2017-10

WANの第3回総会とシンポに参加して

5月13日、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の第3回総会とシンポジウム「女がつなぐメデイア――ミニコミからウェブへ」が東京大学でおこなわれました。

総会もシンポも、それぞれ豊かな内容がありましたが、以下では、私がとくに関心を持った点について述べたいと思います。

<目次>
一 第3回WAN総会
 1.会員数の増加
 2.総会の時間が1時間半に
 3.サイトの双方向性の拡大をめぐって
 4.投稿規程の字数とジャンルの緩和などを要望
 5.組織運営の透明性
 6.「ボランティアでは限界、専従を」という声
二 シンポジウム「女がつなぐメデイアーミニコミからウェブへ」

一 第3回WAN総会

今回の総会は、設立総会を含めて数えれば「第4回」総会になるそうですが、当日の理事会の文書には「第3回」と書かれていましたので、ここでは「第3回」と記載させていただきます。

総会では、「2011年度事業報告」「2011年度決算報告」「2012年度事業計画」「2012年度予算案」「理事再任と新監事の選任」などの議案が承認されました。今年度は、認定NPO法人格を申請するそうで、それと関連する議案も採択されました。

1.会員数の増加

総会では、会員数が2011度末(2012年3月末)の時点で、400名を超えたことも報告されました。2009年度末の時点では2百数十名、2010年度末の時点では約300名だったのですから、非常に大きな伸びです。

ただ、サイトのアクセス数は、昨年同様、「ひと月10万アクセス」とおっしゃっていて、とくに増えたという話はありませんでした。会員の方3人ほどからお話をうかがったかぎりでは、理事長の上野千鶴子さんのWANのゼミにいらっしゃった方が入会なさったり、上野さんに講演に来てもらった方(ないし講演を聞かれた方)が入会なさったりしているようでしたので、上野さんたちが努力して会員を集めておられるのかな? と思いました。

私は、今後は、せっかく増えた会員お1人お1人が力を発揮できる状況に作っていくとともに、もっとサイト自体の魅力を通じても会員が増えるよう微力を尽くしたいと思いました。

2.総会の時間が1時間半に

昨年と1昨年のWAN総会の時間は1時間でした。それでも一昨年は15分ほど延長されたのですが、昨年は日程が詰まっていて延長が不可能だったために、議論する時間が10分程度しかなかったので、私は「短すぎる」とこのブログでも書きましたし、事前に理事会にも延長を求める意見をお送りしました。

今年は、総会の時間が1時間半になりました。総会の最後に、上野理事長が「もっとゆっくり議論したいという声があったので延ばした」とおっしゃっていたので、私の意見も反映されたのではないかと思います。

一昨年と昨年の総会では、3人ほどしか発言がなく、まとまった発言をしたのは私だけだったのですが(といっても5分足らずです)、今年は、私以外にもまとまった発言をなさった方が何人かいらっしゃったので、総会を長くしていただいてよかったと思いました。

一般に、組織の規模が大きくなると、会全体で話をする機会、会員どうしで集まって話をする機会が少なくなりがちです。けれど、会員どうしが意見を交換したり、会の執行部(理事会)が会員の意見に答えたりする機会を増やすことは、メンバー個々人を尊重し、みんなの知恵と力を集めるうえで重要だと思います。WANの会員ならば、ボランティアや投稿をしていればもちろん、ふだんサイトを読んでいるだけでも、どなたもが何らかの意見や感想を持たれることでしょう。私は今回の総会の時間延長を歓迎するとともに、今後は、できれば総会以外にも、意見を交換する機会を作っていただきたいと思いました。

3.サイトの双方向性の拡大をめぐって

私は、総会では、まず、WANサイトの双方向性の問題について質問しました。私は「上野理事長は、昨年4月のご就任の時の挨拶で、『サイトの双方向性』を拡大する方針を出されていた。しかし、現在、WANサイトには、コメントを書き込むことができないし、自分のサイトやブログで関係のある文章を書いても、『こんな文章を書いたよ』ということを示すこともできない。その結果、議論を発展させたり、関連情報を示したりすることができなくなっている。荒らしや誹謗中傷は、承認制にすれば防げる。上野さんは、第1回総会でも『承認制にするならば問題はないから、掲示板も作ろう』とおっしゃっていた。何が双方向性の拡大のネックになっているのか」と質問いたしました。

