2017-04

DV被害者の夫殺しに対する死刑に反対する中国国内の運動

長い間夫からひどい暴力を振るわれていた四川省の資陽市安岳県の李彦さんは、ある日、夫に殴られたり蹴られたりしたとき、夫を銃身で殴って殺してしまい、その結果、死刑の判決を受けました。最近、最高人民法院が李彦に対する死刑を許可したため(中国では、死刑に関しては、最高人民法院の再審査・許可が必要)、いつでも李さんを処刑できるようになりました。

この件について、現在、アムネスティ・インターナショナルが李彦さんの死刑執行を停止するように中国政府に訴える署名を集めています(「中国:死刑の危機にある、DV被害者の女性を救え」アムネスティ日本)。ぜひご協力ください。

今回は、主にこの件に関する中国国内の動きをご紹介します。

[目次]
1.事件の経緯
2.近年、中国でもDV被害者の夫殺しの刑は軽くする傾向はあるが、李彦はDV被害者であることが認定されなかった
3.現地の住民348人が請願書
4.最高人民法院に対するNGOの働きかけ
5.全国の弁護士ら136人(のち数百人)が緊急の呼びかけの手紙
6.フェミニストらが、200余筆の署名を四川省高級人民法院に届ける
7.八都市の裁判所前で若い女性が白い布で縛られてもがくパフォーマンスアート
8.国外のメディアも注目

1.事件の経緯

李彦さんは、1972年生まれの42歳です。2009年に譚勇さんと結婚しましたが(以下、敬称略)、譚勇はしょっちゅう李彦を殴ったり蹴ったりし、李彦が他の人とふつうに交流することも許しませんでした。李彦をベランダに追い出して、眠らせなかったこともあります。ある日、2人が喧嘩をしたときに、譚勇は、斧で李彦の左手の指を叩き切ったため、李彦の1本の指の半分は失われてしまいました。

2010年11月3日、李彦が台所で食器を洗っていた時、譚勇は酒を飲んで、その近くで空気銃で落花生を撃って遊んでいたので、李彦が危ないから止めるように言ったことから喧嘩になり、譚勇は、李彦の尻を空気銃で撃とうともしました。譚勇が李彦を足で蹴ったとき、李彦は、譚勇を空気銃の銃身で殴って、譚勇を死なせてしましました。

李彦が夫を殺してしまう以前、彼女は、病院に行って、「左足・胸部の多くの箇所に傷がある」という診断書をもらったこともありました。李彦は、派出所や婦女連合会(婦連)に助けを求めました。しかし、派出所は「婦連に言いなさい」「もしどうしても一緒に生活できないなら、裁判所に離婚裁判を起こしなさい」と言うだけでした。婦連は、「地域の幹部か親戚友人に調停してもらいなさい」と言うだけでした。

李彦は、譚勇の死体を包丁で解体し、頭部は高圧鍋で煮て、叩き切り、袋に詰めて捨てていきました。けれど、譚勇が死んだ翌日の11月4日には、李彦は電話で友人に、夫を殺したことを告げて、友人が「私が警察に届ける」と言うと、李彦は「行ってくれ」と言っていますから、ずっと夫殺しを隠そうとしたわけではありません。

2011年、資陽市中級人民法院は、李彦に死刑の判決を下しました。2012年、四川省高級人民法院も、李彦の控訴を棄却しました(1)

2.近年、中国でもDV被害者の夫殺しの刑は軽くする傾向はあるが、李彦はDV被害者であることが認定されなかった

中国でも、2000年ごろから、DV被害者による夫殺しについて、刑を軽くする試みが女性弁護士などによって始まりました(2)。それでも、2005年以前は、DV被害者による夫殺しも、「故意殺人罪」「故意傷害致死罪」として一律に裁かれて、刑期もほとんど15年以上でした。しかし、2005年に長沙で起きた事件が、一審では懲役12年だったのが、二審で懲役3年・執行猶予3年になったことをきっかけに、刑を軽くする動きが強まったようです(3)。NGOの「DV反対ネットワーク」が、2009年以後、公に報道されたDV被害者の夫殺し48件について調べたところ、処罰はまだ重すぎるけれども、軽い刑や執行猶予になるケースも増え、死刑になったのは1件だけだったそうです。

