2017-07

女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く

先月、このブログでご紹介した「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」は、3月でいったん終了したようです。けれど、その後、各地の女子学生たちが、他の女性差別に関しても、続々と、パフォーマンスアートという手段を使って反対の声を上げていることが伝えられています。

1.豚足を切るパフォーマンスによって、セクハラ反対を訴える(広州)

3月8日、広州の崗頂の電脳城で、数名の女子大学生が、「私の友達から離れなさい! この手をなくしてやる!」と叫びながら、包丁で、咸猪手(豚足料理の一種)を切った後、それを食べるパフォーマンスをおこないました(「女大学生街头进行拒绝性骚扰行为艺术」[写真あり]新浪網2012年3月9日[来源:金羊網-羊城晩報])。「咸猪手」というのは、口語では、セクハラの意味です。

その傍らでは、別の女子大学生が、「セクシーなのが誤りではない、セクハラに罪がある」、「『セクハラ』に対しては、いっさい我慢しない」といったプラカードを掲げるとともに、道行く人にチラシを配りました(「広州 街角で女性がパフォーマンスアート」[写真あり]人民網日本版2012年3月9日)。

ボランティアの黄さんは、セクハラがしばしば女性がセクシーな服を着ているせいにされることに対して、「セクシーなのが間違っているのですか? 制服を着ている学生が先生にセクハラされることもあります。人の外見・年齢・服装は被害に遭う理由にはなりません。」「無礼なことをされるのは、汚されることではなく、私たちの権利が侵害されることです。私たちの体は私たちのものです!」と語っています。

大兎さんとDaisyさんがこの活動の発起人ですが、彼女たちは、広州での「男子トイレ占拠」アクションにも参加していました。

2.花瓶を叩き壊すパフォーマンスによって、ミスコン反対を訴える(西安)

4月9日、以前「男子トイレ占拠」アクションをおこなった李麦子、可さん、鳳さん、尚さんなど数名の女子大学生が、西安で、ミスコンに反対するパフォーマンスをおこないました。

彼女たちは、「ミスコンを拒否する。花瓶にはならない。自分自身にしかならない(拒绝选美 不做花瓶 只做自己)」と書いたパネル(そのパネルには、花瓶に×印を付けた絵も描いてある)を掲げつつ、花瓶を金づちで叩き壊すパフォーマンスをして、人目を引きました(「女大学生小寨街头砸花瓶 呼吁"抵制选美不做花瓶"」[写真あり]華商網2012年4月10日[来源:三秦都市報])。花瓶は、人の外見の象徴だということです。

可さんは、「現在多くの大学でミスコンをしており、少なくない女子大学生が参加していますが、一部の企業の宣伝の手段になっています」と批判します。最近の中国では、ミスキャンパスやミスコンがブームのようで、日本のネットメディアにも、「美女がザクザク! 『ミス・キャンパス』ブームの中国―台湾メディア」(レコードチャイナ2011年10月24日)、「嫌悪の対象だったミスコン、今や中国のソフトパワー産業に―米メディア」(レコードチャイナ2012年1月24日)という記事が掲載されています。

李麦子さんは、「ミスコン(選美)の問題は、誰が『美』を定義するのか? という問題です。その答えは、往々にして男性の審査員と大衆が定義するというものですが、女子大学生の美は、自分自身で決定するべきです。すなわち、ミスコンの問題は、『選』にあります。ミスコンがあることによって、女性は他人の消費と娯楽という落とし穴に落とされます。多くの女子大学生は、差別に反対し、女性の身体の消費に反対する意識が乏しい(理論的に言えば、ジェンダーブラインドである)ために、ミスコンに参加する人が後を絶たないのです」と語っています。

※この件については、「“砸花瓶”行为艺术现街头 女大学生对选美说不」(西部網2012年4月9日)という記事もあります。

3.就職の壁を象徴するドアや倒れ伏した女性たちによって、就職差別反対を訴える(武漢)

4月6日、武漢市の武昌区の光谷広場で、十数名の女子大学生が、女性に対する就職差別反対を訴えるパフォーマンスをおこないました。

女子大学生たちのうちの6人は、崩れた人間ピラミッドのように、何重にも折り重なって体を横たえました。

その傍らには、青いドアの形をしたパネルの上に、「恋愛禁止」「身長が足りない」「美人でない」などと書かれた、通行禁止のマーク付きの白い帯が縦横に掛けられた絵が描かれたものを持った2人の女子大学生が立ちました(「一群女生武汉街头“叠罗汉”呼唤公平求职」[写真あり] 荊楚網-楚天金報2012年4月6日)。

このアクションの組織者である中南民族大学の大学院生の杜さん(仮名)は、「このドアは、女子学生が就職活動中で遭遇するさまざまな制限を象徴しており、倒れた女子学生は、差別されて、就職ができない女子学生を示しています」と語っています。

参加者の一人の華中科技大学の大学院生の蕭蕭さん(仮名)によると、「拒絶される原因は、けっして専門や学業だけによるものではなく、性別・身長・容姿・結婚育児・酒量などです」とのことです。

