2017-03

フェミニスト活動家5女性の釈放とその後の困難、闘い、弁護士によるセクハラ

<目次>
一 釈放の背景――国内外のフェミニストらの抗議など
 日本でもアジア女性資料センターが声明を出し、東京の中国大使館前で抗議/中国の党・政府内部にも異論/5人がそれぞれ感謝のメッセージ発表/その一方、すでに懲罰の目的を達した、との指摘も
二 あくまで保釈(取保候審)、容疑者扱いで行動にも制約、北京益仁平センターへの処罰も表明
 李婷婷さんの住居への監視/韋婷婷さんは故郷の親元に送還/武嶸嶸さん、犯罪容疑者として8時間訊問され、心身ともにぼろぼろに/支援者の趙思楽さんまで容疑者扱いされ、香港行きが不許可に/外交部、北京益仁平センターに対する処罰を表明/女性の権利は認めても、女性が運動によって闘い取ることは認めない? フェミニズム運動と民主化運動との相互協力を説く意見も
三 反撃もはじまる
 捜査取りやめと国家賠償、謝罪、押収物品の返還を求める市民署名/李婷婷さん、武嶸嶸さん、拘置所内での人権侵害を告発し、押収物品の返却を求める/李婷婷さん、留置所の状況についてルポ/武嶸嶸さん、人権侵害的召喚を拒否/武嶸嶸さん、行政再議申し立てによって身分証を再発行させる/李婷婷さん、裁判支援を再開
四 人権弁護士によるセクシュアル・ハラスメントをめぐって
 猪西西さん、王秋実弁護士のセクハラを明らかにし、公の謝罪など求める公開書簡/むしろ公開書簡の王弁護士への影響を心配する仲間たち。そうした状況に対する肖美腻さんの異議/王弁護士の謝罪の声明。しかし彼は反省しておらず、北京紀安徳諮詢センターによる処分も軽かったため、肖さんはセクハラの証拠を公開/在米学者の沈睿さん「アメリカなら解雇」

国際女性デー前日の3月7日にバスの中でセクハラ反対の活動を計画していたことを理由にして北京で拘留されていたフェミニスト活動家の李婷婷(リーティンティン)[李麦子(リーマイズ)]さん、王曼(ワンマン)さん、韋婷婷(ウェイティンティン)さん、武嶸嶸(ウーロンロン)さん、鄭楚然(ジョンチューラン)さんの5人が4月13日、釈放された(これまでの経過については、本ブログの記事「国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず」、「拘留中のフェミニスト活動家5女性の状況、国内外の支援運動、弾圧の背景など」参照)。

4月13日は彼女たちの拘留期限だった。警察は、彼女たち5人に当初容疑をかけた「挑発してトラブルを起こす(寻衅滋事)罪」を適用するのは、それが計画段階のものだったために難しいと考えて、過去のアクションにさかのぼって「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す(聚众骚乱公共场所秩序)罪」を適用して、彼女たちを正式に逮捕しようとしたが、検察がそれに応じなかったために、彼女たちは釈放された。

一 釈放の背景――国内外のフェミニストらの抗議など

5人が釈放された背景には、本ブログでもご紹介してきたような国内外の批判の高まりがあった。彼女たちとかかわりが深い北京益仁平センターの陸軍弁護士も、「当局は何の理由もなく譲歩したわけでない。5人が1か月あまり後に釈放されたのは、明らかに、5人を捕まえたことによって、国内でも国際的にも、一致した普遍的な抗議を受けたからである。たとえば国内では、大学生が20年来初めて集団行動を起こして、5人の釈放を訴えた。国際的には、国際オリンピック委員会、多くの国の政府、もちろん国際的な女性団体は言うまでもないが、みんながこの事件に関して強い声を上げた」と述べている(1)

日本でもアジア女性資料センターが声明を出し、東京の中国大使館前で抗議

日本でも、4月8日、アジア女性資料センターが「中国若手フェミニスト活動家の速やかな釈放を求めます」という声明を出した。この声明には、他の13団体(日本カトリック正義と平和協議会、アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)、FGM廃絶を支援する女たちの会、ふぇみん婦人民主クラブ、特定非営利活動法人レインボー・アクション、レイバーネット国際部、女性と天皇制研究会、日本軍「慰安婦」問題解決のために行動する会・北九州、性暴力を許さない女の会、セクシャルハラスメントと斗う労働組合ぱあぷる、「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク、ゆる・ふぇみカフェ、ウィメンズ アクション ネットワーク)も賛同した(「【ご報告】中国の若手フェミニスト5人の釈放を求めた声明について」)。

また、4月12日午後2時から、東京の中国大使館前でも10人ほどで抗議行動がおこなわれ、私も参加した。この抗議行動もアジア女性資料センターが提起したものであり、同センターの方々が午前中から抗議のためのボードやお面を制作して持って来ておられた。また、中国の行動派フェミニストの活動家が今よく歌っている、《女の歌(女人之歌)》(「レ・ミゼラブル」の劇中歌である《民衆の歌》の替え歌)の日本語訳も同センターの方が考えてきてくださっており、その歌を歌いつつ、10分ほど抗議行動をおこなった。この抗議行動には、お一人、レイバーネットの方も、広東で女性労働運動にも尽力していた鄭楚然さんの行動に呼応して、フェミニズムと労働運動との連帯を示すスローガンを掲げて参加しておられた。

4月13日、今回の釈放について、王政さん(ミシガン大学准教授)がコメント(アジア女性資料センターFacebookより。翻訳は大橋史恵さん)を発表して、「中国の文脈で考えれば、勾留を受けた社会活動家のグループが一度に釈放されるのは初めてのことだ。この決定からわかることを示しておきたい。第一に、未だかつてない規模のグローバルなフェミニスト組織やそれ以外のNGOが支援に動き出したことには効果があった。草の根による膨大な署名運動に突き動かされ、それぞれの国の政治家が声を上げた。そして中国政府に対し、国家を背負った政治上の敵によってではなく、グローバルな政治の力――社会正義と平等を求めるトランスナショナルなフェミニストやその他の草の根の組織――によってこうした署名が集まるのだということを示してみせたのであった」と述べた。

中国の党・政府内部にも異論

王政さんは、今回の保釈からわかることとして、「第二に、中国政府は一枚岩の存在ではない」ことも指摘したが、実際、4月18日付『朝日新聞』は、「市民運動抑圧に異論 中国、活動家5人釈放 党の傘下団体からも批判」という見出しで、「北京の女性団体幹部によると、5人の拘束後、共産党傘下の有力団体である中華全国婦女連合会の有志幹部らが北京市公安局に拘束の是非を問う非公式の文書を送付。市公安局内ですら捜査のあり方に疑問の声が出るなどしたことが検察の判断に影響し、4月13日の全員釈放の決定につながった」(2)と報じた。

