2017-03

家族などからの結婚圧力(逼婚)を批判する若い女性たちの運動――2014年~2016年

<目次>
はじめに――「逼婚」「剰女」という流行語
一 2014年:「逼婚」を肯定するコマーシャルに対する抗議運動

 1.家族のために結婚することを肯定する「百合ネット」のコマーシャル 2.インターネット上での抗議運動 3.バレンタインデーに十数名が百合ネット総本部前などで、替歌とプラカードで抗議
二 2015年:北京・上海・広州の街頭で活動
 1.北京 2.上海 3.広州
三 2016年:クラウドファンディングで北京の地下鉄に反逼婚広告
 1.クラウドファンディングと微博での逼婚反対の呼びかけ 2.広告審査によって表現をソフトにされつつも、北京地下鉄の東直門駅に広告を掲示 3.「反逼婚連盟」はその後もオンラインとオフラインで集い 4.「女権の声」が反逼婚についての体験談を募集
おわりに――「逼婚」の背景として、中国的「孝」、若者の経済的情況、人口政策なども

はじめに――「逼婚」「剰女」という流行語

子どもに結婚をするように圧力をかけることを、中国語で「逼婚」と呼ぶ。とくに子どもが春節(旧正月)で帰省したときに、家族や親せきから「なんでまだ結婚しないの?」「相手はいるの?」「なんで連れて帰ってきて会わせてくれないの?」などと結婚を催促されることが多く、若者たちの悩みの種になっている。

2012年には、親が子供に早く結婚しろと強要する「中国式逼婚」が、流行語にもなった(1)

2016年2月には、「中国関心下一代(次世代に関心を持つ)工作委員会健康スポーツ発展センター」が『中国逼婚調査報告』を出した。この報告では、25歳から35歳の若者に対する圧力が最も大きく、86%の人が結婚を催促されたことがあるという。女性の方が男性より6%比率が高いこともわかった(2)

結婚適齢期を過ぎても独身でいる男女を軽蔑して呼ぶ言葉である「剰女 (残った女、売れ残り女)」「剰男」も、流行語になっている(3)。こうした言葉も結婚規範の強さを示している。

一人っ子政策などに起因する性別のアンバランスによって、本当は「剰男」の方が大量に出現している。彼らの大多数は貧困で、学歴も低く、農村に住んでいる。しかし、メディアは彼らが単身であることは咎めない。

中国のマスメディアの「剰女」についての記事の多くは、都市の教育を受けた単身女性に対して、「仕事にはもう頑張るな、高望みをするな、結婚相手をえり好みするな」というものである。「男の30歳は花であり、女の30歳は黄土の泥である」という言葉があるが、これは、単身男性と単身女性の二重基準を示している。中華全国婦女連合会のサイトさえ、「剰女」に関する文章を無批判に転載し、その中には、「剰女」を「娯楽の場での一夜の情事が好きだったり、役人や金持ちの妾になったりする」などと否定的に捉えたものもある(4)

もっとも、結婚を強要することを批判する「逼婚」という言葉が流行するようになったことは、結婚規範からの脱却を志向する若者の意識が強まったことを示しているとも考えられる。

さらに、近年、「逼婚」を批判する社会的運動もおこなわれるようになった。この運動は、行動派フェミニスト(女権主義行動派)と呼ばれる人々が中心になっていると見られる。つまり、こうした運動が起こったことは、新しい女性運動の台頭とも関係している。

以下、「逼婚」を批判する、こうした女性を中心とした運動について見ていきたい。

一 2014年:「逼婚」を肯定するコマーシャルに対する抗議運動

1.家族のために結婚することを肯定する「百合ネット」のコマーシャル

「逼婚」を批判する運動が起きた1つのきっかけは、2014年の春節の前に、結婚相手の紹介会社「百合ネット」が次のようなコマーシャルを流したことである。

主人公は高等教育を受けた美女である。彼女は、祖母のもとに、学士帽をかぶって卒業証書を届けたりしてきた。ところが、祖母からは、毎年、「結婚したの?」と聞かれる。けれど、彼女はずっと結婚しなかった。しかし、祖母が病に倒れて「結婚しなさいよ」と言ったので、彼女は「今年は祖母のためにも、必ず結婚しよう」と思って、百合ネットの実店舗に行って、結婚相手を探した。最後の場面では、ウェディングドレスを着た彼女が、病床の祖母の前に一人の男性を連れて来て、目に涙を浮かべて「おばあさん、結婚したよ」と言う。

