2017-05

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「女性労働者特別労働保護条例(意見募集稿)」に対する女性団体の意見

 11月21日、国務院法制弁公室は、「女性労働者特別労働保護条例(意見募集稿)」を発表するとともに、それに対する意見を求める通知を出しました(「国务院法制办公室关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》公开征求意见的通知」国务院法制办公室2011年11月21日)。

 中国では、1988年に、「女性労働者保護規定(女职工劳动保护规定日本語訳)」が、「女性労働者の生理的特徴が引き起こす労働の中の特別な困難を減らし解決する」(第1条)ために制定されました。上の「通知」は、その「女性労働者保護規定」の改定案について、社会の各界の意見を求めたものです(1)

今回の改定についての政府側の説明

 国務院法制弁公室は、今回の改定の主な内容を以下のように説明しています。

(一)条例の名称について

 「労働法(中华人民共和国劳动法日本語訳)」第7章の、女性労働者に対する特別な労働保護の実行に関する規定にもとづいて、「女性労働者保護規定(女职工劳动保护规定)」を「女性労働者特別労働保護条例(女职工特殊劳动保护条例)」に改める。

(二)労働禁忌範囲(女性労働者が従事してはならない坑内労働や重い肉体労働、月経中の高所・低温・冷水作業、月経・妊娠中の重労働など)について

 「女性労働者保護規定」の中の女性労働者の労働禁忌範囲についての規定は、比較的原則だけを定めたものであり、現在は、主に、もとの労働部(遠山注:現在の「人力資源と社会保障部」)が制定した「女性労働者労働禁忌範囲規定(女职工禁忌劳动范围的规定)」を執行している。条例の実効性を増すため、意見募集稿は、女性労働者の労働禁忌範囲の内容を条例に組み入れ、また、現在の経済・社会の発展状況にもとづいて十分に論証した基礎の上に、労働禁忌範囲の内容を適当に調整した。同時に、労働禁忌範囲は社会の実際の状況に基づいて不断に調整する必要があるが、労働禁忌範囲の調整のために条例を頻繁に改定することを避けるために、意見募集稿は、労働禁忌範囲を条例の付録として列記する。労働禁忌範囲の調整が必要なときは、国家安全生産監督部門が国務院衛生行政部門と共同でプランを提出し、国務院に報告し批准を得て、公布する(第3条)。

(三)産休の日数と産休中の給与について(2)

 第一に、ILO条約の規定を参照して、産休を90日から14週間に増やした(第7条第1款)。
 第二に、もとの労働部の関係規則を参照して、流産の休暇を細分化し、女性労働者が妊娠4か月未満で流産した場合は、少なくとも2週間の産休とし、妊娠4か月以上で流産した場合は、少なくとも6週間の産休とした(第7条第2款)。
 第三に、社会保険法(中华人民共和国社会保险法)と接続するため、企業労働者生育保険試行規則(企业职工生育保险试行办法)を参照して、「女性労働者が出産または流産したら、その賃金または出産手当および出産・流産の医療費用は、勤務先がすでに生育[出産育児]保険に参加している場合は、生育保険の基金から支出し、まだ生育保険に参加していない場合は、人を雇う単位から支出する」と規定した(第8条)。

(四)法律上の責任について

 「女性労働者保護規定」の法律上の責任に関する規定は比較的原則的(なものにとどまって)であり、実践においては使うのが難しかった。条例をきちんと遂行することを保証するため、意見募集稿は「人を雇う単位が本条例に違反した場合は、安全生産監督管理部門・衛生行政部門・人力資源社会保障部門が各自の職責に照らして、人を雇う単位に責任を持って期限までに改めるように命じ、『労働保障監察条例(劳动保障监察条例)』の関係規定によって罰金を課す、または直接責任を負う主管者及びその他の直接の責任者を法によって処分する」と規定した(第13条)。

産休の期間の延長をめぐって

 今回の意見募集稿について、メディアでは、産休の期間を90日から14週間(98日)に延ばした点が最も多く取り上げてられています。明確かつ具体的な変更だからでしょう。具体的には、以下のような点が問題にされています。