しかし、李彦の裁判では、以下のような理由で、李彦がDVの被害を受けていたこと自体が認められませんでした。
・李彦の診断書や写真、訴えの記録は、彼女が傷を負ったことしか証明していない(譚勇がやったという証明がない)。
・派出所・婦連には、李彦に応対した記録はあるが、調停はしておらず、譚勇の側の証明がない。

また、李彦が譚勇の死体を解体した点を、「手段が残忍」だとして、死刑の理由にしました。

しかし、上のような理由は、後でも述べるように、いずれも批判されています。たとえば、派出所や婦連の問題について言えば、李彦の弟の李徳准も、派出所や婦連などが、単に李彦の話を聞くだけで、李彦を助けなかった(=譚勇を呼び出して問い質すこともしなかったので、譚勇の側については記録はないのは当然)という不作為こそが、悲劇を引き起こした原因であると指摘しています(4)

李彦の死刑判決に対しては、中国国内でも減刑を求める運動が幾つもおこなわれています。

3.現地の住民348人が請願書

まず、事件が発生した後、四川テレビ局が李彦に取材した番組を放映したところ、その番組を見た現地の348名の一般住民(彼らは譚勇が李彦に暴力をふるっていたことをよく知っていた)が、李彦の処罰をできるだけ軽くするようお願いする請願書への署名おこない、それを資陽市中級人民法院に提出しています(5)

4.最高人民法院に対するNGOの働きかけ

最高人民法院が死刑の再審査をした段階では、NGOの北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究とサービスセンター)とDV反対ネットワークとは、最高人民法院に対して、李彦を死刑に処すことに反対する法律的な論証を提出しました。この2つのNGOの働きかけによって、全国婦連権益部や四川省婦連、何人かの全人代の代表や最高人民法院特約監督員も、最高人民法院に働きかけをしたようです。

死刑判決の15%は最高人民法院によって否決されるそうですが(2008年のある報道)、李彦の死刑判決は、許可されてしまいました(6)

5.全国の弁護士ら136人(のち数百人)が緊急の呼びかけの手紙

最高人民法院が李彦に対する死刑を許可すると、まず、2013年1月25日に全国各地の136人の弁護士・学者・NGO活動家などが、緊急の呼びかけの手紙を公表しました(7)。以下に、見出しと一部の内容だけをご紹介します。

四川の女性がDVに反抗したために死刑に直面している 各界の人々が緊急に死刑の執行をストップするように訴える

2013年1月25日、北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学法学院女性法律研究とサービスセンター)主任の郭建梅弁護士、艾暁明教授、全国人民大会代表・遅夙生弁護士、北京興善研究所・滕彪博士、郝建教授、張賛寧教授など全国各地の数百名の弁護士・学者・NGO活動家・社会各界の人々が、共同で連署した訴えの手紙を公開する:李彦がDVに反抗して人を殺した事件について、最高人民法院に死刑の執行をストップするように訴える。

事件のリプレイ:長期にわたってDVの被害に遭った妻が怒って夫を殺した

(略)

一般庶民が情に訴えた:340名の現地の一般庶民が李彦のために心から人情に訴えた

(上記のように、現地の住民348人が請願書を出したことが述べてあります)

弁護士の見解:死者に誤ちがあるので、李彦は死刑にすべきではない

李彦の死刑の再審理の段階の弁護士で、著名な女性権益保護弁護士で、北京千千弁護士事務所主任の郭建梅弁護士は、死者が長い間李彦に対して暴力を振るってきたので、李彦は長い間屈辱に耐え、負担を負ってきたために、「バタード・ウーマン・シンドローム」になっていたと考えている。李彦は、またも暴力を振るわれたとき、一時の怒りの中で、譚勇を殴って死なせたのであり、譚勇の死亡については、譚勇本人に明らかに過ちがあった。一審・二審の裁判所は、譚勇の李彦に対するDVについて、証拠不十分という理由で完全に否定したので、この事件の判決を不公正なものになった。

