2017-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる

今年6月、女子大学生の黄蓉さん(仮名)は、杭州市西湖区の東方調理職業技能訓練学校が、文書作成の仕事をする人を募集していたのを見つけ、応募条件が自分にぴったりだと思い履歴書を送りました。けれど、返事が返ってこないので、もう一度その求人をよく見ると、「男性のみ」という条件が付いていました。黄さんは、なぜ男性のみを募集するのかを電話で尋ねたり、直接会社に行って聞いたりしましたが、納得のいくような返事は得られませんでした。

そこで、7月8日、黄さんは東方調理職業技能訓練学校を裁判所に訴え、8月11日に、その訴えは受理されました。かくして、この裁判は、2012年7月に曹菊さん(仮名)が提訴した裁判に次ぐ、中国で第2回目の求人の男女差別についての裁判となりました。

裁判は、9月10日、杭州市西湖区法院で公開の審理がおこなわれました。被告側は証拠や反論の書面は出しましたが、法廷には姿を現しませんでした。

このかん、フェミニストたちは、最高人民法院や全国婦連に書簡を出したり、公正な判決を求める署名を集めて裁判所に提出したりするなど、原告を支援する活動をおこないました(以上について詳しくは、本ブログの記事「求人の女性差別を訴えた中国で2回目の裁判始まる――今回は1ヶ月で裁判所が受理」参照)。

11月12日、杭州市西湖区法院は、東方調理職業技能訓練学校には、就職差別の行為があり、黄さんの平等な就職の権利を侵害したとして、同校に精神的損害賠償の慰謝料2000元の支払いを命ずる判決を下しました(下で示した判決をみればわかるように、9月10日に被告側が欠席したから原告側が勝ったというわけではありません)。

2年前の2012年7月に、曹菊さん(仮名)という方も、求人の男女差別を裁判に訴え、2013年12月に、謝罪と3万元を勝ち取りましたが、これは裁判所の調停による和解によるものでした(本ブログの記事「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」参照)。判決による勝訴は今回が初めてです。なお、曹菊さんに対して支払われた3万元は金額は比較的大きいのですが、名目上は会社側が「女性の平等な就職のための専門の基金」として曹菊さんに給付したものでしたので、精神的損害賠償(慰謝料)として金銭を勝ち取ったのは、今回が初めてになります。

裁判での被告側の弁明

黄蓉さんが裁判を起こす前に、なぜ男性のみを募集するのかを東方調理職業技能訓練学校の担当者に尋ねたら、担当者に「このポストはしょっちゅう出張しなければならないので、男性のみにした」と言われました。黄さんは、それに対して、「大丈夫です。私は出張の仕事もできます。私は自分の仕事と生活を調節できます」と答えました。すると、担当者は、「われわれの学校の校長はみな男だから、あなたを採用したら出張のとき2つ部屋を取らなければならなくなるので、コストがかかる」と言ったので、黄さんは「校長がみな男だったら、女子学生は採用できないのか!」と思ったことがありました(1)

裁判でも、被告側は、答弁書で、「このたび募集したポストは、朝晩いつも時間外労働をしなければならないうえ、校長といっしょによその土地に出張しなければならず、出張の際はコストを節約するために同じ部屋に泊まらなければならないが、校長は男性である」から男性を募集したと述べました。被告側は、自分たちは「募集するポストの仕事の特徴にもとづいて、男性を募集したのは、比較的重い、比較的特殊な仕事の任務である。これは、女性を差別していないのみならず、むしろ女性を十分に尊重し優遇した」と主張しました(2)

黄さんは、会社がこのように「思いやりの衣」をかぶっていることに、無力感を感じ、また、がっかりしました(3)。しかし、判決は、法律にもとづかない、このような会社の主張を退けました。

判決の主要部分

この事件において、被告が招聘したポストは文書作成であるが、被告はそのポストが法律・法規が規定している女性労働者が従事してはならない仕事(女职工禁忌从事的工作)であることを証拠によって証明できておらず、被告が発表した募集条件にもとづけば、女性はこのポストの仕事に堪えることが完全にできるのであり、被告が主張している、男性を採用しなければならない理由は法律に合致していない。かような状況において、被告は、原告に対して募集条件に合致しているか否かの審査をおこなわずに、直接、原告は女性であって、男性を募集しているという理由によって原告の応募を拒否した。この行為は、原告の平等な就業の権利を侵犯し、原告に対して就職差別をすることによって、原告に一定の精神的損害を与えた。それゆえ、原告が被告に精神的損害の慰謝料を要求することには、十分な理由がある。具体的金額については、被告がこの過程で犯した過失の程度と原告がこうむった損害の結果とにもとづき、本院が、状況を考慮して2000元と確定した。原告が被告に書面での謝罪を請求したことは、法律的根拠が不足しているので、本院は支持しない。被告が、本院が召喚状を出して召喚したにもかかわらず、正当な理由なく出廷しなかったことは、この事件の審理には影響しなかった。以上より、「中華人民共和国労働法」第3条、第12条、第13条、「中華人民共和国就業促進法」第3条、第27条、第62条、「中華人民共和国権利侵害責任法」第22条、「中華人民共和国民事訴訟法」第144条の規定にもとづき、以下のように判決をする。
一、杭州市西湖区東方調理職業技能訓練学校は、本判決の効力が生じた日から10日以内に[原告の本名]の精神的損害の慰謝料2000元を賠償すること。
二、[原告の本名]のその他の訴訟の請求を棄却する。(4)


判決の意義

弁護士の許英さんは、「この事件は、初めて判決の形式で、募集の中の就職差別を確認し、賠償をしました。これは、人を雇う企業や機関に対する警告であり、応募において不公平に遭遇した人に対する励ましになります」と述べました(5)