私がもう一つ付け加えたいのは、フェミニストの彼女たちがそれまでDVや大学入試・就職の性差別など、さまざまな問題に粘り強く取り組み、それらが中国のマスメディアでも報道されて、かなりの世論の支持も獲得し、政府当局も一定の政策的な対応をせざるをえなかった、という成果を挙げてきたことである。彼女たちは、デモのような行為は控えて、街頭ではパフォーマンスアートなどによって自らの主張を訴えるなど、法律に抵触しないように慎重に行動してきた(3)(それゆえ、マスコミでも報道されやすかったという面もある)。そうしたことも、中国当局の判断にも影響を与えただろう(これまでの彼女たちの活動の年表と本ブログ記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」)。

5人がそれぞれ感謝のメッセージ発表

5人はそれぞれ支援者への感謝などを述べたメッセージを発表した。

鄭楚然さんは、次のように述べた:拘置所の中にいたときは、情報がなかったので、父母やボーイフレンド、一緒に捕まった4人、そのほか私が関わった人々がどうしているかが心配で、一日として泣かなかった日はなかった。しかし、外に出たら、さまざまな応援の声を目にすることができて、また涙を流した。とくに中山大学の校友の運動にはこのうえない誇りを感じた。声援を送る行動や文章を目にするたびに、拘置所の中でなくしかけていた自尊心と自信を取り戻した(4)

李婷婷さんも、支援への感謝、とくに国内の友人たちが「このように峻厳な国内の情勢の下で、強権を恐れず、犠牲を問題にせず、正義と公正な道理のために声を上げた」こと、弁護士、国際的な友人、家族への感謝を表明した(5)

また、李婷婷さんのレズビアンパートナーのテレサさん(英語名)によると、李さんは「フェミニズムは私の魂だ」、「私の信念は強くなった。フェミニズムはたしかに私と切り離せない」とも語ったという(6)

4月20日、韋婷婷さんは、友人の趙思楽さんら3人といっしょに《女の歌》を歌っている動画を公開した。同日、王曼さんも、心身が回復しつつあることを述べるともに、家族や友人、弁護士、自分を思やってくれた獄友、内外の支援者たちに感謝する手紙を発表した。(7)

武嶸嶸さんは、困難な時でも自分の仲間や多くの人々を信じていたこと、弁護士との面会が励みになったこと、差し入れからも外部の支援の状況を感じたことなどを述べている。武さんが拘留中に屋外に出されたとき、壁の向こうから李婷婷さんが歌う《女の歌(女人之歌)》が聞こえてきて、思わず「麦子!!」と叫んで自分も大声で歌ったら、李婷婷さんも返事をしてくれたというエピソードも披露した(8)

その一方、すでに懲罰の目的を達した、との指摘も

国内外の抗議の声が5人の釈放をもたらしたのは誰もが認めているが、若干冷めた声もある。武嶸嶸さんの弁護士の梁小軍さんは、中国当局が「圧力に迫られて、妥協をせざるをえなかった」という面とともに、「当然、彼ら[中国当局]自身にも理由があった。彼らは『我々は目的をすでに達した。我々はすでに彼女たちに懲罰をした。だから、今はもう国際メディアや国際社会に対抗する必要はないから、釈放すべき人は釈放した』と考えたのかもしれない」と述べている。梁弁護士は「中国当局がここ2年間市民の行動の問題を処理するための、いつもの手は、人を捕まえて、30日か37日後に釈放して、その間にしばしば家宅捜索をして物品を没収するというものだ」と指摘している(9)(「30日」は、警察が検察院に逮捕の承認の審査を申請する期限。検察院は、警察から逮捕承認請求書を受け取って7日以内[=「37日」後までに]に逮捕の承認か不承認かを決定しなければならない[(中华人民共和国刑事诉讼法日本語訳[pdf])」第89条、第90条])。

二 あくまで保釈(取保候審)、容疑者扱いで行動にも制約、北京益仁平センターへの処罰も表明

4月13日に5人が釈放されたのは、「取保候審」という措置によってである。

「取保候審(字義としては、保釈されて審判を待つといった意味。「立保証」とも訳されている)」とは、「中華人民共和国刑事訴訟法(中华人民共和国刑事诉讼法日本語訳[pdf])」第64~第71条や「公安機関刑事事件処理手続き規定(《公安机关办理刑事案件程序规定》)」 第六章第二節で規定されている措置で、拘留されている犯罪の容疑者や被告人について、その親族や法定代理人、親族が申請するもので、保証人または保証金を出すことによって保釈されることである。公安局などが「拘留の期限がいっぱいになったけれども、事件の処理が終わっておらず、続けて捜査する必要がある」と考えた場合などに使用できる措置で、12カ月を超えることはできない。けれども、その期間は、公安局の許可なしに居住している市や県を離れることはできず、召喚されたら出頭して尋問を受けなければならないなどの制約がある。

フェミニストの趙思楽さんは、「取保候審」について以下のように述べている。

「取保候審」は、中国で警察権力が常用している脅しの手段であり、「取保候審」によって、権力者は、捕まえた後に釈放した「政治的に信任しない対象」に対してこう言うのだ:「私はお前を監視しているぞ。おとなしく言うことを聞け。さもないと私はいつでもお前をまた捕まえるぞ」と。このような赤裸々な国家による精神的暴力はつねに効果があり、釈放された政治的弾圧の被害者の多くは、みな長期にわたって、自分や家族が「もう一度捕まるのではないか」と心配しながら生活する中で、言行を慎まざるをえなくなり、あれこれ思ったりパニックになったりして、反抗する力をなくしていく(10)

彼女たちに対しては、具体的に、以下のような扱いが伝えられている。

李婷婷さんの住居への監視

少なくとも4月15日の時点では、李婷婷さんの家は警察に厳重に監視されていて、出入口は15分ごとに自転車が巡邏しており、携帯電話も正常に使用できない状況だった(11)

韋婷婷さんは厳重に護送されて故郷の親元に送還

韋さんは厳重に護送されて、故郷の広西チワン族自治区の親元に送り返された。韋さんの言うところでは、その護送は「自分の人生の中で最も『ランクが高い』首長クラスの待遇」で、4人の留置所の警官が空港まで車で送り、5人の警官が南寧の空港まで同乗し、南寧の空港では、父母と南寧の国保(公安部国内安全局)の警官と市・郷鎮の警官が待っており、南寧で一晩宿泊した後、次の日は区・郷鎮の警官が直接5時間あまりかけて車で自分の区まで送ったという(12)

