2017-02

台湾でも韓国の水曜デモ1000回目と連帯するアクション

 1992年1月から韓国の元日本軍「慰安婦」と市民たちは、毎週水曜日にソウルの日本大使館前で、謝罪と賠償を求めて抗議集会を開いてきました。その1000回目である12月14日には、「平和の碑」(少女像)が設置されるとともに(1)、世界の8ヵ国・44都市で、彼女たちと連帯する行動が展開されました。日本でも同様に、「韓国水曜デモ1000回アクション」がおこなわれ、東京では1300人が「人間の鎖」を作って外務省を包囲しました(2)

 台湾でも、同じ14日、元「慰安婦」を支援してきた婦女救援基金会(台北市婦女救援社會福利事業基金會)、アムネスティ(國際特赦組織)などが、台湾での日本の窓口機関である「交流協会」(台北市)の前で、ロウソクに火を灯し、それを「1000」の字の形に並べて、韓国の元「慰安婦」に連帯を示しつつ、亡くなった元「慰安婦」を追悼し、日本政府に元「慰安婦」たちに正式に謝罪と補償をするよう要求しました(3)

 当日は、夕方から激しい雨に見舞われましたが、100名余りの人が集まりました。民進党の立法委員の黄淑英さんと国民党の元立法委員の雷倩さんも駆けつけて、挨拶をしました。婦女救援基金会のfacebookに多数の写真が掲載されていますが、若い女性の方が多く集まられたようです。

 台湾の元「慰安婦」の方々は、昨年5人が亡くなり、今年もすでに3人の方が世を去りました。9月1日には、1992年に台湾で初めて顔や名前を出してこの問題を告発した劉黄阿桃さんも90歳で亡くなりました。台湾のマスコミは、「謝罪を待たずに亡くなった」「恨みをのんで亡くなった」と報じました(4)。その際のテレビ報道もネットに上げられています。

 「等不到一句抱歉 90歲慰安婦含恨而終」(中時電子報 影音頻道2011/09/03)


 下が、劉黄阿桃さんの生前の証言の一部です(「台湾のアマ――劉黄阿桃」より。他の方の証言は「阿媽の証言」参照)。

ある日、南洋で看護婦の仕事があるという貼り紙を見た友人が一緒に応募しないかと誘ってきました。戦争中だったので、田舎では仕事もなく、男も女もいつ海外に送られるかわからなかったので、どんな仕事でもしたいと思っていました。日本人の一組の男女が私たちを高雄から船でインドネシアへ連れていきました。現地に着いて初めて慰安婦になるのだと知り、怒りがこみ上げて私たちを連れてきた日本人に不満を言いましたが、帰ることもできず、日本人は「国のために軍を労う」という大義名分で私たちに軍人の相手をさせました。

初めての時は血が出て、悲しくて布で包み、家に持ち帰って両親に見せようと思いました。毎日20人以上の相手をさせられました。昼は兵士、夜は将校で、休むことはできません。酒に酔った日本兵から殴られることもありました。日本人の捌け口となるのは辛いことで、いつも目を閉じ、歯を食いしばって耐えました。一度逃げようとしたことがありますが、憲兵に連れ戻され、怨んでもどうすることもできず、毎晩泣いていました。インドネシアではマラリアにかかり、盲腸の手術を受け、右目は爆弾の破片に当って失明し、腹部も負傷して子宮を切除し、本当にひどい日々でした。その後、戦争が拡大し、3年後にようやく台湾に戻りました。


 台湾籍で確認された元「慰安婦」は、58人いるのですが(もちろん実際にはそれよりはるかに多くの方がおられるのでしょう)、婦女救援基金会の執行長の康淑華さんによると、現在生存している方は10人だけになり、その平均年齢も、もう87歳だということです。

 台湾の元「慰安婦」の人々は、1999年7月、日本で謝罪・損害賠償請求訴訟を起こし、2005年5月に最高裁で却下されるまで6年にわたって闘い続けました(詳しくは、「台湾の元『慰安婦』裁判を支援する会」のサイト参照)。

 その後も、元「慰安婦」の方々は、婦女救援基金会とともに、交流協会の前で抗議行動をおこなってきました(その様子の一端は、藤永壯「台北の『600回水曜デモ』」『女性史学』第14号参照)。14日の集会はテレビでは放送されたかどうかわかりませんが、今年8月におこなわれた世界同時水曜抗議行動の際の集会(5)は、テレビ放送がネットにも上がっています。ただし、このときは、元「慰安婦」の方々は高齢のため、炎天下での抗議行動には参加できなかったとのことです(12月14日も、元「慰安婦」の方の姿は見えません)。