このコマーシャルは、春節の期間、中国中央テレビの3つのチャンネル、10の衛星テレビ、多くの都市の駅のスクリーンで放映された。

2.インターネット上での抗議運動

このコマーシャルに対して、微博(中国式ツイッター)上で批判が巻き起こった。たとえば、@我是你認識的王小能さんは、このコマーシャルは、「仕事をするより結婚したほうがいい!」「あなたはきれいで、有能で、学歴が高く、仕事の出来がいい。でも、結婚していなければ何の価値もない」という価値観を反映していると指摘した。また、@風小餐さんは、女は適齢期になれば結婚するのが「天地の定め」で、女は子どもを産むことが「本分」であることも示していると述べた。

1月29日、百合ネットは謝罪したが、コマーシャルの放映を中止するか否かには触れておらず、ネットでは、誠意がないと評された。

2月6日、@柴晋寧さんが、新浪微博で「#1万人が百合ネットをボイコットする#」活動を始めた。彼女は、百合ネットにコマーシャルの削除と謝罪を求め、それに同意する人はこのエントリを転載(リツイート)するよう呼び掛けた。そうしたところ、2月8日昼までに、1万5119回、このエントリは転載された(5)

3.バレンタインデーに十数名が百合ネット総本部前などで、替歌とプラカードで抗議

2月14日のバレンタインデーには、十数名の若い女性が北京の百合ネットの総本部に抗議に行った。彼女たちは、自分たちが作った替歌《おばあさん、強要しないで(外婆别逼我)》(テレビの人気バラエティ番組《パパはどこに行くの?(爸爸去哪里)》[아빠! 어디가? の中国版]の主題歌の替歌)を合唱した。彼女たちは、「お父さん、お母さん、もう私に強要しないで。私は、一人で生活するのもいいのです。結婚することも、子どもを産むことも、選択ではないの? 私自身に選ばせて」などと歌い、「私に強要しないで」「私は結婚したいときにする。結婚しないならどうだというのか」などと書かれたプラカードを掲げて抗議した。若い男性も、「おばあさんに言われたからといって、私と結婚しないで」というプラカードを掲げた(動画→「女权青年逆袭百合网反逼婚 」女权之声FeministsVoices)。

彼女たちは、百合ネットの広報部の責任者の楊晶さんに、「結婚を強要するコマーシャルの放映はもうしないでください」という訴えを提出した。そこには、以下のように書かれていた。「まず、このような結婚・恋愛観が陳腐である。結婚は女性の生活の選択肢の一つでしかなく、女性の価値はけっして婚姻によって実現しなければならないものではない。婚姻を女性の最も重要な、ましてや唯一の生きていく道だと考えるのは、女性を拘束し、差別する行為である。また、結婚するかしないか、いつ結婚するか、誰と結婚するかは、みな女性自身の問題であり、家族の圧力や親孝行と関連づけるべきではない。百合ネットのコマーシャルは、倫理道徳によって女性の婚姻自主権を否定している疑いがある。」(6)

彼女たちは、ビルの中の百合ネットの総本部前だけでなく、ビルの外や、地下鉄の車両内や地下鉄の構内でも、歌を歌い、プラカードを掲げてアピールした(動画→女权青年逆袭百合网反逼婚 」女权之声FeministsVoices)

百合ネットは、その日の午後二時、メールで、コマーシャルの放映を中止すると回答した。

この抗議行動は、『南方人物周刊』によると、NGO団体「女権の声」が組織したものである。

この抗議行動に参加した熊婧さんは、「女権の声」に入る前は、武漢の師範大学の学生だった。熊婧さんの父母は、卒業後は、熊婧さんが教師か公務員になって、安定した生活を送ることを望んでいた。しかし、熊婧さんはジェンダー研究を専攻する大学院生になり、自分がフェミニストだと自覚するようになって、賃金が低く不安定なNGO「女権の声」の職員になった。最も母親の心配と父親の怒りを引き起こしたのは、彼女の不婚主義だった。熊婧さんは、父親とはできるだけ交流を避けるようになった。