武嶸嶸さん、犯罪容疑者として8時間訊問され、心身ともにぼろぼろに

4月24日、武嶸嶸さんは、北京から来たと言う警官に呼び出されて、2時20分から、3人の警官にホテルの1室で訊問された。警官たちは、「武さんのフェミニズムの活動は支持しており、問題はまったくない」と言いつつも、北京益仁平センターの陸軍弁護士やその他の(元)同僚のことを尋ねた。武さんは、事実にもとづいてありのままに「私が知っていることは少ないし、益仁平ではプロジェクトの責任者だっただけだ」と述べた。警官たちは、続いて、男子トイレ占拠やDV反対、今年の国際女性デーのステッカーの活動について訊問した。そうしたことは拘留中の尋問で何度も聞かれたことなので、武さんは「もうきちんと言ったことではないのか?」と尋ねると、警官たちは「私たちは知らない」と言って、調書を作り始めた。

そこで、武さんは「正規の調書なのか? もし正規の調書なら、正当な手続きでやってほしい」と言ったら、警官は、急に居丈高になって、「お前は犯罪の容疑者だ。自分がどんな身分なのか知らないのか? 取り調べをするのは、正当な手続きだ」と言った。しかし、彼らは、召喚状も見せなければ、警察手帳も見せなかった。

警官たちが何度も武さんに説明を求めたことは、武さんが参加した活動は単純なフェミニズムの活動ではないのではないかということだった。武さんは本当に女性の権利に関する活動であり、それ以上の情報はないと答えたが、警官たちは、武さんは本当の話をしていないと言った。

5時45分、武さんは病気であり、身体が疲れたので、ソファーにもたれたら、警官に怒鳴られた。食事中も、警官から「思想政治教育」をされたので、武さんは、「私はこの国と人民を愛している。私は婦女権益保障法などが女性に対して法律的保障をしていることに同意している。私はソーシャルワーカーとして、社会の建設に対してささやかな貢献をしたいのだ」と言った。

6時25分、武さんは、身体的にも精神的にもつぶれる寸前で、頭が回らなくなって、ある女性警官に皮肉を言われて、その警官に午後ずっと我慢できないほど軽蔑的な言い方をされてきたこともあって、武さんは怒って、空気に向かって「このあま」と言ったら、長い時間罵られ続け、90度腰を曲げて3回お辞儀(三鞠躬)をして謝れと言われたので、武さんは罵倒を終わらせるために、やむなくそうした。その後も長いあいだ悪罵を浴びせられるなどしたので、武さんはずっと涙が止まらなくなった。

10時半になって、武さんはやっと部屋から出られたが、涙を流すばかりで、身体も精神も崩壊寸前だった。10時45分に夫に会って、タクシーを拾って家に帰ったが、8時間余りの人格攻撃のために、強烈な頭痛がした。友人と電話で会話をしたが、20分近く泣いて、「精神がほとんど崩壊しそうだ。もし明日会えなかったら、私は死んだということです」と言った(13)

そのほか、彼女たちはジャーナリストと会うことも許されていないという(14)

支援者の趙思楽さんまで容疑者扱いされ、香港行きが不許可に

フェミニストの趙思楽さんは、文章を書くなどして5人を支援してきたが、趙さんが4月16日に香港に行こうとしたら、税関で遮られて、警官に「あなたは未解決の事件の犯罪の容疑者なので、出境は許されない」という「北京市公安局」の落款入りの文書を読み上げられ、香港行きを阻止された。こうした行為にはなにも法律的根拠はなく、趙さんも「私はどの事件についても、調査も召喚も拘留もされたことがないし、なんの通知も受け取っていない。こんなふうに理由も言われずに、犯罪の容疑者にされるのか?! フェミニズム事件に声援を送ることが犯罪になるのか?!」と言っている(15)

外交部、北京益仁平センターに対する処罰を表明

5人が釈放された翌日の4月14日、外交部のスポークスパーソンは、北京益仁平センターには「法律違反の疑いがあり、処罰するだろう」と述べた。前回述べたように、同センターは5人の拘留中の3月24日にすでに家宅捜索を受けていたが、処罰を意図していることを示した発言だった。

それに対して、北京益仁平センターは、おおむね以下のように応答した
・私たちも弁護士を招聘して、法律にもとづいて今回の外交部の非難と3月24日の益仁平オフィスの家宅捜索と物品没収に対応する。
・北京益仁平は、2006年の設立以来、多くの部門や多くのクラスの警察部門に「面倒を見て」こられたが、もし本当に違法なことがあるのならば、今日外交部門が言うのではなく、とっくに警察が言っているはずだが、警察も何ら違法な点を指摘していない。
・私たちは、去年から、他の反差別機構も、連続して、まったく法律的根拠がない、まったく突然の弾圧にあっていることに注意している。2014年7月、障害者差別の解消を主な目的にしている鄭州億仁平機構が物品を差し押さえられ、2015年3月、性差別の解消を主な目的にしている杭州蔚之鳴機構が差し押さえにあった。
・国内で最も早く差別反対を専門にした公益機構として、北京益仁平センターは、反差別に努力をしてきたが、「反差別」という概念はすでに全社会の同意を得られており、中共中央18期3中全会の全面的な改革の深化に関する60条の決定の中にも「すべての就業差別をなくす」とある。当局が、反差別が必要だと宣言する一方で、反差別機構のオフィスを立て続けに捜査して、「違法」だと非難していることは、当局の政策に真実性・一致性・一貫性があるのか理解しがたい。
・釈放されたばかりの「フェミニスト五姉妹」は、みな北京益仁平センターの同業者で良き友であり、そのうち3人は私たちの同僚か以前の同僚でもある。五姉妹が警察に捕まったことに対して、私たちは国内外の各界といっしょに抗議をし、彼女たちに声援をおくり、4月13日に全員が釈放された。しかし、私たちは、益仁平がこの抗議と声援の活動において特に突出した貢献をしたとは考えていないので、私たちも、益仁平オフィスが3月24日に捜査され、外交部が益仁平を非難したことが、まちがいなく「報復」行為だと証明することはできない(16)

北京の人権弁護士の唐吉田さんは、外交部が北京益仁平センターの活動について「法律違反の疑いがある」と言ったのは、国際社会が「フェミニスト五姉妹」と北京益仁平センターが警察に捜索された事件に注目していることと関係があろうと述べた(17)。たとえば、3月27日、アメリカの国務省が、北京益仁平センターに対する捜索に遺憾の意を示し、「中国の人権状況は悪化し続けている」と述べたので(18)、外交部は、そうした発言に対して応答したのだろうというわけだ。

4月24日に、武嶸嶸さんが北京益仁平センターのことを何度も尋ねられたのも、中国当局が同センターに対する処罰を狙っているからだろう。

女性の権利は認めても、女性が運動によって闘い取ることは認めない? フェミニズム運動と民主化運動との相互協力を説く意見も

武さんに対して、北京から来た警官が、「フェミニズムの活動は支持しており、問題はまったくない」と言っているように、当局も今回の事件がフェミニズム自体に対する弾圧ではないと強調しているように見える。

