2017-10

世界トイレの日に、13都市の女子大学生らがケンタッキーとマクドナルドの各店舗にユニセックストイレ設置を求める手紙を出す

11月19日は、「世界トイレの日」です。2001年11月19日、シンガポールで30ヵ国あまりから500人あまりが集まって、トイレに関するさまざまな問題を話し合う「世界トイレサミット」が開催されました。この日をを記念し、WTOの呼びかけの下、11月19日を「世界トイレの日」として、世界各地でトイレの問題を考える取り組みが行われてきました。2013年7月の第67回国連総会では、毎年11月19日を国連「世界トイレの日」にすることが決定されました(1)

中国では、2012年の「世界トイレの日」には、全国の12の師範大学で、各大学の女子学生が、学長に女子トイレ増設求める手紙を送りました。女性は男性よりもトイレに長い時間がかかるのに、トイレの便器の数はその点に十分配慮せずに決められているので、中国では女子トイレ不足が問題になっており、とくに師範大学では、近年、女子学生の比率が高まってきたために、女子トイレ不足が深刻になってきたからです(本ブログの記事「全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙」参照)。

一 済南大学の女子学生が、山東省の101の大学の学長に手紙を出して、女子トイレ増設を訴える

2013年は、「世界トイレの日」の20日ほど前になりますが、10月28日に、済南大学の女子学生の凌甜さん(仮名)が、山東省の101の大学の学長宛てに書留で手紙を出して、女子トイレを増やして、女子学生のトイレ難を解決するよう訴えました。

凌甜さんは、2012年2月~3月におこなわれた「男子トイレ占拠」活動(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)に啓発されて、女子トイレ不足の問題に目を向けるようになりました。凌さんは、今回の活動について、「私は大学3年生ですが、大学にいる間にトイレの前に行列を作った経験が数多くあります。第一教学楼の各トイレには男女とも大便器が5つありますが、男子トイレにはそれ以外に小便器が5つあって、男子の同級生に聞くと、行列をした経験は基本的にないとのことです。けれど、女子トイレにはしょっちゅう行列ができています。ですから、山東省内の101の大学に手紙を出すという方法で、学長に対して、女子学生のトイレ難の問題を重視して、できるだけ早く(一部の)男子トイレを女子トイレに変えるか、女子トイレを拡張するように訴えたのです」と語りました。

山東女子学院では、そこの学生の玉潔さんによると、「私たちの学院の男女の学生の比率は1:10なのに、トイレの比率は1:1です。ですから、休憩時間になるごとに、女子トイレの前には長い列ができます」という状況です。また、済南大学の楚子さんは、「女子トイレが占用されていることも、わが校では非常に重大な問題です。というのは、清掃労働者はふつう女性なので、女子トイレには5つしかトイレがないのに、その1つか2つは道具部屋になっているので、女子トイレ不足がさらに深刻になっているからです」と語っています。

もっとも、最近は、多くの師範大学が、女子トイレを拡充したり、一部の男子トイレを女子トイレに改造したりしているそうです。「けれども、師範大学は中国の大学の中の氷山の一角なので、今回、山東省内の大学に女子トイレの拡充を訴えたことは重要です」と柯倩婷さん(中山大学副教授、中山大学ジェンダー教育フォーラム代表)は語っています(2)

二 11月19日(世界トイレの日)、13都市の女子大学生らが、ケンタッキーフライドチキンとマクドナルドにユニセックストイレの設置を求める手紙を、各市内の各店と総本部に合計870通出す

2013年の世界トイレの日には、中国の13都市(北京、ハルピン、上海、広州、武漢、西安、成都、蘭州、杭州、汕頭、昆明、鄭州)で女子大学生らが、ケンタッキーフライドチキン(以下ケンタッキーと略す)とマクドナルドにユニセックストイレの設置を求める建議の手紙を、それぞれの都市の各店と総本部に合計870通出しました。

また、その前の週末には、各都市のケンタッキーやマクドナルドの店の前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要です(我们需要更多 性别友善厕所)」というパネルを掲げて立つというパフォーマンスもおこないました。

この活動の発起人は、前年に「男子トイレ占拠」の活動を起こした李麦子さんです。李さんは、「中国ではどこでも女子トイレの便器が不足していますが、トイレをユニセックストイレに改造して、男女とも使えるようにすれば、問題は解決します。ユニセックストイレに改造すれば、男子トイレの便器という資源を有効に利用することもできますから、一曲両得だと言えます」と語りました。

また、今回、北京で活動をした別の人は、「私のように中性的な装いをしている人は、トイレに行くとき、しょっちゅう嫌な思いをします。中性的な女子学生がトイレに行くと、男子学生だと誤認されて、清掃労働者にトイレから追い出されることもあります。このようなドタバタ劇を避けるために、ユニセックストイレにしてほしいという要求は、非常に切実なものです。私の学校の近くにも、ファストフードの店がたくさんあるので、それらの店に率先してユニセックストイレにしてもらうことは、私にとって、とても重要です」と語りました(3)

