2017-05

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求人の女性差別を訴えた中国で2回目の裁判始まる――今回は1ヶ月で裁判所が受理

黄蓉さんの提訴

今年6月25日、女子大学生の黄蓉さん(仮名)は、杭州市西湖区の東方調理職業技能訓練学校が、文書作成の仕事をする人を2人募集しているのをインターネットで見つけました。黄さんは、募集の条件と自分の条件とがぴったり合ったので、履歴書を送りました。しかし、何の返事もなかったので、あらためて募集サイトをよく見てみると、「男子のみ」という文字が書かれているのを発見しました。黄さんは「なぜ文書作成の仕事なのに、男性だけを募集するのか?」と疑問に思い、すぐに会社に電話で問い合わせました。しかし、相手は乱暴に「私たちは男性だけを募集している!」と答えただけでした。黄さんはがっかりしましたが、同校が別のサイトに出していた求人広告では「男子のみ」と書いていなかったので、希望をつないで、そちらにも履歴書を送りました。しかし、やはり何の音沙汰もなかったので、電話して尋ねると、歯切れの悪い返事で、「女子学生は出張させにくい」などと答えただけでした。

黄さんは、江蘇衡鼎弁護士事務所の許英弁護士(女性。微博: 许英律师)に相談しました。許弁護士は、「会社は性別を原因として採用を拒否しているのだから、『就業促進法』『婦女権益保障法』などの関係の法律・法規に違反している。だから、あなたは法律という手段で自分の権利を守ることができる」と答えました。

7月8日、黄蓉さんは、許弁護士の助けを得て、東方調理職業技能訓練学校の「労働者募集における性差別」を杭州市西湖区人民法院に訴えました(1)

訴訟を受理させるまでの1カ月余りの原告や弁護士の奮闘

中国では、民事訴訟の場合でも、原告が裁判所に訴状を提出しても、裁判所が訴えをなかなか受理しない(立件しない)ことが非常によくあります。

2012年7月に中国で最初に就職の女性差別に対する裁判を起こした曹菊さん(仮名)の場合は、提訴してから裁判所が2013年9月に受理するまでに、1年以上かかりました(同年12月には、裁判所の調停による和解によって、謝罪と3万元を勝ち取りましたが)。その間に原告や支援者は、当該裁判所への訴え、監察院や上級の裁判所、検察院への訴え、全人代や婦女連合会に向けての署名運動、行政再議、行政訴訟、パフォーマンスアートなど、さまざまな活動を積み重ねることによって、やっと受理(立件)させたのです(本ブログの記事「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」「就職の男女差別に関する初の裁判が和解――会社が謝罪、3万元を支払う」参照)。

黄蓉さんの場合も、訴状を出した7日目に、裁判所から弁護士に「この事件は訴えることはできない」という電話がかかってきました。ただし、裁判所は「補充の証拠資料を提出してほしい」とも言ったので、7月21日、黄蓉さんは裁判所に行って、裁判官が要求する資料を提出しました。けれども、裁判官は、その資料についても、以前の事例は参考にできないなど、さまざまな理由を挙げて、撤回して出し直すように求めました。黄蓉さんは、8月2日、もう一度起訴状を出したのですが、その後、また裁判官から、補充の資料を求められました(2)

裁判官は補充資料を提出させた理由として、「以前おこなわれた中国初の性差別訴訟は、勝訴判決によってではなく、調停によって終結したのだから、判例としては参考にできない。また、B型肝炎の差別事件は面接試験の後で起きたけれど、あなたはまだその会社の面接を受けていないので、B型肝炎差別事件とは性質が異なる」ということを挙げたそうです。黄さんは、この裁判官の回答に対して、「企業が私に面接の機会を与えなかったから私が面接に進めなかったことは明らかなのに、なぜそのことが立案を妨げるのか?」といぶかしく思いました(3)

8月11日、黄さんが裁判官に電話して尋ねたところ、一両日中に回答すると言われて、翌12日にやっと、黄さんのところに、裁判官から「立案費を払うように」という電話がかかってきた、つまり訴訟を受理したという通知を受け取りました(4)

11市の若い女性たちが、前回の訴えに比べれば素早い受理を歓迎するとともに、公正な判決を求める公開書簡

8月20日、11都市(北京・上海・汕頭・棗荘・済南・武漢・昆明・新郷・杭州・広州・蘭州)の若い女性たち113人が、最高人民法院、全国婦連、杭州市西湖区人民法院に対して、黄さんの訴えが受理されたことを歓迎するとともに、公正な判決を求める公開書簡(「祝電」と記している新聞もあります)を送りました(5)。その内容は、以下のとおりです。

最高人民法院・全国婦連・杭州市西湖区人民法院:

こんにちは! 私たちは、全国各地の女性労働者です。女性労働者として、求職のときに、仕事の能力以外のことで、招聘する単位が性差別をおこなうということが、ずっと私たちの最も大きな心配であり、悩みになってきました。

去年、曹菊(仮名)という女子大学生が、新巨人訓練学校に「男子のみ募集」によって採用を拒否され、それを北京市海淀区人民法院に訴えましたが、1年の時間がかかりました。さまざまなアピール、行政再議、行政訴訟、立案建議によって、ついに、困難を突破して曲折を経て立件されたのです。

今年の浙江の「初の性差別事件」は、裁判官が立件しないと言ったのに対して、弁護士が道理にもとづいて議論し、メディアが広く報道した後、1か月の時を経て、ついに立件に成功しました。

「浙江最初の性差別訴訟」の当事者の黄蓉は、裁判所が彼女に立件費を払うよう求めたと聞いた時、涙を流して、「これはなんと曹菊の立案に比べて12倍速い」と言いました。

私たちは、浙江最初の性差別訴訟が1か月で順調に立件されたことをお祝いするとともに、西湖区人民法院の立件への責任と努力を賞賛します。同時に女性求職者として、私たちは全国婦連と最高人民法院が女性の就職の性差別事件に対して共通認識を達成し、このような問題を積極的に処理したことに感謝いたします。

私たちは、法院がこの事件を審理する過程で、公平公正に、わが国の法律に照らして、黄蓉に正義を取り戻し、広範な女性求職者にも正義を取り戻すよう希望します。

曹菊・黄蓉の遭遇はけっして特別な事例ではありません。就業市場の性差別という現象は非常に普遍的です。

全国婦連発展部が2011年に発表した「女子大学生就職状況調査報告」は、56.7%の女子大学生が求職の過程で「女子学生のほうが、機会が少ない」と感じ、91.9%の女子大学生が人を雇う単位に性別による偏見があると感じたと報告したことを明らかにしています。

北京市婦女児童工作委員会が2011年8月12日に発表した「北京市高等教育女子大学生就職状況調査報告」は、次のように述べています。現在、女子大学生が就職の過程で不公正な待遇と性差別を受ける状況は比較的普遍的であり、61.5%の女子大学生が求職の過程で差別を受けたことがある。しかし、女子大学生は差別に対してふつうは回避したり、妥協的な態度を取っている。(中略)

2013年5月16日、国務院事務局が発表した「全国の普通高等学校卒業生の就業工作に関する通知」は、人を雇う単位は、求職者に対して性別・民族などの条件を付けてはならない。大学の卒業生を招聘する際には、卒業した大学・学院、年齢、戸籍などによる制限をしてはならず、卒業証書の発行と大学卒業生の契約調印とをリンクさせてはならないと述べています。この就職差別禁止令は、女性の平等な就職にとっての重大な意義があります。しかし、政策が実際に役に立ち、本当に執行されることこそが最も重要なのです。

以上のとおり申し上げます。

敬具。

2014年8月19日(6)


微博(中国版twitter)には、各人が上の公開書簡を持って、各地の郵便局(またはポスト)から郵送しようとしている写真がいくつも掲載されています。その際には、手紙だけでなく、「浙江初の就職性差別事件の立案を祝す」と書かれた稲妻の形をしたパネルを手に持って、早急な立件を歓迎していることをアピールしています(NGOCN 的微博【11城女生赞浙江就业性别歧视第一案立案快如闪电】8月21日 18:00、济南Les工作社的微博8月20日 18:31、女权行动派很好吃的微博8月20日 19:36)。

黄さんが言っているように、「この1カ月余り、いろいろ奔走したり、無視されたりしたことは、この事件の立案が見かけほどにはけっして順調ではなかったことを示している」(7)ことはたしかです。裁判所の体質そのものはそれほど変わっていないのかもしれません。