それに対して、上野理事長は、だいたい以下のような発言をなさいました(当日のメモと記憶にもとづいて書いているので、少し不正確な点もあると思いますが、要旨はこのとおりだと思います)。
・「おっしゃるとおり、双方向性はWANにとって重大な課題である。」
・「何がネックになっているかと言えば、人手不足である。(承認制にするとして)誰が管理するのか、どのくらいのタイムスパンで管理するのか、といった問題もある」。
・「また、バックラッシュの問題もある。水曜デモ1000回アクションの動画を掲載したとき、WANに嫌がらせがあるのではないかと警戒して、危機管理チームを作った[遠山注:この箇所では、もう少し具体的なことも述べられたのですが、ここでは伏せます]。けれど、ツイッターで反発がいくらかあっただけで、抗議の嵐(荒らし?)が来るわけでもなかった。そもそも届いていないのかと思(って、拍子抜けした←というような意味のことをおっしゃったと思います)」
・「双方向性については、今後すすめていくという方針である。(コメント欄は)開けられるところから、開けていく」
・各地で発信できるように「WAN-communicator」を養成していく(この点は、「2012年度事業計画案」の箇所で、「双方向性の拡大の一環」という位置づけで、述べられました)

私は、「双方向性の拡大」を課題として確認していただくとともに、今後双方向性を広げていくという答弁をいただけて良かったと思います。

ただ、答弁に不満が残った点もあります。私は、当日は、せっかく東京で開催した以上、関東の方々に多く発言していただきたかったので、私との議論が長引いてはよくないと思いましたので、当日述べなかったことをここで書いておきます(もちろん理事会にも、以下の意見はお伝えしました)。

1)「人手不足」の問題について

まず、「人手不足」という点についてですが、実は、すでに2009年12月15日「WAN裏方日記」で、読み物編集局のホットココアさんが、WANサイトのコメント欄について、「ボランティアスタッフが充実してきたら、徐々にオープンしていきたいとは思っているのですが…」と述べておられます(「ご感想などお待ちしています」)。それから2年半近く経って、ボランティアスタッフの方も大幅に増えているのに(今回の総会やシンポでは「100人」とおっしゃっていました)、認識が変わっていないとすれば、今後さらにボランティアの人数が増えても事態がなかなか前進しない可能性もあると思いました。

実は、私自身も、すでに今年1月、「私自身が、双方向性を拡大するような仕事をやってWANに貢献できればいいと思います」と述べて、ボランティアの申し込みのメールを出しています(「私のボランティア申し込み」)。具体的には、「私が直接コメント欄などを担当してもいいですし、『遠山さんがこの仕事をやってくれたら、コメント欄をオープンできる』というような、別の仕事でもいいと思います」と述べたのですが、まだご返事はありません。

たしかに掲示板にしろ、コメント欄にしろ、「誰が管理するのか」という問題はあって、たとえば私が管理すれば、理事会の意向とは異なる基準でコメントを承認する可能性がある、というようなことを心配しておられるかもしれません。といっても、理事もすでに定員いっぱい選出されており、理事の人数が不足しているというわけでもないのでしょうが、要するに「適任で、かつ時間がある人が見つからない」というようなことだと拝察いたします。もちろんこの点は、個人の資質の問題というより、承認の基準をきちんと議論して、明確にするべきだと思うのですが、まだそうした作業ができていない、というようなことではないかと思います。

ただ、私が今までブログをやったり、他のブログを見てきたりした経験から言えるのは、一般的に「承認制にすると、コメントは、あまりつかなくなる」ということです(たとえば「WAN裏方日記」のコメント欄は承認制でしたが[現在は担当者が交替したせいか、閉鎖状態]、そのコメントのかなりの部分は、ほかならぬ私によるものです)。しかも、一般に言って、コメントの多くは、誰が考えても承認すべき(orすべきでない)ことが明確な質のものでしょうから、判断を要するコメントは、さらに限られます。ですから、それほど神経質におなりになることはないのではないでしょうか?

