国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず
<目次>
一、逮捕の経過
二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず
三、逮捕の理由について
四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか
五、逮捕の背景をめぐって
六、国際・国内的な支援広がる
七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会
八、署名運動にご協力をお願いします!
2012年2月以来、就職の男女差別、入学試験における男女差別、性暴力、ドメスティック・バイオレンス、公共トイレの男女の便器比率の不公平などの問題に対して、署名運動、裁判、街頭パフォーンスアート、情報開示請求などさまざまな運動をしてきた若い女性フェミニストの活動家たちが(彼女たちの今まで活動の年表とそれらについて書いた拙ブログ記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」参照)、今年の3月8日の国際女性デーに公共交通での痴漢防止アクションを計画していたことを理由に、3月6日から7日にかけて次々に警察に連行されました。
一、逮捕の経過
彼女たちの逮捕の経緯をまとめてみると、以下のようになります。
3月6日午後4時
・北京の韋婷婷さんと王曼さん、当地の海淀区派出所に連行・訊問される。
3月6日午後11時半
・広州で鄭楚然(大兔)さん、警官によって広州新港路派出所に連行される。派出所では訊問を2時間した後、付き添いを付けて家に帰らせて、国際女性デーのセクハラ防止のステッカーを持って派出所に戻らせた後、また訊問され、尋問は(合計?)8時間に及んだ。その後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。軟禁中のことでしょうか、3月8日、香港の『明報』記者が鄭楚然さんに電話したところ、鄭さんは、言葉少なに、記者の質問に対して「はい」か「いいえ」としか答えず、「話をするのも不自由で、誰かが傍らで監視している」と言い、自分は家にも、派出所にもおらず、広州におり、現在は安全だが、逮捕の理由については今は話せず、いつ家に帰ることができるかもわからない、と述べた(1)。
・北京の李婷婷(李麦子)さんの自宅に、太平橋派出所の警官がドアをこじ開けて侵入、住居を捜査され、連行される。李麦子の家は「物品がひっくり返されて『めちゃくちゃ』」(『明報』)だった。
3月7日午前4時半頃
・艾可さん、連行される。艾可さんは後に釈放されるが、警察では、「携帯電話でおしゃべりした内容は、グループのものも含めて全部見られた。私が連絡できる人すべてに明日の活動は中止すると通知しろと言われた」という。
3月7日午後2時半
・武嶸嶸さん、杭州の蕭山空港で、北京の国保(公安部国内安全局)の警官に連行され、古蕩派出所に連れて行かれる。午後5時10分、武の友人が、古蕩派出所からの武がかけた電話を受け、武が泣き叫ぶ声や痛みを訴える声を聞く。
その後、李麦子さん、徐汀(酸小辣)さん、韋婷婷さん、于蓮さんらは、北京の海淀派出所に拘留されていることが判明した(2)。
北京と広東、杭州というはるか離れた地でいっせいに逮捕がおこなわれたこと、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てているわけでもないのに、深夜に何人もの人が逮捕されたことは、今回の捜査の異常さを感じます。
二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず
ニューヨークタイムスは、「少なくとも10人の女性の権利のための活動家」(3)が逮捕されたと伝えています。その後、徐汀さん、于蓮さん、艾可さんらは釈放されましたが、李婷婷(李麦子)さん、鄭楚然さん、武嵘嵘さん、王曼さん、韋婷婷さんはまだ釈放されていません。
彼女たちの仲間は、「今回の攻撃は、私たちにとって重大事です。なぜなら、逮捕された人々はここ数年成長しつつある私たちの運動の中核を形成していたからです。」「彼たちは、女性の活動家の運動の中核的な力でした」(4)と述べています。
三、逮捕の理由について
彼女たちが逮捕された理由として示されたのは、刑法239条「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こす)」罪でした。おそらくその「4」の「公共の場所で騒動を起こし、公共の場所の秩序をひどく混乱させる」を指しているものと思います。
しかし、彼女たちがやろうとしたのは、「フェミニズムの理念を印刷したステッカーをバスの乗客に配布して、乗客に向かってセクシュアルハラスメント反対と国家機関の職責について説明し、ステッカーを乗客の体の目につくところに貼ってもらって、『人間宣伝器』にする計画だった」(香港の『明報』)とか、せいぜい「交通機関の車両にハラスメント反対のステッカーを貼ろうとした」(ニューヨークタイムス)という程度のことのようです。
もっとも、ロイター電は、李麦子さんと鄭楚然さんに近い人権活動家の話として、「彼女たちと活動家数人は、3月7日、公共交通のスペースでセクハラ反対のデモ(demomstration)をする計画をしていた。このデモは、北京、広州、その他いくつかの地区でおこなう計画だった」と伝えました(5)。中国の微博でも、「許可されていなデモは、違法だから、拘留は間違っていない」という意見を述べる人もいました。しかし、陳亜亜さんは、そうした意見に対して、1.これはデモではなく、数人が地下鉄で宣伝をしようと思っただけである。2.実行したわけではなく、計画しただけである。3.拘留は、違法デモではなく、「寻衅滋事」という罪名によっておこなわれたと述べて反論しています(6)。
また、今回の逮捕は、きわめて不備な手続きによっておこなわれました。黄思敏弁護士は、自らの微博で、「寻衅滋事 海淀区拘留所」とだけ書かれた紙片の写真を掲載して、「こんな一枚の紙によって、北京の公安(≒警察)は、女性の権利の唱導者である鄭楚然を連行した。刑事訴訟法には紙くずほどの価値もないのか? 公権力の恣意・傲慢がありありと紙上に現れている。女性の権利を擁護するには、男権的社会で平等を勝ち取らなければならないだけでなく、専制下の醜悪な公権に直面しなければならない」と述べました(7)。