三 11月19日(世界トイレの日)の行動の各地での取り組みの状況

以下は、インターネット上に掲載されている各都市での取り組みの状況ですが、以下のうち、広州・西安・成都・昆明・鄭州での活動は現地の新聞で報じられています。また、新聞で報じられる以前に、各人が、自らの微博(中国版ツイッター)に、店舗の前で「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いた紙を手に持っている写真をアップするなどして、自分たちの活動を発信しています。

広州

広州では、2人の女子学生が、市内のマクドナルドとケンタッキーの105の店舗に手紙を出して、ユニセックストイレの設置を訴えました。

その2人の女子学生は、華南理工大4年生の梁小門さんと中山大学4年生の木果さんです。梁小門さんは、7月に、ジェンダー平等活動グループの「9都市公共トイレ男女便器状況調査報告(性别平等工作组「九城市公共厕所男女厕位状况调查报告)」の調査に参加して、広州市内の調査をしました。男女の生理的な差違などを考慮すれば本来は女性用便器のほうが多くなければならないのですが、その調査の結果では、逆に男性用便器のほうが多く、とくに広州では、男女の便器比率は1.79:1で、9都市の中で最も女性用便器の比率が少ないことがわかりました(本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループ、9都市の公共トイレの便器数の男女比の調査報告発表」参照)。手紙を出したのは、そのためもあったということです。

木果さん(@冬蟲夏草泥馬PK君)は、「女子学生のトイレ難はどこにでもあって珍しくないというのに、ずっと改善されていません。学校だけでなく、マクドナルドとケンタッキーのようなファストフードのチェーン店でも、女子トイレに長い行列が出来ているのをよく見かけます」と語っています(4)

西安

西安でも、何人かの女子大学生が、店舗の前で「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いたプレートを掲げたり、ケンタッキーやマクドナルドの店に手紙を書いたりしました(5)

成都

成都では、李丹妮さんが、11月17日に、市内にある30カ所のケンタッキーとマクドナルドの店に書留郵便を出して、ユニセックストイレの設置を訴えました。李丹妮さんがトイレの男女平等の問題に取り組むのはこれが初めてではなく、前年に北京で李麦子さんと知り合って、その後、李麦子さんといっしょに政府や商業機構に女子トイレの増設を訴えたり、法律によって、男女の便器の比率を2:1にすることを訴えたりしてきました。

李丹妮さんが今回、ケンタッキーとマクドナルドに手紙を出したのは、「こうしたファストフードの店は多いので、少なくない市民がそれらのトイレを公共トイレだと考えているからだ」という理由からです(6)

蘭州

蘭州でも、蘭州サクランボグループの微博(兰州樱桃小组的微博)が、ケンタッキーの店の前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要だ」と書いた紙を手に持っている写真を発信しました(7)

汕頭

汕頭でも、女子学生が、市内のすべてのケンタッキーとマクドナルドの店に書留を送って、ユニセックストイレを設置するよう要望しました。その書留には、ユニセックストイレを設置することによって、女子学生だけでなく、中性的な気質の人やトランスジェンダーの若者も助かるということが述べられています(8)

蘭州と汕頭の情報は、それぞれ、蘭州サクランボグループの微博と汕頭大学オレンジ社の微博((汕大橘子社的微博)が発信しています。蘭州サクランボグループと汕頭大学オレンジ社は女性と女性の性的マイノリティの権利に取り組むグループであり、それぞれ、2013年5月12日、2013年5月1日(5月1日は微博の登録日)に創立されています。名称の由来は、それぞれ、ジャネット・ウィンターソンの『さくらんぼの性は』(邦訳は岸本佐知子、白水社1997)と『オレンジだけが果物じゃない』(邦訳は岸本佐知子、白水社2011)から取られています。今回の運動には、こうした地方のフェミニズムグループも一つの基盤になっているようです。

昆明

昆明では、雲南大学の社会学専攻の2人の女子学生(発起人は小彭)が、51通の手紙を昆明のケンタッキーとマクドナルドの各店に書留で送りました(9)

鄭州

鄭州では、小美さんが、71通の手紙を出しました。そのうち69通は鄭州のマクドナルドとケンタッキーの各店に出し、2通はそれぞれの中国の総本部に出しました(10)

ハルピン

東北各地では大雪で各種の警報が出ていました。しかし、ハルピンでも、ある女性市民が、マクドナルドの前で、「私たちにはもっと多くのユニセックストイレが必要です」と書いた紙を手に持っている写真を微博で発信するとともに、市内のケンタッキーやマクドナルドにユニセックストイレを設置するよう要望する手紙を出しました。その女性はバイセクシュアルなのですが、「男子学生と女子学生を分ける必要はないし、もっと重要なことは、トイレを利用する民衆が異なった性的指向の生理的ニーズを尊重しなければならないということだ」と訴えています(11)