4.花木蘭の扮装で、女性に対する就職差別反対を訴える(西安)

4月8日、西安の某大学の女子大学生の楼さんは、陝西省スタジアム国際展示センターの人材招聘会で、花木蘭(男装して従軍した伝承中の女性、wikipediaの説明)の扮装をすることによって、女子学生への就職差別反対を訴えました。

楼さんは、鎧・兜を付けた花木蘭の扮装をして、「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで郷里に帰りたいのに、いかんせん仕事が見つからない」と書いたパネルを頭上に高く掲げて、就職差別反対のアピールをしました(「“花木兰”穿越西安招聘会 呼吁企业招聘性别平等」[写真あり]西部網2010月4月9日[来源:陽光報]、「女子大生がムーランのコスプレで就活男女差別訴え(西安市)」インサイトチャイナ2012年4月10日)。

アクションの現場では、楼さんは他の学生たちといっしょに、100人ほどの女性にアンケートをしましたが、63%の女性が求職の過程で差別を受けたことがあると答えました。楼さんは、「現在は、企業は募集の際に『男性のみ』と書くことは多くないが、女子学生が最終的に採用される可能性は相変わらず低い」と述べています。

5.人の形をくり抜いたパネルをくぐり抜けるパフォーマンスによって、女性に対する就職差別反対を訴える(杭州)

4月16日には、杭州の女子大学生たちが、女性に対する就職の壁を示したパネルをくぐり抜けるパフォーマンスによって、就職差別反対を訴えました。

彼女たちは、杭州の人材マーケットの入口に、人の背の1.5倍ほど高さのパネルを立てました。そのパネルには、人の形にくり抜かれた穴が開いていますが、それとともに、「三年以内に母親にならない」「35歳以下」「容姿端麗で性格がよい」「身長165cm以上」「結婚しない、再婚しない」「男性のみ」「酒の相手をしろ」などの性差別的条件が書かれています。

女子大学生たちは、「女性の就職の障害を乗り越えよう」という標語を書いたプラカードを掲げて、就職活動に来た女性たちに、人の形の穴をくぐり抜けてもらうというパフォーマンスをしました(「女性求职“障碍门”」[写真あり]杭州網2012年4月17日)。

活動の発起人は2人の大学4年生の女子学生ですが、彼女たちによると、パネルの上に書いている条件は、冗談でも何でもなく、みな、身近な女性が経験したことだそうで、「私のある学友は、銀行に応募したのですが、なんと『3年以内に結婚してはならず、子どもを産んではならない』という条件を突きつけられました。またある学友は、外国貿易を専攻して、翻訳の仕事に応募したのですが、『容姿端麗』であることのみならず、『酒の相手ができる』ことも要求されました」とのことです。

女子大学生たちは、同じQQ群(SNSの一種)でおしゃべりをしているうちに、企業と社会にアピールするための手段として、今回のパフォーマンスアートを思いついたそうです。



上ののパフォーマンスアートは、「男性トイレ占拠」をした人々によって担われており、女性の身体の自主権の問題を取り上げています。も含めて、大きな意味では、一つの流れとして捉えられると思いますが(相互に連携しているという報道は見当たりませんが)、は、ご覧のように、大学生が直面している就職差別の問題を連続して取り上げており、テーマも参加者も広がってきた感があります。

ただ、フェミニズムにもとづく「パフォーマンスアート」といっても、たとえば日本で有名なイトー・ターリさんによるものなどと比べると、「アート」色は少なく、社会的な訴えをする「パフォーマンス」という色彩が強いことは間違いないと思います。

なぜ中国では「パフォーマンスアート」という形で女性差別に抗議をするアクションが目立つのか、よくわかりませんが、一つには、現在の中国のさまざまな政治的・社会的制約の中では、こうした形をとるのが効果的であり、マスコミにも載りやすい、といったことがあるのではないかと思います。

しかし、直接政治的な危険はないとしても、ある程度は度胸が必要なアクションですし、彼女たちは、確固としたフェミニストとしての意識や思想を持ってやっていることは間違いがないように思います。李麦子さんの発言を見ると、フェミニズムを理論的にも深く探究しておられるようです。

パフォーマンスアートによって女性差別に対して抗議の声を上げることは、なにも今年から始まったわけではなく、たとえば、2009年の玉嬌事件(本ブログの記事)に際しても、中華女子学院の女子大学生が、北京のビルの前で、体に白い布に何重にも巻き付けて、横たわり、もがくというパフォーマンスをしています。これは、女性が何重にも束縛されていることを示すもので、そばには「誰」「都」「可」「能」「成」「為」「」「玉」「嬌」(誰もが玉嬌になるかもしれない)という9つの文字を書いた紙を置きました(北京益仁平中心「女大学生受邓玉嬌事件启发创作行为艺术」[2009-5-27]NGO発展交流網[リンク切れ]→転載「北京上演玉嬌事件行為藝術」[2009-05-28]昊天上帝始祖サイト)。

けれど、今年の、「男性トイレ占拠」から始まった一連のアクションは今までにない連続性を持っているようで、注目したいと思います。
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