公共交通機関の敷地内などでの行動は、日本でも弾圧の口実(ないしは言いがかりのネタ)にされることがあります。しかし、彼女たちは、今までも地下鉄の構内のみならず、車両内でパフォーマンスアートをしたり、歌を歌ったりしたりしてきましたし、チラシの配布や署名への協力の呼びかけさえしてきました。さらに、彼女たちはそれを動画で公表してきましたが、とくに弾圧などはされませんでした(「视频: 我可以骚你不能扰」「视频: 2012性别不平等之“我可以骚你不能扰”现场视频终」「视频: 阴DAO独白 北京地铁“快闪”」)。2012年2月に彼女たちが「男子トイレ占拠」アクションを中国各地でしたときも、事前に阻止されたことはありましたが、逮捕された人はいませんでした。
しかも、先に述べたように、今回の逮捕は、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てていたわけでもないのにおこなわれました。
四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか
中国国内のマスメディアは、今回の問題を取り上げていません。また、ネット上での発言も、頻繁に削除されています。しかし、そうした中で拾えた声を以下にいくつか挙げてみました。
牛犇犇さんは、「女性デー、ハラスメントに反対したために、ハラスメントをされる?」という一文を書きました(8)。
また、チベット雪域レインボーグループ(西藏雪域彩虹小组)の微博は「三八デーの準備のための活動で、テーマはセクハラをなくす宣伝なのに、おおぜいの人を動員して逮捕するというのか? これは、手続きなしに消失させられることであり、でっち上げの罪名による合法的な失踪ではないか? 72時間が過ぎた。私たちの仲間を返してください! 悪法を制定し、執行した者は、だれであれ、いずれは自分の身に報いが来るであろう!」と述べました(9)。
最近、国際女性デーが単なる「女性が女性役割を果たしていることを思いやる祝日」になっている風潮の中、女性が自らの権利を主張したら弾圧されたことを痛烈に皮肉る声もありました。すなわち、ある女性は、微博で、「女性の権利を闘い取る祝日が、母の日に変わり、恋人の日に変わり、買い物の日に変わり、感謝の日に変わった。女性たちが自らのためのことを少ししたときだけ、逮捕された」(10)と書きました。
フェミニストの仲間もなかなか発言が難しい状況があると思いますが、卡楽潼さんは、「私はもう沈黙する理由は何もない。ジェンダー/セクシュアリティ活動家を釈放してください」という一文を公表しました(11)。
また、フェミニストの趙思楽さんは、「女性デーの中国における真の回帰」という一文を書いて、「女性デーは、どこかの国家、どこかの政党が『働く女性のものだ』とか『女性全体のものだ』とか設定する祝日ではなくて、女自身の祝日であり、たたかっている女性自身こそが作り上げる祝日だ。この日は、女は自分自身にふりかかった不公正・不正義のために歌い、叫び、闘うのだ。闘いがあってこそ、女性デーには意義があり、不屈であってこそ、女性デーは女性デーなのである。/女性の平等の権利を擁護する活動家が3月7日に捕まったが、3月8日には、各地のフェミニストの若い仲間が屈服せずに、何人かで集まって各種の方法で彼女たちのために叫び、声援を上げ、抗争をしている。/こうして、本当の女性デーが返ってきたことを宣言する。」(12)と述べました。
ミシガン大学准教授の王政さんは、次のように述べました。
「私は生まれて初めて三八国際女性デーで心痛を感じた!
アメリカでの30年、以前はこの日は、私は心の中で特に誇りを感じた。なぜなら、私たちには国定の国際女性デーがあり、アメリカにはないからだ。中国のフェミニズム運動は悠久の歴史があり、成果は顕著である。……
近年は、三八女性デーはいつも私に喜びをもたらしてくれた。なぜなら、はるかに海を隔てて、若い世代のフェミニズムアクティビストが、積極的に努力をしてさまざまな創意ある行動によって男権文化を変革することによって、市民の責任感とフェミニストの社会変革能力を示したからだ。三八デーは、彼女たちが、自らの素晴らしい実践によって中国のフェミニズムの光栄な歴史を継承・発展するものだった。
今年彼女たちが公共の場所でセクハラ反対活動を組織すると知って、私も彼女たちの女性デーの活動の情報について、興奮しつつ期待していた。彼女たちが三八デーの活動を組織したことによって無法に拘留されるとは全く予想していなかった! このような三八デーの活動に対する干渉は史上前例がなく、中華人民共和国憲法に違反しており、政治のやり方の最低ラインを踏みにじっている! 中国の女性はセクハラにさえ反対できない。こうした国家は、自由恋愛をした女を石で殺す国家とも五十歩百歩の区別しかない! 何香凝・宋慶齢・鄧穎超ら無数の中国の男尊女卑を改造して男女平等を実現するために終生奮闘した先輩たちを思うと、この三八デーについて、私は悲しみ悼んでいる。
すすぎえない冤罪をこうむっている若いフェミニズムアクティビストが早く自由を獲得するよう願う!」(13)
五、逮捕の背景について
公共交通の痴漢防止というテーマは、本ブログでお伝えしてきたように、2012年に上海地下鉄の痴漢問題を取り上げたことに始まり、昨年は行政側とも会談をして、一定の前向きの反応を得たような問題ですから(本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で『赤ずきん』姿で痴漢・セクハラ反対活動」)、このテーマ自体が問題だったとは考えられません。
だから、おりしも両会(人民代表大会と政治協商会議)が開催されている期間だから、活動を抑圧したのだろうとも考えられてきました。当時、環境保護の集会を各地の市政府の前で開こうとしたから、民間の活動を抑圧しているという見方もありました(14)。
そうした中、陳亜亜さんは、3月8日の時点で、「私は公共交通の痴漢防止は安全なテーマだと思っていたので、力ずくの治安維持の対象になるとは思わなかった。また三八(国際女性デー)が過ぎれば釈放されるという、暫時の制圧だと思ったけれど、今日、ある人が30日入獄しなければならないと言っているのを見た。これは、単純に両会のためではなく、あたかも政府が放出するための力を長いあいだ蓄えていて、今回のことを口実にして、重い拳で攻撃して、このような活動を厳しく制圧をする発端にしようとしていると感じた」と、かなり深刻な見方を示しました(15)。
実際、彼女たちは逮捕されて6日経っても釈放されておらず、陳亜亜さんの心配が当たったのではないかと思います。