また、艾可さんの母親も、艾可さんが結婚するまでは家を出てはならないと考えていた。しかし、艾可さんは、長い時間をかけて母親を説得した。けれども、多くの人は、親元から逃れるために結婚することが多い。艾可さんは、これはとても悲しいことだと考えている(7)

二 2015年:北京・上海・広州の街頭で活動

2015年には、北京・上海・広州の3都市で街頭行動がおこなわれた。

1.北京

2015年1月24日午後、未婚の若い女たちと男たちが、北京の三里屯や工人体育館前などで、流行している《小さなリンゴ(小苹果)》という歌と踊りを反逼婚バージョンに改編した歌と踊りを踊りつつ、通行人に「自由を愛し、結婚を強要しない」という歌詞で包んだおひねりを配布した(動画: 小苹果反逼婚)(8)

2.上海

2月4日には、上海の繁華街や地下鉄の車両内で、4、5人の若い女性が、結婚強要を批判するプラカードを持って無言で抗議をおこなった。彼女たちのプラカードには「非暴力不合作剰女連盟(非暴力・非協力の売れ残り女連盟) お母さん、春節のときに結婚を強要しないで! 私の幸福は私が決めます!」と書かれていた(9)

4月末には、5月1日に、上海で結婚を強要された女性や「剰女」というレッテルを貼られた女性10~12人を集めるワークショップをすることが発表された。その協力者として、「万静如(北京BCome小組コーディネーター、話劇《陰道の道》シナリオ制作および俳優の一人)」と「李橙(北京某ジェンダーNGO研究員、BCome小組メンバー)」のお2人の名前が掲載されている(10)

3.広州

3月6日、広州のある街頭で、数人の若い女性が、「私は子どもを産まないことを選択する」と書いたボードと「私はシングルを選択する」と書いたボードを持って、通行人に「シングル」や「不出産」に対する考え方を書いた付箋を貼ってもらう活動をした。

こうした活動をしたのも、終わったばかりの春節で、親戚たちから結婚や出産を催促されたからである。たとえば于磊さんは結婚して3年になるのに、まだ子どもができいなので、姑に「村の中で面を挙げて歩けない」と言われたり、舅に「子どもができなかったから、気が晴れなかった」と暗に言われたりしたという(11)

2015年は、このように街頭行動が3都市に広がった。これらがおこなわれたのは、フェミニスト5女性が刑事拘留された3月6~7日の直前の時期(広州における活動は、まさにその前日)である。つまり、運動が前年よりも広がったことに加えて、街頭行動の自由に対するまだ制約が弱かったことが幸いして各地で街頭行動ができたと言える部分があろう。

三 2016年:クラウドファンディングで北京の地下鉄に反逼婚広告

1.クラウドファンディングと微博での逼婚反対の呼びかけ

2016年1月17日、微博アカウント「@反逼婚聯萌」が、以下のように、反逼婚広告を出すためのクラウドファンディングを呼びかけた。

愚痴や恨みごとを言うよりは、力を尽くして変えるほうがいい! 2016年の春節には、私たちは共に反逼婚行動を起こして、この「逼婚文化」に満ちた社会に対して、結婚を強要する親戚たちに対して、私たちの心の中の声を表に出そう!

結婚するのも、しないのも、私の私事、私の生活、私の自由。

私の人生は、他の誰の支配も受ける義務はなく、まして「上の世代の人の言うことを聞いて」、人に指図され、動かされる義務はない。道理は、こんなに簡単なことだ。

私たちは団結し声を上げて、反逼婚の心の声を、老若男女の誰でも見ることができる主流のチャンネル(たとえば屋外広告)を使って、すべての人に向かって大声で叫ぼう! (12)

目標は3万5000元である。当時、メンバーは約10人だったようだが、1m×1.5mの広告を出すためには3万8000元かかるので、彼女たちだけでは負担しきれず、クラウドファンディングを呼びかけたとのことだ(13)

