2017-03

DV防止法の制定プロセスと内容に民間の関与など求める1万人署名運動

いま中国でもDV防止法の制定が日程に上っていますが、それに対して要請をおこなう署名運動がこの11月5日から始まっています。

全国人民代表大会への連名の手紙に1万人の署名を集める運動

この署名は、簡単に言えば、立法のプロセスと内容に民間の参与を求め、実効性のある立法にするよう要請する署名です。従来の運動に比べて、立法への事前の介入を積極的に求めていること、かなり多数の署名を集めることを志していることに特徴があると思います。

この署名運動は、具体的には、以下に示す「反家庭内暴力立法についての全国人民代表大会への連名の手紙」(1)に名を連ねてもらう形ですすめられています。

全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会:

私たちは家庭内暴力問題に関心を持っているネットユーザーのグループです。私たちは、メディアによって、反家庭内暴力立法がすでに今年の全国人民代表大会の立法活動の計画に入ったこと、また、早くも2011年2月から、法制工作委員会と全国婦連は、一連の立法調査・研究・論証活動をおこなってきたことを知っています。最近は、家庭内暴力事件が頻発して、社会の反家庭内暴力立法を求める声はしだいに高まっています。けれど、家庭内暴力に反対する立法については、長い間情報が伝えられていません。私たちが手紙を書いたのは、次のことを知りたいからです。「反家庭内暴力法」の立法の進みぐあいはどうなのでしょうか? この法律は具体的にどのように実施されるのでしょうか? その中には民間の監督のメカニズムはあるのでしょうか?

(中略)

現在、わが国の憲法・婚姻法・婦女権益保障法などの法律は、明確に家庭内暴力を禁止しています。全国28の省・市・自治区も、家庭内暴力を予防・制止する地方性法規または政策を制定しています。全国婦連・最高人民法院・検察院・公安部などの7つの部・委員会も、「家庭内暴力の予防と制止に関する若干の意見」を出しています。けれども、それらの家庭内暴力に関する規定は、さまざまな法律・法規の中にばらばらにあって、つながりに乏しく、内容も完全でないために、警告する働きがあるだけで、実際の効力は限られています。そのため、国家レベルの反家庭内暴力法を制定することが、家庭内暴力を予防・制止し、被害者の権利を守り、現行の法律の不十分点を解決するために、差し迫って必要になっているのです。

現在家庭内暴力事件は相変わらず頻発しており、立法のプロセスを速め、立法の透明度を増すことが緊急に必要になっています。私たちは、「反家庭内暴力法」の立法の進展を知りたいのです。

家庭内暴力に対する関与は、行政の関与、司法の関与、社会の関与が共同で構成するものでなければならず、その主体は広範で多元的で、相互につながり、補充しあう全体的な枠組みでなければなりません。民間、とくに女性の立法と執法に対する参与は非常に重要であり、有効な民間の監督メカニズム築くことを立法に組み入れることを考慮しなければなりません。それゆえ、私たちは、次のことを提案いたします。

 1、立法の過程において、広範に民間の意見を聴取し、民間の参与と監督を奨励すること。
 2、法律の中に、責任部門の問責のメカニズムを明記すること。
 3、法律の中に、国家は民間の家庭内暴力反対活動にリソースを与えて、サポートしなければならないことを明記すること。

(中略)

貴委員会の1日も早い回答をお待ちしています!

一万名の反家庭内立法に関心を持つ公民

2012/11/05


署名運動の趣旨説明――実効性ある法律にするためには、草案が発表されてからでは遅すぎる。1万集めるのは難しいが、大衆的な訴えであることを示すにはそれが必要

この署名運動の趣旨は上記の文でも簡単に触れられていますが、呂頻さんが、以下のように詳しく説明しています(2)