六、国際・国内的な支援広がる
この事件は、日本のマスコミではなぜか報じられていませんが、ロイター通信やBBC、ニューヨークタイムス、ガーディアンも報じました(16)。
また、国連の第59回女性の地位委員会が3月9日~20日までニューヨークで開催されており、各国のフェミニストが「女权无罪(フェミニズム無罪)」「CHINA:FREE FEMINIST」といったプラカードを掲げて、中国政府にフェミニストの釈放を要求しました(17)。
中国国内についても、「理解女权主义,关注被打压的女权运动」には、彼女たちを支持する多くの記事やアピールが収録されていますが、労働者やLGBT関係者が目立ちます。
それというのも、彼女たち行動派のフェミニスト活動家は、自分自身がセクシュアル・マイノリティであったり、セクシュアル・マイノリティの運動にも関わったりしていました。とくに、韋婷婷さんはバイセクシュアルの活動家で、「北京同性愛相談ホットライン」の後身である「北京紀安徳(紀安徳=genderの音訳)相談センター」というセクシュアル・マイノリティ団体のプロジェクトの主任でしたし、徐汀さんは、武漢Lainbow LGBTの代表でした。
また、HIV/AIDS感染女性やセックスワーカーへの支援者の葉海燕さんも、彼女たちに大きな声援を送っています。
3月12日午前の段階で、世界で集めている下の八の1の署名は、署名人数が1000人を超え、署名者の国籍も73に達しました。また、鄭楚然さんの母校の中山大学を含めた広州の10大学、武嵘嵘さんの母校・中華女子学院、李婷婷(李麦子)さんの母校・長安大学の学生がみな声明を出したり署名運動をしたりしているとのことです(18)。
七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会
3月12日に、李婷婷(李麦子)さんと面会した燕薪弁護士によると、李さんは「やったことは何ら法律に違反していないばかりか、社会にとって有益である。すなわち、ジェンダー平等意識を広め、女性の権利に対する全社会の保護の認知を高めることであり、国家が女性の権利を保障するという国策とも合致している」と述べたそうです。李さんは、関心を持ってくれている社会の各界の人々に対して謝意を表明し、自分は勇敢にこの苦難に対して立ち向かうことが必ずできるし、自分と将来に自信を持っていると表明したとのことです。
また、李さんは、6日夜に自分を逮捕した警官は、(身分を証明する)証明書を誰も提示せず、彼らが示した召喚状も捜査証も空白であり、名前さえ書いていなかったと述べました。これは重大な違法行為だとして、弁護士がしかるべき機関に告発するとのことです(19)。
八、署名運動にご協力をお願いします!
国際的に集められている署名を日本語訳しましたので、皆さまも、ぜひ署名をお願いいたします!
署名1
今、国際的に集められている署名です。
【中国政府に彼女たちの即時釈放を求める署名】(この署名の文面については、大橋史恵さんの翻訳を参考にさせていただきました)
http://goo.gl/forms/v7m4L8tYdB
私たちは世界中のフェミニストです。2015年の国際女性デー直前に、中国の5人の若いフェミニスト活動家たちが、バスの中でセクシュアルハラスメントに反対する運動を計画したという理由で拘留されたと知り、ショックを受けました。
20年前の1995年、中国は第4回世界女性会議を開催しました。北京行動綱領に署名し、女性の権利とジェンダー平等の推進に力を注ぐと決意したのです。中国政府がこれら5名の若いフェミニストたちにしたことは、許しがたいことであり、北京行動綱領と女性差別撤廃条約の精神に反しています。
彼女たち5名のフェミニストは、李婷婷、王曼、韋婷婷、武嵘嵘、鄭楚然です。彼女たちは、ジェンダー規範を変革し、ジェンダー平等を推進するために、創意あふれるあらゆる手段を使って、一般の人々のジェンダーへの気づきを高めるという使命に力を尽くしてきました。彼女たちは、中国における女性運動の新しい波をリードしています。彼女たちは、中国をより住みよい社会に変革して、中国の未来を創造しているのです。
私たちは彼女たちを心の底から支援しています。彼女たちに、私たちがいつもそばにいると知ってほしいと思っています。女性の人権を擁護する人びとへの弾圧は世界中で起きており、私たちは絶対に彼女たちを守らなければなりません。それは彼女たちの問題であるとともに、私たちの問題でもあるのです。
私たちは中国政府に対して、彼女たちの即時釈放を求めます! どうぞ私たちに支援をください。そしてこのメッセージを、できるだけ多くの人たちに知らせてください。
世界のフェミニストより
2015年3月9日
【以下、署名欄部分の翻訳です。】
Your Name (名前)
Your Country (国)
私たちの目標は、最低50カ国からの支援を集めることです。どうぞ広くシェアしてください!皆さんのご尽力に感謝します。
署名2
こちらは香港の女性/ジェンダー団体の署名です。
【中国政府にフェミニスト活動家の釈放を求める声明】
「【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】」
発起団体:中国婦女協進会
香港の女性/ジェンダー団体は、北京の当局が、まだ十分な根拠がない状況において、省を越えて5名の有名なフェミニスト活動家、すなわち北京の李婷婷(麦子)、韋婷婷、王曼、杭州の武嶸嶸、広州の鄭楚然(大兔)を逮捕したことに対して重大な関心を持っている。私たちは、北京の公安当局に対して、憲法が賦与した人民の言論の自由を尊重・厳守し、関係者の司法的権利を確実に保証し、弁護士・家族と面会させ、人身の安全を確保すること、ならびに、違法行為の証明ができていない情況の下では、ただちに各人を釈放することを求める。
得られた資料によると、逮捕の行動は3月6日から始まった。当日午後4時、北京の韋婷婷と王曼が当地の海淀区派出所に連行され、訊問された。同日深夜11時半、北京の李婷婷と広州の鄭楚然も、それぞれ5、6名の警官の訪問を受けた。李婷婷の家には警官が扉をこじ開けて侵入して、李を連行し、その後30時間あまり経った今も消息不明である。鄭楚然は、広州の地方警察にただちに派出所に連行され、8時間訊問された後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。3月7日、広州の武嶸嶸は午後2時に飛行機で到着した杭州の空港で、ただちに北京の国保(公安部国内安全保衛局)に連行され、西湖区の古蕩派出所で訊問された。当日午後5時10分、友人が一度、武嶸嶸が泣いて訴え、痛みを叫ぶ電話を受けたが、通話は直ちに切断され、その後再度の連絡はない。
