2017-04

BLサイト弾圧に対する抗議のパフォーマンス、情報公開申請、声明など

<目次>
一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道
二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス
三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案
四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

中国では、この4月から「ポルノ・違法サイト取締り」キャンペーンが始まり、その中で、BL(ボーイズラブ)小説を掲載しているサイトも摘発されたと報じられました。それに対して、女性やレズビアンたちから抗議の声が上がっていることなどをご紹介します。あわせて、本年の国際反ホモフォビアデーの状況についても触れます。

一、4月からのインターネットでの「ポルノ・違法サイト取締り」とBLサイト弾圧報道

今年4月から、中華人民共和国の4部門(「ポルノ・違法サイト取締り」工作グループ事務局、国家インターネット情報事務局、工業と情報化部、公安部)は、「インターネットを利用して猥褻・ポルノ情報を作成する行為を厳しく取り締まる」特別行動を開始しました(1)

4月4日には、安徽テレビ局が、河南省の警察が、BL小説を掲載していたサイト「耽美小説網(http://dmxhw.com/)」を摘発し、その管理人と作者たちを逮捕したこと、作者の大部分は20歳前後の若い女性だったと報じたことがネットで伝えられました(2)

安徽テレビ報道は、事件の経過を次のように報じています。
――鄭州の公安局の警官が、「耽美小説網」のアクセス数が非常に多いことを不審に思って、VIP会員になってその内容を確認した。インターネットの監視[网监]支隊の副隊長の耿傑は、そのサイトの有料部分の内容は「ポルノ小説が主であり、同性愛・暴力・血なまぐさいものを宣揚していた。それらが描写していたのは、すべてゲイだった。つまり、それらはゲイの恋と性行為の描写だった」と話した。警察は、まずサイトの主催者である王朝挙という男を逮捕した。さらに、彼の住まいから、小説の作者との契約書(クリック数に応じて収益がもらえることなどを決めている)を押収して、各地にいた作者を逮捕した。作者の大部分は20歳前後の若い女性だった(3)

ただし、この動画が報じているのは、2011年1~2月に起きた事件です(この事件については、当時、日本のブログも取り上げています→「中国の鄭州でBL小説サイトが摘発され関係者が大量に逮捕される」「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」2011年3月28日)。

といっても、今回、3年以上も前の事件について報道がなされたということは、今回も取締りの強化がおこなわれることを示しているように思います。

二、全国約10カ所で、「わいせつ・ポルノ」審査基準についての女子学生たちによる情報公開申請と同性愛差別に抗議するレズビアンたちによるパフォーマンス

5月17日の反ホモフォビアデーの前に、北京・広州・信陽・武漢・南京・蘭州・杭州・汕頭・南昌の9市の、9名のさまざまな性的指向の女子学生が、前後して、中国当局の先述の4部門に対して、「わいせつ・ポルノ」情報の具体的基準と同性愛に関する審査基準について情報公開を申請しました。

5月17日の当日には、10市で、自らをレズビアンだと考えている学生たちが、さまざまな広場でパートナーとキスをして、「これがポルノか?」と書いたプラカードを掲げました。

5月17日の、このパフォーマンスに参加した女子大学生の白柏さんは、「BL文学の愛好者として、いつも見ていたサイトが閉鎖されて、その理由がポルノだというので、すっかり落ち込みました。異性愛を題材にした小説も取り締まられていますが、取り締まりの基準は、同性愛小説ほど厳しくありません。このことは、同性愛のネット小説と異性愛のネット小説とでは、審査がダブルスタンダードになっていることを示しています。一部の地方では、同性愛とポルノとを同一視して、サイトを閉鎖しています」と訴えました。