ずっと中国の死刑問題に関心を持って研究してきた北京興善研究所所長の滕彪は、以下のように考えている:この事件の一審でも、二審でも、譚勇が李彦に、ひどいDVをおこなってきたことを証明する大量の証拠が提示された。すなわち、婦連への訴えの記録、李彦が暴力を振るわれた後の警察への通報の記録、隣近所の人たちの証言といった、さまざまな証拠であり、これらの証拠は、完全に証拠として繋がっており、譚勇が李彦にひどい暴力をふるっていたと完全に認定できる。(……)李彦の行為について、もし原因や動機を問わず、被告人に有利な証拠と事実を考慮せず、死体を解体したという情状だけで量刑を考えるならば、刑事訴訟法の関連規定と「家庭紛争と被害者に明らかに過ちがあった場合は、一般に死刑にしない」という刑事政策に反しているのみならず、わが国の「死刑は少なく慎重にする」という原則にも反しており、さらに、国際条約の「まだ死刑を廃止していない国では、死刑判決は、最も重大な犯罪行為のみに対する懲罰にしなければならない」という規定にも反している。

各界は呼びかける:厳格に譚勇のDVの歴史を調べて明らかにし、量刑の上で十分考慮しなければならず、司法は生命権を尊重しなければならない

(……)これ[今回の事件]は、社会と法律に、弱者に対するDVについて有効な救済の手段が欠けていることの悲劇であり、司法が、法律の精神と公民の生命権を尊重していないことが引き起こした悲劇である。(……)

私たちは、連名で、最高人民法院は死刑執行をストップして、李彦の死刑判決を許可せずに、差し戻し審をおこなうに裁定し、李彦が長い間暴力を振るわれたことによって、心身と精神が歪められた事実を調べて明らかにするように訴える。この事件の処理が、真相や法律の精神、生命権の尊重を真に体現することを希望する。


この書簡に署名した人の中には、冒頭で名前を挙げた人々のほかに、弁護士としては、呂孝権、黄溢智、NGO活動家としては、陸軍、牛玉亮、郭瑞花、武嶸嶸といった人の名前が見えますし、女性人権活動家の王荔蕻の名前もあります。

6.フェミニストらが、200余筆の署名を四川省高級人民法院に届ける

1月28日には、肖美麗さんと清風さん(ハンドルネーム)が、以下のようなフェミニズム的内容の、200筆余りの署名を、二審の裁判所である四川省高級法院に届けました(8)。なぜなら、文中にあるように、最高人民法院が死刑を許可した後であっても、原審の裁判所は、法律的に死刑をストップできる可能性があるからです。

暴力を振るわれた女性・李彦は死刑にしてはならない 法律の尊厳と公正さを示すようにお願いする――女性の権利に関心を持つ者たちからの訴え

私たちは女性の権利に関心を持つ公民である。李彦は、結婚した後ずっと続き、だんだん激しくなったDVに耐えきれず、あちこちに助けを求めても効果がなかったので、最終的には暴力によって暴力を制して、人を殺して死体を解体して死刑になった。この事件とその判決は、最近国内外の大きな関心を集めている。

「刑事訴訟法」第251条およびその第1款によると、下級人民法院が最高人民法院の死刑執行命令を受け取った後、執行前に判決に誤りがあることを発見したときは、執行を停止し、ただちに最高人民法院に報告して、最高人民法院が裁定を下さなければならない。

ここに私たちは、四川省人民法院が死刑の執行を停止して(……)法律の適用の誤りを正し(……)この事件を私たちの社会の法治建設と女性の権利保障の道の一里塚にするようお願いする。

