2017-06

2006年の女性をめぐる話題

 先日、『中国婦女報』の編集部が今年の元旦に発表した2006年の「十大ニュース」をお伝えしました。
 その4日後、王春霞記者は同紙に「2006年のけっして周縁的ではない女性の話題」と題する記事を書き、2006年に話題になった以下のようなことを、女性をめぐる代表的な話題として挙げています(1)

 今回は、それらを論じた当時の『中国婦女報』などの記事を注に付しつつ、王さんの挙げた出来事を簡単に紹介します。

高齢の妊産婦の「出産[生]」と「昇進[升]」の痛み
 2006年6月、『中国婦女報』の記者が調査したところ、最近妊産婦が高齢化していることがわかりました。北京市人民病院では30歳以上の妊産婦が52%、35歳以上の妊産婦が12%でした。
 同紙の記事は、あまりに高齢での出産には危険があるけれども、こうした妊産婦の高齢化の背景には、出産すると昇進できないだけでなく、賃下げまでされる場合もあるなど、出産が社会的に保障されていないという状況があることを指摘しています(2)

女性作家が「命懸けで反抗する」ことに反対
 22歳のある女性が強姦犯に抵抗して殺されました。
 作家の陳嵐さんは、「強姦に命懸けで反抗するのは、人類の恥辱!」という文を発表します。
 陳さんは、女性は強姦に命懸けで反抗すべきだと唱える男性は、「男性の性の専属権は女性の生命よりも重要である」と潜在的に認識していると指摘し、このような要求は道徳的に行き過ぎであって、女性自身の安全を保つことを第一にすべきであると主張しました。陳さんはまた、「女性がこの時に守っているのは、彼女の後ろの男性の権益であり、彼女の生命権もまた自己のものではなく、ある男性のものである」と指摘しました(3)

女性労働者の突然死が引き起こした重苦しい話題
 2006年、全国各地で農村から都市に働きに出てきた女性が突然死・過労死するという事件が相次ぎました。
 その背景には、職場の高温・有害物質・粉塵など、労働環境の劣悪さ、残業や休日出勤などによる労働時間の長さ、法律や政策の無力さ・貧弱さなどがあることが指摘されました(4)

「お妾さん」の権利を擁護をすべきか?
 2006年6月、法学修士の鄭百春さんが「お妾さん(二奶)の権利擁護ネット」というホームページを開設します。
 鄭さんとその支持者は、「『お妾さん』もまず人間であり、婚姻道徳には反しているとはいえ、一人の公民として、法律が一人一人の公民に与えた権利は持っている」ということを主張しました。
 それに対して、「『お妾さん』の権利の擁護は、別の弱者である『妻』を苦しめる」という意見もありました。
 『中国婦女報』では、この問題をジェンダーの視点からはどう考えるべきかが論じられました(5)

張事件が暴き出した「裏のルール[潜規則]」
 女優の張さんは、映画監督が役と引き換えに女優に肉体関係を強要しているという実態を告発、監督らとの性行為を録画したビデオやテープを公開、ネットにもupしました。
 張さんは、男性のプライバシーを犯しているとか、性の問題を公の場にさらしたとか、動機に邪まなものがあるとかいう非難を受けます。
 しかし呂頻さんは、張さんが「取り引き」という名の下の女性に対する性的搾取を暴き出したことこそが重要だと『中国婦女報』で指摘しています(6)

花季の少女がやむなく「赤ん坊を出産することによって強姦を証明[産嬰証奸]」
 16歳の少女が、雇い主に強姦されました。彼女は事件を警察に届け出る時期を失してしまったため、赤ん坊を出産することによって強姦されたことを証明しようとします。
 この事件に対しては、こうしたやり方は犯人を懲罰するためにも、自分のためにも適切ではないけれども、彼女がそうした背景には、社会的な救助のメカニズムの欠如があることが指摘されました(7)

