2017-06

中国婦女第11回全国代表大会、習近平講話に対する微博上での批判

10月28日から31日まで、北京の人民大会堂で中国婦女第11回全国代表大会が開催されました。「中国婦女全国代表大会」とは、中国共産党の直接的指導の下にある「中華全国婦女連合会」が5年に1回開催する代表大会です。

以下、今回の大会の概要を述べるとともに(前回の大会については(1))、大会で選出された新指導部に対して習近平総書記がおこなった講話に対して微博上で女性たちから批判がおきたことをご紹介します。

<目次>
1 執行委員会の活動報告
2 規約改正
3 人事
4 女性の家庭役割を説く習近平発言に対する微博上での批判

1 執行委員会の活動報告

大会初日の10月28日は、王岐山・中共中央政治局常務委員が党中央を代表して「中国の特色ある社会主義の偉大な実践において天の半分を支えよう」(2)という祝辞を述べたのち、宋秀岩・全国婦連書記処第一書記(全国婦連党グループ主席でもある)が第10期執行委員会を代表して、「旗印を高く掲げ、心ひとつに力を合わせ、各民族・各界の女性を団結させ立ち上がらせ、中国の夢を実現するために奮闘しよう(3)という報告をおこないました(4)

執行委員会報告の構成は以下のとおりでした。
一、道を切り開き、奮い立って前進した5年
二、中国の特色ある女性の発展の道を歩み続けよう
三、現代の中国女性の光栄な使命
四、今後5年間の婦連の活動の新たな発展
五、婦連の組織自身の建設の科学的水準を向上させよう

一では、過去5年間の全国婦連の活動の成果が述べられました。

二では、昨年の中国共産党第18回大会で語られた「中国の特色ある社会主義」にもとづく「中国の特色ある女性の発展の道」について述べられました。

三では、やはり中国共産党第18回大会で習近平総書記が打ち出した「中華民族を復興する中国の夢」に向けて、広範な女性が努力すべきであることについて述べられました。

四では、今後5年間の婦連の活動方針について、述べられました。その内容は、1)女性を積極的に動員し導いて、中国の特色ある社会主義建設の中で「天の半分」の働きを十分に発揮させること、2)[男女平等という]基本的国策を貫き、女性の権益を法にもとづいて代表し、擁護すること、3)サービスに力を入れ、広範な女性が実際に、あまねく、長期的に利益を得られるように努力すること、4)資質の向上を重視し、女性が有用な人材になるよう援助することに力を入れること、5)統一戦線の友誼を深め、各民族各界の女性の大きな団結を積極的に促進すること、6)対外的な交流を拡大し、世界各国の女性と友誼を深めること、でした。

以上から見て、この報告は、女性の権利擁護の活動についても少し触れているとはいえ、全体としては、中国共産党の政策を実現するために女性の力を発揮させることを説いていると言えるでしょう。「天の半分(を支える)」という言葉も、以前のように「女性が社会(的労働)に進出する」という意味ではなく、「人口の半分として役割を果たす」という程度の意味でしか用いられていないようです。

中国共産党の方針を実現するために女性の力を発揮させることを説くということは、以前の中国婦女全国代表大会も同じでした。また、報告の構成も、最初に、前大会以来の婦連の活動について述べ、次に、中国共産党の新しい方針を婦連の活動に導入することを述べ、その次に、婦連の活動の今後の方向や次回大会までの5年間の活動方針を述べるという点で、今回の大会も以前の大会もほぼ変わっていません(5)。今後5年間の婦連の活動方針も、前回と大同小異です(6)

今回の活動報告の特徴は、「五 婦連組織自身の建設の科学的水準を向上させる」という章があることです。この章は、中国共産党第18回党大会における胡錦濤報告の「十二 党建設の科学的水準を全面的に高める」(7)という箇所と対応しているのだと思います。しかし、その内容は、胡錦濤報告とぴったり重なっているわけではなく、たとえば、婦連を取り巻く状況として、以下のことが述べられています。

現在、婦連の組織の工作の環境・対象・内容・形態はみな大きく変わっており、新しい女性の集団が絶え間なく生まれ、新しい女性団体が絶え間なく現れ、新しい思想・観念・知識・技術が不断に発展しており、婦連組織自身の建設は、多くの新しい情況、新しい問題、新しい挑戦に直面している。