出した金額に応じて記念品を送ることも宣言された。たとえば、38元出した人には、結婚を強要する親戚や父母らに出すための、「あるフェミニスト芸術家が特別にデザインした『反逼婚はがき』」が贈られる。また、148元、198元を出した人には、それぞれ反逼婚手提げかばん、反逼婚Tシャツが贈られる。

このクラウドファンディングによって、最終的には、383人から2万8593.50元が集まった(14)

この活動の最終的な目的は、公共空間で声を挙げることであり、単に一枚の広告ボードを出すことだけではなかった。そのためには、小さな範囲内で宣伝するだけで満足しはならず、メディアの影響力を使い、SNSに載せて、不断に自己の影響力を放射する必要があった。反逼婚広告は潜在的な広範な受け手とのコミュニケーションが必要だという考えから、お礼の品を送るという方法を使い、寄付をした人とつながりを作ることができるようにした。もっとも、実際にやってみると、「38元」以上というのはハードルが高すぎると思う人もいたので、現物によるお礼はしないが、より少額なサポートを提示したところ、寄付の総額はかえって増えたので、少額の寄付が非常に重要だということがわかったという経験もした。また、お礼を送ること自体にも、時間と精力が必要なので、今回のような場合は必ずしも必要ではないかもしれないといった認識も得た(15)

『北京晩報』の記者が、呼びかけ人の一人の「Coby」に対して、「なぜこの活動を呼びかけたのか?」と尋ねると、「Coby」は、そのきっかけは、幾人かの友だちがみな「結婚を強要された」経験があることだと述べた。学校に通っていたときは、家族に「ボーイフレンドを作るな」と言われ、卒業したら、「女の子はすぐに結婚をして嫁に行くことを考えなければいけない」と言われる。「家族は、いつも私に結婚するように言います。わが家は伝統的で、祖母は、私がボーイフレンドを見つけないのは我儘で、家族に心配をかけていると言います。母親は、結婚していない女は、完全な女ではないと言います。父親はもっとひどく、私の友達を家に呼んで私に勧めます」と述べた(16)

反逼婚聯萌のアカウントは、「#今年の年越しは逼婚なし#」というハッシュタグも作って、微博上での各自の意思表明を呼びかけ、それに応えて、さまざまな人が、自らの顔と自らの意見を書いた紙を写した写真を発信した(17)

北京LGBTセンターの人たちもそうした写真を発表した。たとえば、小鉄主任は「逼婚はいらない。オーガズムに達せられることが必要だ」と書いた(18)

2.広告審査によって表現をソフトにされつつも、北京地下鉄の東直門駅に広告を掲示

彼女たちが最初に広告会社に提出したデザインは、若い女性が頭上で両手をクロスさせて「ノー」の意を示すポーズをとっているもので、「逼婚退散」と横に大きな字で書かれ、縦には、「今年の春節は結婚を強要するな 私の人生は私が決める」と書かれたものだった。彼女のTシャツの上にも、「逼婚」の文字にバッテンが書かれていた(19)

このデザインは、広告会社と北京工商局に下属する部門に審査された結果、拒否された。熊婧さんによると、彼らは拒否した理由は言わなかったそうだが、もっと大人しいデザインにすることにした(20)。つまり、「鋭い」内容は削除して、できるだけ温和で和やかで、前向きな言葉づかいに変えなければならなかった。また、彼女たちも、目上の人および社会の公衆が耳を傾けて、共鳴することができるような表現を望んだ(21)

2月4日、北京地下鉄の東直門駅に、照明看板広告を出すことができた。

それは、可愛い女の子の絵が、大きなハートマークを抱えているデザインであり、その中には、下のように書かれていた。

「親愛なお父さん、お母さん、心配しないで。
世界は広く、
さまざまな人生があります。
独身でも幸せになれます。」

その下には、「単身者も良い青年です。単身のプラスのエネルギーを届けます」と書かれ、「単身自在ホットラインへの電話を歓迎します」として電話番号と受付時間(毎週水~金、12:00~19:00)と記してあった(22)

