという。3人は、二番目に行ったところが、そこの受付の態度から見て、そうかもしれないと思った。

3人は、なぜ、こんなに得体が知れない会社なのか、と言い、「狡兎三窟(ずるいウサギは三つの巣を持っている。いくつもあらかじめ逃げ道を用意しておく)」という言葉を引いている(19)

11.まとめ

まず、「酷玩実験室」の主張とそれに対する批判とを照らし合わせてみると、「酷玩実験室」の主張は、その事実認識においても、論理においても、完全に誤ったものであることは明らかだろう。

批判者が指摘するように、「酷玩実験室」はナショナリズムを強烈に煽りたてている。「イスラム国家」を持ち出して、国内の問題から批判をそらしていることも、ナショナリズムの現れだろう。

紀小城は、最近のナショナリズム的風潮の原因について、「ある原因」とぼやかして言っているが、その背景には、習近平政権の「中華の回復」といったナショナリズムがあると言えよう。

また、「酷玩実験室」は、誇張された扇情的な見出しと事実や論理に反する内容にもとづいて、アクセス数を増やして金を稼いでいる。この点は、「コンテンツファーム」の問題点であり、日本の「まとめサイト」などにも見られることである。

鄭楚然が述べている「ネット環境が、憎しみやデマ、暴力に満ちたものになり、一切の反対意見は『狂犬』だとされ、一切の理性的思考は『愛国でない』とされ、一切の討論は白でなければ黒だと言うものに変わってしまう」という憂慮は、日本のネットにも当てはまるだろう。

それだけではない。「女権の声」に対する弾圧と同時に「酷玩実験室」によるデマが流されたこと、資金源が謎であること、住所を隠そうとしていること、責任者が秘密であることなどの点からは、背景には、権力の謀略があることを強く疑わせるのである。

もっとも、この点についても、日本でも、権力の側のインターネット工作はかなりおこなわれていることはたしかであるのだが……。

(1)吕频的微博3月9日 10:48(現在閲覧不能)、「Feminist Voices's Weibo account is censored (again!) on International Women's Day!」Free Chinese Feminists3月9日 13:02、「Prominent Chinese feminist social media account censored on International Women’s Day」HONG KONG FREE PRESS2018年3月9日、「中国“女权之声”微博、微信同时被封」Radio Free Asia2018年3月13日、「The Censored Feminist Voices in China」Free Chinese Feminists 2018年3月15日。
(2)「妇女节,一个女权账号的最后24小时」鱼里鱼闯江湖的微博3月9日09:29(現在閲覧不能)。
(3)女权dianaloves-object3月9日 15:24
(4)春风十里桃花至的微博2月26日 07:27
(5)「我知道女权主义者们都做了些什么吗?」美丽的女权徒步的微博3月23日 16:29
(6)The funeral of FEMINISM VIOCES!」Maizi Li3月15日 19:14
(7)女权dianaloves-object的微博3月12日(現在閲覧不能)。なお、陳亜亜は、「女権の声と某人が攻撃している売春女権組織との間にはたしかに関係がないが、その事実を明確にすると同時に、できればこのような公衆の売春に対する嫌悪を利用して、フェミニズムに汚名を着せるやり方の中に、セックスワークに対する攻撃が含まれていることも認識してほしい」(voiceyaya的微博3月18日 10:29)ということも指摘している。
(8)美丽的女权徒步的微博3月13日 12:10(現在閲覧不能)。
(9)蛋蛋姐「收外国男人的钱,骗中国女生的炮?中国竟有这样一帮“女权组织”」酷玩实验室2018年3月16日、酷玩实验室的微博3月17日 11:36「收外国男人的钱,骗中国女生的炮?中国竟有这样一帮“女权组织”」
(10)「女权之声就网络抹黑时间声明(第一号)」AshFromPlanetGethen的微博3月17日 17:21(現在閲覧不能)。
(11)大兔就是郑楚然「抗击网络诽谤|郑楚然给酷玩实验室的公开警告」滚筒洗脑机2018年3月20日。
(12)酷玩实验室「曝光一伙港独、伪女权聚集的“准邪教”,我骂的就是你!女权之声!」酷玩实验室2018年3月23日 11:59:21。
(13)大兔纸啦啦啦「敢问酷玩实验室,为何消费我们的爱国之心赚流量?」大兔纸啦啦啦的微博2018-03-23 20:05:02。
(14)纪小城5的微博「详解酷玩实验室的蛋抹黑女权组织的事实错误和忽悠之道」2018年3月24日 11:40:45。
(15)猪西西爱吃鱼「讲道理能阻止酷玩造谣攻击女权主义者吗?起码能让人看到谣言多烂呀」猪西西爱吃鱼的微博2018年3月24日 15:41:52。
(16)美丽的女权徒步的微博3月27日 13:46【女权之声已就酷玩实验室抹黑文章发出律师函】
(17)揭秘酷玩蛋蛋姐:精分?中伤?法院已立案你摊大事了」大兔纸啦啦啦的微博3月30日 13:11:07。
(18)同上。
(19)「酷玩酷玩,抹黑女权一点不酷,这可能要玩完」美丽的女权徒步的微博3月31日 10:28
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