これは、中国社会が流動化し、婦連の活動が及ばない女性たちが増えてきたこと、新しい女性団体が次々に現れ、新しい女性運動も起きてきたことに対して婦連が対応できていないというリアルな現状を表しているのだと思います。

そのような現状に対して、この章では、婦連の組織建設について、1「組織形態をいっそう刷新する」、2「末端の基礎をいっそう打ち固める」、3「幹部の隊伍の建設をいっそう強化する」、4「活動の作風をいっそう改善する」という4つの方針を出しています。しかし、いずれも、女性自身の下からの要求に応えるという意味では不十分であり、4に関しても、「末端に降りて、女性の状況を尋ね、具体的なことをやる」という活動(この方針は、すでに2012年1月に提唱されている)を日常化するとか、「党や政府に対して女性の訴えを伝える」ということが一般的・抽象的に書いてあるだけです。なにより、今回打ち出された今後5年間の活動方針自体に新味がありません。

2 規約改正

今回の大会では、規約[章程]の改正もおこなわれました。以下に改正後の規約を示します(赤字が今回付け加えられた個所です)(8)

総則

 中華全国婦女連合会は、全国の各民族・各界の女性がいっそうの解放と発展を勝ち取るために団結した社会的大衆団体であり、中国共産党の指導の下の人民団体であり、党・政府と女性大衆とを結びつける橋梁・紐帯であり、国家政権の重要な社会的支柱である。

 中華全国婦女連合会は、憲法を根本的な活動規準とし、法律と「中華全国婦女連合会規約」に基づいて独立して自主的に活動する。

 中国の女性は、中国の特色を持った社会主義を建設する重要な力である。中華全国婦女連合会は、マルクスレーニン主義・毛沢東思想・鄧小平理論、「三つの代表」という重要な思想、科学的発展観を行動の指針にする。社会主義の初級段階においては、婦女連合会は、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、党の基本理論・基本路線・基本綱領・基本的経験・基本的要求を堅持し、マルクス主義の女性観を堅持し発展させ、男女平等の基本国策を貫いて、広範な女性を団結させ、導いて、中国の特色ある社会主義の女性の発展の道をしっかりと動揺せずに歩ませ、いくからゆとりのある[小康]社会を全面的に建設し、社会主義の物質文明・政治文明・物質文明を推進するうえで積極的な役割を発揮しなければならない。社会主義の経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・エコロジカルな[生態]文明建設において積極的な役割を発揮し、富強で民主的で文明的で調和がとれた社会主義の近代的な国家の建設、中華民族の偉大な復興を実現するという中国の夢のために奮闘しなければならない。

 婦女連合会の基本的な職能は、女性の権益を代表・擁護し、男女平等を促進することである。

第1章 任務

 第1条 女性を団結させ、動員して、改革開放と社会主義近代化[現代化]建設に身を投じさせ、経済の発展と社会の全面的進歩を促進する科学的な発展を推進し、社会の調和を促進する社会主義経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・生態文明建設に身を投じさせ、中国の特色ある社会主義の偉大な実践において積極的役割を発揮させる

 第2条(→第4条) 広範な女性を教育し導いて、社会主義の核心的価値観を実践させ、自尊・自信・自立・自強の精神を発揚し、総合的資質を向上させ、全面的発展を促進する。マルクス主義の女性観を宣伝し、男女平等の基本的国策を宣伝し推進実現し、女性の全面的発展に有利な社会的環境をつくりだす。優秀な女性の模範を宣伝・表彰し、女性の人材を養成・推薦する。

 第3条(→第2条) 女性を代表して、国家と社会の仕事[事務]の民主的決定[決策]・民主的管理・民主的監督に参与し、女性と子どもに関する法律・法規・規則[規章]と政策の制定に参与し、社会の管理と公共サービス[服務]に参与し、女性の人材を養成・推薦し (→第4条に移動)、女性・児童発展要綱の実施を促進し、女性と子どもの合法的権益を擁護する。

 第4条(→第3条) 女性と子どもの合法的権益を保護し、女性の訴えに耳を傾け、女性の訴えを反映させて、各レベルの国家機関に関連する意見と提案を出し、関係部門・単位に、女性と子どもの権益を侵害する行為を調査・処置することを要求し、助け、被害にあった女性と子どもを援助する。

 第5条 女性の仕事と生活に関心をよせ、サービスのルートを広げ、サービスの陣地を建設し、公益事業を発展させ、ボランティアの隊伍を発展させて、女性・子どもと家庭のために服務する女性の家の建設を強化する。社会の各界と連係して、社会の各界と協力して女性と子どもと家庭のために具体的なこと[実事]を推進する服務する

 第6条 各民族・各界の女性の大きな団結を強固にし、拡大する。香港特別行政区・マカオ特別行政区・台湾地区および華僑と海外の中国人の女性・女性組織との親睦[聯誼]を強め、祖国統一の大事業を促進する。世界各国の女性と女性組織との友好・交流を積極的に発展させて、理解・友誼・協力を促進し、世界平和を擁護する。


5年前の大会でも規約改正がおこなわれたのですが、その特徴について、私は以前、本ブログで、以下の3点を指摘しました(9)

 1.今回の規約改正によっても、中華全国婦女連合会が、中国共産党の指導の下に、女性を国家目的のために動員する団体としての性格が強いこと自体は変わっていない。
 2.「科学的発展観」など、今日の政権のスローガンを取り入れている。
 3.以前の規約と比べれば、女性と子どもの権益や男女平等、婦女連合会の自主性が強調されている。

今回の改正についても、上記の1~3の点は当てはまるように思います。といっても、3の点は、「男女平等の基本的国策」の「宣伝」が「推進実現」に変えたこと、「女性の訴えに耳を傾け、女性の訴えを反映させる」(第4条[旧第2条])という文言を付け加えたこと、および婦連の政治への参与や女性の権利擁護の条文を女性に対する教育の条文より前に持ってきたことだけであり、ごく僅かな改正にとどまっています。

3 人事

10月30日午前、中国婦女第11回全国代表大会は第2回全体会議を開いて、296人の執行委員を選出しました(10)

同日午後には、その執行委員ら(第11期執行委員会)が第1回全体会議を開いて、主席1人、副主席14人、常務委員40人を選出しました。全国婦連主席に選出されたのは、沈躍躍さんです。続いて開かれた常務委員会議は、宋秀岩さんを書記処第一書記に推薦しました(11)

沈躍躍さんは、すでに昨年5月の全国婦連第10期第6次執行委員会で、陳至立さんにかわって、主席に選出されています。その際には、中国共産党中央政治局委員で中央組織部部長の趙楽際さんがこの人事について説明したとのことであり、中共中央のイニシアチブによるものだと思われます。趙楽際さんによる説明の詳細は不明ですが、この人事を報じた昨年5月の『中国婦女報』の記事には、「今年3月から今までに、全国総工会、共産主義青年団中央、全国婦連の主要な指導者はみな新旧の交替をした」とあるので(12)、べつに個人的な事情による交替ではないと思われます。

10月31日午前、中国婦女第11回全国代表大会は、執行委員会の報告に関する決議や規約の改正案を採択し、最後に沈躍躍主席が閉会の言葉を述べて、終了しました(13)

以上、執行委員会の報告、規約の改正、人事のいずれの点に関しても、それほど変わりばえのしない大会だったように感じます。沈主席が閉会の言葉(14)で打ち出した「巾幗新建功 共築中国夢(女性が新たな貢献をして、中国の夢をともに築こう)」というスローガンも、何の工夫もない、印象に残らないスローガンです。

けれども、執行委員会の報告で触れられているように、全国婦連をめぐる環境は大きく変わりつつあります。その一つが、以下で述べる、ニューメディアである微博(中国版ツイッター)の登場だろうと思います。

4 女性の家庭役割を説く習近平発言に対する微博上での批判

大会終了した31日の午後、習近平総書記が中南海で全国婦連の新しい指導者グループと会談し、講話をしました。習総書記のその講話は、「男女平等の基本的国策を堅持し、わが国の女性の偉大な働きを発揮させよ」(15)と題されていますが、その主な内容は、婦連は党の指導を堅持すべきことや婦連が広範な女性と結びつくべきことなどを説いたものでした。その中には、以下のように女性の家庭役割を説く個所もありました。

中華民族の家庭の美徳を発揚し、良好な家風を築くうえでの女性の独自の役割を発揮させることを重視しなければならない。それは、家庭の和睦にかかわり、社会の和睦にかかわり、下の世代の健康な成長にかかわる。広範な女性は、老いたる者を尊び、幼き者を愛し、子どもを教育する責任を自覚的に担って、家庭の美徳建設における役割を発揮し、子どもが良い心をはぐくむことを助け、健康な成長を促して、大人になったら国家と人民に有用な人になるようにしなければならない。


11月1日、在米のsusiyangさんは、微博で、上の習近平発言を引用しつつ、「ということは、男はみんな死んでしまったのか?」と皮肉を述べました(susiyang的微博11月1日 20:07)。

このsusiyangさんの発信は、翌日までに少なくとも409回転載[リツイート]されるなど、かなりの注目を集め、そのほとんどの人が習近平講話に対して批判的なコメントを付けました。susiyangさんのこの発信は、その後、検閲によって削除されてしまいましたが、以下に、この発信をきっかけにして出た、習近平講話に対する主な批判を並べてみました。以下の批判の中には、講話の他の箇所や講話全体について論じたものもあります。

陳亜亜:習近平のこの講話は、彼にはまったくジェンダー意識がなく、女性工作に対する理解がまだ前々世紀[=19世紀]にとどまっていることを証明している。それなのに彼が「改革・創新しなければならない」と言っているのは、ほんとうに馬鹿馬鹿しい。前の世紀[=20世紀]には、私たちは「女性は天の半分を支える」と言ったのに、習近平はまた女性の居場所を家庭に定めており、私は後退していると思う。――彼のこの講話に強く反対する。私は、彼はジェンダー意識向上カリキュラムに通わなければならないと思う(voiceyaya的微博11月4日 17:32)。

龙荻D:これは、19世紀のアメリカ社会の両性観の主流ではないか。なるほど、「中国の夢」とは二百年前のアメリカの夢を復興することだったのか(龙荻D的微博11月1日 21:42 )。

@vinggoo:「女性が『美徳を発揚し、家風を打ち立てる』独特の役割」ということから、私は、デンマークの言語学者のオットー・イェスペルセンが1922年に出版した「Language: Its Nature, Development and Origin」で述べた「女性の言語的貢献は、優美で上品な表現によって言語の純潔性を保持することであり、それは家庭内で発生する」という観点を想起した。賛辞によって、女を力づくで連行するものであり、社会的役割・女らしさの押し付けている(@vinggoo的微博11月2日 10:47)。

李思磐:習のこの講話は、基本的に文化民族主義的性格を持っており、事実上、女性を家庭役割に固着させており、マルクス主義と党の女性解放の理念に背いている(李思磐的微博11月2日 03:00)。

同上:(習近平は)「党の第18回大会が打ち出した目標を実現し、中華民族の偉大な復興を実現する(…)ことが現在の中国の女性運動のテーマである。 (…)中国の特色ある社会主義の女性の発展の道をしっかりと動揺せずに歩まなければならない」(と言っている)(…)これが第4回世界女性会議を主催した国家元首の言葉だ。彼の秘書やブレーンの中に女性差別撤廃条約を読んだことがある人がいるのかどうかわからない。誰かが英語に翻訳しないといけないのではないか?(李思磐的微博11月2日 03:05)。

 ↑(李のもう一つ上の発信に対するコメント)
呂頻:私は、党の婦連に対する位置づけの実用的判断・指導を反映しているのではないかと思う。党の「イデオロギー」はすでに衰え、経済・政治領域の管理は実務的になって、婦連の役割はなくなり、家庭は、政策の領域ではなく、教化の空間だと考えられている。結局、婦連は権力を与えられておらず、その他の部門に分割できない「思想[務虚]」領域でしか活動できない(吕频的微博11月3日 00:43)。

同上:また、「イデオロギー」(乱用される言葉だ)の方向も変わった。社会主義の時期は非常に貧しく、国家の自尊を高めるには、女性の地位は高いと吹聴する必要があったが、今は経済に力を入れ、民族主義をやっているので、もうそうする必要はない。それゆえ、女性の地位についてはお茶を濁すだけであり、「中国の夢」は女性のメッキをする必要はない。また、女性は抗争する集団だとは考えられておらず、強い権力は社会の安定を維持するために、女性の、家庭と地域コミュニティに対する貢献を利用している。だから、私たちは、さまざまな「良い女」を賛美することをやめるしかない(吕频的微博11月3日 02:18)。
 ↑
緑茶sz:一つの例証:婦連は数十年間繰り返し男女の定年の平等を訴えてきたが(…)現在もこの問題は解決していない。しかるに、ひとたび社会保険の費用が足りなくなったら、すぐに65歳に定年を延長する議論になる。女性の平等な権利を勝ち取るというのは、一方的な願望でしかないということがわかる(上の呂頻の発信へのコメント11月3日 00:50)。

沈睿:(…)沈躍躍は、女性工作をした経験はなく、工商管理の在職研究生から全国婦連の主席になった。おおかた婦連を工商連にするのだろう(…)(沈睿的微博11月3日 04:52)。

また、以下の発信は、習近平総書記の講話(ないし思想)全体について批判しています。

@大鯢種菠蘿:この男女平等に関する講話は、男性に対する要求がどこにもなく、性差別の現状と原因も言わず、女性に対してあれこれ命令しているだけだ。あたかもわが国では男女平等がすでに実現しているかのようだ(大鲵种菠萝的微博11月2日 03:48 )。

沈睿:男女平等は国策であることを強調した後、女性の地位を語ると、女性を家庭に入れる話をする。これは、今期の指導者の本当の考え方を示している。彼らは現代世界と完全に食い違っており、まるで旧社会で生活しているかのようだ。これは、ジェンダー意識は古めかしさにおいて、彼の言う「ソ連ロシアには男児が一人もいなかった」(*)と同工異曲である(沈睿的微博11月3日 04:44)。

(*)[遠山注]習総書記が2012年12月に広東省を視察した際おこなった「新南巡講話」で、ゴルバチョフがソ連共産党の解散を宣言したにもかかわらず、ソ連共産党内には「男児が1人もおらず、誰も闘わなかった」と言った(16)ことを指しています。

艾暁明:1995年の世界女性会議から現在の2013年までに、すでに10年余りたった。婦連はずっとジェンダー平等を強調しているけれども、私たちにはまだできていないことがたくさんある。たとえば女性の平等な就職の機会、平等な政治参加の機会、また非常に多くの女性が暴力をふるわれる問題(家庭内暴力であれ、子どもに対する性的侵害であれ)――これらの面については、この講話は何も具体的に述べていない。

同上:問題は何が「良好な家風」かである。いま家庭領域には顕著な問題があるが、それは、けっして「家風」の問題ではなく、家庭内で発生している男性の女性に対する暴力だ。

@熊宝宝么么哒lth:毎回、指導者の講話は、女性が建設に対して役割を発揮しなければならないと強調しているけれども、女性の就職・就学の差別をなくすことや女性の保護・安全(幼女に対する性侵害、女性に対する家庭内暴力)や夫に死なれた下層の貧困な母子の生活などの現実の問題をまったく言わない。

馮媛:習の講話と王の祝辞(*)は、うわべは多元的文化のように見える。マルクス主義の女性観のスローガンの標語もあれば、「女性が民主的権利を行使して発展に平等に参与し、立法や意思決定はジェンダー意識を体現して発展の成果を共に享受する」などの国際的な主流の用語もあり、「慈母・孝女・賢妻」などの孔孟の道もやっており、「動揺せずにしっかりと党の言うことを聞き、党に従って歩む」要求もある。ここ数回の[大会の]指導者の祝辞や講話では、これほどはっきりと(このような女性役割を表明)しなかった。

(*)[遠山注]王岐山・中共中央政治局常務委員の祝辞の中にも、「広範な女性が美徳を継承し、調和を促し、新しい気風を打ち立てることを希望する。中華文明の源は遠く、流れは長い。慈母・孝女・賢妻は、家庭の仲睦まじさと社会の調和を促進するうえで、他の者にはできない役割を果たしてきた。広範な女性が、老いたる者を尊び、幼き者を愛し、勤倹を旨として家事を切り盛りし、自立し自ら努力して向上し、科学的に子どもを教育し、家庭文明の新しい気風を樹立しなければならない」という個所があります(17)

@原始女性是太陽:(…)国家の首脳として、家庭責任を一方的に女性が負っている不合理な前提を正視せずに、上から下へ、女性が家庭責任を「自覚的に担う」よう要求することは、結局、真にジェンダー平等を推進することなのか、それとも女性に「国家の大義」のためにいっそう自分を犠牲にすることを新たな形で要求することなのか?