また、一度やってみて、うまくいかなければ、やり方を変えればいいのであり(場合によっては凍結する)、それは多くのサイトやブログでおこなわれていることです。

2)韓国水曜デモ1000目回とアクションの動画について

実は、私は、危機管理体制云々の発言をされたときに、思わず「えー」と声を上げて笑ってしまったので、「笑いごとじゃない」とたしなめられてしまいました。しかし、私は、もともと、WANの1000回目のソウル水曜デモや日本での水曜デモ1000回アクションの動画がネット界で騒ぎになるような気は全然していませんでした。

水曜デモ1000回アクションの動画には韓国編と日本編があり(「ソウル編:慰安婦問題の解決を求めて—1000回目のソウル水曜デモ2011.12.14」「日本編:【v-wanニュース】20111214水曜デモ1000回アクション(東京日本各地)」)、いずれも、今年2月3日に発表されています。どちらも非常に優れた動画であることは間違いありません(1)

ただ、私がそれほどの騒ぎにならないと思った理由は、第一に、今年2月のWANの動画が伝えているデモやアクション自体については、すでに昨年12月14日のアクション直後に、いくつかのブログやyoutubeで伝えられており、多くの方がそれを見ているからです(2)。WANでも、当時すでに岡野八代さんが、よいレポートをしてくださっています(「水曜日デモ――ソウルでの1,000回」2011年12月17日)。マスコミも、昨年12月の時点で、水曜デモ1000回目や日本でのアクションがあったこと自体については伝えており、とくに韓国の「平和の碑」(少女像)については大きく報道しましたから、当時、右翼やネット右翼は「平和の碑」や日本のアクションに対してさまざまな攻撃をしました。たしかに今年2月のWANの動画は、昨年12月に発表されたブログや動画よりも多くの情報を伝えており(動画の時間が長く、また非常に丁寧に取材をされ、字幕も付けておられる)、人を動かす力も持っているのですが、それはきちんと見ないとわかりませんし、そうした情報は「慰安婦」問題にまともな関心を持つ人にとっては重要であっても、必ずしもバックラッシャーの関心を引くようなものではなかったと思うのです。

第二に、WANは、韓国や日本のデモやアクションをした主体ではなく、あくまでも、それらを報道したメディアだからです。「女性戦犯国際法廷」やNHK裁判をおこなったVAW-NETジャパンのような団体にはよく嫌がらせのメールが来たりするようですし、2008年には「女たちの戦争と平和資料館(WAM)」に右翼が威嚇、妨害に来ましたが、WANは今回のアクションの主体ではありませんでした。もちろんアクションをした主体ではなくても、マスメディアや地方自治体や企業が「慰安婦」問題を取り上げたら、右翼も攻撃するでしょうが、WANは小さな民間のフェミニストメディアなのですから、「慰安婦」問題の情報を流すこと自体は当然と受け取られると思います。

第三に、WANサイトにはコメント欄も何もないのですから、荒らしようがありません。メールアドレスや住所に抗議や嫌がらせが送られてくる可能性はあるでしょうが、フェミニズム団体が何回か「慰安婦」問題を報じた程度では、そこまでして嫌がらせをする可能性は小さいでしょう。一番ありうるのは、WANや会員のツイッターなどで「慰安婦」問題に関して発言をすれば、反論ないし攻撃をされることだと思いますが、それは普段でも同じでしょう。私のこのブログでも、昨年12月、台湾でのアクションについて取り上げましたが(「台湾でも韓国の水曜デモ1000回目と連帯するアクション」)、コメント欄を承認制にしているせいか、反論や攻撃は特にありませんでした。

私は、今回WANサイトがそこまで警戒なさったのは、まだネットに不慣れなせいではないかと思います。理事の皆さんの中には、ご自分のサイトやブログを持っておられる方はほとんどいらっしゃらないですし、一部の方を除けば、理事の方は、ひょっしたら他のサイトやブログをあまりご覧になっておられないのではないのかとも思います。

今回、WANに思ったほどの攻撃はなかったのは、ある意味で、残念でいらっしゃったでしょう。けれど、むしろ今回の経過からは、「必要以上に恐れることはない」という教訓が得られたのではないかと思うのですが……。

もちろん危機管理体制を取られたことが、WANにとってマイナスだったということは全然ないのであり、必要な試行錯誤でいらっしゃった面もあると思います。また、今後WANサイトがより影響力を持ったり、よりインパクトがある記事を出したりすれば、攻撃される機会は増えると思いますから、その意味では、対応について研究しておかれること自体は重要だと思います(総会の場で声を上げて笑ってしまったのは、その点で、失礼なことをしたと思います。すみませんでした)。

ただ、私は、WANサイト自体の双方向性の議論と、バックラッシュによる攻撃とはある程度分けたほうがいいと思います。つまり、WANにコメント欄的なものが出来たとしても、それが承認制であるかぎり、いくら罵詈雑言を書き込んだとしても、それは、WANのメアドに罵倒メールを送るのと同じ程度の意味しかないですし、逆にWANサイト自体には双方向性が全くなくても、「2ちゃんねる」や他のブログ・ツイッターでWANが集中攻撃されるという事態は十分にありうるわけです。