 1)多くの地方では、「晩産休暇」が30日ある。また、旧い「女性労働者保護規定」には、「難産休暇」が15日規定されている。それらの休暇は新しい「女性労働者特別労働保護条例」には規定されていないが、それらの休暇はなくなったりはしないか? もしなくなるのなら、実質的には休暇を延長したとは言えないのではないか?(3)

 この点について、劉明輝さん(中華女子学院教授)は、「産休を少なくとも8週間に延ばしたのは、ILO「2000年母性保護条約」(183号条約)[日本語訳]の規定と一致している」と述べています。劉さんも「各地の人口と計画生育条例の規定に基づくと、晩産の女性の実際の産休は14周より長い。たとえば『北京市人口と計画生育条例』は、24歳以後に出産した女性は晩産休暇を取れる。すなわち、90日の産休の後もう1か月休める。この点から言えば、産休を8日増やす実質的な意義は少ない」ことを認めています。しかし、劉さんは「晩産でない女性にとっては、休暇を8日増やすことに一定の意義がある」と指摘しています(4)。また、胡泉さん(弁護士)は、「新しく増える8日の休みは、これまでの基礎の上に増える」と述べており、この解釈だと、晩産休暇にプラスして8日休めることになります(5)

 2)小さな私営企業などでは、長い産休を与えることは不可能だ。産休を延ばすとコストがかかるので、企業が今よりも女性を雇いたがらなくなるのではないか?(6)

 この点について、劉伯紅さん(全国婦連女性研究所副所長)は、経済的奨励や罰則によってきちんと法律を守らせる必要があることを指摘しています(7)

 3)現実には、妊娠・産休期間中に解雇されるとか、妊娠中に時間外労働や重い肉体労働をさせられることが多い。実効性はあるのか?(8)

 この点については、はっきりした回答を示している人はありません。やはり、こうした危惧はあります。

女性団体・女性グループの意見

 今回の意見募集稿については、さまざまな女性団体・女性グループ(中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム、中共中央党校女性研究センタージェンダー平等唱道課題グループ、中華全国婦女連合会[全国婦連]女性研究所、手牽手交友活動室・小小草工友文化家園)が、それぞれ意見を発表しています(9)。それらの意見は、今回の意見募集稿に根本的に欠けているものを浮かび上がらせています。

 以下、どのような内容が提案されているかを紹介します。

一、法律の目的と根拠――単なる健康の保護のためではなく、男女の実質的平等のためのものとして位置づけよ

 全国婦連女性研究所の提案は、以下のように述べています(要旨)。

 本条例の第1条は「女性労働者の生理的特徴がもたらす労働の中の特別な困難を減らし解決して、その健康を保護するために、労働法にもとづいて、本条例を制定する」と規定している。

 しかし、女性労働者に特別な労働保護をするのは、その健康を保護するためだけでなく、特別な時期の合法的な労働権益を保護することによって、女性労働者に男性労働者と平等な就業の機会と待遇を獲得させることによって、実質的な平等を実現するためである。また、本条例の上位法は、労働法だけであるべきではない。なぜなら、本条例は女性という特別な集団の権益を保護するものだから、婦女権益保障法も上位法にしなければならない。

 それゆえ、本条例の第1条は「女性の権益を保護し、女性労働者のリプロダクティブヘルスと職業の発展のニーズを満たすために、労働法と婦女権益保障法に基づき、本条例を制定する」と改めるよう提案する。

 この全国婦連女性研究所の提案は、包括的なものであり、簡単にですが、以下のの内容も含んでいます。

二、使用者にセクシュアルハラスメント防止の義務を課すべきである

 「中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム」は、「使用者は職場のセクシュアルハラスメント防止の措置を取らなければならない。職場のセクシュアルハラスメント防止の義務を履行していない場合は、権利を侵害した者とともに連帯責任を負わなければならない」という条文を入れるように求めています。その理由としては、以下の点を挙げています(要旨)。

1.職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の人格尊厳権・労働安全衛生権・平等就業権を侵犯する

 労働者の労働環境の安全・衛生を保障し、労働者の人格の尊厳と平等な就業権を尊重することは、労働法の基本的精神の重要な内容の一つであり、核心的な労働基準の一つであり、労働者の基本的権利である。

 わが国が署名・批准したILOの「職業上の安全及び健康に関する条約」(第155号条約)[日本語訳]は、締約国に労働者の生命・健康、仕事の能力、人道的労働環境を保護する措置、とくに法律的措置を要求している。職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の人格の尊厳と労働の安全衛生を侵犯し、被害者の心と体を損ない、労働関係を緊張させ、仕事の環境を劣悪にする。被害者は往々にして離職し、そのことによって生存権も脅かされる。

2.職場のセクシュアルハラスメントは、反セクシュアルハラスメント法の重点である。また、男性の被害者も保護する必要がある

 「婦女権益保障法」は、女性しかセクシュアルハラスメントを受けないように保護していない。また、セクシュアルハラスメントを一般的に禁止しているだけで、職場のセクシュアルハラスメントを言っていない。各国の反セクシュアルハラスメント法は、みな職場のセクシュアルハラスメント禁止に重点を置いている。反セクシュアルハラスメント制度の重点を最優先にし、両性ともが職場でセクシュアルハラスメントに遭遇した際に保護が必要だという現実のニーズに対応するためには、労働法の中で規制をしなければならない。労働法はまだ改正計画の中に入っておらず、専門の立法はいつになるかわからない。それゆえ、本条例の中でその制度を増設することは、理性的な選択である。

3.「防止を処罰よりも重視する」ことが、世界の反セクシュアルハラスメント立法の理念である

 他の地域の成功した経験、台湾の「セクシュアルハラスメント防止法」、フィリピンの「1995年反セクシュアルハラスメント法」などは、みな雇い主が職場のセクシュアルハラスメントを防止する義務と、義務を履行しなかった場合の賠償責任を規定している。このような規定は、使用者に職場のセクシュアルハラスメント防止メカニズムを構築するよう促進することができる。

 国内の多くの裁判の例は、問題が起きて後に救済するのは、コストが高すぎることを示している。立証が難しく、危険が大きく、勝訴が難しく、賠償が少ないだけでなく、報復されたり、世論の圧力によって形成された偏見にさらされたり、家族のメンバーからさえ足を引っ張られる危険もある。それゆえ、職場にセクシュアルハラスメント防止のメカニズムを設けることが極めて重要だと言える。

4.会社が被告になる裁判例は、雇い主の責任についての立法のニーズが現実にあることを明確に示している

 司法実践の中では、会社とセクハラ加害者が共同で被告になる裁判がすでに出現している。たとえば、全国を騒がせた、2009年の女性ホワイトカラーLが上司の横山宏明と広州の某日系企業を訴えた権利侵害事件では、初めて会社が被告席に座らされた。被告会社に対する原告の請求は支持を得られなかったとはいえ、この裁判は雇い主の責任についての立法のニーズを明確に示した。関連する国家の立法がなく、地方の立法が不明確だったことによって、被告会社に対する原告の理に合った請求が支持を得られず、この裁判が体現している法律上の正義は大きく割り引かれた(遠山注:この事件とその判決については、本ブログの記事「広州でのセクハラ勝訴判決をめぐって」参照)。だから、この空白を早急に埋める必要がある。

5.国家の立法が地方の法規に立ち遅れており、国家の法制の統一に不利である

 職場でのセクシュアルハラスメントの蔓延を食い止めるために、大多数の省・直轄市・自治区は、地方性法規の中でセクシュアルハラスメントを防止する雇い主の責任を定めている。たとえば、「四川省『中華人民共和国婦女権益保障法』施行規則」第47条は、「人を雇う単位と雇い主は、仕事の場所でのセクシュアルハラスメントを制止する措置を取らなければならない」「仕事の場所で発生した女性に対するセクシュアルハラスメントが、女性の身体・精神・名誉に損害を与え、単位または雇い主に過失があった場合は、法によって相応の民事賠償の責任を負わなければならない」と規定している。

 このような地方の法規は上位法の根拠がないために、現在、具合の悪い状況に置かれている。一方では、現実はたしかに上述の規範を必要としており、もう一方では、「立法法」に合っていないという欠陥が存在している。このような国家の法制の不統一の状況は速やかに変えなければならない。

6.使用者が職場のセクシュアルハラスメントを防止する措置はすでに試験的に成功しており、この規範は実現可能性を有している

 近年、企業が社会的責任感と企業文化の精神に基づいて、人の尊厳を尊重し、企業の生存や発展に関わる信用を損なわないようにするため、若干の先進的企業が職場のセクシュアルハラスメント防止の義務を主体的に引き受けている。たとえば、通用電気(中国)公司を模範事例として、ILOなどの機構が元北京大学女性法律研究・サービスセンターに資金援助をして、河北省衡水市老白乾醸酒(集団)有限公司、北京翠微ビル、北京西郊賓館、唯美度(AESTHETIC)国際美容チェーングループ有限公司、中山火炬城建開発有限公司、河北製薬グループ有限公司などの企業で試験的な取り組みをおこなった(遠山注:この実践については、本ブログの記事「北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターによる企業内のセクハラ防止制度構築の取り組み」参照)。

 これらの企業の職場のセクハラ防止措置の中には、職場のセクハラを防止するための規則や制度を作り、セクハラの訴えを受理し、訴えのあった事件の処理をする専門の機構を設置するだけでなく、管理者の職責も明確している(その中には、機を逸せずに訴え又は通報のあった事件を調査・処理し、被害者に対して救済措置をとり、加害者を処罰するという積極的な作為義務と、秘密を漏らしたり、報復してはならないなどの義務とを含んでいる)。「人を雇う単位がどのような防止措置を取るか」ということについては、すでに豊富な経験が蓄積されている。規則や制度を作った後は、上述の企業の労働関係は良好であり、セクシュアルハラスメント事件は起きていない。このことは、本条例が規定を増設するために一定の社会的基礎を築いた。以上からわかるように、使用者が職場のセクシュアルハラスメントを防止する規定は、必要であるだけでなく、実行することが可能である。

7.新しい「中国女性発展要綱」が立てた反セクシュアルハラスメントの目標を実現するのに有利である

 「中国女性発展要綱(2011-2020年)」(七)「女性と法律」の中の第11項は、「女性に対するセクシュアルハラスメントを有効に予防・制止する。セクシュアルハラスメントを有効に予防・制止する法規と工作のメカニズムを作り、整備し、セクシュアルハラスメント行為に対する取り締まりの力を強める。人を雇う単位は、仕事の場所でのセクシュアルハラスメントを防止するために有効な措置を取る」と規定している。本条例で職場のセクシュアルハラスメントの雇い主の責任を規定することは、この目標を実現するうえで有利である(10)

三、女性の労働を一律に禁止している職種を設けるのをやめるべきである

 この点について、「中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム」は、労働禁忌範囲の規定の中に、「ただし、『四期[月経期・妊娠期・出産期・授乳期]』以外の禁忌の職種については、女性労働者は従事しうる仕事を自ら申請することができる」という但し書きを付けるように提案しています。その理由は、以下の3点です。

1.坑内労働は必ずしも重い肉体労働ではない

 科学技術の進歩と機械化の程度の高まりにつれて、伝統的な人力による採掘の大部分はすでに機械によって代替され、労働強度が低下した。坑内作業には、ガス検査員などのような、重い肉体労働ではない職種もある。

2.国内外からの批判を回避する

 一部の相対的に高賃金の職種を女性の立入り禁止区域にすることは、その客観的効果は、女性の就労の機会を減らし、一部の適格な女性の就業の選択権を奪うことである。それは、客観的には女性の就労にとって障害になり、職業の性別分離を激化させる。このことは、内外のフェミニストの批判を招いている。

3.世界の基準に合わせ、立法の流れに合致させるのに有利である

 近年、「1935年の坑内作業(女子)条約」(第45号条約)[日本語訳]を批准した国家の一部はすでに脱退を声明している。たとえば、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、ジンバブエなど少なくとも28ヵ国である。「保護」を「エンパワメント」に改めるのが、世界の立法の趨勢である。

四、月経・妊娠・出産・授乳期の権利保障を

 その一方、各女性団体(グループ)は、女性の月経・妊娠・出産・授乳期に関しては、女性の権利の保障を強化すべきことを唱えています。

 深圳市の手牽手交友活動室(手牵手工友活动室)と小小草工友文化家園(小小草工友家园)は、以下の1~3の点を修正するように求めています。この2つの団体は農村からの出稼ぎ労働者を支援している民間団体なので、この提案は、以下に見るように、出稼ぎの女性労働者の状況に基づいて書かれています。

1.「医務部門の証明を基づいて、月経痛の者は、有給休暇を取ることができる」という条文を入れる

 この提案は、「工業地区では、大量の女性労働者が電子・金属・プラスチック・玩具などの業務に従事しており、彼女たちの大多数は長い時間、立ち仕事をしており、かつ彼女たちの出勤制度は日勤・夜勤の交替制である。月経期間は身体が疲れやすく、腰と背中がいつも痛むので、しっかり休息することが必要である。しかし、多くの女性労働者は月経期間の立ち仕事のために、月経痛になり、なかには両脚が震え、仕事場で倒れる者さえいる。多くの工場は、労働者が持ち場を離れる時間を制限しており、トイレに行くのも5分を超えてはならないとか、トイレに行く回数にも規定があったりする。たとえ厳格な規定がなくても、生産量が多いので、多くの女性労働者はトイレに行けない。このことは、月経期間中の女性労働者に重大な影響がある。工場の規定は女性労働者の月経期間を考慮していないので、一部の女性労働者は月経痛でも休むことはできず、病欠を取るしかない」という状況にもとづいて出されています。

 この点については、中華女子学院ジェンダーと法律学術チームも同様の条文を入れることを主張しています。

2.「妊娠中のポストの異動は、もとの賃金と福利を変えないことを保障する前提の下でおこなわなければならない」という規定を入れる

 この提案は、「産休は農村から来た女性労働者にとってたしかに重要だけれども、大多数の女性労働者は妊娠期間中に『自発的に』離職する。なぜなら彼女たちは合理的なポストの異動がされないため、子どもに影響を与えることを心配する。また、賃金が妊娠前よりも大きく減るために、もう辛い思いを『したいと思わない』。また、妊娠したことによって仕事に差し障りが起き、また友好的な仕事の雰囲気や企業文化がないために、いっそう差別されるからである」という状況にもとづいて出されています。

3.妊娠7か月以前も、時間外労働や夜勤の禁止を

 意見募集稿の第6条に「女性労働者で妊娠7か月以上の者は、使用者はその労働時間を延長したり、夜間労働を割り当てたりしてはならない」という規定がありますが、上の2つの団体は、それ以前の時期の妊婦も休息と保護が必要であることや、多くの女性労働者が夜勤ができないために離職する状況を訴えて、妊娠7か月以前の時期も、夜勤を禁止するよう主張しています。

 この点については、中華女子学院ジェンダーと法律学術チームも、「妊娠反応が強く、その職務の労働時間の延長や夜間労働が不適切な場合は、7か月以上という制限を受けない」という規定を加えるべきだとしています。

