2017-04

CAWネット・ジャパン解散、アジア女性労働者交流プログラム開催

今年6月、「CAWネット・ジャパン」から、「CAWネット・ジャパン解散についてのお知らせとお礼」という文書が届いた。

「CAW」とは、1981年に結成されたCommittee for Asian Women(アジア女性労働者委員会)の略称である。当時、韓国や台湾、東南アジア諸国のほとんどが独裁政権下にあり、労働運動は弾圧されていた。それらの国々の政権は、安い労働力を求める日本や欧米の資本を誘致するために外資を優遇する「自由貿易地域(輸出加工区)」を設けた。その中では、農村から出てきた多くの若い女性たちが「女工哀史」のような劣悪な労働条件で働かされていた。こうした状況を改善するためにCAWは結成された。当初はキリスト教団体中心だったが、のちに女性労働者自身の団体になったという。アジアに進出している多国籍企業の送り出し国である日本にも、CAWの活動に協力するために、1983年、塩沢美代子氏らが「アジア女子労働者交流センター」を設立した。

アジア女子労働者交流センターは、2000年に財政上の理由で事務所を閉じ(1)、規模を大幅に縮小しつつも、「CAWネット・ジャパン」としてアジアと日本の女性をつなぐ活動を続けてきた。しかし、今年度で活動の幕を閉じることになったのだという(2)

グローバリゼーションが女性(だけではないが)に与える影響がますます強まっている今日、CAWネット・ジャパンが解散せざるをえなくなったとは、たいへん残念だ。

「CAWネット・ジャパン解散についてのお知らせとお礼」の中は、以下のように書かれている。

[アジア女子労働者]交流センターはCAW(……)の創立メンバーの1つでもあり、アジアの仲間からは、何とか続けてほしいという強い要望も出されておりますが、若い協力者が少ない中でいつまでも活動を続けることは困難であり、団体としての区切りを付けておくべきと考えました。


「若い協力者が少ない」とあるが、社会運動の高齢化の影響がこうしたことにもあらわれているのだろうか?

私には詳しい事情はわからないが、もちろん他の要因も考えられる。

アジアにおけるグローバリゼーションと女性の問題に取り組む上で、今日、非常に大きな比重を占めるのは中国である。韓国や台湾、香港では、1980年代後半以降、労働者の運動が活発になり、賃金が次第に高くなったため、多国籍企業は、より安い労働力を求めて、工場を中国や東南アジアに工場を移していった。それによって、韓国や台湾、香港には失業や雇用の非正規化がもたらされるのだが、それと同時に、当時から始まった中国の改革開放政策もあって、中国の女性労働者が多国籍企業の搾取の対象になった。しかし、CAWは、中国の女性労働者と直接連帯することは難しく、香港のNGOを通じてつながるしかないというお話を以前うかがったことがある。こうした点にも運動の困難があるのかもしれない。

また、2000年にアジア女子労働者交流センターが事務所を閉じた際には、「会費やカンパの減少は、15年間に、アジアの民衆に連帯する多様な活動が生まれ、支援の志をもつ方々のお金が分散しているためでもあり、喜ぶべき現象の結果ともみられます」(3)とも述べられていた。今回もそうした面があるのかもしれない(というか、そういう面があってほしい)。

ニュースレター『アジアの仲間』・『CAWネットニュース』と中国・香港・台湾

「アジア女子労働者交流センター」のニュースレターであった『アジアの仲間』と「CAWネット・ジャパン」のニュースレターである『CAWネットニュース』は、韓国、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、インド、スリランカ、カンボジア、ネパール、シンガポールなど、さまざまなアジアの国々の女性労働者についての記事を掲載してきた(『アジアの仲間』については、記事の抜粋に解説を加えた、広木道子著、塩沢美代子監修『アジアに生きる女性たち 女性労働者との交流十五年』[ドメス出版 1999年]という本も出版されている)。

『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』は、台湾・香港・中国の女性労働者のニュースも数多く掲載している。この点については、私が作成した「『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』の中国関係記事一覧」をご覧いただきたいが、最近も、たとえば、「台湾で働くフィリピン人移住労働者 労働者の権利より仕事の機会?」CAWネットニュース第26号(2009年1月)とか、「香港・スーパーマーケットで販売促進の女性を組織化」第36号(2012年6月)といった記事を掲載している。中国本土についても、アジア労働資料センター(AMRC)発行のパンフレット「Voice from Below~China’s Accession to WTO and Chinese Workers」を翻訳した「中国:WTO加盟の影響は? 労働者の声を聞く」を連載している[(1) (2)(3)(4)(5)(6)(7)](2011年4月~2013年2月)。