四 ケンタッキーから「考慮・研究」するという返信

汕頭の劉小牛さんのところには、汕頭ケンタッキー有限公司から、11月28日付けで、「全世界的チェーンの飲食ブランドとして、ケンタッキーは一貫してお客さまの声を重視し、お客さまに迅速で快適なお食事の環境を提供することに努力しております。あなたのご提案に感謝します。ご提案は会社の建設専門部門に転送して、考慮・研究させていただきます」という返信が返ってきました(12)

また、成都の李丹妮さんのところにも、12月25日付で、百勝(ケンタッキーのチェーン店を展開する企業である「ヤム・ブランズ」の中国名)飲食グループ中国事業部から、同文の返信が返ってきました(13)

五 まとめ

以上、2013年の世界トイレの日の前後の女子大学生らの取り組みは、以下のような特徴があったとまとめられるように思います。

1.前年は師範大学に対する働きかけだったが、2013年は、山東省だけとはいえ、全大学に働きかけた。

2.それまでは公共トイレを中心にした働きかけだったが、今回は、公共性があるとはいえ、商業施設のトイレに働きかけた。

3. 2012年2~3月の「男子トイレ占拠」アクションにおいても、要求の一つとしてユニセックストイレが挙げられていたが(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)、今回は、ユニセックストイレの設置をメインの要求にした。これは、設置する空間が限定されているファストフードの店舗に対する働きかけだったからかもしれない。しかし、そのために、「中性的」な女子学生の要求やトランスジェンダーの要求が以前より正面に出ていることは確かである。

なお、現在の中国では、本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」の「7.ユニセックストイレについて」でも触れたように、ユニセックストイレに対する抵抗があり、そのことはとくに女性の間で強いのですが、その点に対しては、彼女たちは、仕切りを完全にすることや警報装置を設置することなどを提案しています(14)

(1)日本ユニセフ協会プレスリリース「11月19日は 初の国連『世界トイレの日』」日本ユニセフ協会2013年11月14日、「11月19日は国連初の『世界トイレの日』 世界のトイレ問題の解決には 草の根運動が重要」日本ユニセフ協会2013年11月19日、「11月19日は『トイレの日』、25億人の衛生状態改善を」CNN 2013年11月20日。
(2)以上は、「济南大学女大学生致信省内101位校长,呼吁扩建校园女厕 校园女生如厕难,厕所比例需2:1」社会性别与发展在中国2013年10月28日(来源:邮件)。新聞報道としては、「大学生信“谏”百余校长增女厕 称女生排队太久,建议扩建至男厕两倍」『齐鲁晚报』2013年10月29日。
(3)以上は、女权之声的微博【全国13城市女大学生致信快餐店 呼吁建立“性别友善厕所”】2013年11月19日 18:04、「世界厕所日全国13城市女大学生致信肯德基 呼吁建“无性别厕所”」中国网河南频道2013年11月19日。
(4)快餐店能否建更多无性别公厕?」『信息时报』2013年11月20日。@冬蟲夏草泥馬PK君がケンタッキーの前でパネルを掲げている写真は、梁小门的微博2013年11月19日 13:31
(5)今天是首个世界厕所日 女大学生吁建性别友善厕所」『三秦都市报』2013年11月19日。
(6)11月19日是首个“世界厕所日”,成都女生昨日致信30家“洋快餐”店:建男女通用厕所 减少女士排队等候」『华西都市报』2013年11月18日→「成都一女生建议洋快餐店设置男女通用公厕」人民网2013年11月18日(来源:华西都市报)。
(7)兰州樱桃小组的微博2013年11月18日 22:33
(8)汕大橘子社的微博2013年11月19日 18:27
(9)“世界厕所日”云大两女生向昆明多家快餐连锁店发出倡议—— 建无性别厕所 让女性如厕不再排队 」『春城晩报』2013年11月20日。
(10)洋快餐店里多设男女通用厕所吧 全国13个城市的女权志愿者发出倡议 求解女性如厕难」『东方今报』2013年11月20日。
(11)Makarina的微博11月20日 22:56
(12)汕大橘子社的微博【肯德基回信啦〜】2013年12月9日 11:13
(13)丹妮鯉的微博2013年12月26日 21:58→「2013世界厕所日致信获肯德基总部回复:会考虑建设“性别友善厕所”」社会性别与发展在中国2013年12月31日(来源:邮件)。
(14)「快餐店能否建更多无性别公厕?」『信息时报』2013年11月20日、「11月19日是首个“世界厕所日”,成都女生昨日致信30家“洋快餐”店:建男女通用厕所 减少女士排队等候」『华西都市报』2013年11月18日。
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