その意味では、バックラッシュ派の攻撃があることを、サイトの双方向性の問題にあまり直結させることは疑問です。サイトの双方向性の有無に関わらず、不必要な攻撃を避けるために、個人のプライベートな情報などは厳重に管理としておくことなどは必要でしょうし、外部サイトでWANの記事が攻撃された場合には、それに対してWANサイトなどで必要な反論をする努力も必要であると思います(相手を説得するというより、第三者が惑わされないように)。

また、私は、一番重要なのは、「バックラッシュからWANサイトを守る」ことではなく、「バックラッシュから女性の人権を守る」ことだと思います。ですから、たとえWANサイト自体が攻撃されていなくても、WANサイトにはバックラッシュ的な言説に対して反撃する文を掲載していく必要があると思います。そうしたテーマの文は、「慰安婦」問題の特集などを除けば、WANサイトにはわりあい少ないのではないでしょうか? とくに、他のインターネット言説に対して、「反論」や「キャッチボール」など形で、議論を噛み合わせた文章は少ないように思いますので、この点も改善を図っていく必要があると思います(3)

4.投稿規程の字数とジャンルの緩和などを要望

私は、双方向性の拡大の一環として、「投稿規程の字数とジャンルを緩和してほしい」ということも要望しました。すなわち、私は、「(エッセイと活動レポートの)1600字という字数制限は少しきつすぎると思う。たしかに短く簡潔に書くことは大切だが、それは投稿でなくても同じだから、投稿か否かに関係なく字数を統一する形で、規定を緩和すべきだと思う。具体的には、たとえば、・字数制限を2000字程度にまで緩和する、・1600字を超える原稿は、小見出しを付けるなどの工夫をお願いする、・『投稿規程にないジャンルの原稿についても、編集局にご相談ください』と書いておくなど、柔軟に対処してほしい。」、「WANには会員が400人以上いらっしゃるが、そのうちの多くの方は、編集局の目に届かないところにいると思うので、会員みんな力を生かすために投稿を重視してほしい」と述べました(投稿規程については、私はすでに4月11日に要望を出しています:「投稿規程に関する要望」)。

私は当日、初対面の方お2人と、昼休みや懇親会の席でお話ができたのですが、その際にお2人が語られた体験や視点は、それぞれ、とても貴重なもののように思われました。ですから、私は、思わず、「そういうお話を、WANあたりに投稿なさってみては、いかがですか?」と申し上げたのですが、会員(だけではないが)は、誰もが独自の体験や視点を持っていると思いますから、WANサイトへの投稿をやりやすいようにしていただきたいと思いました。

また、訴えたいことはあるけれども、文章を書きなれていない方のために、『女性学年報』のように、コメンテイターがコメントして差し上げるのが理想かと思います。もちろんそのためには編集委員を増やす必要がありますし、すぐにはできないことなのでしょうが(私自身もすぐには力量的に無理です)、将来的にはそんなこともできれば素晴らしいな、と思いました。

5.組織運営の透明性

2012年度事業計画案では、「次世代へ向けて中長期の将来構想の検討を開始」するという項目の中で、現在12のサブWANがあって、100人以上のボランティアがいて……というご説明がありました。

そのお話に対して、私は、「WANがいろいろプロジェクトをやってらっしゃって、発展しているということはわかった。しかし、今のお話を聞かせていただいても、ごちゃごちゃしていて、どういう組織体制になっているのか、会員にもよくわからない。サイトに掲載してある『組織運営図』を見てもよくわからない。編集局も、組織運営図には書かれていない。また、雑誌なら、編集長の名前は必ずどこかに記されている。『女性学年報』や『女性学』は、編集委員の名前も記している。ところが、WANサイトには、編集局長や編集委員のお名前がどこにも記されていないのは疑問だ」と述べました。

この点に関しては、「組織運営図を示すという点も重要な課題です。スタッフの名前まではいいと思いますが……」という答弁でした。

また、「サイトに掲載していた『組織運営図』は、現在は、実態と離れているので、もう消した」というお話でした。また、私が「編集局が、組織運営図には書かれていない」と述べたことに関しては、「書いてある」という反論がありました。私は「編集局」名義のメールをいただいたことがあるので、「編集局」という部署を探して、見つからなかったので、「書かれていない」と述べたのですが、「サイト・ディレクション」というふうに英語で書いてあったそうです。以前にプリントアウトしたものを、いま確認すると、「サイト・ディレクション」の近くに、小さく、「特集」「読み物」「相談室」といったことも書かれていますし、「サイト・ディレクション」≒「編集」ということは気づいてしかるべきでした。この点、お詫びして訂正いたします。

6.「ボランティアでは限界、専従を」という声

総会では、私以外の方から、それぞれ重要なご発言がありましたが、その中に、「人件費を増額して、専従を置いてほしい。ボランティアで回すことは限界にきている」という意見がありました。

理事長も、その点を検討しているむね発言なさいました。

私もそうすべきだと思います。ただし、その場合は、当然、WAN争議の教訓をしっかり生かして、再度問題が発生しないようにしてほしいと思います。

一昨年と昨年の総会では、私は、WAN争議の和解に際して理事会がユニオンWAN(労働組合)に謝罪した事項(とくに「組合および組合員との事前の協議・相談がなかったこと」を謝罪したこと)には口をつぐんでいる問題を取り上げましたが、ラチがあきませんでした(「[第1回]WAN総会に出席して」、「第2回WAN総会」)。

そこで今年は、以上ののような、会の内外の「協議・相談」や対話の問題―――すなわち、会の中の民主主義の問題や、サイトが開かれているか否かの問題を取り上げました。つまり、そうした問題の一環として、総会の時間の長さやサイトの双方向性(その1つとしての投稿規程の緩和)、組織運営の透明性の問題を取り上げさせていただいた次第です(これらの点は、私が今年2月に書いた「WAN争議が提起した課題と現在のWANの問題点」という文の中でも述べていました)。

その結果、総会の時間は延長されましたし、他のいくつかの問題についても、今後の課題として全体で確認されましたので、よかったと思います。もちろん私などが言わなくても、理事会がすでに自主的にすすめておられることも多かったと思いますが、総会などを通じて意見をあげること自体にも意味があると思います。ただ、サイトの双方向性の点などは、上で述べたように、第1回総会から議論になりながら、あまり前進していないので、今後もう少し(私を含めて)努力が必要だと思います。

また、の「ボランティアでは限界、専従を」という問題について言えば、私は、WAN理事会のWAN争議からの教訓の引き出し方が、「今後はボランティアでやっていく」というものであったので、今年2月に書いた上の文で、以下のように述べていました。

現在、WANはさまざまなプロジェクトを意欲的に推進しているので、作業の量が増大していると思うが、その際に、ボランティアに過重負担が生じないようにしてほしい。場合によっては、労働者を雇用したり、ボランティアに何らかの有償性を導入することが適切であるケースも考えられるのであり、無理に「全員ボランティア」という体制を維持するようなことないようにしてほしい。


ですから、理事長が労働者の雇用を検討するむね発言されたことは、良かったと思います。けれど、繰り返しになりますが、その際には、WAN争議の教訓を正面から受け止めることが必要だと思います。

二 シンポジウム

午後からは、以下のシンポジウムが開かれました。

「女がつなぐメデイア――ミニコミからウェブへ」

司会 上野千鶴子(NPO法人WAN 理事長・社会学者)

≪パネラー≫
麻鳥澄江(ジョジョ企画) ―― 女たちはどこにでもいる
加納実紀代(元敬和学園大学教員)―― <紙>への惜別と脱近代
赤石千衣子(『ふぇみん』編集者) ――紙媒体の新聞としての可能性
東園子(大阪大学) ―――『「少女」文化の友』 の五年間

≪コメント≫
林香里(東京大学)
水島希(東京大学)


シンポジウムのビデオは、もうすぐWANサイトで配信するそうです(8月12日追記:配信されました→「ミニコミからウェブへ〜2012/5/13wanシンポジウム記録映像」)。

シンポでは、さまざまな興味深いお話が出ましたが、私には、とくに『ふぇみん』の赤石さんが、ペーパーメディアの特色と困難を話されるととともに、「記者に賃金を払って生活を保障することが必要。そうして女性のために仕事を作ることが必要」、「WANは、運動になっているのか?」といった提起をなさって、WANの現在の情況が議論になったところが、興味深かったです。

ただ、私が不満に思ったのは、「女がつなぐメデイア――ミニコミからウェブへ」というテーマの中で、「ミニコミ」と「ウェブメディア」との対比が語られた際に、「ウェブ」の特色として、「個人発信が簡単にできる」という点が掘り下げられなかったことです。