判決と証拠の研究、および女性の権益団体と専門家の視点にもとづいて、私たちは、以下のように考える。

一、被告人の李彦がDVの恐怖に耐えきれず、夫を死に至らしめて、死体を解体したという情状は悪い。けれども、「被害者に重大な誤りがあったときは、処罰をできるだけ軽くする」という法定の斟酌すべき情状があるので、直ちに執行する死刑という極刑を適用すべきではない

この事件の被告人の李彦には、被害者を殺害しようという故意はなく、何らの準備もなかった。また、被害者は人命を奪う武器を持っており、暴力行為と暴力的脅迫をしているという状況の下で、被告人は恐怖と自己保護のために、被害者を傷つけたのであり、事前の計画はなく、被害者の生命を奪う動機もなかった。もし彼女が被害者を殺害しようとすれば、双方の力の差がかけ離れている状況の下では、最も容易で最も簡単な方法である「直接銃撃して被害者を撃ち殺す」という方法を取るはずである。

(中略)

判決はDVの存在を認定していない。これは、事実認定が誤っている。というのは、DVの認定は民事訴訟の「優勢な証拠」の規則を適用しなければならず、合理的な証拠のつながりが形成されてさえいれば、DVを認定しなければならないからである。しかるに、一審と二審の裁判所は、刑事訴訟の証拠規則を用いて、DVの存在を厳格に判断しており、警察と婦連のDV処理の記録の中に被害者がDVをしたことを認めた記録がなかったという理由で、DVの存在を認めなかった。実際は、この事件では、多くの証人が、被害者が被告人に対して暴力を振るっている過程と暴力を振るわれた後の被告人の状況を直接目撃しており、これらは直接証拠である。また、最高人民法院応用法学研究所が発表した「家庭内暴力に関わる婚姻事件の審理指南」を参照すると、DVの認定は、立証責任の面では、「一定の条件の下で立証責任を転移」させなければならない。これは普通の民事案件の証拠規則より緩いのであって、被害者の証言の効力は加害者のそれよりも高いのである。

二、この事件の被告人は、長い間DVの被害を受けており、心理的に、きわめて恐れおじけており、脆弱な状態であり、犯罪時は「バタード・ウーマン・シンドローム」の特徴に合致している

(中略)

表面的には、被告人が夫を殺した後に、死体を解体し、死体を煮た行為は非常に悪辣で、社会的影響も悪いように見える。けれども、いったん被告人が暴力を振るわれ、助けを求めても無駄だったという悲惨な運命を理解し、バタード・ウーマン・シンドロームという特殊な心理的メカニズムを理解するならば、被告人が死体を解体して煮た行為は、長期にわたって振るわれてきた暴力がもたらした苦痛を晴らしたものだと判断できる。なぜなら、相手が反抗する能力と可能性がなくなった状況の下でだけ、長い間抑圧されてきた苦痛と憤怒は、被告人が死亡した一瞬の間に解き放たれるのであり、これが、その後の理性を失った行為なのである。これは、私たちの主管部門と公衆を教育し、DVを認識させ、DVを重視させ、機を逸せずに関与し、有効な救助をすることによって、この事件のような悪性の犯罪を防ぐということの、格好の反面教材にもなる。

(中略)

三、DVの被害に遭ってきた女性を極刑に処しても、このような犯罪に対して威嚇・教育する効果は僅かであり、かえってマイナスの社会的効果を引き起こしやすい

国連が1988年と1996年におこなった2回の死刑と殺人罪との関係についての調査では、死刑が終身刑よりも大きな威嚇力を持っていることを支持する証拠はないという結論が出ている。また、死刑の犯罪に対する威嚇力が僅かだからこそ、国際的には死刑廃止と軽罪化の趨勢が出現しているのである。

(中略)多くの、どうしようもなくて夫を殺した被害女性は、暴力の中で生きるよりも死んだ方がましだと考えている。暴力をふるう夫と離婚するために、北京の女性がわざとタクシー強盗をして監獄に入ることによって暴力的な婚姻から逃れようとしたという事例さえあった。(中略)

