2017-04

アジア女子労働者交流センターとCAWネット・ジャパン

 いま私は、「アジア女子労働者交流センター」の機関誌『アジアの仲間』(1~84号。1983.10~2000.3)の合本を読んでいます。
 『アジアの仲間』は毎号8~12ページありますので、合計で約700ページに活字がぎっしり詰まっています。

 また、あわせて塩沢美代子監修、広木道子著『アジアに生きる女たち 女性労働者との交流十五年』(ドメス出版 1999年)も読んでいます。
 この本は、上の『アジアの仲間』の記事の抜粋に解説を加えることをつうじて、アジア女子労働者交流センターの歴史を記述した書物です。監修の塩沢美代子さんの言うとおり、「その活動記録は、そのまま過去二十年あまりのアジアの女子労働者の状況を示しており」、「アジア第三世界の工場労働を主とする、下積みの職場で働く女性たちの実態に焦点をあてたものは、本書が初めて」とも言えるものです。

 『アジアに生きる女たち』は品切れのようですが、『アジアの仲間』の合本は僅少ながら残部があるようです(前者は図書館に多く所蔵されており、後者もお茶の水女子大学などは所蔵しているようです)。
 以下では、この2冊にもとづいて、アジア女子労働者交流センターの歴史を説明してみます。

 アジア女子労働者交流センターは塩沢美代子さんが所長となり、1983年5月に発足しました。
 当時は、韓国や台湾、東南アジア諸国のほとんどが独裁政権下であり、労働運動は弾圧されていました。それらの政権は、安い労働力を求める日本や欧米の資本を誘致し、そのために外資を優遇する「自由貿易地域(輸出加工区)」を設けました。その中では、農村から出てきた多くの若い女性が「女工哀史」のような劣悪な労働条件で働かされていました。
 こうした状況に対し、アジアやアメリカのキリスト教団体が1981年にアジア女性労働者委員会(=CAW。Committee for Asian Women)を結成して、女性労働者の問題に取り組みはじめます(事務所は、最初は香港、現在はバンコクに置かれている)。そして、アジアに進出した多国籍企業の送り出し国・日本にも、CAWの活動に協力するために「アジア女子労働者交流センター」が設立されたのです。
 CAWは最初は各国の女性労働者の活動を外部から支援する団体でした。しかし、1980年代半ばを過ぎ、アジア各国の独裁政権に対する民主化運動の広がりとともに各国に女性労働者自身の組織が設立されると、彼女たち自身の団体になっていきます。すなわちCAWはネットワーク・グループになり、日本からは、「アジア女子労働者交流センター」「女の労働わくわく講座」「女ユニオン神奈川」「おんな労働組合(関西)」の4団体が登録します。

 アジア女子労働者交流センターは、以下のような活動をすすめました。
(1)アジアの女性を日本に招いておこなう交流プログラム。
(2)アジアに行ってアジアの女性に学び、交流する研修ツアー。
(3)アジアの問題を伝える情報・出版活動。『アジアの仲間』の発行もこの一環です。
(4)アジアに影響を及ぼす日本の国内問題に対する取り組み。具体的には、教科書検定や女性の深夜・時間外労働規制撤廃に対する抗議活動など。

 『アジアの仲間』や『アジアに生きる女たち』は、アジアの女性労働運動の歴史を語るうえで必読だと思います。アジアの女性労働者の状態(の変化)を知るための、日本語で読める資料としても(日本語で読めるようにして日本の人々に伝えること自体が大切な運動です)、とても貴重です。

 『アジアの仲間』は、韓国やフィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インドなどのほか、香港や台湾、中国のこともしばしば取り上げています。
 たとえば創刊号は、日本のマブチモーターの香港の子会社「萬宝至実業」が、有害を承知で新工程を導入した結果、196人(うち195人は女性。13人は妊婦)の労働者が有毒ガスを吸い込んで病院に収容されたことを大きく伝えています。また、この記事は、香港では事件が連日報道されているのに、日本ではほとんど報道されないことも問題にしています。
 1993年の深圳の致麗玩具工場の火災の頃からは、中国本土のことも取り上げるようになりました。

 けれども、センターは財政上の限界で、2000年3月に事務所を閉じます。発足当時はアジアの第三世界に関する活動ということで、世界のキリスト教団体からの活動資金の援助があったのですが、それが円高により激減、打ち切りになりました。
 また、国内のカンパ・会費も、大口の人は退職したり、亡くなったりで減少しました。
 「カンパや会費の減少は、アジアの民衆に連帯する多様な活動が生まれ、支援の志を持つ人のお金が分散しているためでもある」とのことですが、残念なことには変わりありません。

 もっともセンターの事務所を閉鎖した後も、「CAWネット・ジャパン」という形で活動は継続されています。
 現在、日本からCAWに登録しているのは、「旧アジア女子労働者交流センター」と「おんな労働組合(関西)」に加えて、「女性ユニオン東京」です。
 けれど、やはり財政規模などは、以前と比べると小さくなっているようです。

 近年、中国本土も市場経済化が進んでグローバリゼーションに巻き込まれ、日中の経済的関係はいっそう緊密化しました。日本の私たちの生活は、労働者としても、消費者としても、中国を含めたアジアの女性労働者の状態とは関係はきわめて密接になっています。ですから、私たちとアジアの女性労働者とが連帯することは、ますます重要になっていると思います。
 最近は大学などで「グローバリゼーションとジェンダー」というテーマが盛んに論じられています。また、「ナショナリズムとジェンダー」との関係は近年のジェンダー論の中心的テーマの一つであり、「ナショナリズムを乗り越える」ことは大きな課題だと説かれています。

 それなのに、CAWネット・ジャパンのような運動はまだ小さいというえに、かつてよりも規模が縮小しているというのは、とてもおかしいと思うのです。
 日本で労働運動をしている人々や中国研究者・ジェンダー研究者、さらには何よりも大切な労働者自身(多くの日本人は多かれ少なかれ労働者)から、もっともっとCAWネット・ジャパンに参加や協力があってしかるべきなのではないでしょうか?

 遅ればせながら私も昨年、CAWネット・ジャパンに入りました。
 私は会費やカンパを払い、機関誌を読むくらいのことしかできていませんが、より多くの人々の入会や協力を訴えたいと思います。
 ここにCAWネット・ジャパンの現在の活動や財政、連絡先について詳しく書いてありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 次回は、『アジアの仲間』と『CAWネット・ジャパンニュース』で、中国の女性の問題を取り上げた記事を一覧にしてみたいと思います。
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