参加者の徐早早さんは、「私自身、女性同性愛者ですが、私はいまのポルノ・違法サイトの取締りは同性愛に対する非常に重大な差別だと思います。多くの地方では、任務を執行するときに、同性愛はみな、わいせつであり、ポルノだとみなして、同性愛を題材にした作品の中の良い内容のものと悪い内容のものとを区別せずに、すべてを取り締まっています。けれども、異性愛のわいせつな作品に対しては、細かく区別して対処しています。このようなタプルスタンダードは、それ自身が差別であり、ただでさえ社会的な弱者である同性愛の人々を、いっそうフレンドリーでない境遇に置くものです」と語りました。

今回の活動の発起人である王可然さんは、耽美小説網の事件で、「インターネット監視隊の耿傑副隊長は明らかに同性愛をポルノの範疇に入れています。明らかにこれは同性愛に対する重大な差別です。一人のレズビアンとして、私はこのような同性愛を差別する言論と行為を容認できません。関係部門は自らの差別的行為を正すよう望みます」と語りました(4)

レズビアンがパフォーマンスをすること自体は、もちろん以前からありました。また、レズビアンが(同性愛者一般や女性一般としてではなく)レズビアンとしてパフォーマンスをすることも2012年ころからおこなわれ始めました(5)

しかし、今回のように全国各地でいっせいにレズビアンがパフォーマンスをすることは、初めてのように思います。

また、以下のような点から見て、今回のパフォーマンスには、2012年から若い女性がパフォーマンスアートなどを繰り広げてきた「ジェンダー平等活動グループ(性別平等工作組)」(その年表や本ブログの関係記事へのリンク)も関わっているように思います。
 ・ジェンダー平等活動グループの猪西西さんが、杭州の女子学生がさまざまな場所でキスをするパフォーマンスをしている写真を自らの微博に掲載している(6)
 ・グループのリーダー的存在である李麦子さんも、インターネットの同性愛小説を弾圧することに抗議しており(7)、この抗議に添付されているキスの写真は本人のものかどうか不明だが、別のツイートで、「レズビアンがキスしているのに出会った」と言って、北京師範大学でのキスのパフォーマンスの写真を自らの微博に掲載して宣伝している(8)
 ・この活動には、「蘭州桜桃フェミニズムレズビアングループ(兰州樱桃女权拉拉小组)」も参加しているが(9)、この小組の設立には李麦子さんもかかわっている(10)
 ・プレスリリースらしきものは、広州のニューメディア女性ネットワーク(新媒体女性网络)の微博で発表されているが(11)、このネットワークはジェンダー平等活動グループに近い知識人である李思磐さんがリーダーである。

三、「ポルノ・違法サイト取締り」に対するセクソロジー研究者たちの共同提案

4月30日には、陳亜亜さんが発起人になって、8人のセクソロジー研究者が、「ポルノ・違法サイト取締り」に対する共同提案を発表しています。

この提案は、まず、「現在、多くの国家はポルノ情報に一定の制限を設けている(主に児童に関する情報)けれども(……)人類の性の情報に対するニーズは抑制するのは難しい」と指摘して、今回のような取締りは「長い目で見れば、その効果は僅かである」こと、また「性の自由な表現権と衝突する可能性がある」ことなどを述べています。

その上で、以下のような提案をおこなっています。

1. インターネットのポルノ取締り行動に希望を託すことはやめるべきであり、専門家・学者、従業人員、公衆の意見を広く求め、国際的に成功した経験を参考にして、もっと合理的な管理モデルを探求・実践すべきである。

2. 法律・法規の中の「わいせつ、ポルノ」についての定義を改めて、映画・出版物のレイティング制度を実施し、「ポルノ取締り」の範囲の拡大化を避け、性の自由な表現権を保障すること。

3.青少年の性教育を充実させて、インターネットのポルノ情報に影響を受けやすい人々のために、指導と援助を提供すること。

発起人
陳亜亜(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士)

連署人
方剛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張玉霞(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
張静(ジェンダー/セクシュアリティ学者)
郭暁飛(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
彭濤(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
斐諭新(ジェンダー/セクシュアリティ学者、博士、副教授)
魏建剛(ジェンダー/セクシュアリティ平等な権利活動家)(12)