中国政法学院教授の鄧小楠さんも、「中国の女性の就職差別事件の最大の問題は、判例がないことです。中国は判例法の国家ではありませんが、法律には性差別事件に対して原則的な規定しかない中で、判例はきわめて重要な働きをします。この西湖区法院の判決は、中国の就職の性差別事件として、全国で2番目のものであり、普遍的に存在する女性に対する就職差別の撤廃に対して、模範となる役割を果たすでしょう」と語りました(6)

『人民日報』にも、アインシュタインに「歴史上もっとも偉大な女性数学者」と言われたエミー・ネーターが女性であるために教授になれないことに怒った数学者ダフィット・ヒルベルトの言葉「ここは大学だ。銭湯ではない!」を引用した、「企業は銭湯ではない、人が入るのにまず男か女かを見るのか?」というタイトルの論説が掲載されました(7)

判決の限界

その一方、賠償の金額の低さや書面での謝罪が退けられたことには批判も出ました。

「中国の民間フェミニスト活動家の鄭[楚然]さん」は、「中国の就職の性差別事件で今までに勝訴したのは2件だけであり、この2件の原告も、充分な賠償を得られていません。また、2件の被告とも、書面での謝罪をしていません」と語りました(8)

また、この事件の場合は、会社側が明確に「男性のみ」という求人をしていたからこそ勝てたという点も指摘されています。

舒鋭さんは、「このケースは比較的特殊なものです。求職者の黄蓉が求人をしている会社に対して履歴書を送ったら、会社は明確に『男性のみ』だと回答しました。その後、彼女が何度も会社に履歴書を送って、直接会社に行ったときにも、明確に『女子学生という身分』ゆえに拒否されました。これらはみな、法律上、会社にとって不利な証拠となって、比較的明確な『就職差別』だということになって、黄蓉は裁判所の支持を得られました。
 しかし、多くの情況の下では、採用の過程には多くの主観的な要素が存在しているので、差別はしばしば表面に現れませんし、けっしてすべての会社がこのように明確な証拠を残すわけではありません。『隠れている』けれども実在する差別を受けた労働者は、十分な証拠を出せないので、勝訴するのは難しいのです」と述べています(9)

実際、「客観的に言って、近年、採用の過程における露骨な就職差別は大きく減少したが、さまざまな、半ば秘かで半ばあからさまな方法が出現している。たとえば、女性の履歴書は受け取るけれども、いささかの団体の採用の過程では、女性の履歴書はほとんど開かれることもなく、女性が面接試験に進む機会は少ないとか、女性は男性と抱き合わせでなければ視野に入れない、などである」(10)と指摘されています。

鄭楚然さんは「私たちは、若干の企業が女性に対する就職差別をしている事例を通報しましたが、関係方面からの回答は多くありませんでした(→本ブログの記事「女子大学生らが全国8都市で『男性のみ』求人の企業267社を当局に通報、その結果は…」参照)。政府の関係部門は、法律執行の面で非常に不十分なことしかしていません。要するに、中国の就職の性差別については、法律の面でも、法律執行の面でも、法律執行のメカニズムと手続きの面でも、大きな欠陥があるので、大きな改革が必要です」と述べています(11)

実際、中国国内のある新聞も、「就職差別をなくすには、司法による救済だけでは不十分である。政府部門は使用者に対する監督と取締りを強化し、出産・育児を女性だけが負担するという不公平な現実を変え」なければならない(12)と指摘しています。

また、その鄭楚然さんが、11月13日、タイのバンコクで開催されるアジア太平洋地区「北京+20」NGOフォーラムに出席するために出国しようとしたら、飛行場で出国を阻止されるという事件も起こりました(13)

とはいえ、こうした困難な条件の中で、求人の男女差別について、昨年12月に曹菊さんが勝利和解をし、この11月に黄蓉さんが勝利判決を勝ち取ったこと、曹菊さんの訴えは裁判所に受理されるまでに約1年かかり、勝利和解までに約1年半かかったけれども、黄蓉さんの訴えは裁判所に約1カ月で受理され、勝訴までに4か月しかからなかったことなど、運動が着実に成果を挙げていることはたしかです。

(1)招聘季来临,谁来保障女生公平就业?」『中国青年报』2014年11月17日。
(2)判決文は、女权之声的微博【“浙江就业性别歧视第一案”宣判:判定歧视 赔偿两千元】11月12日 17:35に掲載されています。
(3)(1)に同じ。
(4)(2)に同じ。
(5)法律没有让她哭 浙江就业性别歧视第一案判决 求职者获精神赔偿」『中国妇女报』2014年11月16日。
(6)浙江就业性别歧视第一案胜诉 法院认定新东方烹饪学校存在性别歧视」法制网2014年11月13日、「大学生应聘遭性别歧视 起诉对方获赔2000元」人民网-人民日报2014年11月14日。
(7)人民日报批招聘性别歧视:企业非澡堂无需看男女」新浪網2014年11月19日(来源:人民日报)。
(8)浙江省第一列性别歧视案胜诉」Radio Free Asia2014年11月13日。
(9)(5)に同じ。
(10)反女性招聘歧视关乎社会正义」『中国青年报』2014年11月18日。
(11)(8)に同じ。
(12)反就业性别歧视光有判决还不够」『京华时报』2014年11月15日。
(13)吕频的微博「拒绝沉默的人需要――被回应青年活动家被出境之后」2014年11月17日 16:20、女权之声的微博11月17日 21:21【外媒采访被广州警方阻拦出境女权活动者】など。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/458-7ff1498a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。