2017-03

「2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」

 中国のゲイサイト「淡藍網」が昨年の大晦日に発表した、「2011年中国10大セクシュアル・マイノリティニュース(淡蓝网盘点:2011年中国十大同志新闻)」をご紹介します。以下は全文の翻訳ではなく、抄訳です)。

1.呂麗萍がミニブログで反同性愛の言論をまき散らし、淡藍網などの同志 (セクシュアルマイノリティ、LGBTの意) 組織がボイコットを呼びかけた

 中国本土の女優の呂麗萍(リュイ・リーピン、Wikipediaの説明[日本語])が6月26日、ミニブログ(Wikipediaの説明[日本語])の中で、ある牧師の日記を転載して、「恥」「罪人」などの言葉で同性愛者たちに対して悪意の中傷をしたため、インターネットで大きな騒ぎが起こった。この事件が発生した後、淡藍網、同性愛者の家族と友人の会(同性恋亲友会)、レズビアン誌『LES+』などの多くの同志組織が共同で、孫海英・呂麗萍夫妻の作品のボイコットを呼びかけ、多くのネットユーザーの積極的な反応を得た。

淡藍網のコメント
 孫・呂夫妻は、再三再四ホモフォビアの言論をおこなったため、同志の人々の怒りは止まらず、より多くの人が初めて同志の同権に対して公に支持を表明した。不完全な統計だが、この騒ぎの中で、相次いで李銀河・程青松・蔡康永・宋丹丹など76人の有名人が同志を支持し、孫・呂夫妻のホモフォビアの言論を譴責した。中国中央テレビ(Wikipediaの説明[日本語])、鳳凰衛視[衛星テレビ](Wikipediaの説明[日本語])、東方衛視、環球時報、新華日報など多くの国内外のメディアも、この事件を報道するか、この事件に関心を持った。金馬賞(1962年に創設された中華圏を代表する映画賞。「台湾アカデミー賞」とも称される。Wikipediaの説明[日本語])の組織委員会も、呂麗萍をプレゼンテイターとして招くことをしばらく見合わせた。事実は証明している。偽の科学、偽の宗教あるいは極端な原理主義がいったん平等な人権を尊重する世界の普遍的価値観に背けば、必然的に現代文明に打ち捨てられる。同志たちは、永遠にうなだれたままではないのだ!

日本語での報道
 ・「大物女優が『同性愛者は罪人』、人気司会者が反発=出演作ボイコットも―中国」Record China2011年7月1日
 ・「有名女優が同性愛『敵視』発言 是非をめぐる論争激化」Insight CHINA2011年7月15日
 ・「『金馬奨』が大物女優の招待を見合わせ 同性愛批判の発言が波紋」Insight CHINA2011年7月15日

2.中央テレビが呂麗萍の反同性愛事件を報道し、差別をやめるよう訴えた

 北京時間7月4日、中国中央テレビ(CCTV、Wikipediaの説明[日本語])のニュースチャンネル「24時間」が呂麗萍の反同性愛事件について報道をおこなった。番組は、「差別をやめる」「それぞれの人々の自己の選択を尊重する」などの観点から、呂麗萍は自己を顧みて反省すべきだと明確に指摘した。

淡藍網のコメント
 中央テレビが同性愛に関する事件をきちんと報道した事件は、政府とメディアが社会における差別問題を重視し、積極的に良い方向に導きつつあることを示している。この事件は、また、セクシュアル・マイノリティという「弱者グループ」が集団としての力と平等の訴えを公に示すことによって、社会各界の広範な関心を集めたことをも示している。

3.「映画産業促進法意見募集稿」が、禁止する内容から「同性愛」を削除した

 国務院法制弁公室が12月15日に発表した「映画産業促進法意見募集稿」は、広く社会各界の意見を求めた(「国务院法制办公布电影产业促进法征求意见稿」)。著名な映画人である程青松は、この「意見募集稿」では、「同性愛」が禁止内容から削除されていることを発見した。

淡藍網のコメント
 2001年の同性愛の「非病理化」以来、この十年のうちに、社会の包容性の進歩によって、私たちは次第に希望を持つことができるようになった。この「意見募集稿」の出現は、セクマイ集団の「脱スティグマ(汚名)化」の曙光になることができるのだろうか? 私たちは同性愛映画が解禁される日を期待しており、公然とした、平等な生活ができることをさらに期待している。

遠山の疑問
 程青松さんは、「映画産業促進法意見募集稿」において、映画で禁止される内容を挙げている第22条の第8項目に「猥褻・賭博・薬物吸引の宣揚、暴力・テロの誇張」とあるだけで、「同性愛」が入っていないことに注目しています(「电影产业促进法征求意见稿发布 同性恋题材期待解禁」淡藍網2011年12月17日)。しかし、中国でこれまで映画を規制していた「映画管理条例(电影管理条例)」(2002年施行)において同様に禁止内容を挙げている第25条のどの項目にも「同性愛」は入っていないので、私には特に今回「同性愛」の描写が解禁されるようには読めませんでしたが……。
 今回の「意見募集稿」について、中国のマスコミは、むしろ映画で禁止される内容が10項目から13項目に拡大したことに注目しており(「电影被禁内容拟由10项至13项 不搞分级」新華網2011年12月14日[来源:法制日報])、日本のマスコミも、今回の案を映画規制を強化するものと捉えています(「中国、映画規制強化へ法律案 衛星テレビに続き世論管理」朝日新聞デジタル2011年12月16日、「中国、映画規制の法律制定へ 国家に危害を与えることなど禁止」47NEWS2011年12月15日)。

