2017-10

各地で雇用における女性差別反対を訴える女子大学生らのパフォーマンスアート

2~3月にかけて、中国各地で、公共トイレの男女の便器数の不公平さを訴えるために、女子大学生が「男子トイレ占拠」のパフォーマンスアートをおこないました(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」)。その後も、セクハラやミスコンに反対するパフォーマンスアートがおこなわれましたが(本ブログの記事「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」)、4月以降目立つのは、雇用、とくに就職の際の女性差別に反対するための女子大学生らのパフォーマンスアートです。

女性に対する就職差別反対を訴える全国各地のパフォーマンスアート

女性に対する就職差別反対を訴えるパフォーマンスアートは、私がネットで見つけただけでも、下に示した8つがメディアに報じられていました。そのうちの6つは、「人材招聘会」「人材市場」と呼ばれる、多くの企業が求人をする場所かその近くで、女子大学生が、鎧・兜を付けた花木蘭(男装して従軍した伝承中の女性、wikipediaの説明)の扮装をして、「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで仕事に就きたいのに、いかんせん仕事が見つからない(木兰穿越现代 本欲卸甲归田 无奈工作难寻)」などと書いたパネルを掲げて、女子学生への就職差別反対を訴えるものでしたが、それ以外のやり方をしたものもあります(以下、やり方について述べている個所に下線を引きました)。

4月6日 武漢市 武昌区の光谷広場で、十数名の女子大学生が、就職の壁を象徴するドアの前で女性たちが倒れ伏すことによって、就職差別反対を訴えた(本ブログで既報(1))。

4月8日 西安市 陝西省スタジアム国際展示センターの人材招聘会で、某大学の女子大学生の楼さんが花木蘭の扮装をして、就職差別反対を訴えた。他の学生たちといっしょに、100人ほどの女性にアンケートもした。発起人は咸陽師範大学の夏媛さん(本ブログで既報(2)だが、(3)の情報も加味した)。

4月15日 杭州市 某人材市場の入口で、大学4年の女子学生2人が花木蘭の扮装をしてパフォーマンス。1人はプラカードを掲げ、もう1人は、通行する女性に対して、求職の過程において差別を経験したことがあるか否かをアンケート調査した(4)

4月16日 杭州市 女子大学生たちが、女性に対する就職の壁を示したパネルをくぐり抜けるパフォーマンスによって、就職差別反対を訴えた(本ブログで既報(5))。

4月22日 南京市 国際展示センターでの人材招聘会で、南京の有名大学を卒業後、会社に勤務している安さんという女性が、花木蘭の扮装をして就職差別反対を訴えた。その後ろには、6、7名の女性が、行き来する求職者に向けて、「求職者が差別に遭遇したら、どのようにして権利を守るか」をいうビラをまいた(6)

4月28日 阜陽市(安徽省) 阜陽師範学院の大学生のボランティアの卞夢迪さんが花木蘭の扮装で、阜陽益貝孤残人士康養之家(阜阳市益贝爱孤残人士康养之家。障害者のための福祉機構のようです)の先生とともに、女性に対する就職差別反対を訴えた(7)

4月28日 武漢市 人材招聘会で、武漢の某大学4年の女子学生の可さん(仮名)が花木蘭の扮装をして、就職差別反対を訴えた。このアクションの発起人は、中南財経政法大学の女子学生の李甜甜さん(8)

5月13日 鄭州市 人材招聘市場で、中原工学院愛心ボランティア協会(中原工学院爱心志愿者协会)のボランティア・暁雲さんが花木蘭の扮装をして、数名の同級生とともに、就職差別反対を訴えた(9)

これらのパフォーマンスアートの特徴

どの場所でも、1人ではなく、複数ないし数人の女子大学生がパフォーマンスをしています(ただし、南京でパフォーマンスをした安さんは、会社員であり、安さんは、かつて自分が就職活動中に性差別を受けたのみならず、身近な女性の多くもそうした経験をしていることに憤ったことが動機になっています)。

また、南京と鄭州では、単に花木蘭の扮装とプラカードによってアピールしただけでなく、「男性のみ」「男性優先」という条件が書いてある企業のブースの担当者に対して、その理由を問いただして、抗議しています。たとえば、鄭州では、花木蘭の扮装をした暁雲さんは、「男性のみ」と掲示しているブースに対して、「なぜこのポストは、女性はダメなのですか? 私たちも同じように仕事ができます!」と強い口調で尋ねました。ブースの担当者は、突然現れた花木蘭の扮装をした女子に呆然としつつ、「うちは販売業ですが、出張の仕事は、女性に適していません」と答えました。しかし、そうした答えで納得できるはずもなく、何度か質問して回答が得られなくなると、暁雲さんは、立ち上がって、ボールペンを取り出し、ブースの「男性のみ」の文字を線で消して、その上から「男女不問」と書き込んで去っていきました。このやり方に対しては、「暴力的だ」という批判も出ましたが(10)、女性差別の深刻さを根拠にして弁護する声も上がっています(11)

各地で、花木蘭の絵入りの「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで仕事に就きたいのに、いかんせん仕事が見つからない」と書いてあるパネルが使われましたが、それらのパネルは、写真で見るかぎり同一のものであり、各地のアクションの間には繋がりがあることは間違いありません。

ただし、アクションをしているのは、それぞれの地区の学生たちです。また、武漢でのアクション使われたパネルは、「まさか現代の女性も、男装をしないと腕をふるえないのではあるまい???(难道现代女性也要女扮男装才能找到用武之地???)」というものであり、他の都市とは異なった文が書かれています。

また、女子大学生たちのアクションを報じた新聞は、彼女たちが訴えている女性差別の詳しい状況や女子大学生の就職に関する調査報告について報じているものも少なくなく、就職差別問題を社会的にアピールすることに寄与しています。たとえば、4月15日の杭州でのパフォーマンスアートを報じた記事は、それをおこなった女子大学生が、「女子学生は、求職の中で、容姿・身長・年齢・結婚出産などの条件を付けられる。」「6~7月になっても、多くの女子学生はまだ仕事が見つかっていないのに、男子学生の大部分はその頃にはもう就職が決まっている」と訴えていることを報じています(12)。また、たとえば、新華網の記事は、中華全国婦女連合会が発表した「女子大学生就業創業状況調査報告」では、56.7%の女子大学生が「女子学生の方が就職のチャンスが少ない」と答えていることや、91.9%の女子大学生が「人を雇う企業・機関に性による偏見がある」と述べていることを紹介しています。さらに、専門家が、「労働法や婦女権益保障法は性差別は禁止しているけれども、使用者が負うべき行政責任や民事責任を明確に規定しておらず、具体的な執行機関も規定していないので、就職差別を是正する上では実質的には役に立っていない」と指摘していることも報じています(13)

以上から見ると、花木蘭の扮装によって女性に対する就職差別に反対するアクションも、以前の「男子トイレ占拠」アクションと同様に、以下のような特徴を有していると言えます。
 ・複数から数名の女子大学生によって担われている。
 ・各地の女子学生たちの間には、繋がりないしネットワークがあるようだ。
 ・ただし、それぞれのアクションを担っているのは、地元の女子大学生のグループ。
 ・マスコミの報道は、全体として、女子大学生の言い分を伝えているものが多く、就職差別についての調査報告や専門家の解説を報じている場合もある。

女性の妊娠中の権利を侵害する企業を批判するパフォーマンスアート

また、「母の日」である5月13日には、広州市の天河区の繁華街で、10人の女子学生が、妊婦の権利を無視する企業を批判するパフォーマンスアートをおこないました。

そのパフォーマンスアートは、お腹を膨らませた妊婦の格好をした数人が、「妊婦をいじめる企業」と書かれた被り物をした人の周りを取り囲んで、剣や指(の形をしたもの)をその人に突き付けるというものです。妊婦役の人は、「社会的責任」とか、「女性労働者特別保護規定」と書かれた被り物をしています。そのほかに、「妊婦≠忍婦」「子供を産むことは社会的再生産の一部であり、その負担は女性だけに負わせるべきではない」といったプラカードを持って立っている役の人もいました。

中山大学4年の鄭楚然さんによると、「現在、女性労働者が妊娠によって解雇されることが少なくなく、インターネットでも騒ぎになっているので、そのことから今回のパフォーマンスアートを構想した」ということです。

彼女たちは、道行く人にも、剣や指(の形をしたもの)を突きつける役をするようお願いし、それに応じたある人は、「私の友だちも、妊娠で解雇されたり、産休を短縮されたりしましたから、この子たちの行為を支持します」と語っていたそうです。

鄭楚然さんたち10名の女子大学生は、「sinnerb」というフェミニストグループに属しており、広州で「男子トイレ占拠」アクションした人々でもあるとのことです(14)。また、鄭さんは、4月には、全国の上位500社の企業のCEOに、性差別的な採用条件(「男性のみ」「男性優先」「容姿端麗」「身長1m65cm以上」「三年以内に出産してはならない」)を改めるように訴える手紙を郵送する活動もしています(15)。こうした活動についても、メディアは報じていますし、その際には、女性差別の深刻な実態やそれを批判する識者の談話も掲載しています(16)

先月の私のブログの記事「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」でご紹介したうち、「1.豚足を切るパフォーマンスによって、セクハラ反対を訴える」(広州)と「2.花瓶を叩き壊すパフォーマンスによって、ミスコン反対を訴える」(西安)についても、そのメンバーは、「男子トイレ占拠」アクションをした女性たちと重なっている部分がありました。

ただ、今回、最初に述べた、就職差別反対のために全国各地でパフォーマンスアートをした女子学生たちについては、4月8日に西安のパフォーマンスアートをおこなった発起人が夏媛さんが、3月18日に西安で「男子トイレ占拠」アクションをした発起人でもあるのを除けば、両者のつながりを示す報道はとくに見当たりません。ひょっとしたら、ネットワークの系列が異なるのかもしれませんし、それだけ広がりを持ったアクションになっているということかもしれません。

[関連記事]
『男子トイレ占拠』などのパフォーマンスアートの成功支えた周到なプラン

(1)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(2)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(3)找工作要学"花木兰"女扮男装?――女大学生以行为艺术抗议就业性别歧视的痛与重」新華網2012年4月26日。
(4)杭州惊现“花木兰”穿越求职 呼吁关注就业歧视」湖南在線2012年4月16日(来源:華声在線)[写真あり]。
(5)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(6)南京招聘会上 女孩扮“花木兰”呼吁抵制性别歧视」南報網2012年4月22日、「“花木兰”穿越招聘会 呼吁给女性平等就业机会」鳳凰網2012年4月23日(来源:現代快報)。
(7)阜阳一招聘会现场惊现穿越版“花木兰”」中安在線2012年5月2日[写真あり]。
(8)“花木兰”穿越来应聘」現在網2012年4月29日(来源:長江商報)[写真あり]。
(9)女生扮花木兰现身招聘会呼吁消除性别歧视」鳳凰網2012年5月14日(来源:中原網)[写真あり]。
(10)程思明「扮“花木兰”赴招聘会,行为还是艺术?」舜網2012年5月15日。
(11)左崇年「“花木兰”现身招聘会是无奈维权的“踢场子”」網易新聞2012年5月15日(来源:西安日報)。
(12)杭州惊现“花木兰”穿越求职 呼吁关注就业歧视」湖南在線2012年4月16日(来源:華声在線)。
(13)找工作要学"花木兰"女扮男装?――女大学生以行为艺术抗议就业性别歧视的痛与重」新華網2012年4月26日。
(14)女大学生以行为艺术批判无良企业声援准妈妈」新浪収蔵2012年5月14日(来源:南方網)[写真あり]。
(15)“三年内不得生育”竟成某些企业女性入职硬性要求 女大学生向全国500强企业CEO邮寄倡议书 对招聘性别歧视说不」『南方日報』2012年5月8日。
(16)同上および「揭职场生育陷阱:休产假只发基本工资不合法」新浪財経2012年5月15日(来源:金羊網-羊城晩報)。
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