中華女子学院の教師の邢紅枚の研究によると、四川の某女子監獄の故意殺人と故意傷害犯の中で、夫を殺したり傷つけたりした者は計233人だったが、そのうち、DVが原因で夫を殺したり傷つけたりした者は計128人であり、54.9%を占めている。(……)邢紅枚が、虐待を受けて夫を殺した121名の受刑者の女性を調査したところ、もとの判決が死刑執行猶予や無期だった者が71人で、58.7%を占めており、10年以上の有期懲役が28人で、23.1%、5―10年以下が7人で、5.8%、5年以下が1人で、0.8%、14人が不詳であった。すなわち、80%以上が10年以上の刑罰に処せられており、故意殺人罪・故意傷害罪という最も重刑の範囲内であった。

その一方、2005年以来、内蒙古・湖南・北京・雲南などの省で、虐待された女性の夫殺し事件に対して、相次いで、「懲役3年、執行猶予3年」、「懲役3年、執行猶予4年」「懲役3年、執行猶予5年」といった判決が多く下されている。(中略)

この事件の被害者の譚勇は自分の暴力的行為によってすでに生命を失った。私たちは、李彦の生命もが死刑によって終わることのないように、わが国の法律の厳粛さと公正さに期待している。私たちは、法によって、李彦の刑罰をできるだけ軽くすることによって、李彦が公正さを獲得できるだけでなく、DVによって虐待された女性が「暴力によって暴力を制する」事件をわが国が公正に審理する一里塚的な事例になることを信じている。

(中略)暴力を振るわれた女性である李彦の処罰は、死刑ではなく、できるだけ軽くするように情状を考慮して、法律の公正な正義の光を、李彦と多くの女性の生活を照らすようにお願いする。

2013年1月28日


こちらの署名者の中には、フェミニズムのNGOやネットワークで活躍してきた馮媛、呂頻、熊婧、李軍といった人のお名前が見えます(9)

7.八都市の裁判所前で若い女性が白い布で縛られてもがくパフォーマンスアート(10)

2月3日には、8都市(北京・上海・広州・武漢・西安・成都・南寧・杭州など)の人民法院(裁判所)の前で、若い女性がいっせいに、「私は次の李彦になりたくない」というスローガンを一字ずつ書いた紙(「我」「不」「要」「成」「为」「下」「一」「个」「李」「彦」)を並べた傍らで、白い布で何重にも包まれて、蛹のようになって、力一杯もがいているのに逃れられない様子を示すパフォーマンスアートをおこないました。これは、DV被害者を象徴するパフォーマンスアートでした(写真)。

武漢でこのパフォーマンスアートをした鄧小南は、「李彦の長い間DVに遭っていたのに、警察も婦連も取り合わず、彼女の夫を出頭させて教育することさえしなかった。彼女は長い間夫に殴られ罵られており、夫が自分に空気銃を向けたとき、きっとひどくビックリして、夫を殺してしまったのだろう。私は彼女が罪を犯していないとは思わないが、もし彼女が生活で暴力を振るわれていた環境を考慮するならば、死刑は重すぎる。李彦の境遇は、彼女一人の境遇ではなく、暴力を振るわれている多くの女性の境遇でもある」と語りました。広州でこのパフォーマンスアートをした花木(仮名)は、「李彦が死刑判決を受けたのは、すべてのDV被害者の悲劇であり、また、関係する法律がない中国全体の悲劇である」と語りました。

このパフォーマンスアートは、『都市女報』が報道しましたが、その記事の中で、呂頻(女性メディアウォッチネットワーク)は「DVに対する放任とDV被害者の夫殺しに対する厳罰は、社会の二重の暴力だ」と語っています。