以上、習の発言や講話、民族主義、婦連の役割、歴史的変化などについて、わずか2~3日の間に多様な角度から批判がなされたことがわかります。

11月4日、広州ニューメディア女性ネットワーク(李思磐ら)は、上のようなの発信をまとめて微博で発表し、それは、他のフェミニズム系サイトにも転載されました(18)

しかし、同日、こうした議論を知ってか知らずか、全国婦連は、習近平総書記のこの講話を学習・貫徹するように訴える通知を出しました(「習近平総書記が全国婦連の新指導者グループと談話した際の重要な講話の精神を真剣に学習・貫徹することに関する通知」(19))。総書記が全国婦連の指導者におこなった講話についてこうした通知を出すのは毎回のことではありますが、ここにも全国婦連と女性やフェミニストとの大きな乖離を見ることができます。

広州ニューメディア女性ネットワークがおこなった上のまとめは、微博上で2139回転載され(転載するだけでなく、その多く批判的コメントがされている)、微博のコメント欄(ツイッターと違って、微博にはコメント欄がある)にも566件コメントが付いており(日本時間で11月8日午後4時現在)、同ネットワークは、それらの批判的コメントを再度まとめて微博で発表する事態になっています(11月7日)(20)

同ネットワークがまとめたところによると、それらの批判の観点を大まかに言えば、以下のようなものでした。
 1.習の講話は、「男女平等」の国策の精神を体現していない。
 2.習の講話は、伝統の美徳だけを語って、伝統に従うだけで平等を語らないために女性が直面している苦境に注意を向けていない。
 3.習の講話は、女性の責任だけを強調して、女性の権利とそれと関連する問題の解決については語っていない。
 4.習の講話はわが国の政府のジェンダー平等意識の後退を意味しているのではないか、心配だ。
 5.現在の婚姻制度と役割分担のために、もう女性は家庭と社会の中で不利な地位に置かれているだから、女性の家庭役割だけを強調するべきではない。
 6.現代の女性は多元的な選択をする意識や能力があるのだから、男性も同じように家庭内で果たすべき役割を果たすべきである。