しかし、陸軍弁護士が「中国では、女性の権益あるいはジェンダー平等は、政府によって与えられることはできるが、女性たちが自分で主張したり、自分で闘い取ったりするのではないと政府当局は考えている」と述べているように(19)、当局は女性の主体的な闘いについては否定的だと考えざるをえない(20)

そこまで露骨な言い方はしていないが、5人が釈放される少し以前の4月9日、『環球時報』は、5人の拘留について、「女性の権利の擁護は、勝手に通りに出て抗議をする理由ではない」という社説を出した。この社説は「女性の権利は中国では何ら尖鋭な話題ではなく、中国の女性の地位は世界の主要な順位で前の方であり、女性の権利を闘い取ることはタブーではない」と言いつつ、「重要なのは、フェミニズムがどんなやり方をするかであり、女性の権利そのものだけを論じるのか、それともわざとエッジボールを打つ(法律や規定にぎりぎり抵触しない行為をする)のか、不法な抗議によって社会秩序に挑戦して、さらに現行の法律体系に挑戦する姿勢を示すのかということである」と述べた(21)

この社説に対して、趙思楽さんは、「政府当局の代弁者である『環球時報』」の「言わんとするところは、女性の権利を論じてもいいが、私が私の方法でしか論じてはならず、女性自身は、自分の行動によって権利を勝ち取る資格はないということである」と指摘して、中国のフェミニズム運動と民主化運動とが相互に協力を強める必要があると述べている。伏字交じりの文章だが、一部をご紹介する。

フェミニズム運動の反権威の属性や自由平等に対する追求や運動をする者の自主的発声・自主的行動に対する信念は、[zz](=中国政府?)国家においては、フェミニズム運動は、必然的にD(Democracy?)運動の有機的構成部分になることを決定づけている(両者が相互に協力・承認するか否かにかかわらず)。

このたびの3.7フェミニズム事件と救援の闘いの成功は、中国のフェミニズム運動が正式に反[zz]の色彩を帯び、半ば受動的に政治化してD運動と互いに融合することを示している。

このような現実は、同時に、中国のフェミニズム運動家とD運動家の智慧と勇気を試している。彼女たちは新たな出発をする必要がある。両者がどのようにしてお互いに結びつき、お互いに敵視しないようになるか、そのためには、現在男性が主であるD運動が、いまなお重大なジェンダー的偏見と男権的思惟を脱却して、フェミニズム運動の成果と力を認め受容することが必要であるとともに、フェミニズム運動家がD運動と公共討論に意識的に参与して、ジェンダー意識について「進歩が必要な」[my](=民主運動?)の人々に対して辛抱強くなることが必要である。(22)

中国の行動派フェミニストがこれまで体制外の運動などとは一線を画す形で運動してきたことは事実であるし、だからこそマスメディアにも取り上げられたし、その点が5人の釈放にも有利に働いた面があることは先に述べたとおりである。しかし、その一方、それでも1カ月あまり拘留され、現在も拘留以前より運動がはるかに厳しい制約の下に置かれていることを考えると、これまでどおりの運動だけでよいのかという疑問もある。今後は、こうした点でも模索がおこなわれるだろうし、フェミニストの間にも分岐が生じるのかもしれない。

三 反撃はじまる

以上で述べたような、さまざまな困難な状況があるが、彼女たちや支援者も、当局からの報復を恐れずに、反撃を始めた。

捜査取りやめと国家賠償、謝罪、押収物品の返還を求める市民署名

5人が釈放された翌日の14日、「公民社会連署声明:警察はただちに職権の濫用を停止し、フェミニスト五姉妹事件を撤回し取り消せ」という署名サイトが設置された。以下は、その全文である。

2015年4月14日、「公共交通の車両の反セクシュアルハラスメント」活動を計画したことによって警察に捕まって1カ月あまり監禁された「フェミニスト五姉妹」は、4月13日夜に自由を獲得し、私たちと国内外の各界人士はみな喜び、安心した。しかし、五姉妹の事件に対する調査がまだ取りやめられず、五姉妹がまだ警察に「犯罪容疑者」として扱われ、彼女たちが「取保候審」にされているに過ぎないことに対しては、私たちは、警察のこうした対処の方法は合法でないし、不合理だと考える。

1.「フェミニスト五姉妹」は捕まったときに、「公共交通反痴漢」という「普法(法律知識普及)」活動を計画していたところだった。3月6日・7日に北京の警察が刑事拘留した理由は、「挑発してトラブルを起こす罪(尋衅滋事罪)」であった。しかし、この普法活動はまだ計画中であり、実行されていなかったので、「挑発してトラブルを起こす罪」の法律的要件にまったく合致していないので、根本的に成立しない。

2.警察が4月6日に検察院に「フェミニスト五姉妹」の逮捕を申請したときは、彼女たちの罪名は「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す(聚衆擾乱公共場所秩序)」に変更され、捜査の方向は、3年も以前に五姉妹の一部の人が参加した「男子トイレ占拠」・「血染めのウェディングドレス」の活動になった。明らかに、警察はもう五姉妹を拘留したときの罪名が成り立たないことがよくわかったから、事件を無理やり成立させるために、無関係な罪名と捜査の方向に変えたのである。これは、疑いなく、「先に人を捕まえて、後で証拠をでっち上げる」という違法な捜査である。

3.「男子トイレ占拠」の活動も「血染めのウェディングドレス」の活動も、起きたのは3年前であり、前者は、「にわかの便意」を覚えた女性を助けるために、男女の便器のアンバランスの問題を解決することを訴えたものであり、後者は、家庭内暴力防止に関する法律を普及させるためものであった。両者とも短時間のパフォーマンスアートにすぎず、「秩序を乱す」ことが目的ではなく、現場ではトラブルは発生していないし、公共秩序の混乱も起きていない。事後の効果から見ても、「男子トイレ占拠」という娯楽化した行動によって、メディアや立法者、為政者が「女子トイレの行列」の問題に注目し、重視をした。2012年だけでも、少なくとも広州・深圳・昆明・石家荘・南昌・太原などの都市の政府部門が関連する措置を実施した。年末には、「男子トイレ占拠」は『中国婦女報』の「2012年『ジェンダー平等』十大ニュース」に入選した。「血染めのウェディングドレス」のパフォーマンスアートも、わが国が今制定している「反家庭暴力法」に沿い、それを促進するものである。