8.国外のメディアも注目

以上の署名やパフォーマンスアートなどは、彼女たち自身のメディアには詳しく掲載されていますが、中国国内のマスコミでは、それほど多く報道されていないように思います(11)(従来は、政府当局を批判する行動でもあっても、かなり多く報道されているのに、今回の報道がやや少ないのはなぜかはわかりません)。

この件に関しては、海外のマスコミの注目が高いように思います。1月28日には、イギリスのガーディアンが報道し(Chinese officials urged not to execute domestic violence victim)、1月29日には、同じイギリスのデイリーメールが報道し(Chinese woman faces execution for killing abusive husband who had stubbed out cigarettes on her face and cut off part of her hand)、1月30日には、ニューヨークタイムスが報道しました(Chinese Courts Turn a Blind Eye to Abuse)。ニューヨークタイムスの記事は、中国国内でも紹介されました(「美报:遭家暴妇女杀夫被判死刑引争议」新華網2013年1月31日)。国内の関係者が積極的に国外にも発信をしたのかもしれませんし、アムネスティの運動のせいかもしれませんし、不当さがわかりやすい事件だからかもしれません。

しかし、いずれにせよ、中国国内でも、ちゃんと運動はおこなわれているし、そうした運動は、これまでもDV被害者の夫殺しに対する刑を軽くする上で一定の成果を上げてきているということは、以上で述べたとおりです。

(1)以上は、「李彦杀夫案始末――紧急拯救受暴妇女免死」『女声』132期[word](2013.1.28)。
(2)遠山日出也「中国におけるドメスティック・バイオレンスに対する取り組み」『中国21』第27号(2007年)237頁。
(3)刀下留人 李彦因家暴杀夫罪不至死-网易访谈实录」網易女人2013年2月5日。
(4)以上は、(1)および「不要为暴力付生命的代价――挽救李彦紧急行动播报」『女声』133期[word] (2013.2.4)。
(5)八城市女生行为艺术呼吁 我不要成为下一个李彦」社会性别与发展在中国2013年2月4日(来源:新浪微博[作者:@大兔纸啦啦啦])。
(6)「李彦杀夫案始末――紧急拯救受暴妇女免死」『女声』132期[word](2013.1.28)。
(7)紧急呼吁枪下留人 反对对受暴杀夫妇女执行死刑」社会性别与发展在中国2013年1月26日(来源:女行邮件组)。
(8)枪下留人!志愿者赴四川高法请愿 反对对受暴杀夫妇女执行死刑」社会性别与发展在中国2013年1月30日(来源:新浪微博[作者:@女权之声])。また、北京衆沢女性法律相談サービスセンターは、すでに1月24日に、これと比較的似た書簡を最高人民法院に出しています(「关于建议最高人民法院对李彦以暴制暴杀夫案不予核准死刑的公函」北京众泽妇女法律中心ブログ2013年1月24日)。
(9)紧急征集签名,仅今天一天:反对对受暴反抗妇女执行死刑」Google Groups広州新媒体女性網絡2013年1月28日。
(10)八城市女生行为艺术呼吁 我不要成为下一个李彦」社会性别与发展在中国2013年2月4日(来源:新浪微博[作者:@大兔纸啦啦啦])、「八城市女生法院门前“快闪”上演行为艺术抗议家暴 “李彦因家暴犯罪不应判死”」『都市女報』2013年2月4日。
(11)弁護士らの声明を財新網が掲載したり(「因家暴杀夫被核准死刑 学界联名呼吁“刀下留人”」財新網2013年1月25日)、死刑廃止の立場に立つ弁護士が執筆した判決批判が『東方早報』に掲載されたり(张培鸿「从一起杀夫案检讨死刑」『東方早報』2013年1月29日)、(10)の『都市女報』の記事がパフォーマンスアートを報道したり、それから、「刀下留人 李彦因家暴杀夫罪不至死-网易访谈实录」(網易女人2013年2月5日)がDV問題の専門家(馮媛、呂孝権、呂頻)の話を非常に詳しく伝えている、というあたりが主な報道でしょうか。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/423-0b9cff71
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード