2017-08

女性トイレの増設求める運動続く――「男子トレイ占拠」から8ヶ月

中華人民共和国建設部が2005年12月に施行した「都市公共トイレ設計基準(城市公共厕所设计标准)」では、トイレの男女の便器の比率を1:1に定めています。しかし、男と女とでは、トイレにかかる時間などが異なるのですから、これでは、女性用便器が不足してしまいます。

そうした状況に対して、今年2月19日、広州市で、李麦子さん・鄭楚然さんをはじめとした女子大学生が、同市の越秀公園近くの男性トイレを一時的に占拠し、行列を作って待っている女性に男性トイレを使用してもらうパフォーマンスアートをおこなって、女性トイレ不足の解決を訴えました。その後、全国各地の女子大学生たちが同様のアクションをおこない、人民代表大会や政治協商会議の議員に対しても働きかけました(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)。

8月 広州市で若い女性たちが、進まない女性トイレ増設に対してさまざまな抗議活動

けれども、広州市では、その後半年たっても、女性トイレの増設はすすんでいません。

そこで、8月20日、広州市都市管理委員会のオフィスビルの前で、李さんや鄭さんを含めた16人の若い女性が、ふたたび、この問題の解決を訴えるパフォーマンスアートをおこないました。今回は、彼女たちは、各自が作った発泡プラスチック製の便器を広場に置いて、「[女と男の]便器の比率は2対1、そうでなければ女子学生は待ちきれない!」という横断幕を掲げました。各自の便器には、「女性が自分で身につけている便器」と書いてあり、女性用便器が少ないから、女性は自分で便器を持って歩かないといけない、というアピールになっています。

16人の女性は「便器の比率は2対1、そうでなければ女子学生は待ちきれない!」というスローガンを叫んだり、「都市管理委員会への手紙」を読み上げたり、「いつになったら女性トイレの増築は実現するのか?」という意味を込めて、便器や手紙をクエスチョンマークの形に並べたりして、道行く人やメディアにアピールしました。

下がこのアクションのビデオです。

@新浪拍客 女孩背马桶摆阵广州城管委吐槽男女厕位比(2012-08-24)
http://video.sina.com.cn/v/b/84184596-1396400570.html

その後、このアクションの発起人である区佳陽さん・李麦子さん・鄭楚然さんがみんなを代表して、広州市の都市管理委員会の建物に入って、16通の「都市管理委員会への手紙」を届けました。

その手紙の中で、彼女たちは、2011年に広州市の都市管理委員会が「法律を制定することによって、公共の場の、新築・改築・増築する公共トイレは男女の便器の比率が1:1.5以上になるよう設計・建設・検査する」と決めたことには、いちおう賛同しています。「しかし、現在、関連する法規の制定がどの段階までいっているのか全くわかりません。現実に女性トイレの増築はまだ実施されていません」(李麦子さん)。ですから、彼女たちは、広州市の都市管理委員会に対して、できるだけ早く強制的な法律を制定するように訴えています。

彼女たちの訴えに対して、都市管理委員会は、陳情に責任を持つ鄧さんという人が応対し、(「男子トイレ占拠」アクションがおこなわれたすぐ後の)2月下旬に、都市管理委員会は、男女のトイレは、1:1.5の比率で新築・改築・増築するよう各区に通知を出したと答えました。さらに、彼女たちの手紙のうち4通の、差出人の姓名が書いてある手紙については、「これは陳情行為にあたるので、陳情の手続きにしたがって、60日以内に回答する」と述べました。

ただ、鄧さんは、その一方で、「立法で男女のトイレの建設の比率を規定するのは、プロセスがとても長くかかり、手続きを踏んでやらなければならない」とも言いました。

いずれにせよ、李麦子さんによると、彼女たちは、今後は「政府情報公開」の申請をして、都市管理委員会に法規の制定の状況について回答を求めていくということです(1)

8月?~ ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク、全国の公共トイレの調査研究も開始

「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(「性别平等倡导行动网络、Gender Equality Advocacy and Action Network)」>)」(本ブログの記事参照)は、7月におこなわれた夏合宿で、「就業の性差別唱導」計画ととともに、「男女便器比率唱導」計画について話し合っています(2)。「男女便器比率唱導」計画の一つが上記のアクションだったのですが、同ネットワークは、同時に、男女の便器の比率についての調査研究も開始したようです。