しかし、前回の曹菊さんの提訴の際にさまざまな運動を積み重ね、裁判でも謝罪と3万元を勝ち取ったということが、今回の訴状の受理の早さにつながっていることは間違いないと思います。

最初の裁判の日は、被告もその弁護士も欠席。原告を支援する署名が400筆近く集まる

9月10日、浙江省杭州市西湖区法院で初めて公開の審理がおこなわれました。しかし、被告もその弁護士も、正当な理由なく(とマスメディアに書かれています)、法廷に姿を現しませんでした。被告側は、証拠と書面での質疑意見を出しただけでした。

当日は、原告の黄さんとその弁護士が証拠を提示して陳述をするとともに、被告が提出した質疑意見に対して弁論がおこなわれました。裁判官は、「被告が法廷に来ないので、この事件は調停のしようがない」と述べ、双方が提出した事実と証拠について事実を確かめた後に、総合的な評議をし、時期を選んで裁判を続けることになりました。

また、この裁判に先立って、曹菊さんが発起人になって、原告の黄蓉さんを支持する、西湖区法院宛ての署名運動が微博上で始めており、この時点までに既に37都市から400筆近い署名が集まりました。(8)

その署名は、「こんにちは! 私は曹菊です。私は『中国初の性差別裁判』の当事者です。今日は、ジェンダー平等に関心を持つ求職者たちといっしょに、貴院に建議の手紙を書きました」という文から始まり、先の公開書簡と同様に、就職における性差別は曹菊さんや黄蓉さんだけの問題ではないことを述べています。最後に、「私たちは、西湖区法院が、法律に照らして、新東方調理学校の人員募集における黄蓉に対する性差別の存在に対して判決を下し、法律という方法をつうじて法律の公義を保障するように求めます。私たちは、裁判所が、女性求職者の尊厳と労働の権利を保障し、公正公義の代表として、社会の就職の性差別の現状を一歩一歩変えるように求めます」と訴えています。(9)

事前に「女権之声」というフェミニズム微博は、午前9時15分から西湖区法院の2522法廷で審理おこなわれることを伝えて傍聴を呼びかけていましたが(10)、実際、当日、支援者の若い女性が来て傍聴をしました(11)。フェミニスト活動家の猪西西さんは、おそらく原告と弁護士さんのお2人が裁判所前に立っている写真を掲載しています(猪西西爱吃鱼的微博 9月10日 09:51 )。

原告支援の署名運動や裁判の傍聴をする――ここらへんは日本の裁判支援運動と同じような感じになってきたと思います。問題にしているのは「募集」の段階の差別なので、初歩的なことだとも言えるかもしれませんが、着実に前進しつつあると思います。第1回目の法廷に被告やその弁護士は欠席したということも、裁判に有利に働きそうな気がします。

(1)以上は、女权之声的微博【招文案仅限男?女大学生状告新东方烹饪学校】7月28日 18:30など。なお、のちに許英弁護士は、『中国婦女報』の取材に答えて、「性差別は、わが国の法律の中では明確に就業差別の種類として挙げらており(『就業促進法』第3条)、『就業促進法』第62条は、本法の規定に違反して、就業差別をした場合は、労働者は人民法院に訴訟を起こせる。だから、黄蓉の訴えは合法です」と語っています(「因招工限男性 女大学毕业生状告企业 本案成为全国性别就业歧视第二案」『中国妇女报』2014年8月16日)。
(2)11城女生赞许浙江就业性别歧视第一案立案快如闪电」NGO发展交流网8月21日。
(3)(1)に同じ。
(4)(2)に同じ。
(5)女大学生求职遭性别歧视 11城市女青年发起联名信」中国新闻网2014年8月21日。
(6)女权之声的微博【浙江“性别歧视第一案”立案 征集女青年联署祝贺】8月19日 16:38
(7)(2)に同じ。
(8)以上は、「女大学生求职遭歧视追踪:法院开庭被告拒不到庭」中国新闻网2014年9月11日。
(9)关于请求‟浙江性别就业歧视第一案”依法判决、还女性公道的联名信」(曹菊及××名求职者)2014年9月5日。
(10)女权之声的微博【黄蓉案开庭公告及联署征集】9月9日 14:34
(11)(8)に同じ。
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