4.妊娠・出産・哺乳期の契約解除の禁止、産休後の現職復帰の保障を

 上の2の提案と一部重なりますが、全国婦連女性研究所は、「人を雇う単位は、妊娠・出産・哺乳を理由として女性労働者の労働契約を解除してはならない。人を雇う単位は、女性労働者が産休を終了した後、もとのポストまたは待遇が同じポストに復帰することを保証しなければならない」という規定を加えることを提案しています。これは、「現在、女性労働者が妊娠・出産・授乳などによってポストを調整させられたり、辞職を強いられたりする状況が比較的普遍的だから」という理由によるものです。

五、父親の育児休暇を設けるべきである

 この点を詳しく述べているのは、中共中央党校女性研究センターです。具体的には、「女性労働者の出産育児期間に、男性労働者は15日のケア休暇を取って、産婦と嬰児の世話をすることができる。休暇の時期の賃金は、生育[出産育児]保険の基金から支出する」という条文を設けることを提案しています。

 同センターは、その理由として、以下の3点を挙げています。

1.男性がその配偶者の出産育児期間に、配偶者と子どもの世話をすることは、男性公民が道義上引き受けなければならない責任であり、女性と子どもの心身の健康を保障し、正常な家庭生活を維持するための当然のことである。男性労働者に出産育児休暇とその際の手当てを与えることは、公衆の共同のニーズであり、男性を含めた公衆の広範な合意がある

2.わが国の少なくとも26の省・自治区・直轄市は地方性法規または地方政府の文書の形で、男性が出産育児休暇とその際の手当てを定めており、世界では少なくとも36の国あるいは地区が立法によってこの制度を規定している

3.男性労働者に出産育児休暇の手当てを与えることは、企業と政府の負担にならない。わが国の生育保険はそのための支出を完全に引き受けることができる

 全国婦連女性研究所も同様に父親のケア休暇を設けることを提案しています(全国婦連女性研究所は、「少なくとも2週間の有給の休暇」を与えるという提案をしています)(11)

 なお、中共中央党校女性研究センターは、すでに2008年に、男性のケア休暇を設ける提案をしています。詳しくは、本ブログの記事「中央党校女性研究センターが父親の育休を提案」を参照してください。上の1や2の点についての具体的な説明は、今回は省略しましたが、当時述べられていたことを上のリンクの記事で紹介しましたので、ご覧ください。このときは、当時審議されていた「社会保険法」の中に男性のケア休暇を盛り込むことを求める提案でしたが、実現しませんでした。

 以上、長々と紹介してきましたが、中共中央党校女性研究センターの提案に限らず、上で挙げた女性団体(グループ)のさまざまな提案は、それらの団体が従来から提案してきたけれども、まだ実現していないことが少なくありません。今回も、こうした提案が取り入られる可能性はそれほど多くないように思います。

 しかし、こうした提案を読むことによって、何が現在の焦点かがわかります。

 また、これまで女性団体(グループ)がこうした要求を続けてきたからこそ、地方性法規が変わったり、今回女性労働者の労働禁忌範囲について、政府が若干の「調整」をするなどの柔軟な対応をしたりしているという面も見なければならないと思います。

 また、女性団体(グループ)の提案は、その内容自体は以前と同じでも、最近の裁判での経験や調査研究、NGOによる試験的実施などによって、新しい根拠を提出できているという点で前進があるという面も見なければならないと思います。

 ただし、法律の実効性を確保するために重要であるはずの、法律上の責任に関する規定については、あまり議論がなされていないようです。その理由はよくわかりませんが、全人代が制定する法律ではなく行政の条例だから、多くを期待できないからでしょうか?

 また、労働禁忌範囲に関して言えば、「『この仕事は女性にとって有害だから女性が従事するのを禁止する』というのではなく、労働条件を改善することを通じて、すべての労働者が従事できるようにする」(劉伯紅)(12)という主張もなされており、こうした主張は、「男というジェンダー」を再検討することにもつながると思うのですが、まだそれほど深められてはいないようです。