私たちは、各人の現在の状況、とくに武嶸嶸の人身の安全の状況に非常に関心を持っている。私たちは、中国の法令と国際基準にもとづけば、武嶸嶸が病気を患っている状況の下では、拘留している機関は、ただちに有効な治療をする義務があることを指摘しなければならない。
国際女性デーでは、これまで40年、さまざまな祝賀をし、女性の権利に関するテーマを提起し、法律と政策の改革の提唱をして、女性の社会的地位を確認し、男女平等の原則を保障することによって、ずっと各地の女性の権利の訴えの場の一つであった。中国でも、国際的にも、各地でもそうであった。
中国はつとに1995年に国連と共催して、「両性の平等、発展と平和」をテーマとする「第4回世界女性会議」をおこない、その期間に「北京宣言」と「北京行動綱領」を採択した。先月、習近平は、公開の講話で、中国は男女平等を基本的国策として堅持すると述べた。これらはみな、女性というテーマの討論や訴えは、中国ではけっしてタブーではないことを示している。
調べたところ、5名の逮捕された女性が今回逮捕されたのは、彼女たちが「セクハラを制止し、みんなの安全を守ろう」「痴漢を捕まえて、警察に駆け込もう!」といった張り紙を作成し、3月7日に自分がいる都市で配布し、「公共交通セクハラ防止メカニズム」を設立することを要求する予定だったことによる。しかし、こうした行動は、彼女たちが、今年は全国総工会(全国的な官制の労働組合)が職場でのセクハラ問題について両会(人民代表大会と政治協商会議)で提案することを知り、セクハラ問題が重視される可能性があるので、民間でも関心を集めようとしたからにすぎない。私たちは、彼女たちのアクション計画は、穏健で理性的であり、各地の民間社会が注目を集め、提案・教育をする常用の手法であり、けっして「挑発してトラブルを起こす」、あるいはその他の刑事的な非難に当たるものではないと考える。私たちは、北京の公安当局の逮捕行動の合理性・合法性に対して、強い疑問を表明する。
実際、中国のセクハラ問題は社会の現実であり、また近年どこでも関心を持たれ、討論されている。北京衆沢女性法律相談サービスセンターと北京市千千弁護士事務所の2011年の北京・広東など4地での研究によると、セクハラは非常に普遍的で、40%から60%の職場の女性の生活に影響を与えており、また、セクハラを受けた人々のうち、20歳~29歳の若い人の比率が最も高く、57.5%に立っているが、多く人は我慢したり退職したりしている。
問題は今も存在しており、さまざまなところから注目されている。国連の女性差別撤廃委員会が2014年11月7日に中国政府の国家報告に対して発表した総括所見では、中国のセクハラ問題に対して関心を表明し、中国政府に対して、立法によって雇い主に職場で発生するセクハラ事件の法律上の責任を負わせることを求めている。
ここに、私たちは、中国政府に、問題を提起する人を拘禁することによって声を上げられなくするのではなく、社会のさまざまなテーマに対して事実にもとづいて行動するという態度によって対応して、法律を整備し、実際に執行することよってこそ問題の根本が解決するということを訴える。私たちは、この事件に関心を持ち、これからも各人が釈放されるまでフォローを続けるということを再度強調する。
(1)「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(2)以上は、全体としては、「大陆女权运动遭打压 女权主义者因欲举办反性骚扰活动遭半夜抓捕 多人已失联」维权网2015年3月7日、「中国女权NGO遭严厉打压,杭州妇女平权倡导者武嵘嵘被带走疑遭暴力 及多位女权主义者被捕情况通告」维权网2015年3月8日、「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日、新婦女協進會「【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】」。
(3)China Detains Several Women’s Rights Activists,New York Times,2015.3.8
(4)同上。
(5)China detains feminist activists ahead of Women's Day Reuters 2015.3.7
(6)voiceyaya 的微博2015年3月10日 08:42
(7)黄思敏律师的微博2015年3月8日 01:46
(8)牛犇犇「妇女节,因为反骚,所以被扰? | NGOCN特评」2015年3月7日
(9)西藏雪域彩虹小组的微博2015年3月10日 00:08
(10)小手大头的微博2015年3月8日 16:46
(11)酷拉时报的微博2015年3月8日 08:52
(12)赵思乐feminist的微博【2015年3月8日 妇女节在中国的真正回归】2015年3月8日 20:58
(13)吕频的微博2015年3月8日 05:50→指冷君的微博2015年3月8日 11:36
(14)「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(15)voiceyaya 的微博2015年3月8日
(16)ロイターやニューヨークタイムスは既出。「婦女節前中國拘捕多名女權活動者」BBC中文網2015年3月7日、China detains feminist activists over International Women's DayGuardian2015.3.9。
(17)新媒体女性的微博【特别关注:数名女权者因欲在三八妇女节举行反性骚扰活动被羁押 全球多地关注声援】3月9日 19:57
(18)新媒体女性的微博【女权者被拘文章已火速被删禁转:从学校到工人 从国内到国际】3月12日 17:34
(19)王秋实律师的微博3月12日 13:00
一、逮捕の経過
二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず
三、逮捕の理由について
四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか
五、逮捕の背景をめぐって
六、国際・国内的な支援広がる
七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会
八、署名運動にご協力をお願いします!