研究者たちの提議をめぐる議論

この提案に対して、呂頻さんは、「この提案のレイティング制度については、異論もある。私が思うに、現在のポイントは、国家権力のフェードアウトと言論の自由に承認にあるのであって、重点は、方案にではなく、言論の自由という前提の下で民主的な協議と産業の自律によって方案を達成する手段にこそある」とコメントしています(13)

呂頻さんの批判に対して、陳亜亜さんは、「レイティング制度は、私の初稿にはなかったが、意見を募集したとき、何人かが提起した。私はそれを共通認識にするかどうかを問うたが、返事がなかったので、改稿するときに入れた。個人的に言えば、レイティング制度を入れたほうが、政府がこの意見を受け入れやすいと感じる」と回答しています(14)

また、性教練(性のコーチという意味でしょうか?)陽春さんは、「最も良い性教育は、ポルノ的資料を含めて、すべての性の情報・資料を、各年齢層、各性別、各階層、各性的指向の性を好むすべての人に向けて広く流通させて、得られるようにして、すべての性のタブーを打ち破ることこそが、最も良い性教育だ」とコメントしました(15)

陽春さんに対しては、陳亜亜さんは、「完全に開放することは不可能だ。現在の提案は、実行可能なことを言っているのだけれども、それでも多くのネットユーザーはやはり実行可能ではないと感じているようだ。おそらく、それは、ポルノ取締りの目的が、けっしてポルノに関することだけではないからだろう」と言っています(16)

四、今年の国際反ホモフォビアデーの他の活動から――長沙の街頭でのプライドウォークは中止させられ、山道でのウォークに

1.公衆の前でキスをするパフォーマンスは昆明でも

今年の国際反ホモフォビアデーで公衆の前でキスをするパフォーマンスをしたのは、BL小説弾圧に抗議するレズビアンだけではなかったようです。

雲南省の昆明市の南屏街では、「雲南平行」の20人あまりの人々が、午後3時ごろ、レインボー色の傘を差し、レインボーフラッグを手に持って、市民に国際反ホモフォビアデーの意義について説明しました。その後、5組のゲイやレズビアンのカップルが、金碧広場に行って、抱き合い、キスをしました(17)

2.長沙では、プライドウォークは当局の圧力で中止、プライド登山を80人あまりでおこなう

長沙市では、2012年11月24日、中国大陸初のLGBTパレードが2~30人でおこなわれました。2013年5月17日には、ふたたび、100人余りによるLGBTパレードがおこなわれました。いずれも、発起人は向小寒さんという男性でしたが、2013年のパレードのとき、向小寒さんは、無許可デモを行ったという理由で行政拘留12日に処せられました(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」、「長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に」参照)。

今年の5月17日には、向小寒さんは、長沙市岳陽区で「プライドウォーク」と「LGBT大会」をする計画でした。しかし、向小寒さんが5月6日、北京に行って、ある同性愛組織を正規のNGOとして登録する問題(現在、中国では、同性愛組織は正規のNGOとして登録できない)の会議に参加したら、その会議の9人の参加者はみな人身の自由を制限され、一番長い人は16時間近く拘束されました。さらに、活動の数日前、向小寒さんは警察に呼ばれて、圧力をかけられて、「プライドウォーク」や「LGBT大会」は中止を余儀なくされました。

やむなく今年は、長沙で約80人の大学生と社会人が登山し、歩くという方法で、差別反対の活動をおこないました。彼/彼女たちは、北京・天津・武漢・広東などからやってきて、レインボーフラッグを掲げ、「私は病気ではない。治療は必要じゃない」、「男も女もおおぜい立ち上がった!」、「YES, I am GAY」、「同性婚姻に関心を寄せて、同妻(ゲイの妻)の悲劇をなくそう」といったプラカードを掲げて歩きました(写真は、この記事の中にあります→「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日(18))。休憩時間には、交流もおこないました。参加者は非常に多彩で、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、LGBTを支持する異性愛の友人などがいたとのことです(19)