10月15日、同ネットワークのサイト「性別平等網(性别平等网)」に、「男子トイレ占拠から半年余りが経ちましたが、全国各地でトイレを待つ女性たちは、相変わらず苦痛にあえいでいます。北京・広州・深圳以外の地区は、まだトイレを改築する政策や法律を出していません。政策を変えさせ、女性のトイレ難の問題の解決を促進するために、私たちは、全国の公共トイレの比率の調査研究をおこないます。調査研究をする都市には、北京・天津・蘭州・西安・南京・杭州・武漢・済南・広州が含まれます」と述べている文が掲載されています(3)

上の文は、具体的には、杭州で調査研究をおこなうボランティアを募集している文なのですが、ボランティアたちの団結を固め、ジェンダー意識を向上させるために、読書会とサロンもおこなうとしています。

このプロジェクトの行動の期間は、第1期は、2012年10月21日~11月30日、第2期は、2012年12月1日~2013年1月1日とのことです(これは、杭州市についての話なので、他市では期間が異なるのかもしれません)。「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」の9月26日の「性差別撤廃討論群会」の記録には、「全国のその他の地方でトイレ報告をする必要があるか……武漢の夏合宿で始動、トイレ1周年のときに発表、李麦子と湯倩がアンケート調査を整理・修正」(4)(下線は遠山による)とありますので、今年いっぱいは調査をして、来年2月に調査報告を発表するのであろうと思います。

10月 北京市、男女の便器の比率の基準を、現行の1:1から1:2以上(1:1.5以上と報じているメディアもある)に変更することを表明

10月12日、北京市の市政市容管理委員会(北京市の衛生、環境インフラなどを管轄する)が『新京報』の記者に明らかにしたところによると、北京市では、来年から施行される新しい公共トイレ基準では、男女の便器の比率を、現行の1:1から1:2かそれ以上に変更することになりました(5)(ただし、1:1.5以上と報じているメディアもあります(6))。

この新しい基準が施行されると、新しく建設される公共トイレは、この基準に沿って建築されることになります。すでにある公共トイレについては、改築できる条件があるか否かによって、改築するかどうかを決めるということです。ただし、小売業やホテルなどには、この基準は強制はされません。

すでに、2010年~2011年に、福建省や広東省珠海市、広東省広州市などで、男女の便器の比率を1:1.5以上にする意見や条例が出されていますが(7)、もしも男女の便器の比率を1:2以上と規定するのだとしたら、北京市が全国で初めてになります。

いずれにせよ、この北京市の決定は反響を呼び、自分の市の女性トイレの情況、市の方針、女性の声などを報じた新聞も幾つかあります(8)

この北京市の決定に、今年の女子大学生らの運動の影響があったのかどうかははっきりしません。以前からの各地の意見や条例の延長線上のようにも見えます。しかし、以前からの変化についても、広東省珠海市の条例(2010年12月施行)の背景には多くの機構や専門家の努力があったと考えられているように(9)、単に上から降りてきたものだとは言えませんから、少なくとも幾分かは、今年メディアで大きく取り上げられた女子大学生らの運動の影響があったのではないでしょうか。

日本では、女性トイレ不足問題について、1980年代末に「女と男のトイレ研究会」が調査研究をおこなって、その女性差別性を明らかにしたり(島田裕巳「女のトイレはなぜ混むか」『私というメディア』[パーソナルメディア 1989年]に詳しい)、各地の議会で質問がおこなわれたりした結果、この問題は少しずつ改善されてきた面があります(本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」参照)。

女性トイレ不足問題は、日本でもそうした地道な努力よって一歩一歩改善されてきたような問題ですし、中国で女子大学生らの運動が即座に大きな成果を上げなくても、不思議はありません。

また、日本でも、現在、この問題はけっして解決していません。たとえば、今年鳴り物入りで開業した東京スカイツリーでさえ、「天望回廊にはトイレが少ない。とくに女性トイレでは、おばあちゃんたちが20人以上も並んでた」(10)というような情況です。

むしろ、この問題については、日本では、個々の場での動きや個別の調査はあるけれども、中国の女性たちのような、全国的で積極的・系統的な運動は(少なくとも今までは)起こすことができなかったように思います。この点は、むしろ、日本の私たちが、中国の女性から学ぶべき点のように思います。

中国の女性たちの運動は、私などにもそうしたことを考えさせますが、インドの女性たちも(インドでは女性トイレの少なさが非常に深刻な問題だそうです)、中国の女性の「男子トイレ占拠」アクションに刺激を受けたことが報じられています(11)。そうした意味で、中国の女子大学生の運動は、国境を越えたインパクトを持っていると思います。