4.第1回中国レインボーメディア賞がとどこおりなく挙行された

 今年[2011年]12月、第1回中国レインボーメディア賞[中国彩虹媒体奨]がとどこおりなく挙行され、南方周末、鳳凰衛視などのメディア機構が「致敬[敬意を表する]メディア賞」を獲得し、李銀河が「特別貢献賞」、程青松・蔡康永・宋丹丹・金星が「2011年同志致敬人物賞」を受賞した。

淡藍網のコメント
 長年、中国の大衆メディアにおける同性愛者たちの姿は、しばしばマイナスイメージのもの、あるいは歪曲されたものだった。けれども、中国レインボーメディア賞の出現は、セクシュアル・マイノリティのグループが温和な方法で主流のメディアを動かして、客観的・公正・包容的な態度で同性愛関係の情報を報道することを推進し、責任感と良心を持ったメディアの機構と従業員に敬意を表したことを示している。

5.李鉄が同性婚の合法化を攻撃し、同性愛の話題が再度注目された

 8月30日、本土の新聞『南方周末』の評論員の李鉄が、南方テレビ局の「全民議事聴」番組に参加して、深圳の男性同性愛カップルの馬克と安安が公然と結婚したことについて、「同性婚を合法化すべきか否か」という弁論を展開した。李鉄は、反対派として、「婚姻の定義を変えることは主流社会の価値観と衝突する」と言って同性婚を攻撃し、また同性どうしの結合と近親相姦とを同列に論じた。しかし、中山大学ジェンダー教育フォーラムから来た、賛成派の代表の柯倩婷と黄海濤、現場のゲストの呉幼堅女史、馬克と安安、および場外のオンラインのゲストの李銀河と程青松は、みな李鉄の論点に反駁した。

淡藍網のコメント
 多くのネットユーザーも声を上げ、同志組織は、人々に南方報業グループ(『南方周末』などを発行しているグループ)に電話で抗議するよう呼び掛けた。このことは、中国のセクマイたちはもう沈黙しないということを改めて示した。

6.李銀河が「同性婚の提案」をまた提出した

 2月26日、李銀河は、ブログで両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)の期間に提出する同性婚合法化の提案を詳細に述べた。彼女は5点の根拠を挙げ、同性婚の承認は、中国の国際的イメージを大きく向上させると述べた(「批准同性婚姻将大大提升中国的国际形象」李銀河ブログ2011年2月26日)。

淡藍網のコメント
 李銀河博士は、今年[2011年]3月の両会の期間にまた「同性婚の提案」を出した。これは彼女の7年来の4回目の提案である。李銀河は人民代表大会の代表(議員)でも、政治協商会議の委員でもないので、1人の人民代表大会の代表に託して提出した。しかし、規定によると、提案は30名の代表の署名を獲得しなければ、正式の議案として審議されない。
 納税者であるセクマイたちは、同性愛というデリケートな話題について、代表たちが民衆のために発言し、平等を推進するという責任を履行することを願っているにもかかわらず、多くの代表はそれを回避したため、この提案はまた日の目を見ずに終わった。同性婚の合法化は依然として「任重くして道遠し」である。

7.各地で同性愛者が続々と結婚式をおこない、同性婚の合法化のニーズがますます強まった

 2011年は、北京、深圳、東莞、中山、武漢、保定、台湾……で続々と公開の同性の結婚式がおこなわれた。そのうち少なくとも8件が、メディアと公衆の広範な討論を起こした。

 中山:广东首例同性恋婚礼元旦在举行 吴幼坚证婚
 北京:同性恋情侣高调办婚礼 用“婚姻”预防艾滋
 东莞:男同性恋情侣相恋三年 元宵节举行婚礼
 武汉:同志街头办婚礼 声援同性恋婚姻合法化
 保定:河北首例公开的同性恋婚礼 百余人到场参加
 深圳:首次男同性恋公开婚礼 呼吁社会的理解和祝福
 台湾:最大规模同性恋婚礼 80对女同志集体结婚
 台湾:首届彩虹文化祭9月举行 同性恋情侣办婚礼

淡藍網のコメント
 李銀河の同性婚の提案はまたもや成果がなかった。しかし、何者も、同性愛者たちの「結婚したい」という平等な願望を阻止できない。ネットユーザーが言うように、同性愛者たちが婚姻を合法化したいのは、「将来彼と財産を分けたいからでも、相手が不倫をしないように束縛するためでもなく、万一のことがあった日、私が手術台に上がった時、彼が手術の同意書に私の家族として署名し、万一私が病院で危篤になったとき、彼に家族の身分で私に会ってほしいからだ」。