(1)国務院法制弁公室、人力資源・社会保障部、全国総工会は2006年から「女性労働者保護規定」の改定作業を開始し、2008年に「女性労働者保護条例(修正草案)」を提出し、2010年5月にも、もう一度、「女性労働者保護条例(修正草案)」を出しています。2008年の修正草案を巡る議論の一部は、本ブログでも、「女性労働者保護規定の改正をめぐる議論(1)――たいした改正にはならない?」という記事にしました[(2)は書けませんでした]。また、2010年5月の修正草案をめぐっては、全国婦連女性研究所が、2011年3月、調査報告と対案を出しています(《女职工劳动保护规定》修改课题组「《女职工劳动保护规定》修改调查报告」妇女观察网2011年8月10日、この報告に対する報道は、「《女职工劳动保护规定》修改调查报告在京发布,该报告提出――女职工劳动禁忌范围应定期更新」『中国婦女報』2011年3月30日)。
(2)なお、呉偉民「中国国務院、『女性従業員特別労働保護条例(案)』聴取意見を公表」(中国ビジネスホットライン2011/12/6)という記事は、産休期間について、この条例案と上海市の現行の規則との比較をしています。
(3)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)、「网友质疑新产假时间缩水 产假是长了还是短了?」人民網2011年11月23日(来源『鄭州日報』)。
(4)从立法层面对女职工进行更完善的劳动保护——《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》系列解读(一)」『中国婦女報』2011年11月23日。
(5)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)。
(6)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)、「女职工权益保护加大或致企业性别歧视严重」人民網011年11月24日(来源:『中国広播網』)、「产假延长8天 女性叫好老板无奈」荆楚网2011年11月23日。
(7)从立法层面对女职工进行更完善的劳动保护――《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》系列解读(一)」『中国婦女報』2011年11月23日。
(8)63%人担心生育政策加剧女性就业难 怕难以落实」人民網2011年11月29日(来源『中国青年報』)。
(9)以下にそれぞれの全文が掲載されています。
 ・中华女子学院社会性别与法律学术团队「关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》的建议(1)(2011年11月22日)」婦女観察網2011年11月22日→11月28日更新。
 ・中央党校妇女研究中心性别平等倡导课题组「关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》的建议(2)(2011年11月22日)」婦女観察網2011年11月22日。
 ・全国婦聯妇女研究所「妇女研究所对“女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)”的修改建议(2011年12月9日)」中国婦女研究網2011年12月9日。
 ・「工人群体对《女职工特殊劳动保护条例》经期和孕期规定的意见」社会性別与発展在中国サイト2011年12月19日(来源:手牵手工友活动室 小小草工友文化家园)。
 また、12月1日に全国婦連権益部が開催した「女性労働者特別保護条例(意見募集稿)」改定座談会(「保障女职工健康 促进男女平等就业——全国妇联《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》修改座谈会综述」『中国婦女報』2011年12月6日)や12月12日に北京ニュース文化研究所と源衆ジェンダー発展センター/北京源衆諮詢が開催した「女性労働者特別保護条例(意見募集稿)」専門家研究討論会(「有专家在《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》专家研讨会上建议——生育产生的替工费用由生育保险支付」『中国婦女報』2011年12月14日)でも、さまざまな意見が出されています。それらの多くは、全国婦連女性研究所などの提案と重なっていますが、それ以外の意見も出されています。
(10)12月4日に北京衆沢女性法律相談サービスセンターが開催した女性労働者権益保障研究討論会でも、職場のセクハラを防止する条項を入れるべきだという意見が多くの専門家の共通認識になりました。「新条例应加防治性骚扰内容」(『中国婦女報』2011年12月7日)は、その研究討論会を詳しく報じています。張立鵬「设防治职场性骚扰雇主责任」(『中国婦女報』2011年12月15日)も、職場のセクハラを防止する雇い主の責任を明記することを主張しています。
(11)加男性护理假 加入条款正当其时」(『中国経済導報』2011年11月26日)も、李慧英・劉澄・呂頻の3氏による、男性のケア休暇を盛り込む提言を紹介しています。
(12)保障女职工健康 促进男女平等就业——全国妇联《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》修改座谈会综述」『中国婦女報』2011年12月6日。
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