2012年2月以来、就職の男女差別、入学試験における男女差別、性暴力、ドメスティック・バイオレンス、公共トイレの男女の便器比率の不公平などの問題に対して、署名運動、裁判、街頭パフォーンスアート、情報開示請求などさまざまな運動をしてきた若い女性フェミニストの活動家たちが(彼女たちの今まで活動の年表とそれらについて書いた拙ブログ記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」参照)、今年の3月8日の国際女性デーに公共交通での痴漢防止アクションを計画していたことを理由に、3月6日から7日にかけて次々に警察に連行されました。
一、逮捕の経過
彼女たちの逮捕の経緯をまとめてみると、以下のようになります。
3月6日午後4時
・北京の韋婷婷さんと王曼さん、当地の海淀区派出所に連行・訊問される。
3月6日午後11時半
・広州で鄭楚然(大兔)さん、警官によって広州新港路派出所に連行される。派出所では訊問を2時間した後、付き添いを付けて家に帰らせて、国際女性デーのセクハラ防止のステッカーを持って派出所に戻らせた後、また訊問され、尋問は(合計?)8時間に及んだ。その後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。軟禁中のことでしょうか、3月8日、香港の『明報』記者が鄭楚然さんに電話したところ、鄭さんは、言葉少なに、記者の質問に対して「はい」か「いいえ」としか答えず、「話をするのも不自由で、誰かが傍らで監視している」と言い、自分は家にも、派出所にもおらず、広州におり、現在は安全だが、逮捕の理由については今は話せず、いつ家に帰ることができるかもわからない、と述べた(1)。
・北京の李婷婷(李麦子)さんの自宅に、太平橋派出所の警官がドアをこじ開けて侵入、住居を捜査され、連行される。李麦子の家は「物品がひっくり返されて『めちゃくちゃ』」(『明報』)だった。
3月7日午前4時半頃
・艾可さん、連行される。艾可さんは後に釈放されるが、警察では、「携帯電話でおしゃべりした内容は、グループのものも含めて全部見られた。私が連絡できる人すべてに明日の活動は中止すると通知しろと言われた」という。
3月7日午後2時半
・武嶸嶸さん、杭州の蕭山空港で、北京の国保(公安部国内安全局)の警官に連行され、古蕩派出所に連れて行かれる。午後5時10分、武の友人が、古蕩派出所からの武がかけた電話を受け、武が泣き叫ぶ声や痛みを訴える声を聞く。
その後、李麦子さん、徐汀(酸小辣)さん、韋婷婷さん、于蓮さんらは、北京の海淀派出所に拘留されていることが判明した(2)。
北京と広東、杭州というはるか離れた地でいっせいに逮捕がおこなわれたこと、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てているわけでもないのに、深夜に何人もの人が逮捕されたことは、今回の捜査の異常さを感じます。
二、中国のフェミズム運動の中核の活動家である5人は今も釈放されず
ニューヨークタイムスは、「少なくとも10人の女性の権利のための活動家」(3)が逮捕されたと伝えています。その後、徐汀さん、于蓮さん、艾可さんらは釈放されましたが、李婷婷(李麦子)さん、鄭楚然さん、武嵘嵘さん、王曼さん、韋婷婷さんはまだ釈放されていません。
彼女たちの仲間は、「今回の攻撃は、私たちにとって重大事です。なぜなら、逮捕された人々はここ数年成長しつつある私たちの運動の中核を形成していたからです。」「彼たちは、女性の活動家の運動の中核的な力でした」(4)と述べています。
三、逮捕の理由について
彼女たちが逮捕された理由として示されたのは、刑法239条「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こす)」罪でした。おそらくその「4」の「公共の場所で騒動を起こし、公共の場所の秩序をひどく混乱させる」を指しているものと思います。
しかし、彼女たちがやろうとしたのは、「フェミニズムの理念を印刷したステッカーをバスの乗客に配布して、乗客に向かってセクシュアルハラスメント反対と国家機関の職責について説明し、ステッカーを乗客の体の目につくところに貼ってもらって、『人間宣伝器』にする計画だった」(香港の『明報』)とか、せいぜい「交通機関の車両にハラスメント反対のステッカーを貼ろうとした」(ニューヨークタイムス)という程度のことのようです。
もっとも、ロイター電は、李麦子さんと鄭楚然さんに近い人権活動家の話として、「彼女たちと活動家数人は、3月7日、公共交通のスペースでセクハラ反対のデモ(demomstration)をする計画をしていた。このデモは、北京、広州、その他いくつかの地区でおこなう計画だった」と伝えました(5)。中国の微博でも、「許可されていなデモは、違法だから、拘留は間違っていない」という意見を述べる人もいました。しかし、陳亜亜さんは、そうした意見に対して、1.これはデモではなく、数人が地下鉄で宣伝をしようと思っただけである。2.実行したわけではなく、計画しただけである。3.拘留は、違法デモではなく、「寻衅滋事」という罪名によっておこなわれたと述べて反論しています(6)。
また、今回の逮捕は、きわめて不備な手続きによっておこなわれました。黄思敏弁護士は、自らの微博で、「寻衅滋事 海淀区拘留所」とだけ書かれた紙片の写真を掲載して、「こんな一枚の紙によって、北京の公安(≒警察)は、女性の権利の唱導者である鄭楚然を連行した。刑事訴訟法には紙くずほどの価値もないのか? 公権力の恣意・傲慢がありありと紙上に現れている。女性の権利を擁護するには、男権的社会で平等を勝ち取らなければならないだけでなく、専制下の醜悪な公権に直面しなければならない」と述べました(7)。
公共交通機関の敷地内などでの行動は、日本でも弾圧の口実(ないしは言いがかりのネタ)にされることがあります。しかし、彼女たちは、今までも地下鉄の構内のみならず、車両内でパフォーマンスアートをしたり、歌を歌ったりしたりしてきましたし、チラシの配布や署名への協力の呼びかけさえしてきました。さらに、彼女たちはそれを動画で公表してきましたが、とくに弾圧などはされませんでした(「视频: 我可以骚你不能扰」「视频: 2012性别不平等之“我可以骚你不能扰”现场视频终」「视频: 阴DAO独白 北京地铁“快闪”」)。2012年2月に彼女たちが「男子トイレ占拠」アクションを中国各地でしたときも、事前に阻止されたことはありましたが、逮捕された人はいませんでした。