@反逼婚聯萌は、この広告の前で写真を撮って発信することを呼びかけ(23)、李麦子さんもこの広告の前で自分を撮った写真を微博で発信した。その写真では、李さんは頭上で両手をクロスさせて「ノー」の意を示すポーズをとっている(24)

5月1日には、北京798芸術地区で、反逼婚ポスターの設計者の米果が、ポスターと「連盟」の活動の贈呈用の葉書を印刷した。そのデザインは、地下鉄内の当初のポスターのデザインだった(25)

3.「反逼婚連盟」はその後もオンラインとオフラインで集い

@反逼婚聯萌は、ホットラインだけでなく、微信(Wikipediaによる説明)で交流グループを作って、お互いの経験を交流している(26)

『南方周末』に、5月7日、北京の雍和宮新胡同の醒覚コーヒー館で、「反逼婚連盟」のメンバーである16人の若者(女性14人、男性2人)が集まって集会を開いたという記事が掲載されている。この集会は、2月に「連盟」が結成されて以降初めてのオフラインの活動だったという。この記事は、「反逼婚連盟」には、百人余りのメンバーがいると伝えており、1月にクラウドファンディングを呼びかけたのが約10人であったのと比べて、ずいぶん増えている。

この記事内には、以下のようなメンバーが出てくる。
・Coby――連盟の「盟主」、28歳。
・Caroline――大学3年生で、「連盟」の話劇グループの主要メンバーの1人。
・猪川――33歳の男性で、父母に結婚をひつこく催促されて8年になる。
・二猫――「連盟」の対外ホットラインを管理している。

あるメンバーは、結婚を催促する圧力があまりにも大きいのですでに結婚したが、結婚した後も問題は解決していないと述べている。なぜなら、続いて父母は2人日に子どもを産むよう迫っている。キーワードは変わっても、やり方はまったく同じだと(27)

また、未婚の男性と比べて、同じ年齢の単身女性は、より大きな逼婚の圧力に直面していると述べる参加者もいた。「70年近く以前に、ボーボワールは『第二の性』の中で、『社会の伝統が女性に賦与した意義は、婚姻である』と述べました。現在の社会は多元化したといっても、保護者の多くは伝統的な考え方を強く持っています。今回の広告を出す活動に参加した女性の人数は男性よりずっと多かった。私は、これは重要な要素だと思ったので、反逼婚広告では、私たちは女性を主役にしました」と言う(28)

4.「女権の声」が反逼婚についての体験談を募集

4月20日、微博アカウント「女権の声」が、以下のように「私の反逼婚の話」を募集した。

 今の若い人には、「結婚を催促」されたことがない人は、ほとんどいない。一定の年齢になると、父母や親戚、同僚、同級生、関係のない他人、商業広告、社会の文化全体が、いっせいに飛び出してきて忠告する。

 結婚すべきだ、結婚すべきだ、結婚しないと年をとって/遅くなって/相手がいなくなって/子どもを産む一番いい時期を逃して/死んで……、さまざまな結婚を催促する理由の、一つはあなたに当てはまっているに違いない!(……)

 逼婚文化は強大だが、現実の中には、妥協に甘んじず反抗する者も少なくない!

 それは、理想の伴侶を見つけるためには、「妥協」したくないからかもしれない。

 事業と自己の価値の実現に忙しいので、「結婚」を日程に上らせる時間がないからかもしれない。

 一生、何ものにも拘束されないという自由を愛しているので、「包囲された都市」の中に閉じ込められたくないからかもしれない。

 社会が良くないので平等な婚姻の権利を享受できないからかもしれない。

 結婚しない理由は多いけれども、それぞれの反逼婚の話には、みんな個人の意思と生活の方法についての省察が含まれている。みんな自由を追求し、改革を渇望する勇気を含んでいるから、これらの話は有意義であり、記録される値打ちがある。(29)

この呼びかけの結果集まった文章のうち、7点の力作が「女権の声」の微博に掲載されている(30)