今年は、山の中の道を歩くという、誰も見ていない、デモとしての役割を果たさないウォークしかできなかったわけです。けれど、微博(中国版ツイッター)など、インターネット上には多数の写真が掲載されましたので、社会に対するアピールにはならなかったとはけっして言えないだろうと思います。

しかし、今年は、北京でも、さまざまな団体が国際反ホモフォビアデーに計画していた活動が圧力をかけられて続々と中止させられたり、LGBT活動家が警察に呼ばれたりしたとのことで、こうした活動にも、いま、寒風が吹いているようです。

(1)中国扫黄打非网」、「扫黄打非・净网2014 专项行动」(Wikipedia)など参照。
(2)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」安徽网2014年 4月4日(来源:安徽卫视)、「河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)、「中国『BL小説執筆者』逮捕で波紋」NewSphere 2014年04月23日。
(3)河南警方端掉耽美小说网 抓获20多名年轻女孩」凤凰网2014年4月4日(来源:安徽卫视)の中の動画参照。
(4)以上は、新媒体女性的微博5月17日 23:31
(5)2013年5月16日、北京で3組の若いレズビアンカップルがキスしているところに、通りがかった男性が「同性愛は死ね!」と言うと、3組のカップルが倒れるパフォーマンスアートをおこなった。倒れたカップルの上には、「ホモフォビアは女同性愛を殺す(恐同杀死女同性恋)」と書いてあるボードが十字に置かれたのだが、「とくに『女同性愛』と言ったのは、女の同性愛は男の同性愛に比べて社会から無視されているので、私たちは『女』という字をはっきりと書かなければならなかった」(発起人の小航)からだという(「年轻女孩“快闪”“装死”反对同性恋歧视」同语2013年5月16日)。 
 また、2012年7月1日には、新しい「献血者健康検査要求」が施行されて、女性同性愛者の献血禁止が撤廃されたのだが、その後、女性同性愛者が公然と献血したという報道はなかった。そこで、新しい「献血者健康検査要求」の施行状況をチェックするため、2013年7月1日、瀋陽・広州・北京・武漢・鄭州の5つの都市のレズビアンが、いっせいに公然と献血した(「同志献血解禁1周年 四城拉拉骄傲献血」网易女人2013年7月1日)。
 上の2つの活動は、20余りの草の根組織が集まった「第2回レインボーメディア賞研修ワークショップ」(第1回は4月に昆明で開催)で、指導者に啓発されつつ、メンバーが計画したとのことである。この研修ワークショップは「レインボーメディア賞」という、優れたLGBT報道に賞を出している団体が主催し、北京紀安徳相談センター、同性愛者の家族と友人の会、同語、女性メディアウォッチネットワークが共催した(「媒体奖培训再结硕果 “女同性恋骄傲献血”五城连动」[動画])。
(6)猪西西爱吃鱼的微博5月17日 10:47
(7)麦子家的微博5月17日 09:05
(8)麦子家的微博5月17日 15:45
(9)兰州樱桃小组的微博5月17日 22:14
(10)本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」参照。
(11)新媒体女性的微博5月17日 23:31
(12)voiceyaya的微博5月1日 00:30
(13)吕频的微博5月5日 00:42
(14)voiceyaya的微博5月7日 14:01
(15)性教练阳春的微博5月5日 01:52
(16)voiceyaya的微博5月5日 08:07
(17)国际不再恐同日 20多位同性恋者昆明闹市拥吻」云南网2014年5月18日。
(18)NGO发展交流网2014年5月20日。同爱网络的微博5月18日 21:56も参照。
(19)以上は、「长沙:同性恋者反歧视,庆祝国际不再恐同日」NGO发展交流网2014年5月20日。
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