(1)以上は、「 16女孩背马桶摆阵广州城管委 吐槽男女厕位比例」新浪広東2012年8月21日(来源:南方網)、「 16名女大学生半年前曾发起“占领男厕”,昨日行动“升级”“坐”马桶致信城管委」『羊城晩報』2012年8月21日。
(2)嵘嵘「“女性公民社会参与暨性别平等”夏令营 在北京成功举行 (附评估表) 」性别平等倡导计划2012年7月27日。
(3)全国公共厕所厕所比例调研——杭州站志愿者招募」性別平等網2012年10月15日。
(4)郭小花「“消除性别歧视讨论”会议记录(20120926)」性别平等倡导计划2012年9月26日。
(5)北京新建公厕男女厕位1∶2 明年起实施」人民網2012年10月13日(来源:新京報)。
(6)北京男女公厕配置比例明年将调整为2:3」新浪新聞2012年10月15日(来源:中国广播网)。
(7)以下のような意見や条例が出されています。
 ・2010年11月に福建省政府事務局が出した「都市の公衆トイレ建設に関する実施意見(福建省人民政府办公厅关于福建省城市公厕建设的实施意见)」は、新しく設置する公衆トイレの男女の便器の比率を1対1.5から1対2の比率にすることを規定した(二-(二)の箇所)。
 ・2010年12月 珠海市が施行した「珠海市婦女権益保障条例(珠海市妇女权益保障条例)」が、「新しく建築または改築する公衆トイレでは、女性の便器の比率は男性の便器の比率の1.5倍以上でなければならない」と初めて明確に規定した(第22条)。
 ・2011年 広州市が制定した「公共トイレの女性便器比率の向上を実施することに関する意見」では、今後広州市の場所の新しく建築される公共トイレは、男女の便器の比率は、1:1.5より低くてはならないことを定めた。
 (以上については、本ブログの記事「公衆トイレなどの便器数の男女比を改める動き」も参照してください。)
 ・2012年6月に制定された「深圳経済特区ジェンダー平等促進条例(深圳经济特区性别平等促进条例)」も、意見募集稿では、「公共の場所での公共トイレおよび公共施設がトイレを新築・改築するときは、女性トイレの建築面積と便器の数を増やさなければならない。女性トイレの便器の数は、男性の1.5倍未満であってはならない。」(第29条)と規定していました。しかし、実際に制定された条例では、「市・区の政府及びその関係部門が公共サービスを提供する、あるいは公共の場所に母子室・公共トイレなどの公共サービス施設を建設するときは、女性の特殊なニーズにも注意を払わなければならない。/市のジェンダー平等促進機構が公共サービスあるいは公共サービス施設が女性の特殊なニーズを考慮していないと考えたときは、関係単位に改善提案をすることができる。関係単位は書面で回答しなければならない。」(第13条)という、数値を挙げない条文になりました。
(8)南京城管称今后新建公厕将考虑增加女厕位」新浪江蘇2012年10月15日(来源:南京日報)、「女性如厕难厕位何时增 市民呼声:增加女性厕位」広西新聞網2012年10月31日。
(9) 2010妇女权益年度报告」『中国婦女報』2011年1月4日。
(10)「異常人気! 東京スカイツリーに昇った人に聞いた『ここにちょっぴりがっかりした』」『週刊ポスト』2183号(2012年6月8日号)p.57。また、平林純氏は、労働省令第43号「事務所衛生基準規則」で定められている「最低レベル」に沿ってトイレを作った場合、実は「女性便所の方が男性便所より必ず混雑する」という問題が生じる、なぜなら、女性の方が男性よりもトイレで時間が掛かるにも関わらず、男女ともに「トイレの数が同じ個数」とされていることを指摘しておられる「法律が決める「トイレの数」は男女不平等だった!?」(雑学界の権威・平林純の考える科学2011年11月23日)。すなわち、中国の旧い規定と同じ問題があると言えます。
(11)Priyankka Deshpande“China's 'Occupy men's toilet' drive inspires city's women”mid-day.com2012-03-02(中国語訳[翻訳:辛婷、校対:孫葉竹]「中国“占领男厕所”运动鼓舞印度女性」社会性別与発展在中国サイト2012年3月28日)。日本のブログやメディアにも、「中国の女性たちによって始まった“男子トイレを占拠せよ”運動がインドへ飛び火へ」(サムライ英語 with 韓国・中国語のすゝめ2012年3月3日)、「【インド】 女性が “おしっこ権” を叫び立ち上がる / インド政府も承認」(ロケットニュース2012年6月20日)という記事が掲載されています。
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