そのうち、ある男性は、「逼婚」の圧力の強さを次のように語っている。父母に「しばらく結婚しないつもりだ」と答えると、親戚の子どもの名前を出して「あなたと年はあまり変わらないのに、みんな結婚して、とてもしっかりしている」と言い、ガールフレンドがいると知ると、「どこの人? 年齢は? 仕事は?」と尋ねる。いなければ、「条件がいいのがいる。紹介しよう」と言ってくる。「結婚しなくてもちゃんと生活していけている」と言っても、「誰それはあなたより何歳も年下なのに、みんな結婚して、あなたが残っている!」と言い、弁解したら、今までに10回以上も、涙声で訴えられたり、突然激怒されたりして、「なんでこうもわからずやなの。年をとるほど馬鹿になる。まともな人間なりなさい。そんなに自分勝手ではいけません」と言われたりする。春節には、親戚が遊びに来て、私に会うなり次々に、「相手はいるのか? いつ結婚するのか?」と聞く。(31)

ある女性は、次のように訴えている。「私は永遠に自由で自分のために生きていたい。けれども、あなた方は、私に結婚を強要して、私を婚姻の牢獄に閉じ込め、一人の男に縛りつけて、もう自分ではないようにする」、「逼婚は、『あなたのため』という名目を付けているが、実際は貴方の幸福を奪うことにすぎない」(32)

おわりに――「逼婚」の背景として、中国的「孝」、若者の経済的情況、人口政策なども

中国における「逼婚」圧力の強さは、上述のようなジェンダー構造と関係しているのはもちろんだが、中国における「孝」が、単に親に尽くすことではなく、子どもの出産により血統を継ぐことに重点が置かれていることと関係しているという指摘もある。たとえば、呂頻さんは、「逼婚」の背景として、「伝統的観念においては、結婚して子供を産むことがいつも『孝』という倫理道徳と堅く結びつけられてきた」ことを挙げ(33)、彭暁輝さんも、「中国では結婚は個人の問題ではなく、家族の問題である。また、中国人は代々血統を継ぐという家族理念が強いことも、特有の『逼婚』現象を引き起こす」(34)と述べている。

ただし、結婚を催促する圧力そのものは、日本でもけっして軽視できないことは言うまでもない。

また、問題は、単なる親の意識やマスコミの論調にだけではなく、若者を取り巻く経済的な面にもある。若者が「逼婚」に反対しようとしても、現実の問題に直面することが指摘されている。すなわち、海外に留学するには学費がかかり、商売をするには立ち上げる資金が必要で、家を買うには「頭金」が必要なのだから、若い人が父母に助けてもらおうとすれば、父母の意向には背きにくいということである(35)。こうした、現在の社会における青年の自立を支える社会的条件の弱さと関連しているという点も重要で、この点も日本にも同様の問題があることが指摘できよう。

さらに、マスメディアが結婚を奨励する理由として、「社会の安定」のためであるとか、「激烈な総合的な国力の競争」のために、「人口の資質」を向上させるためということも言われている。「人口の資質」を向上させるというのは、都市の高学歴の女性に結婚させて「優良な」遺伝子の子どもを作らせるという意味である。メディアはしょっちゅう嬰児の「出生欠陥」についての報道をしており、かつ大多数はその責任を「高齢で初めて出産する産婦」のせいにしている(本当は環境汚染の影響が大きいにもかかわらず)ともいう(36)

こうした側面を見ると、一見家族内の問題のように見える「逼婚」に反対することが、社会のジェンダー構造、婚姻システムの問題はもちろん、それ以外の面でも大きな社会的な広がりを持っていると言えるだろう。