以上述べたところを総合すれば、過去1カ月余り、警察によって「犯罪の容疑がある」と考えられたフェミニスト五姉妹がやってきた行為はすべて、なんら法律違反や犯罪の部分がなく、むしろ、わが国の女性の権益の保護を促進し、法治建設を促進したのであるから、表彰と褒賞を受けるのが当然である。彼女たちを捕まえたのは、明らかに冤罪事件である。現在、警察がフェミニスト五姉妹を「犯罪容疑者」として扱い続けていることは、明らかにこの冤罪事件を継続していることである。ここにおいて、私たちは、中国の警察に要求する。

1.ただちに五姉妹に対する刑事捜査を取りやめ、この事件を撤回して、五姉妹に対する「犯罪容疑者」としての扱いをやめよ。

2.ただちに国家賠償の手続きを開始し、フェミニスト五姉妹を不法に拘禁し、連行した行為について公開の謝罪をおこない、職権を濫用した警察の責任者を法によって処理せよ。

3.ただちに杭州蔚之鳴(注:武嶸嶸さんたちのNGO)・北京益仁平センターに対して押収した物品を返還し、民間公益機構に対する侵害と弾圧を停止せよ。

4.ただちに五姉妹にすべて財物を返還し、国際法に合致したフェミニズム運動の参与者に対するすべてのハラスメントを停止し、女性と女性団体が権益を勝ち取るすべての権利を保障し、セクシュアルハラスメントに反対し、家庭内暴力に反対するなどの女性の権益を保障する活動をまじめにおこなえ。

1.あなたの姓名は?
(        )

2.あなたの職業は?
(        )(23)

この署名ページは翌日には消えてしまった。それでも、150人近くの署名が集まり、この署名は北京市公安局と北京市人民検察院か検察庁事務局に送る予定だと報じられた(24)

李婷婷さん、武嶸嶸さん、拘置所内での人権侵害を告発し、押収物品の返却を求める

李婷婷さんは、王宇弁護士に委託して、北京海淀公安分局が違法行為――具体的には、疲労させて訊問した、人格を侮辱した、一度ならず顔に煙草の煙を吹きかけたなど――を海淀人民検察院に告発し、この案件を撤回して、自分に対する強制措置を解除し、押収した数十件の物品を返還するよう求めた。

李さんは、告発の手紙で、警察が国際女性デーの公共交通でのセクハラに反対する活動のために私たちを拘留したことは、思ってもみなかったことであり、「挑発してトラブルを起こす」罪も、「おおぜいの人を集めて公共の場所の秩序を乱す」罪も、自分に罪に陥れるものだと述べた。李さんは、犯罪にならないことをした人に対して上のような違法行為をしたことは無実の罪を作り出す行為だと述べている。

また、李さんは、取り調べのとき、目に強い光を当てられ続けたため、眼が長いあいだ赤くなって、よく見えなくなり、涙が流れて、具合が悪くなったことを明らかにした(また、李さんは、繰り返し、同性愛で「吐き気がする」、「恥知らず」だと言われたという(25))。

李さんの告発状には、押収されてまだ返却されていない物品として、本人の財布、ノートパソコン、ポータブルハードディスク、携帯電話3本、一眼レフカメラ、ガールフレンドのパソコン、携帯電話、USBメモリー、同室の友人のノートパソコンと携帯電話なども列挙されている。

李さんは、告発をしたことによって、逆に警察に攻撃されるという報復も心配はしたけれども、以上のようなさまざまな点を是正させることは、みな自分が持っている権利だと思うと述べている(26)

また、武嶸嶸さんは、訊問のときに以下のような精神的「拷問」を受けたと訴えた。
・「B型肝炎にかかっているから」という理由によって床で寝させられた(実際は、ベッドを共用しても伝染することはない)。
・同じ部屋の人がみな寝たずっと後になるまで、部屋に帰ることができなかった。こうした疲労させて訊問するというやり方によって、肝炎の病状が悪化した。
・「縄で縛って男子房に放り込んで、輪姦させてやろうか」「子どもはまだ4歳だな。今後の進学と就職が大変だな」と脅迫された。
・拘置所の警官に「あんたはくずだ。害毒を流す女だ。以前は、男は三妻四妾を持てたのに、今は、我々はあんたがたに苦しめられている」と大声で罵られた。
・捕まったとき、カルテや健康診断結果や数種類の薬を身につけており、そのうちの一つは、勝手に服用を停止したら生命が危険なものだったにもかかわらず、拘置所で薬を取り上げられた。武は何度も拘置所にそのことを言ったのに、ずっと無視され、やっと3月19日に公安病院で治療を受けたが、そのときには病状は非常に重大になっていた。
・出獄後も、身分証を警察に理由なく押収されて、生活のさまざまな面で苦労している(27)

北京の警察が武さんにしたことは、国連の「拷問禁止条約」の第1条の「拷問」の定義(「『拷問』とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって(……)『拷問』には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない」(28)) の「拷問」に当てはまると指摘されている。

李婷婷さん、留置所の状況についてルポ

また、李婷婷さんは、ただちに何らかの告発を伴うものではないが、留置所での状況についてやや詳しい記録を発表した。

李さんは、そのなかで、「威嚇と脅迫にあっても、私はフェミニズムの追求を放棄しないし、かえって決心が固まった」と述べているのだが(29)、留置所に関しても、以下のようなことを指摘している。
・留置所には、男性は放風(獄中生活者を屋外で運動させたりトイレに行かせたりする)させるのに、女性は放風させないことがある。また、監獄(留置所ではなく、既決囚が入る場所)では、祝祭日は夫婦で過ごせるのに、女性はそうではないという性差別がある。
・「当直制度」は、拘留している人が拘留している人を管理するという法規に違反する制度である(30)

武嶸嶸さん、人権侵害的な召喚を拒否

また、4月29日、武嶸嶸さんは声明を出して、杭州市の地区担当警察官から電話があって、北京の国保(公安部国内安全局)が私を召喚していると言われたけれども、私は召喚を受けなかったと述べた。その理由として、武さんは声明の中で次の3点を挙げた。
 1.私を担当している国保の警官は、北京の警察は召喚していないと言っているし、地区担当警察官は北京の警官の身分情報を確認していない。召喚している主体がはっきりしない状況の下では、私は召喚を受けることができない。
 2.北京の警察は4月24日と25日に、何の証明書を見せずに、八時間にわたって、疲労させて訊問をし、人格的侮辱もおこなった。以前私を侮辱した数名の警官の尋問は受けられない。これらの警官には最低限の職業道徳が欠けている。
 3.このように頻繁な尋問とその内容は、私の現在の事件とは関係がない。彼らは私が以前仕事をしていた機関(北京益仁平センター)のことを集中的に訊問したが、私はずっと以前に離職した末端の職員であり、私が知っていることは以前の尋問の中ですでに答えている。私は警察が尋ねる益仁平の内容をよく知らない。また、北京の警察が私を益仁平の証人として扱っているのか、それとも現在の事件の容疑者として扱っているのかもわからない。もし証人ならば、証人としての待遇を要求するし、もし容疑者なら、上述の問題は、明らかに私の事件の範囲を超えている。
 北京の警察のはなはだしく違法で非人道的な召喚に対しては、私は近いうちに法によって告発をする。私は適切な時間に、適切な範囲内で訊問を受けることを要求する。また、私を召喚した警官が専門的資質と基本的道徳を備えることを要求する。(31)

