2017-06

秋山洋子さんのこと

日本女性学研究会のニュースレター『VOICE OF WOMEN』(略称はVOW)2016年10月号の秋山洋子さん追悼特集に一文を書かせていただきました。このブログにも転載させていただきます。


秋山洋子さんのこと(遠山日出也)
                        
私と秋山洋子さんとの最初のご縁は、1990年、秋山さんがJ.StaceyのPatriarchy and Socialist Revolution in Chinaを『フェミニズムは中国をどう見るか』というタイトルで翻訳なさった際に、私がお招きして中国女性史研究会にいらっしゃっていただいたことである。秋山洋子さんはすでに1970年代のウーマンリブの時期に、抗日戦争中の延安で女性作家・丁玲が中国共産党統治のあり方を批判したことに先駆的に注目しておられたが、1990年当時は、中国女性史研究会の多くの会員の方々も、欧米の新しいフェミニズムにもとづく研究動向に関心を持ち、例会でそれらを何度も取り上げた。その頃は、広く日本のフェミニズムにおいても、Staceyが依拠していた社会主義(マルクス主義)フェミニズムに関する議論が盛んで、上野千鶴子さん、竹中恵美子さん、伊田広行さん、水田珠枝さん、古田睦美さんらがそれぞれの立場から論陣を張っておられた。いま、日本でも、中国でも、ジェンダーと階級をめぐる格差が拡大し、社会運動における性差別やセクハラもホットな話題になっている。ジェンダーと階級の関係などを論じた当時の議論はけっして古くなっていないし、その後の研究蓄積を踏まえつつ、今日さらに理論的にも発展させなければならないと思う。

さて、その後しばらくして私は東京を離れたので、秋山さんに直接お目にかかる機会は少なくなった。しかし、今号のVOWの「新刊紹介」の1と2でご紹介した、秋山さんが編集なさった2冊の本[中国女性史研究会編『中国のメディア・表象とジェンダー』研文出版 2016年9月、小浜正子・秋山洋子編『現代中国のジェンダー・ポリティクス:格差・性売買・「慰安婦」』勉誠出版 2016年10月]――多くの方のご努力にもかかわらず、生前に出版できなかったのが本当に残念だが――に少し書かせていただき、さまざまなご助言、ご指導を受ける機会が持てたことは幸いだった。その2冊の本の件で私が秋山さんと昨年お目にかかった際にも、今年メールでやり取りした際にも、ご病気の影は感じられなかったので、今回のことは、とてもショックだった。秋山さんはしばらく以前からガンを患いつつも、それをごく身近な方にしかお伝えにならず、ガンをコントロールして研究や出版に励まれていたそうだ。先日、中国女性史研究会で秋山さんを偲ぶ集いがあったが、その時にうかがった話では、秋山さんは、お亡くなりになった8月26日の当日も、昼間、校正刷りを病院に届けてもらい、深夜にお亡くなりになったとのことだ。私は上記の本の献本の取りまとめ担当だったので、私自身も、秋山さんから、お亡くなりになる2日前にメールをいただいて、献本先として、中国の3人の友人に郵送してもらうことをことづけられた。ちなみに、私はその締切を27日に設定していたので、秋山さんが締切より早くメールを出されたために、メールを受け取ることができたのだが、秋山さんは生前、締切に遅れたことはなかったそうで、そうした点にも、秋山さんの誠実なお仕事ぶりがうかがえる。このように秋山さんは最後まで女性学や女性史の発展に尽力してくださったのだが、まだなさりたいことはたくさんあったと思うし、それらが実現できていたらと思うと、とても寂しい。私もまだまだ教えていただきたいことがあったし、できれば私なりの研究成果もご覧いただきたかった。本当に残念である。

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