しかも、先に述べたように、今回の逮捕は、まだ何もしていない時点で、べつに凶悪な犯罪の計画を立てていたわけでもないのにおこなわれました。
四、中国のフェミニストの怒りの声いくつか
中国国内のマスメディアは、今回の問題を取り上げていません。また、ネット上での発言も、頻繁に削除されています。しかし、そうした中で拾えた声を以下にいくつか挙げてみました。
牛犇犇さんは、「女性デー、ハラスメントに反対したために、ハラスメントをされる?」という一文を書きました(8)。
また、チベット雪域レインボーグループ(西藏雪域彩虹小组)の微博は「三八デーの準備のための活動で、テーマはセクハラをなくす宣伝なのに、おおぜいの人を動員して逮捕するというのか? これは、手続きなしに消失させられることであり、でっち上げの罪名による合法的な失踪ではないか? 72時間が過ぎた。私たちの仲間を返してください! 悪法を制定し、執行した者は、だれであれ、いずれは自分の身に報いが来るであろう!」と述べました(9)。
最近、国際女性デーが単なる「女性が女性役割を果たしていることを思いやる祝日」になっている風潮の中、女性が自らの権利を主張したら弾圧されたことを痛烈に皮肉る声もありました。すなわち、ある女性は、微博で、「女性の権利を闘い取る祝日が、母の日に変わり、恋人の日に変わり、買い物の日に変わり、感謝の日に変わった。女性たちが自らのためのことを少ししたときだけ、逮捕された」(10)と書きました。
フェミニストの仲間もなかなか発言が難しい状況があると思いますが、卡楽潼さんは、「私はもう沈黙する理由は何もない。ジェンダー/セクシュアリティ活動家を釈放してください」という一文を公表しました(11)。
また、フェミニストの趙思楽さんは、「女性デーの中国における真の回帰」という一文を書いて、「女性デーは、どこかの国家、どこかの政党が『働く女性のものだ』とか『女性全体のものだ』とか設定する祝日ではなくて、女自身の祝日であり、たたかっている女性自身こそが作り上げる祝日だ。この日は、女は自分自身にふりかかった不公正・不正義のために歌い、叫び、闘うのだ。闘いがあってこそ、女性デーには意義があり、不屈であってこそ、女性デーは女性デーなのである。/女性の平等の権利を擁護する活動家が3月7日に捕まったが、3月8日には、各地のフェミニストの若い仲間が屈服せずに、何人かで集まって各種の方法で彼女たちのために叫び、声援を上げ、抗争をしている。/こうして、本当の女性デーが返ってきたことを宣言する。」(12)と述べました。
ミシガン大学准教授の王政さんは、次のように述べました。
「私は生まれて初めて三八国際女性デーで心痛を感じた!
アメリカでの30年、以前はこの日は、私は心の中で特に誇りを感じた。なぜなら、私たちには国定の国際女性デーがあり、アメリカにはないからだ。中国のフェミニズム運動は悠久の歴史があり、成果は顕著である。……
近年は、三八女性デーはいつも私に喜びをもたらしてくれた。なぜなら、はるかに海を隔てて、若い世代のフェミニズムアクティビストが、積極的に努力をしてさまざまな創意ある行動によって男権文化を変革することによって、市民の責任感とフェミニストの社会変革能力を示したからだ。三八デーは、彼女たちが、自らの素晴らしい実践によって中国のフェミニズムの光栄な歴史を継承・発展するものだった。
今年彼女たちが公共の場所でセクハラ反対活動を組織すると知って、私も彼女たちの女性デーの活動の情報について、興奮しつつ期待していた。彼女たちが三八デーの活動を組織したことによって無法に拘留されるとは全く予想していなかった! このような三八デーの活動に対する干渉は史上前例がなく、中華人民共和国憲法に違反しており、政治のやり方の最低ラインを踏みにじっている! 中国の女性はセクハラにさえ反対できない。こうした国家は、自由恋愛をした女を石で殺す国家とも五十歩百歩の区別しかない! 何香凝・宋慶齢・鄧穎超ら無数の中国の男尊女卑を改造して男女平等を実現するために終生奮闘した先輩たちを思うと、この三八デーについて、私は悲しみ悼んでいる。
すすぎえない冤罪をこうむっている若いフェミニズムアクティビストが早く自由を獲得するよう願う!」(13)
五、逮捕の背景について
公共交通の痴漢防止というテーマは、本ブログでお伝えしてきたように、2012年に上海地下鉄の痴漢問題を取り上げたことに始まり、昨年は行政側とも会談をして、一定の前向きの反応を得たような問題ですから(本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で『赤ずきん』姿で痴漢・セクハラ反対活動」)、このテーマ自体が問題だったとは考えられません。
だから、おりしも両会(人民代表大会と政治協商会議)が開催されている期間だから、活動を抑圧したのだろうとも考えられてきました。当時、環境保護の集会を各地の市政府の前で開こうとしたから、民間の活動を抑圧しているという見方もありました(14)。
そうした中、陳亜亜さんは、3月8日の時点で、「私は公共交通の痴漢防止は安全なテーマだと思っていたので、力ずくの治安維持の対象になるとは思わなかった。また三八(国際女性デー)が過ぎれば釈放されるという、暫時の制圧だと思ったけれど、今日、ある人が30日入獄しなければならないと言っているのを見た。これは、単純に両会のためではなく、あたかも政府が放出するための力を長いあいだ蓄えていて、今回のことを口実にして、重い拳で攻撃して、このような活動を厳しく制圧をする発端にしようとしていると感じた」と、かなり深刻な見方を示しました(15)。
実際、彼女たちは逮捕されて6日経っても釈放されておらず、陳亜亜さんの心配が当たったのではないかと思います。
六、国際・国内的な支援広がる
この事件は、日本のマスコミではなぜか報じられていませんが、ロイター通信やBBC、ニューヨークタイムス、ガーディアンも報じました(16)。