武嶸嶸さん、行政再議申し立てによって身分証を再発行させる

武嶸嶸さんは、釈放されたのに、身分証を返してもらえなかった。海淀派出所の警官は「武さんの身分証をなくした」と言い、武さんがもう一度発行するように求めると、何度もそれを承諾したが、実際にはずっと何もしてくれなかった。そこで武さんは、故郷の山西に帰って身分証を作ってもらおうと思ったが、武さんは保釈中なので遠方に出かけるには、臨時の身分証明文書が必要だった。だから、武さんは、居住地の杭州の西湖区の蒋村派出所に臨時の身分証明文書を交付するように求めたが、断られた。

身分証がないために生活のさまざまな面で不便を強いられたので、5月5日、武さんは、西湖区公安分局の蒋村派出所が職責を履行しないのは行政不作為に当たるとして、西湖区人民政府法制事務局に行政再議を申し立てて、臨時身分証を交付するように要求した(32)

さらに、翌日の6日には、杭州の地区担当警察官の王海浜警官に先月25日の尋問や身分証を渡さないことの不当性を訴える文書を渡した(33)

5月7日、海淀派出所の警官から、身分証はもう山西の方で出来ており、遅くとも明日には、王海浜警官に送るという返事が来た(34)

こんな当然のことについてさえ粘り強く働きかけなければならないことは、きわめて不当だが、武さんは筋を通して公に訴えて権利を勝ち取ったと言えよう。

李婷婷さん、裁判支援を再開

4月20日、李婷婷さんは、女子大学生の馬戸さん(仮名)が、宅配便配達員の採用の際、北京郵政が馬さんを「女性だから」という理由で採用しなかったことを訴えた裁判(この裁判については、本ブログの記事「『男性のみ』募集を訴えた3件目の裁判――今回は翌日に受理、『男性向け』と思われがちな宅配便配達員での採用の性差別を問う」参照)の2回目の審理の応援に駆けつけ、原告の馬さんと一緒に裁判所の門の前で、女性の力を示す「WE CAN DO IT」のポーズをして写真に収まった(35)

以上のような形で彼女たち反撃しているが、市民署名や李婷婷さん、武嶸嶸さんの要求や告発が直接なんらかの成果を挙げているわけではまだない。また、李婷婷さんが活動を再開したといっても、以前のような街頭パフォーマンスアートや全国的な活動はおこなわれないままである。彼女たちの活動が中国のマスコミに取り上げられることもない。その意味では初歩的な反撃であり、活動再開だが、そもそも釈放されてまだ一ヶ月、まだ保釈(取保候審)の段階である。今後のどのように道を切り開こうとなさるのかに注目したいし、国際連帯の方法も考えていきたい。

四 人権弁護士によるセクシュアル・ハラスメントをめぐって

そうしたなか、5人についた弁護士の1人である王秋実(ワンチウシー)さんが、当事者の家族や友人の女子学生たちに対して職権を利用してセクシュアル・ハラスメントをしていたことが明るみに出た。

猪西西さん、王秋実弁護士のセクハラを明らかにし、公の謝罪など求める公開書簡

5人の拘留中は、捕まっている当事者の救援に悪い影響があることを怖れて被害者や支援者も王弁護士のセクハラについて黙っていたが、4月22日、フェミニストで5人の支援者の一人である猪西西(ジューシーシー)さんが公開書簡を出して、王秋実弁護士が以下の行為をしたことを明らかにした。
・当事者のある家族が当事者の状況を尋ねたとき、引き替えに相手にプライベートな写真を送るよう要求した。その家族が事件の進展について相談したときも、性的要求をした。
・他のフェミニストの若い仲間たちに対しても、この事件で王弁護士に接触せざるをえないときに、程度は異なるが何度もセクハラをした。その若い仲間は、自分の安全も保障されていないなか、王弁護士は、緊急連絡人の身分を利用して、彼女に対して言語による露骨な性的暗示をした。
・その仲間が、王弁護士にそうした行為はやめて謝罪するよう求めたら、王弁護士はそれを受け入れつつも、からかった。

猪さんは、王弁護士が「フェミニスト五姉妹の権利を擁護しながら、彼女たちの友人の怖れや気かがり、心配を利用して、彼女たちを脅迫し、機会に乗じて彼女たちにセクハラしたことは、抑圧者の抑圧を利用して、あなたが支持しなければならない人を抑圧し続けたことであり、被害者を傷つけただけでなく、フェミニスト五姉妹と若い仲間のあなたに対する信頼を傷つけたことではないか?」と述べて、王弁護士に以下のことを要求した。
1.公に声明を出して、フェミニスト五姉妹事件の期間に職権を利用してセクハラをしたことを認め、それらの行為は女性の人権に対する侵犯だったことを認めること、
2.この事件の期間にセクハラをしたすべての女性に対して公に謝罪をすること、
3.今後は弁護士としての職権を利用することによる当事者その家族・友人に対してセクハラをしないことを承諾すること(36)

むしろ公開書簡の王弁護士への影響を心配する仲間たち。そうした状況に対する肖美腻さんの異議

肖美腻(肖美麗)さんも、4月23日、「私は王秋実に公の謝罪を求める。私にはこの最低限の正義が必要だ」という文を微博で発表した(37)

肖さんも、以下のことを明らかにした。
・王は私とメールでおしゃべりをしたが、何を話してもセックスする約束や男性の生殖器の話になった。
・私の友人たちも王にセクハラをされた。
・一番長いあいだ一番ひどいセクハラをされた人は、捕まっていた5人のうちの1人と関係が密接だったので、王との関係を壊したら彼女の救援にマイナスになることを恐れていた。
・肖さんが探してみたら、多くの友人たちもセクハラをされていて、自分の被害はとても軽微なものだった。
・自分たちはそれぞれ王に謝罪を求めたが、王の回答はふまじめなものだった。後に口頭での謝罪があり、それで終わりにした人もいたが、肖さんは不満足だった。しかし、救援にマイナスになることを恐れて、それ以上追及しなかった。

さらに、肖さんは、猪さんの公開書簡が出ると騒ぎになったが、みんなが議論したのは「王秋実はなぜこんなことをしたのか」といったことではなく、議論の焦点は「なぜこの公開書簡を出す必要があるのか」ということや「この書簡が王秋実に対してどのような影響を与えるのか心配だ」ということだったと述べた。