まず、【なぜ家庭内暴力防止法を督促しなければならないのか】という点に関しては、呂頻さんは、「今に至るまで立法の過程が不透明であり、私たちがどのような法律を手にすることができるのか、はっきりしない」こと、「いまなお立法者はこの法律についての幅広い相談と討論の窓口を開いていない」ことを挙げています。呂頻さんは、「これまでの教訓では、立法者が法律の草案を発表して公衆の討論に供する時には、おおよそのところは既に決まっていて、短いパブリックコメントの募集期間に強烈な提案が集まっても、必ずしも最後の成案を変えることはできない。また、私たちは、何度も、公示的な規定だけあって、実効性のある規定はない法律がたくさん出来て、権利の保障に対する承諾が骨抜きになったという情況を見てきた」と述べています。

だから、呂頻さんは、私たちは【情報を知り、参与し、監督】したい、知らされるのを待っているだけではだめで、【主体的に問う】ことをしなければならないのだ、と言っています。

【なぜ1万人の署名が必要なのか】という点に関しては、「中国は大きいので、1万人は多いとは言えない。もしこの規模に達しなければ、私たちは、訴えが無視されることを心配する。」「その一方、1万人はじゅうぶん多く、大衆的な声を形成したことになるので、重視に値する。だから、要するに、1万人が最低ラインであり、1万人なければ、家庭内暴力防止法に対する多くの人の期待に釣り合わない」と述べています。

【なぜあなたの助けが必要なのか】という点に関しては、「市民の力はまだ非常に発達していない」から「一万人の署名をする民間の活動は決して多くない」、「民間組織が懸命に努力して、一つの組織が数十名、百名のボランティアを集めるだけでも、少なくないと言えるのであって、1万人という動員目標は、きわめて大きな挑戦である」。だから「あなたにはもっと多くの人に働きかけてほしい」と述べています。

上半身裸の写真で訴え――女性の身体に対する支配などを問う

この署名運動のもう一つの特徴は、何人もの女性が、インターネットに上半身裸の写真を掲載して、署名を呼びかけていることです。彼女たちは、写真といっしょにさまざまなメッセージを寄せています(3)

上半身裸で訴えることの意味が直接書かれているメッセージは、以下のようなものでしょうか。

@Foxdian:男の裸の上半身はどこにでもあるのに、なぜ女の裸は人に見られたら恥ずかしがらなければならないのか? DVと裸体は無関係に見えるが、身体と権力とは密接な関係がある。女性の身体に対する汚名も暴力でないことがあろうか?――身体に罪はなく、暴力を恥ずべきだ![身体无罪,暴力可耻!]

麦子家:DVは恥ずべきであり、裸の胸に罪はない[家暴可耻,裸胸无罪]

肖美膩:平らな胸は光栄だ。DVは恥ずべきだ[平胸光荣,家暴可耻](と自分の胸に直接書いてある)。


肖美膩さんは、新聞の取材に答えて、「女性の身体は、長い間スティグマ化されてきており、また人に見られてはいけないもので、見ることは良くないことで、恥ずかしいことだとされてきた」、けれど、その一方で、女性の身体はポルノや車体広告などの商業広告では大手を振っていても「何とも思われない」と語っています(4)

香港のSouth China Morning Post(南華早報)も、Xiong Jing[=熊婧?]さん(24歳のジェンダー研究の学士号取得者)の発言として、「私は、人々にDVと裸体の関係について考えてほしい」「私は『身体は戦場だ』と言うことが好きだ。私は、この方法によって、私の女性に対する支持を示し、女性に対する暴力への関心を引きたい」というものを伝えています(5)

以下のような訴えもあります。

@白亦初:私の身体を愛している。身体を傷つけてはならない。

@pinerpiner[=呂頻]:どれだけの鮮血が流れれば、目覚めるのか?!(裸の上半身に鮮血[のような塗料]を流した写真を掲載して)


pinerpinerさんは、自らの微博では、「わき毛には愛がある。DVには罪がある[腋毛有爱 家暴有罪]」という文字を上半身に書いた写真も出しておられます(6)