上野さんは「インターネットは民主主義のツール、弱者の武器だ」とおっしゃったのですが、私は、「民主主義」とか「弱者」とかいう場合の主体は、「女性」一般ではなく、「(女性)個人」を単位にしたものでなければならないと思うのです(もちろん、その個人が必要に応じて連帯することは重要ですが)。

私は、WANという「総合サイト」と「個人発信」とを比較するような作業が、WANのためにも必要だと思います。たとえば、一つの思考実験として、100人もボランティアがいらっしゃるなら、その100人の方が、WANではなく、それぞれが個人ブログを作ったらどうなるだろうか?(もちろん個人ブログ同士の連携はするし、複数の者によるプロジェクトもおこなう)――と考えてみる。それは、それで、すごくワクワクする出来事です。もちろん、それではできないことも少なくないと思いますし、そもそも「個人サイトかWANか」という二者択一では全然ありません。しかし、そうした考察は、個人サイトと総合サイトのおのおのの意義を考える上でも、総合サイトにおける個人の尊重や、総合サイトと個人サイトとの連携、個人サイトどうしの連携を考えるうえでも有用だろうと思います。ウェブの可能性を考える上では、そうした考察も必要ではないでしょうか。

上野理事長は、WANの使命として「運動を次の世代につなぐ」必要性をおっしゃり、「ミニコミからウェブへ」ということも、その文脈の中に位置づけておられましたが、私は、若い世代の場合、良かれ悪しかれ「個人」というものを上の世代以上に重視する意識が強いと感じます。古くからある政党や労働組合のみならず、女性運動を含めた社会運動全般が高齢化しているのは、その点に十分対応できていないからではないかと思うのです。そうした若い世代の意識に合っているのが、個人サイト、ブログ、ツイッターなどであることを考えると、運動を次の世代につなぐ上でも、個人サイト(ブログ)に注目したり、総合サイトの中の個人の自律性を重視したりすることが必要であるように思います。

今回のシンポでは、若いボランティアの方が、「自分の世代にフェミニズムのつながりを作ることが、自分のために必要だ」とおっしゃって、自分自身でチラシを作ってWANのサブチームを広げるために頑張っていらっしゃいました。また、懇親会では、みんなで頑張ろうという熱気と連帯感を感じました。また、サイトを見ているだけではわからない、個性ある方々にもお会いできました。そうした個々人の活動と連帯とをどう生かしていけるのだろうか、そのために自分はささやかながら何ができるのだろうか、ということを考えたいと思います。

(1)ソウル編が9分36秒、日本編が13分2秒の動画で、いずれも丁寧に取材されており、さぞ作成の手間がかかっていると思います。私自身、韓国編について、「とても貴重な映像ですね。近年の日本の政治やマスコミの状況がとても悪いので、私のどこかに『元日本軍「慰安婦」の方々が生きていらっしゃる間に解決することは難しいのかな……』という気分がありましたが、最後の詩の朗読を聞いて、日本国民としての責任の重さを痛感し、やはり諦めることは許されない! と思いました。」という感想を当時寄せています。私がインターネットで見たことのある記事の中の、ベスト50には確実に入っていると思います。また、日本編も、当日の映像だけでなく、関係者を取材したり、全国各地の映像を集めたりなさっており、力作です。いずれの動画も、今後、1000回目のソウル水曜デモや水曜デモ1000回アクションについて紹介するときに、不可欠の映像になると思います。その意味で、長い目で見れば、国内の反動勢力にとって脅威となる動画であるとも言えるでしょう。
(2)写真入りのレポートとしては、「外務省を1300人で包囲しました。」ブーゲンビリアのきちきち日記2011年12月14日、「死んでも死にきれない!謝罪を!~『慰安婦』解決もとめ1300人が外務省包囲」レイバーネット2011年12月14日など。動画としては、「12月14日 1000回水曜デモ ソウル日本大使館前 」2011/12/16(字幕なし)、「日本軍「慰安婦」被害者に正義を!外務省包囲アクション」2011/12/14(3分33秒)。
(3)私が、ささやかながらWANに投稿させていただいた「『館長雇止め・バックラッシュ裁判』勝訴祝賀会に参加して」は、バックラッシュに対する反撃のための投稿ですし、「中国の女子大学生の『男性トイレ占拠』アクションと日本のメディア」は、中国の運動の紹介であるとともに、ネットメディアに対する批判です。今後は、バックラッシュ勢力の具体的な主張に対する反論なども投稿していきたいと思っています。
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