 「替慰安婦要道歉 婦團日協會抗議-民視新聞」


 台湾では、すでに2008年11月、立法院(国会)が、「日本政府は、はっきりとした、曖昧でない態度で、戦時中の日本軍の性奴隷制度の歴史的責任を正式に認めて謝罪し、生存している被害者に対して直接に謝罪と賠償をして、一日も早く慰安婦の被害者の名誉と尊厳を回復し、国連人権委員会の勧告に従い、かつ今の世代と次の世代に正確な史実を教育するべきである(日本政府應以清楚且不曖昧的態度,正式地承認、道歉且接受戰時日軍性奴隸制度的歷史責任,對受害倖存者進行直接謝罪和賠償,以利早日回復慰安婦受害者的名譽和尊嚴,遵守聯合國人權委員會建議,且教育這一代和下一代有關這段正確史實)」という決議を全会一致で採択しています(ここをクリックすると、提案された際の説明も日本語で読めます)(6)

 なお、婦女救援基金会は、「慰安婦と女性の人権バーチャル博物館」のサイト(阿嬤的網站――慰安婦與女性人権虚擬博物館)を作っていますが、このサイトには「日本語版」もあり、台湾の「慰安婦」や「慰安所」についての簡単な説明や元「慰安婦」の口述史が掲載されています。元「慰安婦」の心理的治療のワークショップの記録もあります(7)

 元日本軍「慰安婦」の告発については、韓国などが「反日」だからやっているように言う人もいますが、以上から見ると、「親日」とされる台湾でも、多くの点で情況に大差ないことがわかります。

 韓国の元「慰安婦」の運動の結果、今回、韓国政府がようやく日本政府に慰安婦問題について協議を申し入れていることについては、台湾の婦女救援基金会も声援を送っています(8)

(1)ソウルでの1000回目の水曜デモについては、参加された岡野八代さんが、よいレポートをしてくださっています(「水曜日デモ--ソウルでの1,000回」Women's Action Network2011年12月17日)。なお、この平和の碑(少女像)に対して、日本政府が撤去を申し入れていますが、その点については、日本の「韓国水曜デモ1000回アクション」の「声明」をご覧ください。(12月22日追記)「水曜集会は2011年12月21日で1001回目の開催に」(Gazing at the Celestial Blue2011/12/22)もぜひお読みください。
(2)写真入りのレポートとしては、「外務省を1300人で包囲しました。」ブーゲンビリアのきちきち日記2011年12月14日、「死んでも死にきれない!謝罪を!~『慰安婦』解決もとめ1300人が外務省包囲」レイバーネット2011年12月14日など。
(3)日交流協會前 點蠟燭悼慰安婦」自由時報電子版2011年12月14日、「婦援會燭光響應全球串聯 籲日本道歉」【写真あり】自由時報電子版2011年12月14日、「幫慰安婦點蠟燭」聯合晩報2011年12月14日、「全球慰安婦串聯 婦援會赴日交流協會抗議」【写真あり】中央廣播電臺2011年12月14日、「全球44城燭光悼慰安婦 籲日本道歉」『蘋果日報』2011年12月14日、「藍委齊聚日駐台機構 籲向慰安婦道歉」【写真あり】中央日報電子版2011年12月14日、「慰安婦『水曜デモ』は千回目、台湾でも」【写真あり】中央社日文新聞2011年12月15日。
(4)等不到道歉 首位露面慰安婦逝世」『立報』2011年9月4日、「台首位控日慰安婦 阿桃嬤逝世」『蘋果日報』2011年9月4日。
(5)慰安婦怒吼 只要公道不要錢」『立報』2011年8月10日。
(6)この決議に関する内外のさまざまな報道や台湾の「慰安婦」問題については、碧猫さんのブログ「Gazing at the Celestial Blue」の「台湾立法院にて、『慰安婦』謝罪要求決議採択」エントリーやブログ「Stiffmuscleの日記」の「台湾国会で『慰安婦』謝罪決議案が可決」エントリーに詳しく書かれています。
(7)もちろん、他にも資料として、金富子・宋連玉責任編集、VAWWーNET Japan編『「慰安婦」・戦時性暴力の実態〈1〉日本・台湾・朝鮮編』(緑風出版 2000年)もありますし、婦女救援基金会主編『台湾慰安婦報告』(台湾商務印書館 1999年)、同『沉默的傷痕:日軍慰安婦歷史影像書』(商周 2005年)のような書籍もあるようです。
(8)南韓重啟慰安婦協商 婦援會聲援」『立報』2011年9月18日。
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