トランスジェンダーやレズビアンが上半身裸になって訴えている写真もあります。

@灰烬ashWang:“暴力はなくさなければならず、性別は解放しなければならない”。今日はちょうどジェンダー暴力に反対する16日アクションの最初の日である。女性やトランスジェンダーたちは、ジェンダー暴力の被害者である。大部分のDVはジェンダーにもとづく暴力である。私は、ふだんは束胸(注:胸のふくらみを押さえるシャツ、ナベシャツ)を身につけているトランスジェンダーである。私はジェンダー平等を促進することによってこそ根本的にジェンダー暴力をなくすことができると考え、署名した。DV反対は私から始める。

@済南Les工作社公式微博:反DV立法を促進するために、済南Les工作社は署名に応ずる


肖美膩さんの「平らな胸は光栄だ。DVは恥ずべきだ[平胸光荣,家暴可耻]」という訴えに対しては、次のような議論がネットで出たことが報じられています。

1.DVは実際は平らな胸のロジックと一致しており、どちらも男性の女性の身体に対する支配権を示している。前者は赤裸々であり、後者は非常に隠蔽されており、また、女性を、暴力をふるう対象・客体から、身体が支配されることを内面化した「主体意識」にするプロセスを完成させている。女性の身体は戦場であり、身体の自主権はDV反対に体現されているだけでなく、平らな胸を自ら誇りにすることにも体現されている。

2.男性の暴力は文化的な構築であって、単純な物理的存在ではけっしてなく、女性が賦与された記号的な意味も、そのほかの物理的存在をはるかに超えている。二者は同一の男権の記号システムの統一されたロジックの中のコードである。しかし、肖美膩の裸体と平らな胸はこのロジックと矛盾しており、積み重ねた卵を崩れ落ちさせている。これは、一般的なフェミニズムアートと比べて、先走りすぎている。

フェミニストの中でも、裸の胸を出した写真については両論あるということのようです。

ただし、インターネット投票では、やはり否定的な意見が多いようで、上の2つの意見を掲載しているようなフェミニズム的な記事の中でのネット投票でも、12月7日現在の投票結果を見ると、「ただの炒作[私はこの言葉のニュアンスがよくわからないのですが、「大げさな宣伝」「売名」といった意味のようです]だ。抗議は他のやり方でやるべきだ」という回答が6割以上で、「勇敢な行為だ。型破りなことをやってこそ、注目を集めることができる」は3割弱です(7)。――といっても、3割近い肯定的意見があることにむしろ注目すべきかもしれませんが。

裸の写真は、最初は微博の管理者によって削除されたそうですが、のちに多くの女性が参加するようになると検閲はストップされたと呂頻さんは言っています。

また、全国人民代表大会への連名の手紙には、すでに5千人の署名が集まっているとのことです(8)

(1)「反家暴16日行动的号角已经吹响,就反家暴法立法致全国人大的联名信」社会性別与発展在中国サイト2012年11月7日=「就反家暴立法致全国人大的联名信」。
(2)呂頻「为什么要一万人?需要你的支持,一个都不能少」社会性別与発展在中国サイト2012年11月9日(来源:邮件组)。
(3)万人签名促反家暴法立裸胸行动专题报道」社会性別与発展在中国サイト2012年11月28日。当初はミニブログで発信されたもののようですが、写真とメッセージは、ここでまとめて見られます。以下、枠で囲ってある発言は、このサイトからのものです。
(4)裸体反家暴,征万人签名推动立法」南都網2012年12月3日(来源:南方都市報)。
(5)Mimi Lau “ Chinese women post nude photos online to fight domestic violence ” South China Morning Post2102.12.4→(抄訳)「中国女性网上发裸照反家暴」新华网2012年12月5日(来源: 新华国际)。
(6)腋毛有爱 家暴有罪」pinerpiner新浪微博11月16日。
(7)以上は、「女性裸体抗议家暴 "平胸光荣 家暴可耻"惹争议」凤凰网2012年11月29日(来源:凤凰时尚综合)。
(8)以上は、(5)に同じ。
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