婦連や中国共産党との女性との矛盾は、もう覆い隠せないようです。

(1)前回の第10回大会(2009年10月)については、本ブログの記事「中国婦女第10回全国代表大会(1)──規約改正」、「中国婦女第10回全国代表大会(2)──活動報告」、「中国婦女第10回全国代表大会(3)──女性の期待と大会」をご参照ください。
(2)王岐山「在中国特色社会主义伟大实践中撑起半边天——在中国妇女第十一次全国代表大会上的祝词(2013年10月28日)」『中国妇女报』2013年10月29日。
(3)宋秀岩「高举旗帜 凝心聚力 团结动员各族各界妇女为实现中国梦而奋斗——在中国妇女第十一次全国代表大会上的报告(2013年10月28日)」『中国妇女报』2013年11月1日。
(4)中国妇女第十一次全国代表大会开幕」『中国妇女报』2013年10月29日。
(5)たとえば、第10回大会と第9回大会での活動報告は、それぞれ以下のような構成でした。
[第10回中国婦女全国代表大会]
 一、過去5年間の回顧
 二、科学的発展観を深く貫き遂行しよう
 三、今後5年間の女性の発展の目標
 四、全力で婦連の活動の新しい局面を切り開こう
[第9回中国婦女全国代表大会]
 一、五年来の中国の女性運動の新しい発展と今後の経験
 二、「三つの代表」という重要な思想で中国の女性運動を指導する
 三、新世紀初めの中国女性の事業の発展の目標
 四、新しい形勢の下での婦連組織の主要な任務
 いずれの報告も、「一」で過去5年間の活動の総括をし、「二」で中国共産党の大会で新たに打ち出された方針にもとづくことが記され、「三」で今後の活動の大きな方向性を述べ、「四」で今後5年間の具体的方針を述べています。
 それ以前の大会の活動報告については、それぞれ、(第8回大会)「高举邓小平理论伟大旗帜 团结动员各族各界妇女为实现我国跨世纪的宏伟目标努力奋斗」、(第7回大会)「全国妇女团结起来为建设有中国特色社会主义努力而奋斗」、(第6回大会)「自尊自信自立自强 为夺取改革攻坚阶段的胜利建功立业」、(第5回大会)「奋发自强 开创妇女运动新局面」、(第4回大会)「新时期中国妇女运动的崇高任务」、(第3回大会)「勤俭建国、勤俭持家、为建设社会主义而奋斗」、(第2回大会)「第二届中华全国民主妇女联合会 工作报告」、(第1回大会)「中国妇女运动当前的方针任务报告」です。
(6)前回の今後5年間の活動の目標は、1)発展の機会をつかんで、女性が経済・社会の立派で急速な発展のために新しい貢献をするよう導く、2)権利の保護の職能をきわだたせて、女性が最も関心があり、最も直接的で、最も現実的な利益の問題の解決を推進する、3)優位性を充分に発揮し、社会の管理と公共サービスに参与する上でさらに大きな成果を勝ち取る、4)持続可能な発展に立脚して、女性の事業の発展に有利な体系の建設を促進する、5)勇敢に改革して新機軸を打ち出し、婦連自身の建設を全力で推進する、でした。
(7)胡锦涛在中国共产党第十八次全国代表大会上的报告 十二、全面提高党的建设科学化水平」2012年11月17日→邦訳「第18回党大会における胡錦涛氏の報告(要旨)―十二 十二 党建設の科学化レベルを全面的に高める」チャイナネット2012年11月20日。
(8)中华全国妇女联合会章程(中国妇女第十一次全国代表大会部分修改,2013年10月31日通过)」『中国妇女报』2013年11月1日、「充分体现新要求 新任务 新需要——中国妇女第十一次全国代表大会章程组负责人就妇女十一大通过的《中华全国妇女联合会章程(修正案)」『中国妇女报』2013年11月1日。
(9)本ブログの記事「中国婦女第10回全国代表大会(1)──規約改正」参照。
(10)中国妇女十一大举行第二次全体会议 选举产生全国妇联新一届领导机构 二百九十六人当选全国妇联第十一届执行委员会委员」『中国妇女报』2013年10月31日。
(11)全国妇联第十一届执委会举行第一次全体会议 沈跃跃当选全国妇联主席」『中国妇女报』2013年10月31日。
(12)全国妇联十届六次执委会议召开 沈跃跃当选全国妇联主席」『中国妇女报』2013年5月8日。
(13)中国妇女第十一次全国代表大会闭幕 刘延东代表国务院祝贺大会圆满成功 沈跃跃致闭幕词」『中国妇女报』2013年11月1日。
(14)沈跃跃「在实现中国梦的伟大进程中奋力开拓妇女发展更加广阔的前景——在中国妇女第十一次全国代表大会上的闭幕词(2013年10月31日)」『中国妇女报』2013年11月1日。
(15)习近平「坚持男女平等基本国策 发挥我国妇女伟大作用(1)(2)」」新华网2013年10月31日。この講話は、『中国婦女報』にも転載されています(「习近平在同全国妇联新一届领导班子集体谈话时强调 坚持男女平等基本国策 发挥我国妇女伟大作用」『中国妇女报』2013年11月1日)。
(16)高瑜「男儿习近平」Deutsche Welle2013年1月25日。
(17)王岐山「在中国特色社会主义伟大实践中撑起半边天——在中国妇女第十一次全国代表大会上的祝词(2013年10月28日)」『中国妇女报』2013年10月29日。
(18)以上の発信のうち、出典が付されていないものは、広州ニューメディア女性ネットワーク(李思磐ら)が11月4日に今回の議論についてまとめたもの(@新媒体女性(编辑)「女性视角看新闻:要“注重发挥”妇女的什么作用?」2013年11月4日、新媒体女性的微博【要“注重发挥”妇女的什么作用?】11月4日 17:23→「女性视角看新闻:要“注重发挥”妇女的什么作用?」社会性别与发展在中国2013年11月5日)からの孫引きです。おそらく広州ニューメディア女性ネットワークがまとめた発信の中には、微博ではなく、内部のメーリングリスト、SNSなどで発信されたものもあると思います。
(19)全国妇联发出通知 切实用习近平总书记重要讲话精神 武装头脑、指导实践、推动工作」」『中国妇女报』2013年11月5日。
(20)新媒体女性的微博【女性网友们如何看习近平对妇联的讲话】11月7日 20:50
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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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