(1)互動百科、2月の十大ネット流行語を発表 (2)」人民網日本語版2012年3月7日、趙 蔚 青「2012年中国の新語・流行語」(愛知大学中日大辞典編纂所『日中語彙研究』第2号、2012年)。
(2)江苏人逼婚最执着,平均每年超10次?」『扬子晚报』2016年2月14日。
(3)時代の流行語『剰男剰女』」新華網日本語版2010年12月8日、「剰女」Insight CHINA日本語版2013年10月23日。当局側の文献の中では、2007年に初めて教育部の文書が「剰女」を新語として挙げている(「关于“剩女”你知道的十个常识」新媒体女性的博客2016年2月1日。
(4)做一个剩女,到底碍了谁的事儿」2016-01-31 新京报书评周刊→「做一个“剩女”,到底碍了谁的事儿」女权之声2016年2月1日。
(5)【传媒观察室】百合网“借外婆逼婚” 网友联合反击道德绑架」南都网2014年2月8日→「百合网“借外婆逼婚” 网友联合反击道德绑架」女声网2014年2月10日。
(6)不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议」女声网2014年2月14日(来源:邮件)=女权之声的微博【不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议】 2014年2月14日 12:09。
(7)冯寅杰「逼婚广告,让爱等待」『南方人物周刊』2014年3月24日。
(8)女权之声的微博【春节将至反逼婚 女青年街头跳“小苹果”】2015-1-28 18:02
(9)上海女青年举牌抗拒父母春节逼婚」中新網2015年2月5日。
(10)[5.1上海]【爱自由•反逼婚】故事工作坊及论坛剧场招募」女权之声2015年4月28日 14:02。
(11)@兔子走丢了「她们选择单身和不生育?!你怎么看?」公益服务网2015年3月9日。
(12)[反逼婚众筹]:送个我们自己的新春“红包”」反逼婚联萌的微博2016年1月17日 22:25。
(13) DIDI KIRSTEN TATLOW“Exalting Life as a Single in ChinaThe New York Times, February 3, 2016→狄雨霏「中国单身青年反逼婚,没那么容易」纽约时报中文网2016年2月3日→女权之声的微博2016年2月4日。
(14)反逼婚众筹:送个我们自己的新春“红包”
(15)被纽约时报报道,她们的众筹有何神奇之处?」2016-06-15 灵析
(16)大龄青年众筹“反逼婚广告”」『北京晚报』2016年1月21日。
(17)反逼婚联萌的微博#今年过年不逼婚#
(18)北京同志中心1月29日 11:53
(19) DIDI KIRSTEN TATLOW“Exalting Life as a Single in ChinaThe New York Times, February 3, 2016→狄雨霏「中国单身青年反逼婚,没那么容易」纽约时报中文网2016年2月3日→女权之声的微博2016年2月4日。
(20)同上。
(21)为了反逼婚,她们直接在北京地铁投了广告! 」尖椒部落2016年2月4日、女权之声的微博【为了反逼婚,她们在北京地铁投了广告】2月4日 12:14
(22)同上。
(23)过年必须拍的一张照片,来看看你拍了吗?」2016-02-05 单身也幸福的 反逼婚联萌。
(24)麦子家的微博2016年2月4日20:17
(25)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(26)被纽约时报报道,她们的众筹有何神奇之处?」2016-06-15 灵析
(27)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(28)为了反逼婚,她们直接在北京地铁投了广告! 」尖椒部落2016年2月4日、女权之声的微博【为了反逼婚,她们在北京地铁投了广告】2月4日 12:14
(29)女声征文│我的反逼婚故事」2016年4月20日。
(30)猪头猫「被逼婚,我遭过的“七宗罪”」2016年5月3日 17:37、米果「请停止社会给予单身的负面意义」2016年5月17日 12:16、Ele_象「拒绝做受人摆布的附属品,我们已踏上“反逼婚”的征程」2016年5月18日 17:27、冬惊「传宗接待是每个成年人应尽的义务?」2016年5月19日 11:48、卢平「女孩,别让逼婚毁了自己」2016年5月20日 16:36、七七「反逼婚十年,我越活越美丽」2016年5月20日 16:54、Gabby「反逼婚历险记」2016年6月12日 18:26。
(31)猪头猫「被逼婚,我遭过的“七宗罪”」2016年5月3日 17:37
(32)☆卢平「女孩,别让逼婚毁了自己」2016年5月20日 16:36
(33)不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议」女声网2014年2月14日(来源:邮件)=女权之声的微博【不满广告逼婚 情人节女青年百合网总部唱歌抗议】 2014年2月14日 12:09。
(34)为了反逼婚,他们走到了一起」『南方周末』2016年5月20日。
(35)大龄青年众筹“反逼婚广告”」『北京晚报』2016年1月21日。
(36)做一个剩女,到底碍了谁的事儿」2016-01-31 新京报书评周刊→「做一个“剩女”,到底碍了谁的事儿」女权之声2016年2月1日。
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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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