そういう状況に対して、肖さんは、「私はとても辛い。私は性暴力に反対する活動をしているので、被害者を責めるロジックはよく知っている。けれども、まさかこんなことがこんな形で自分の身に起きて、仲間の口から出ようとは思わなかった。本当にフェミニズムのテーマが私たち自身の身に起きたときの、多くの友だちの行為には、私は失望したし辛かったし、傷ついた。ある人は、友だちグループで、私たちが王秋実をネットでいじめていると言い、ある人は、私たちは王秋実に対して愛と思いやりが足りないと言い、ある人は、もう謝ったのにまだ不十分なのか、と言った。」

「私は本当にわかない。数人の女子学生が彼にセクハラされたというのに、私たちが公開の謝罪を要求するのがまさか行き過ぎだとでもいうのか? 公開の謝罪を要求することだけのことが……! まさかこれが本当に行き過ぎた要求で、彼に対するいじめだというのではあるまい?(……) まさか私たちセクハラされた人は、彼の秘密を守らならなければ思いやりがないというのではあるまい?(……)私は王秋実に公開の謝罪を求める。私にはこの最低限の正義が必要だ。また、私は、それを公開することによって彼が傷つくのは、私たちの責任ではなく、彼自身の行為が招いたものであり、彼をいじめていることでまったくないと言わなければならない。セクハラ事件がセクハラした者のプライバシーではないことは、家庭内暴力が暴力を振るう者のプライバシーでないのと同じであり、公表する必要があるか否かは被害者が決めることであって、被害者がある人のセクハラを公表したからといって、セクハラした者のプライバシーを侵害したと言って責めてはならない。」

「これはフェミニズム運動だ。もしフェミニズムの信念に背いたら、たとえより多くのフェミニズムを認めない人と団結したとしても、その運動をする意義はどこにあるのか? もし私たちがセクハラを受けても声をあげなければ、その反セクハラ運動の意義はどこにあるのか? 男権社会の中で成長した私たちは、みな男権文化の影響を多かれ少なかれ受けていて、多くの男権思想を内面化している。フェミニズム運動の参加者は、たえず学び反省する必要がある。これは遊び半分ではない。今回の事件の中から、私たちも学び、成長することを私は希望する」。

王弁護士の謝罪の声明。しかし彼は反省しておらず、北京紀安徳諮詢センターによる処分も軽かったため、肖さんはセクハラの証拠を公開

こうした声を受けて、4月23日の夜、王弁護士は微博で声明を出して、「このたびの事件で被害を受けたすべての女性に謝罪し、こうした事件を2度と起こさないことを保証する」と述べた(38)

しかし、27日、猪西西さんは、この声明は、同時にセクハラを「冗談だった」と言い、自分の職権を利用したことを否認している点で、「弁解ではなく、お詫びだと認めるのは難しい」と批判した(39)

29日、肖美腻さんも、王秋実が「冗談が行き過ぎただけだ」と弁解していることを批判した。それだけでなく、肖さんは、王秋実が別の場所では「私の友人はもちろん私を信じ支持している。そうでない者は自由に言わせておけ。私は意に介しない。人の言、恐るべし。私にはどうしようもない」と書いているスクリーンショットを示した。また、事件が起きた後に、王秋実も非常によく知っているフェミニストの友人2人が、多くの精力を使って彼と意思疎通を試み、その1人は彼と12時間話をしたが、2人とも説得に失敗したことも明らかにした。

肖さんは、多くの友人から「なぜ証拠を公開しないのか」と尋ねられたことに対して、それは「当事者に二次被害を与えることになるし、当時はまだ私は王秋実の面子をあまり失わせたくないと思っていた」し、「私たちは単純すぎて、王秋実というフェミニストを弁護する弁護士は、誤りを認識できる能力があると考えていた」し、「また、彼がいる機構である北京紀安徳諮詢センター(遠山注:1997年の「北京同性愛諮詢ホットライン」を起源とするLGBT団体)にも希望を持っており、この機構は彼に適切な処分をすると期待していた」、「紀安徳という名前は英語のgenderという単語に由来しているのだから、きっと基本的なジェンダー意識を持っているに違いない」と思っていたからだという。

しかし、肖さんが北京紀安徳諮詢センターからその日(29日)に得た回答は、王秋実に対して、「給料の支払いを停止して反省させる」だった。これでは「みんなの関心が過ぎ去ったら、機構に戻って出勤させる」ことになるが、「王秋実は職務を利用して多くの女性(レズビアンを含む)にセクハラをし、かつ、問題が指摘された後も、自分の誤りを認識することできず、自分は冗談を言っただけだと弁解し、さまざまな不平を言っている。このような弁護士がどうしてジェンダー機構にまだいる資格があって、どうして人権弁護士になることができるのか? 私は、紀安徳というのは、ただの虚名だと考えざるをえない。私は、紀安徳がなぜ直接自分はそのままgay団体だと言わずに、このような名前にしなければならないのかわからない。いや、たとえgay団体だとしても、このように言うのは不公平だ。gay団体でも王秋実には仕事を続けさせないだろう」と述べた。

肖さんは、王弁護士のセクハラに対して「大局のためには騒いではならない」という人もいるが、それは警察や公安の論理と同じだと以下のように批判している。

「私たちが公共交通でのセクハラ反対運動をしたとき、警察と国保(公安部国内安全局)が私たちのところに来て、5人の友人を拘留して、国家の安定のためには騒ぎを起こすなと言った。多くの友人が、私たちがこの5人の友人を解放するために声援を送るのを助けた。けれども、その『友人』がセクハラを受けたとき、いっしょに声援を送った人の一部は、私たちに、大局のためには騒いではならないと言った。それでは国保と同じではないか? こんな時も私たちはまだ紀安徳の安全を考慮しなければならないのか?(これらの情報はすでに国保も知っているということは別にして)」

肖さんは、王秋実のセクハラの証拠として彼のチャットの画像を公開した。それは、彼が「胸を見せてくれ!!!」とか、「これから会うときは、ズボンを脱いであなたが舐めるのを待っている」、「口でやってくれ」とか、(拘留されている女性のレズビアンパートナーに対して)「火事場泥棒をして、あなたの異性のセックスの初夜を自分のものにする」とか、「どっちにしても、口でやってくれ」「2人いっしょに口でやってくれ」とかチャットで話している(俗語が多いので、正確な翻訳かどうかわからないが)画像であった(40)