また、国連の第59回女性の地位委員会が3月9日~20日までニューヨークで開催されており、各国のフェミニストが「女权无罪(フェミニズム無罪)」「CHINA:FREE FEMINIST」といったプラカードを掲げて、中国政府にフェミニストの釈放を要求しました(17)。
中国国内についても、「理解女权主义,关注被打压的女权运动」には、彼女たちを支持する多くの記事やアピールが収録されていますが、労働者やLGBT関係者が目立ちます。
それというのも、彼女たち行動派のフェミニスト活動家は、自分自身がセクシュアル・マイノリティであったり、セクシュアル・マイノリティの運動にも関わったりしていました。とくに、韋婷婷さんはバイセクシュアルの活動家で、「北京同性愛相談ホットライン」の後身である「北京紀安徳(紀安徳=genderの音訳)相談センター」というセクシュアル・マイノリティ団体のプロジェクトの主任でしたし、徐汀さんは、武漢Lainbow LGBTの代表でした。
また、HIV/AIDS感染女性やセックスワーカーへの支援者の葉海燕さんも、彼女たちに大きな声援を送っています。
3月12日午前の段階で、世界で集めている下の八の1の署名は、署名人数が1000人を超え、署名者の国籍も73に達しました。また、鄭楚然さんの母校の中山大学を含めた広州の10大学、武嵘嵘さんの母校・中華女子学院、李婷婷(李麦子)さんの母校・長安大学の学生がみな声明を出したり署名運動をしたりしているとのことです(18)。
七、弁護士が李婷婷(李麦子)さんと面会
3月12日に、李婷婷(李麦子)さんと面会した燕薪弁護士によると、李さんは「やったことは何ら法律に違反していないばかりか、社会にとって有益である。すなわち、ジェンダー平等意識を広め、女性の権利に対する全社会の保護の認知を高めることであり、国家が女性の権利を保障するという国策とも合致している」と述べたそうです。李さんは、関心を持ってくれている社会の各界の人々に対して謝意を表明し、自分は勇敢にこの苦難に対して立ち向かうことが必ずできるし、自分と将来に自信を持っていると表明したとのことです。
また、李さんは、6日夜に自分を逮捕した警官は、(身分を証明する)証明書を誰も提示せず、彼らが示した召喚状も捜査証も空白であり、名前さえ書いていなかったと述べました。これは重大な違法行為だとして、弁護士がしかるべき機関に告発するとのことです(19)。
八、署名運動にご協力をお願いします!
国際的に集められている署名を日本語訳しましたので、皆さまも、ぜひ署名をお願いいたします!
署名1
今、国際的に集められている署名です。
【中国政府に彼女たちの即時釈放を求める署名】(この署名の文面については、大橋史恵さんの翻訳を参考にさせていただきました)
http://goo.gl/forms/v7m4L8tYdB
私たちは世界中のフェミニストです。2015年の国際女性デー直前に、中国の5人の若いフェミニスト活動家たちが、バスの中でセクシュアルハラスメントに反対する運動を計画したという理由で拘留されたと知り、ショックを受けました。
20年前の1995年、中国は第4回世界女性会議を開催しました。北京行動綱領に署名し、女性の権利とジェンダー平等の推進に力を注ぐと決意したのです。中国政府がこれら5名の若いフェミニストたちにしたことは、許しがたいことであり、北京行動綱領と女性差別撤廃条約の精神に反しています。
彼女たち5名のフェミニストは、李婷婷、王曼、韋婷婷、武嵘嵘、鄭楚然です。彼女たちは、ジェンダー規範を変革し、ジェンダー平等を推進するために、創意あふれるあらゆる手段を使って、一般の人々のジェンダーへの気づきを高めるという使命に力を尽くしてきました。彼女たちは、中国における女性運動の新しい波をリードしています。彼女たちは、中国をより住みよい社会に変革して、中国の未来を創造しているのです。
私たちは彼女たちを心の底から支援しています。彼女たちに、私たちがいつもそばにいると知ってほしいと思っています。女性の人権を擁護する人びとへの弾圧は世界中で起きており、私たちは絶対に彼女たちを守らなければなりません。それは彼女たちの問題であるとともに、私たちの問題でもあるのです。
私たちは中国政府に対して、彼女たちの即時釈放を求めます! どうぞ私たちに支援をください。そしてこのメッセージを、できるだけ多くの人たちに知らせてください。
世界のフェミニストより
2015年3月9日
【以下、署名欄部分の翻訳です。】
Your Name (名前)
Your Country (国)
私たちの目標は、最低50カ国からの支援を集めることです。どうぞ広くシェアしてください!皆さんのご尽力に感謝します。
署名2
こちらは香港の女性/ジェンダー団体の署名です。
【中国政府にフェミニスト活動家の釈放を求める声明】
「【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】」
発起団体:中国婦女協進会
香港の女性/ジェンダー団体は、北京の当局が、まだ十分な根拠がない状況において、省を越えて5名の有名なフェミニスト活動家、すなわち北京の李婷婷(麦子)、韋婷婷、王曼、杭州の武嶸嶸、広州の鄭楚然(大兔)を逮捕したことに対して重大な関心を持っている。私たちは、北京の公安当局に対して、憲法が賦与した人民の言論の自由を尊重・厳守し、関係者の司法的権利を確実に保証し、弁護士・家族と面会させ、人身の安全を確保すること、ならびに、違法行為の証明ができていない情況の下では、ただちに各人を釈放することを求める。
得られた資料によると、逮捕の行動は3月6日から始まった。当日午後4時、北京の韋婷婷と王曼が当地の海淀区派出所に連行され、訊問された。同日深夜11時半、北京の李婷婷と広州の鄭楚然も、それぞれ5、6名の警官の訪問を受けた。李婷婷の家には警官が扉をこじ開けて侵入して、李を連行し、その後30時間あまり経った今も消息不明である。鄭楚然は、広州の地方警察にただちに派出所に連行され、8時間訊問された後、ホテルに軟禁され、現在は、「寻衅滋事(挑発してトラブルを起こした)」という罪名によって刑事拘留され、北京の警察に連行された。3月7日、広州の武嶸嶸は午後2時に飛行機で到着した杭州の空港で、ただちに北京の国保(公安部国内安全保衛局)に連行され、西湖区の古蕩派出所で訊問された。当日午後5時10分、友人が一度、武嶸嶸が泣いて訴え、痛みを叫ぶ電話を受けたが、通話は直ちに切断され、その後再度の連絡はない。
