2017-03

本年の動向3―セクハラ裁判の困難

2月 重慶市の小学校の女性教師、校長をセクハラで訴えるも、女性教師から校長へのメールに「厳しい言葉での拒絶がない」として敗訴(一審)。

 1990年代半ばごろから、中国でも「セクシュアル・ハラスメント(性騒擾)」がメディアなどで問題にされるようになりました。
 2001年には、西安市で国有企業の女性職員が、初めてセクハラ裁判を起こしました。彼女は「証拠不十分」で敗訴しますが、2003年には武漢市で女性教師が初の勝利判決を勝ち取ります。
 けれども、これまでに起こされた訴訟は8件ほどで、勝訴は2件にとどまっています。
 その原因として第一に指摘されてきたのは、ごく最近まで、法律の中にセクハラ概念自体がなかったということです。
 第二に、立証責任の問題で、中国では、セクハラ裁判でも「主張したものが立証する」ことになっていることです。つまり立証責任を一方的に原告に負わせているわけです。

 こうした点に批判が高まり、婦女権益保障法(1992年制定)が2005年8月に改正された際に、セクハラを禁止する規定が導入されました。
 ただし、上述の立証責任の問題の方は置き去りにされました。
 また職場のセクハラ防止義務についても規定すべきだという要求があったのですが、これも退けられました(1)

 その後のセクハラ裁判の動向を見ると、日本でぶち当たってきた(今でもきちんと解決していない)のと同じような困難に直面していると感じます。

 2005年8月、北京の美術学校のモデルが、セクハラで学生を訴えました。婦女権益保障法改正後、初の裁判です。
 この裁判、証拠は十分ありました(加害者はすでに刑事処分を受けていた)。
 しかし彼女は、勝訴して「公衆に直面した後の災難」を恐れて、法廷外の和解に応じたとのことです。ただし、賠償金6000元は勝ち取っていますし、訴えたのがむだだったのではもちろんけっしてないですが(2)

 また昨年8月には、重慶市の小学校の女性教師も、校長をセクハラで訴えました。その女性教師は猥褻メールをその証拠として提出しました。けれど最初に述べたように、第一審で裁判所は、女性教師から校長へのメールに「厳しい言葉での拒絶がない」として、訴えを退けました。
 けれど原告によると、きつい言葉で拒絶しなかったのは、校長は権力を持っているから角を立てないようにしただけだったということです(3)。こういう、職場の力関係というのを無視して「女性の側が断固拒否しなかったからだめ」という、よくある問題が中国でも起きています。
 しかし彼女は、当然こんな判決には納得せず、控訴するとのことです。

(1)2005年夏頃までの状況に関する典拠は、遠山日出也「最近の中国における女性労働問題をめぐるさまざまな女性たちの動き」『女性学年報』26号(2005年)を参照してください。
(2)「性騒擾多数成“悶騒” 全国性騒擾訴訟僅有8起」『南方週末』より
(3)「女教師遭校長短信性騒擾 因未“厳詞拒絶”敗訴」『法制早報』2006年2月13日。「取証成最大難題 反性騒擾入法后第一案一審敗訴」『南方報業網』より

[10月5日追記]
 しかし、9月の二審でも敗訴でした。
 「重慶性騒擾案原告敗訴凸顕立法空白」『重慶晩報』2006年9月27日
 やはり立法や証拠収集などの問題を指摘しています。
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