在米学者の沈睿さん「アメリカなら解雇」

5月1日、在米学者の沈睿さんは、「王秋実のセクハラはごろつきの行為である」という文を発表して、「私は謝罪では軽すぎると思う。謝罪は処罰ではない。私は彼を処罰しなければならないと思う」と述べた。沈睿さんは、王秋実は「他人が苦境にあるときを利用して、自らの権力によって、自らの性的ファンタジーを満足させ、きたない話をし(……)火事場泥棒をした」、「鉄格子の中の友だちが心配でたまらない」女性たちに「大局のために(……)調子を合わせざるをえないようにした」、「赤裸々なごろつきの行為である」と批判した。さらに、「王秋実のハラスメントは、中国の男権思想を持った、ちょっと権力を持つと濫用する男性のごろつきぶりと無知を示した」と述べた。

沈睿さんは、もしアメリカで同様な行為があれば、「王秋実は、まず彼がいる弁護士事務所から解雇される」し、「誠実な謝罪をしなければならず、そうしなければ処罰から逃れることはできない」と述べた(41)

社会運動内部の問題について声を上げることに対して、「大局のために」という理由から抑圧(ないし自己抑制)がかかるのは、日本も同様だろう。社会運動や人権弁護士に対する抑圧の強さという点から見ると、中国のほうが声をあげることはより困難かもしれない。まさに二重三重の困難がふりかかっている形だが、こうした問題についても声をあげている女性たちの存在は重要だ。

(1)中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(2)「市民運動抑圧に異論 中国、活動家5人釈放 党の傘下団体からも批判」『朝日新聞』2015年4月18日。
(3)この点に関連して、王政さんも、警察が1カ月かけても何の罪証も出てこなかったこと、以前政府系メディアも「男子トイレ占拠」をほめていたことなどが釈放につながったことを述べている(李思磐的微博「密西根大学王政教授的评论:拿出良知与勇气,无罪释放她们」2015年4月11日)。
(4)大兔泪目:这一次,你们比我更坚强勇敢」有道云笔记2015年4月20日。
(5)女权五姐妹之李婷婷的感谢信:字短而情长,要感谢的太多太多」博讯新闻网2015年4月21日。
(6)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(7)刚释放的女权人士韦婷婷与友人即兴演唱」博讯新闻网2015年4月20日
(8)武嵘嵘的信:期待它日相聚时,畅谈人生,把酒言欢」博讯2015年4月21日
(9)「中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(10)赵思乐「中国女权运动重新出发」博讯新闻网2015年4月18日。
(11)向莉‏@alicedreamss 2015年4月15日 5:46
(12)致小伙伴――来自Waiting的感谢信」有道云笔记2015年4月17日。
(13)以上は、「女权五姐妹之一杭州武嵘嵘出狱后继续连续遭北京警察骚扰精神几近崩溃」维权网2015年4月25日、「武嵘嵘:4月23、24日的情况记录」维权网2015年4月25日。
(14)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(15)因声援女权五姐妹案 女权主义者赵思乐被列犯罪嫌疑人阻止出境」维权网2015年4月17日。
(16)益仁平:对外交部指控我机构“涉嫌违法”的回应」维权网2015年4月15日。
(17)外交部谴责NGO组织益仁平违法 该机构称将聘请律师维权」Redio Free Asia 2015年4月14日。
(18)美国关注益仁平中心遭搜查 称中国人权恶化」美国之音2015年3月28日。
(19)中国女权五姐妹获释但自由仍受限」美国之音2015年4月14日。
(20)女性の権利の実現を唱えつつ、女性の権利のため運動を抑圧することは完全に矛盾しているということについては、前回ご紹介したように、艾暁明さんが「現在の維穏[=社会の安定維持]メカニズムは、国家が長いあいだ唱えている男女平等という文言とは完全に相反していることを暴露した。私たちの国家の女性の権益を保護する法律の中には、家庭内暴力にも性暴力にも反対する文言があるけれども、維穏メカニズムはこれらの言葉と完全に反しており、まったく引き裂かれた関係である」(「艾晓明:打压女权活动者为不智专横之举」博讯新闻网2015年3月12日)と述べているとおりである。
(21)社评:维护女权不是随便上街抗议的理由」『环球时报』2015年4月9日。
(22)赵思乐「中国女权运动重新出发」博讯新闻网2015年4月18日。
(23)https://zh.surveymonkey.com/s/RPD8FBN→(転載)「征集公民社会联署:女权仍未自由」博讯新闻网2015年4月20日。
(24)狄雨霏「支持者称女权五女应获得国家赔偿」纽约时报中文网2015年4月16日。
(25)Chinese women's rights activist more determined after lock-up”, the South China Morning Post 2015.4.20
(26)获释女权人士抗争不止 李婷婷控告北京海淀公安局」Redio Free Asia2015年4月22日。
(27)女权五姐妹之一武嵘嵘指控警察出狱后提讯时对她实行精神“酷刑”」维权网2015年4月26日。
(28)詳しく言うと、「拷問等禁止条約(拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約)」第1条は、「この条約の適用上、『拷問』とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。「拷問」には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない」と記している。
(29)麦子家的微博「如果同志运动是我的情,女权主义则是我的魂——看守所侧记一」2015年4月26日。
(30)麦子家的微博「看见不合理的规则,挑战规则——看守所侧记二」有道云笔记创建时间: 2015-4-23 22:43 修改时间: 2015-4-26 14:36
(31)“女权五姐妹之一武嵘嵘不接受传唤的声明」博讯新闻网2015年4月29日。
(32)女权行动派更好吃的微博【五姐妹案件后续行政复议:嵘嵘需要身份证,嵘嵘要去看春天】5月5日 15:32
(33)小社工大社会嵘嵘的微博5月6日 21:18
(34)小社工大社会嵘嵘的微博【女权五姐妹续—武嵘嵘马上就是有身份的人了】5月7日 19:12
(35)以上は、女权之声的微博「竟称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭,北京邮政拒不认错」2015年4月21日 12:04→熊婧「北京邮政称“招女快递员是违法”,性别歧视被告上法庭」2015年4月21日。Maizi Li「 #‎freeforfive‬# is also a great Art Performance.Thanks for you all!」Facebook2015年4月21日では、1人でポーズをとったり、釈放運動で使われた自分の顔写真といっしょに写真に収まったりしている。
(36)猪西西爱吃鱼的微博「谢谢您的维权,但请为您的性骚扰行为道歉——致王秋实律师的公开信」2015年4月22日。
(37)肖美腻的微博「我要王秋实公开道歉,我要这最起码的正义」2015年4月23日。
(38)秋实律师的微博2015年4月23日 22:36
(39)猪西西爱吃鱼的微博2015年4月27日 14:30
(40)以上は、肖美腻的微博「我要王秋实道歉,而不是狡辩」2015年4月29日。
(41)以上は、沈睿「王秋实性骚扰是流氓行为」豆瓣2015年5月1日。
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