2017-05

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農村に残された「留守女性」(2)

三、「農業の女性化」「留守女性」とジェンダー

 前回の(1)の続きです。
 「留守女性」という現象は昨日今日に始まったことではなく、1990年代から「農業の女性化」「男工女耕」という形では、中国で女性問題研究者たちに注目されてきました。
 たとえば、金一虹さんはすでに1990年に、既婚女性は家事育児の負担があるために農村を離れられないので、農業労働力の女性化が進んでいることを指摘しています。また金さんは、農村の労働力は「社会の工業労働力全体の貯水池」だが、農村の女性は「貯水池の中の貯水池」、すなわち「二級の貯水池」であるとも言っています(1)
 また、農村女性が「農業・副業生産のあまりに重い負担を一人で担い、くわえて多くて重い家事労働と子どもの教育など‥‥が女性の身体の健康に影響を与える」ことも、つとに気付かれていました(2)

 ただし、「留守女性」という言葉自体がよく聞かれるようになるのは割合最近のことのように思います。このことは出稼ぎの広がりを意味しているのかもしれません。

 いずれにしろ、こうした「農業の女性化」「留守女性」という現象には、ジェンダーの視点から見て以下のような問題があると指摘されています。

 第一の問題は、女性が農業にしかつけないことは、男女の収入の格差を拡大させるということです。
 高小賢さんはすでに1993年に「農業の女性化は女性の地位の向上に明らかに不利である。それは、女性の家庭の収入と社会的総生産額における女性労働の比重を相対的に下降させる」と述べています。なぜなら、「社会の総生産額に占める農業生産額の相対的比重は低下している」からです(3)
 2000年におこなわれた第2回中国女性の社会的地位調査では、農村女性の収入は男性の59.6%にとどまりました。10年前と比べて19.4%も格差が拡大しました。この調査をおこなったグループも、「農業労働の女性化という趨勢が、農村の女性の収入が男性より少ない主な原因である」と指摘しています(4)

 第二の問題は、「農村の女性が農業労働の主要な参与者であることは、けっして彼女たちに、所有者と管理者の身分を賦与しない」ことです(5)
 所有という面では、「責任田は、観念上・習慣法上は夫のものである」ということがあります(6)
 また、管理という面では、「現段階の農村労動力の非農産業への転移は往往にして兼業性を帯びており、転移した男性労動力が依然として家庭の農作業の管理者であるほか、責任田に何をどれほど植えるのか、売りに出すのかどうかなどを決定する」という指摘があります(7)
 また、「農業労働に新たな性別分業のモデルが出現している」ことも指摘されています。すなわち「農業労働を技術的構成の高い労働と非技術的な労働に分けると、前者の機械耕作・電気潅漑・植物保護などに従事しているのは男性であり、後者の日常的な耕作地の管理は多く女性が引き受けている」というのです(8)

 実際、家庭の農業生産を主に妻がになっている場合でも、無錫県(錫山市)の堰橋鎮の姑亭廟における調査で、農民女性に対して「あなたの夫が農業以外の仕事に従事し、あなたが家庭の農業生産を主に引き受けたとき、あなたの家の中での地位にどんな変化が発生しましたか?」と質問すると、複数回答可の質問であるにもかかわらず、「私が家の中で話す分量が増した」という回答は8.06%、「私が以前より多く決定をできるようになった」は11.37%、「私が家族の支出を決定する権力が増した」は3.79%、「夫が以前より私の面倒を見るようになった」は4.74%、「夫が以前より家事をするようになった」は6.16%にとどまっており、68.57%の人は「基本的に変化がなかった」と答えています(9)

 もっとも、責任田の管理や農業労働における性別分業という点は、夫が農村から離れた土地に出稼ぎに行くと、さすがに様相が変わってくるようです。つまり、女性が農業労働の主力になることによって、「自主的意識」や「独立した生存能力」「独立した人格」が形成される面があるとも言われます(10)
 ただしその分、次の問題、すなわち前回から述べてきた点──
 第三の問題として、女性の二重負担、三重負担が深刻になるようです。
 この点も、もちろん女性の発展・発達にマイナスです。前回述べたように、性犯罪の問題もあります。
 
 結局、大きな目で見ると、夫が出稼ぎに行ってしまう場合を含めて、農業の女性化は「『男は外をつかさどり、女は内をつかさどる』という考えの、現在の社会における表現形態であり、それは、相変わらず『女は家の中でじっとし,男は世界に向かって歩む』ということを体現している」と言わざるをえないようです(10)

(1)金一虹「経済改革中的農村婦女現状与出路」李小江・譚深主編『中国婦女分層研究』(河南人民出版社 1990年)33-40頁。
(2)任青雲・董琳「農民身份与性別角色──中原農村“男工女耕”現象考察」李小江主編『平等与発展』(生活・読書・新知三聯書店 1997年)184-185頁。
(3)高小賢「経済改革与農村婦女」『中国婦女与発展──地位 健康 就業』(河南人民出版社 1993年)116-117頁。
(4)第二期中国婦女社会地位調査課題組「第二期中国婦女社会地位抽様調査主要数据報告」『婦女研究論叢』2001年第5期。
(5)佟新・尤彦「反思与重構──対中国労動性別分工研究的回顧」『複印報刊資料 婦女研究』2002年第6期(原載は『浙江学刊』2002年4期)40頁。
(6)同上。
(7)高小賢、前掲論文
(8)金一虹「農村婦女発展的資源約束与支持」『複印報刊資料 婦女研究』2001年第1期(原載は『浙江学刊』2000年6期)29頁。
(9)笑冬『站在国家与男人之間──中国農村工業化的性別推動力』(中国物資出版社 2002年)95-98頁。
(10)任青雲・董琳、前掲論文、185頁。
その他、最近発表された孫瓊如「農村留守妻子家庭地位的性別考察」(『中華女子学院山東分院学報』2006年2期)が、以上のような問題をきれいにまとめているように思います(ただし、この論文は典拠がしっかり書かれていない)。
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