私たちは、各人の現在の状況、とくに武嶸嶸の人身の安全の状況に非常に関心を持っている。私たちは、中国の法令と国際基準にもとづけば、武嶸嶸が病気を患っている状況の下では、拘留している機関は、ただちに有効な治療をする義務があることを指摘しなければならない。
国際女性デーでは、これまで40年、さまざまな祝賀をし、女性の権利に関するテーマを提起し、法律と政策の改革の提唱をして、女性の社会的地位を確認し、男女平等の原則を保障することによって、ずっと各地の女性の権利の訴えの場の一つであった。中国でも、国際的にも、各地でもそうであった。
中国はつとに1995年に国連と共催して、「両性の平等、発展と平和」をテーマとする「第4回世界女性会議」をおこない、その期間に「北京宣言」と「北京行動綱領」を採択した。先月、習近平は、公開の講話で、中国は男女平等を基本的国策として堅持すると述べた。これらはみな、女性というテーマの討論や訴えは、中国ではけっしてタブーではないことを示している。
調べたところ、5名の逮捕された女性が今回逮捕されたのは、彼女たちが「セクハラを制止し、みんなの安全を守ろう」「痴漢を捕まえて、警察に駆け込もう!」といった張り紙を作成し、3月7日に自分がいる都市で配布し、「公共交通セクハラ防止メカニズム」を設立することを要求する予定だったことによる。しかし、こうした行動は、彼女たちが、今年は全国総工会(全国的な官制の労働組合)が職場でのセクハラ問題について両会(人民代表大会と政治協商会議)で提案することを知り、セクハラ問題が重視される可能性があるので、民間でも関心を集めようとしたからにすぎない。私たちは、彼女たちのアクション計画は、穏健で理性的であり、各地の民間社会が注目を集め、提案・教育をする常用の手法であり、けっして「挑発してトラブルを起こす」、あるいはその他の刑事的な非難に当たるものではないと考える。私たちは、北京の公安当局の逮捕行動の合理性・合法性に対して、強い疑問を表明する。
実際、中国のセクハラ問題は社会の現実であり、また近年どこでも関心を持たれ、討論されている。北京衆沢女性法律相談サービスセンターと北京市千千弁護士事務所の2011年の北京・広東など4地での研究によると、セクハラは非常に普遍的で、40%から60%の職場の女性の生活に影響を与えており、また、セクハラを受けた人々のうち、20歳~29歳の若い人の比率が最も高く、57.5%に立っているが、多く人は我慢したり退職したりしている。
問題は今も存在しており、さまざまなところから注目されている。国連の女性差別撤廃委員会が2014年11月7日に中国政府の国家報告に対して発表した総括所見では、中国のセクハラ問題に対して関心を表明し、中国政府に対して、立法によって雇い主に職場で発生するセクハラ事件の法律上の責任を負わせることを求めている。
ここに、私たちは、中国政府に、問題を提起する人を拘禁することによって声を上げられなくするのではなく、社会のさまざまなテーマに対して事実にもとづいて行動するという態度によって対応して、法律を整備し、実際に執行することよってこそ問題の根本が解決するということを訴える。私たちは、この事件に関心を持ち、これからも各人が釈放されるまでフォローを続けるということを再度強調する。
(1)「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(2)以上は、全体としては、「大陆女权运动遭打压 女权主义者因欲举办反性骚扰活动遭半夜抓捕 多人已失联」维权网2015年3月7日、「中国女权NGO遭严厉打压,杭州妇女平权倡导者武嵘嵘被带走疑遭暴力 及多位女权主义者被捕情况通告」维权网2015年3月8日、「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日、新婦女協進會「【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】」。
(3)China Detains Several Women’s Rights Activists,New York Times,2015.3.8
(4)同上。
(5)China detains feminist activists ahead of Women's Day Reuters 2015.3.7
(6)voiceyaya 的微博2015年3月10日 08:42
(7)黄思敏律师的微博2015年3月8日 01:46
(8)牛犇犇「妇女节,因为反骚,所以被扰? | NGOCN特评」2015年3月7日
(9)西藏雪域彩虹小组的微博2015年3月10日 00:08
(10)小手大头的微博2015年3月8日 16:46
(11)酷拉时报的微博2015年3月8日 08:52
(12)赵思乐feminist的微博【2015年3月8日 妇女节在中国的真正回归】2015年3月8日 20:58
(13)吕频的微博2015年3月8日 05:50→指冷君的微博2015年3月8日 11:36
(14)「內地女權人士婦女節前夕被捕」『明報』2015年3月8日。
(15)voiceyaya 的微博2015年3月8日
(16)ロイターやニューヨークタイムスは既出。「婦女節前中國拘捕多名女權活動者」BBC中文網2015年3月7日、China detains feminist activists over International Women's DayGuardian2015.3.9。
(17)新媒体女性的微博【特别关注:数名女权者因欲在三八妇女节举行反性骚扰活动被羁押 全球多地关注声援】3月9日 19:57
(18)新媒体女性的微博【女权者被拘文章已火速被删禁转:从学校到工人 从国内到国际】3月12日 17:34
(19)王秋实律师的微博3月12日 13:00
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