『アジアの仲間』と『CAWネットニュース』は、日本語情報の少ないアジアの女性労働者の状態と運動についての貴重な情報発信だったと言える。

『アジアの仲間』は合本もあり、私も持っているが、現在は品切れのようだ。『アジアの仲間』や『CAWネットニュース』は、所蔵している図書館も多くない。可能な箇所については、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)でやっているように、PDF化して公開する方法もあるかもしれないと思う(WANのミニコミ電子図書館に収録する手もあろう)。もちろん『アジアの仲間』については、『アジアに生きる女性たち 女性労働者との交流十五年』の著作権の問題もあるし、そのほかプライバシーなどの面で細心の注意が必要であるが……。

「アジア女性労働者交流プログラム~韓国・香港・インド・日本~」

CAWネット・ジャパン最後の取り組みとして、「アジア女性労働者交流プログラム」を開催することになったという。そのチラシは、こちら(PDF)からダウンロードできるが、以下のような催しである。

この秋、韓国、香港、インドと日本の女性労働者が集まり交流プログラムを開催します。

アジア諸国の工業化の先駆けとなった韓国、香港では、工場女性労働者がその最先端で働き、経済発展に大きく貢献してきました。

今、そうした女性たちの多くは非正規雇用化が進むサービス産業で、低賃金と雇用不安という問題を抱えて働いています。今後の成長が期待されているインドでは、その大半がインフォーマルな仕事についている反面、グローバル化の下での産業構造の変化により、特に若い労働者の働き方に変化が起きています。

日本では、労働規制緩和が急速に進む中で、女性たちの雇用はますます不安定なものになり貧困が広がっています。アジアの女性たちと共通の問題を話し合い、経験交流を深め、困難な中でこれまで築き上げてきた運動を未来につなげていきたいと、国内の女性労働者グループが集まり、実行委員会を作ってプログラムに取り組んでいます。

プログラムのテーマ
 アジアの女性労働 現状と課題~今をつなぐ、未来につなげる~


具体的な話し合いのテーマ
 1) 女性非正規雇用の実態と 組織化の実践
 2) 若い女性の雇用問題と運動

10月27日(日)オープン・ミーティング
時間:13:30~17:00
場所:明治大学研究棟2F第9会議室
内容:4か国の参加者から、3分間ビデオの上映と各国の報告、意見交換など
資料代:500円 どなたでも参加できます


主催:アジア女性労働者交流プログラム実行委員会
 参加団体)アジア女性資料センター、均等待遇アクション21事務局、下町ユニオン、女性ユニオン東京、全労協女性委員会、働く女性の全国センター(ACW2)、プレカリアートユニオン、Labor Now、CAWネット・ジャパン

共催:明治大学労働教育メディア研究センター

事務局
〒359-1151所沢市若狭3-2555-15
CAWネット・ジャパン気付
Eメール awwc@japan.email.ne.jp

開催成功のためにカンパをお願いします!
*郵便口座番号 00100-9-186394
 加入者名 CAWネット・ジャパン
*1口1,000円 できれば2口以上お願いします。
*簡単な報告を「CAWネットニュース」No.40として年内に発行します。ご希望の方は払込用紙にその旨ご記入下さい。


「女性ユニオン東京」や「おんな労働組合(関西)」や「女性ユニオン東京」もCAWのメンバーなので、CAWネット・ジャパンの解散によって、日本がCAWと切れてしまうわけではないと思う。今回のシンポジウムを成功させて、これまでCAWネット・ジャパンが果たしてきた役割を継承する展望が開かれればいいと思う。

今回のシンポジウムに対しては、もちろん私もカンパした。催し自体にも行きたいと思うのだが……。

(1)その理由としては、「発足当時はアジア第3世界に関する活動ということで、WCC(世界キリスト教協議会)、CCA(アジアキリスト教協議会)、アメリカのキリスト教団体から、年間予算の半分近くの活動資金の援助がありましたが、円高により激減し、数年前からはすべて打ち切りとなりました。国内のカンパ・会費も大口だった方は退職されたり、亡くなったりで減少しております」「お知らせとお願い」(『アジアの仲間』第79号[1999.4]p.11)ということが述べられていた。
(2)予算規模を見てみると、「アジア女子労働者交流センター」の予算は、1985年度以降ずっと、おおよそ年間900万~1000万円程度だったのが、「CAWネット・ジャパン」は、2000年代半ばで150万円程度、2010年以降は90~100万円程度だった(『アジアの仲間』『CAWネットニュース』の各号より)。
(3)『アジアの仲間』第79号(1999.4)p.11
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