8.セクマイのサイトが主流メディアに注目され、淡藍網のCEOが捜狐のトップページに登場した

 2011年11月17日、捜狐網(中国の三大ポータルサイトの一つ)は、トップページの最も重要な位置で、淡藍網CEOの耿楽の独占インタビュービデオを推薦した。これは、国内で初めて主流メディアがセクシュアル・マイノリティのサイトに注目し、報道したものである。

淡藍網のコメント
 捜狐網がこのように大きく報道し、強く推薦したことは、国内では初めてのことである。

9.トランスジェンダーのダンサーの金星が「非同凡響」に差別され、パージされた

 東方衛視の「舞林大会」(ダンス番組)や浙江衛視の「非同凡響」(歌番組)の審査員であるダンサーの金星が今年[2011年]9月のミニブログの日記の中で声明を出して、自分は「非同凡響」の決勝とはもう無関係であること、その原因は、浙江広播電影電視総局(ラジオ・テレビ・映画を統括する政府機関)が、金星のトランスジェンダーとしての経歴ゆえに、番組に対して「更迭」するよう通知を出したことだと述べた。

淡藍網のコメント
 金星は憤慨して、ミニブログに「審査員になるかならないかは私にとって重要ではない。しかし、公然と公民の性別について差別したことについては、私はけっして認めることはできない!」と書いた。この世界はもともと多元的であるのに、なぜ差違の存在を否認するのか? なぜこの真実の世界に対して心を開かないのか?

参考:金星さんについての日本のネットの記事
 ・「芸術は人生経験で豊かになるもの、金星」サーチナ2006年3月1日。
 ・「中国政府が認める最初の男性から女性への性転換者、金星さんがAFPのインタビューに答えた - 中国」AFPBB News2007年3月19日。

10.男性同性愛のエイズ防止の「絵」が北京の住宅地区に入り、同性愛者の愛情を表現したことが、議論を引き起こした

 11月29日、第24回世界エイズデーの際、北京のネットユーザー「Ranie」がミニブログに、彼女の家の住宅地区の3枚のエイズ防止宣伝画を貼った。その内容は、2人の男子が抱き合ったり、手をつないだりしているもので、宣伝の標語は、それぞれ「エイズ防止のために、必ずコンドームを使おう」「エイズは無情だが、同志(セクマイ)には愛がある」「健康に関心を持ち、定期的に検査をしよう」である。この宣伝画は明確に男性同性愛者たちをターゲットにしており、少なからぬネットユーザーの議論を巻き起こした。ある人は、北京は「開放的だ」「包容力がある」と感心し褒めたたえたが、受け入れられないという人もいた。

淡藍網のコメント
 同性愛を受け入れるか否かにかかわらず、「命を大切にする」ことは、軽視してはならない態度だ!

遠山補足
 3枚の写真は、それぞれ、123、です。



 「淡藍網」は、この10大ニュースを総括して、「この1年間、中国のセクシュアル・マイノリティたちは、強者を恐れることなく、団結して差別に対抗し、その健康的な姿を公に示し、幸福な愛情に対する渇望を表現し伝えた。それと同時に、ますます多くの異性愛の人々がセクマイのために声を上げ、若干の主流メディアも同性愛の話題について肯定的な報道をおこなった」と述べています。

 この10大ニュースは、一つ一つは、明確な「変革」ではなく、小さな個別の事件だと言いうると私は思うのですが、その中の小さな変化を敏感にキャッチして、上のような力強いメッセージを発している点は、さすがだと感じます。

 ただ、この10大ニュースは、さまざまなセクシュアル・マイノリティの問題を扱っているとはいえ、「淡藍網」にゲイサイトとしての性格が強いせいか(たとえば、掲載されている広告はすべて男性同性愛者向け)、やはり若干、ゲイ中心ではないかという疑問も抱きました。

 たとえば、レズビアンの問題に注目したら、2011年1月に初のレズビアン話劇[伝統劇である「京劇」などと異なる、会話中心の劇]である「歓憂塔」(ブログ「欢忧塔」)が上演されたことを入れてもよいのではないかと思います。また、次回ご紹介しますが、若手学者が選ぶ「第4回(2011年)セックス/ジェンダー事件(第四届(2011年)年度性与性别事件评点公告)」は、鄭州で「耽美(BL)小説網」の32名の契約作者(大部分は20歳前後の女性)が逮捕された事件などを入れているのですが、こうした事件も入れていません(この事件については、「中国の鄭州でBL小説サイトが摘発され関係者が大量に逮捕される」「『日中文化交流』と書いてオタ活動と読む」ブログ2011年3月28日など参照)。

 なお、2007年以後、昨年までの10大ニュースについては、以下をご覧ください。
 ・「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース
 ・「『2010年中国10大同性愛ニュース』
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