億万長者が集団で花嫁を募集
 憶万の資産を持つ富豪が広告を出して結婚相手を募集するということは、近年ずっとあったようですが、2006年は特にその規模が大きく、話題になったそうです。
 そうした広告は、基本的にはみな、妻には「年が若い、美人、上品で、大学や専門学校以上の学歴があり、初婚である」ことを求めているのですが、こうした広告を出す富豪は、通常中年の男子で、再婚だといいます。
 こうした広告に対しては、これは一見個人的なことに見えるけれども、広告として出すことは社会的な影響があり、また女性を人格的に傷つけるという指摘もあがりました(8)

(1)「2006那些並辺縁的女性話題」『中国婦女報』2007年1月5日。
(2)「関注“高齢産婦”話題」『中国婦女報』2006年1月20日、「(職業女性生育困境調査・現状篇)“生”“升”困境致産婦高齢化」『中国婦女報』2006年7月13日「(同・原因篇)生育的代価,誰来分担」『中国婦女報』2006年7月14日「(同・出路篇)生育這件大事需統籌解決」『中国婦女報』2006年7月15日
(3)陳嵐「面対強奸,冒死反抗是人類的恥辱!」(2006年7月22日。ブログの一部から引用)、「女作家反対“冒死反抗”引争議」『中国婦女報』2006年7月22日「女作家陳嵐:生命権高于一切」『中国婦女報』2006年7月25日
(4)「女工連続4天加班22小時猝死」『中国婦女報』2006年6月3日、「女工猝死引発権益保護沈重話題―来自粤閩両地女工権益保護調査系列報道(一)」『中国婦女報』2006年8月31日「女工被迫陥入加班“潜規則”中無力抽身―同(二)」『中国婦女報』2006年9月1日「悪劣環境漸成女工“慢性殺手”―同(三)」『中国婦女報』2006年9月2日「女工権益保護現状呼喚維権新思路―同(四)」『中国婦女報』2006年9月4日
(5)「二奶維権網」(非常につながりにくい)。『中国婦女報』における議論としては、「為“二奶”討説法 深陥倫理与法的悖論」2006年10月17日郭慧敏「社会性別視角下的“二奶維権”」2006年10月17日「該不該為“二奶”維権?」2006年12月23日など。
(6)張さんのブログ呂頻「如何譲張事件不僅是醜聞」『中国婦女報』2006年11月28日洛洛「無権者的無恥」『中国婦女報』2006年12月5日
 なお、この事件については、『南方週末』2006年11月23日付の「張:我用明擺着的無恥対付潜在的無恥」と題する、張さんに対するインタビュー記事を要紘一郎さんが日本語に翻訳していらっしゃいます。
 週刊誌も、『週刊ポスト』2007年1月12・19日号が「『好色映画監督は許さない』で北京は大騒ぎ 中国大人気女優が『性上納ビデオ』を復讐公開」として報じています。この記事も張さん自身にも取材しており、張さんの主張を伝えるものになっています。ただ、この記事の締めくくりが「女を敵に回すと怖いのは中国でも同じようだ」となっているのはともかく、特集の題名が「仰天オンナの2連発!」となっていて、張さんを「仰天オンナ」扱いしているのはいただけない。
 また、『クーリエ・ジェポン』2007年1月14・18日号も報じていますが、こちらも、「中国版・石原真理子?」という見出しであり、やはり告発した女性に焦点を当てた見出しになっています(なお、日本のマスコミの石原真理子さんの本に対する報じ方についても、DVをした玉置さんではなく、告発した石原さんを非難するなど、問題が大きいことを伊田広行さんが指摘していらっしゃいます)。
(7)「花季少女無奈“産嬰証奸”」『中国婦女報』2006年7月7日「“産嬰証奸”,少女心里有多苦?」『中国婦女報』2006年7月11日
(8)丁香花・葉静「又見富豪徴婚」『中国婦女報』2006年9月23日
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