2017-09

第3回中国女性の社会的地位調査――男女の収入の格差がさらに拡大

 10月21日、中華全国婦女連合会(全国婦連)副主席で書記処第一書記の宋秀岩さんが、第3回中国女性の社会的地位調査の主なデータを発表しました(1)。「中国女性の社会的地位調査」とは、全国婦連や国家統計局が1990年から10年ごとにおこなっている全国的な中国女性の社会的地位に関する調査です(2)

 今回の宋さんの発表は、全体としては、中国の女性の地位の高さや地位の向上を述べたものでした。しかし、宋さんの発表からは、以下のような深刻な情況も伝わってきます。

男女の収入の格差が拡大

 まず、今回の第3回調査(2010年)での、「在職女性の年間の労働収入が男性の何%であるか」という点についての調査結果を、第1回調査(1990年)、第2回調査(2000年)と比較してみました。

 年度:1990年 2000年 2010年
 都市:77.5%→70.1%→67.3%
 農村:79.0%→59.6%→56.0%


 男女の収入の格差は、職場での差別のみならず、教育や家族内での差別など、さまざまな男女差別を反映しているので、ある社会の男女差別を測定する上で非常に重要な指標だと思います。それが悪化していることの意味は重い。

 農村において特に男女の収入の格差が大きいのは、(農業労働よりもずっと高収入が得られる)非農業労働に従事している比率が男性の方が多い(男性36.8%、女性24.9%)ことなどが影響しているのではないかと思います。

 なお、日本の2010年の「一般労働者」の男女賃金格差は69.3です(平成21年版『働く女性の実情』より)。この「一般労働者」には正社員以外も含まれますが、労働時間が短いパートタイム労働者は含まれません。パートタイム労働者を含めれば、日本の男女賃金格差は63程度になってしまいますから(永瀬伸子「男女賃金格差の解消に向けて:何が性中立的な制度か[PDF]」など参照)、中国の都市の男女賃金格差は、まだ日本よりは少ないようには思いますが……(他に、統計に入っていない専業主婦の問題もあります)。

性別分業意識も強まる

 「男は社会を主にし、女は家庭を主にすべきだ」という考え方に賛成する人も、以下のように増えています(3)

 年度:2000年 2010年
 男性:53.9%→61.6%
 女性:50.4%→54.8%


 中国においてこのように、男女の収入の格差が拡大し、性別分業意識が強まっている背景には、中国では社会的民主主義や女性の主体的運動がまだ非常に弱いために、市場経済化による格差拡大や性別分業の拡大に歯止めがかかっていない――という情況があると思います。

 なお、日本の場合、「男は仕事、女は家庭」という考え方に賛成する人は、2002年時点で、男性29.6%、女性21.4%となっています(「男女共同参画社会に関する世論調査」より)。ただし、これも、「主にする」という言葉が入っているかどうかなど、調査方法の違いもあると思うので、日中の比較に関してははっきりしたことは言えませんが、中国でかなり性別分業意識が強くなっていることは間違いないでしょう。

 ただし、中国でも、「男も主体的には家事労働をするべきである」という考えに賛成する人が88.6%なので、男性の家庭参加自体は望ましいと考えられてるようです。また、具体的な数字は挙げられていませんが、「両性の家事労働時間の差が縮小した」ことも発表されています。

農村の留守女性、家庭内暴力

 また、今回の調査では、たとえば以下のように、前回の調査にはなかった「留守女性」(夫が都市に出稼ぎに行って農村に残された女性)や「家庭内暴力」の問題が取り上げられています。

○農村の留守女性の心配ごと
 ・よその地にいる夫の安全……91.7%
 ・家の中で相談をする人がいない……61.5%
 ・年を取った親が病気になったときに助けてくれる人がいない……60.1%
 ・農繁期に手伝ってくれる人がいない……56.0%

○家庭内暴力
 ・結婚生活の中で配偶者から侮辱・罵る、殴る、人身の自由の制限、経済的支配、性生活の強要などのさまざまな形態の家庭内暴力を受けたことがある女性……24.7%
 ・そのうち、配偶者から殴られたことがあると明確に述べた女性……5.5%(農村7.8%、都市3.1%)。

全国婦連の宋副主席が挙げた課題

 もちろん、全国婦連も今回の調査から、さまざまな問題を認識しています。記者会見で『中国婦女報』の記者が「(家庭内暴力のほかに)わが国の女性が直面しているのは、どのような問題か?」と質問したのに対して、宋秀岩さんは、以下のように答えました。

 1.中国の西部の農村女性の教育の状況と健康の状況がまだ比較的悪い。たとえば、中西部の農村の女性が教育を受けた平均年数は東部の農村より0.8年短い(遠山注:別の個所で、中西部の農村女性で高級中学[日本の高校]以上の教育を受けた人は、「10.0%」であると述べています)。また、最近3年間で婦人科の検査を受けたことがない中西部の農村の女性は東部地区より4.3%多い(遠山注:別の個所で、中西部の農村女性で最近3年間で婦人科の検査を受けたことがない人は、「43.4%」であると述べています)。
 2.男女の労働の収入の格差が比較的大きい。
 3.農村の女性が土地を失う問題が比較的顕著である。たとえば、今回の調査では、農村の女性が土地を失っている比率が10年前と比べて、11.8%増加した。
 4.女性が意思決定と管理に参与することに依然として若干の障害がある。たとえば、女性が各レベルの指導的ポストに就く比率は男性の半分である。
 5.女性の家事労働の負担が比較的重い。かつ性別[役割の]観念が再び現れている。たとえば、「男は社会を主とし……(以下、上述の事項)

 宋さんも、以上のような具体的問題を挙げるとともに、「ジェンダー意識を政策決定の主流に入れる」とも述べたのですが、「ジェンダー主流化」というスローガンも、1996年から婦女連合会が唱えてきたことです。にもかかわらず、男女賃金格差の拡大などに歯止めがかけられていないという状況があるわけですが……。

 今回の調査については、今後、より詳しいデータが報告されると思います。ただし、第1期、第2期については、元のデータが十分公表されないままでしたので、今回は(できれば過去にさかのぼって)広く公表してほしいと思います。

[2012年11月24日追記]
 この調査について、より詳しくは、第三期中国妇女社会地位调查课题组「第三期中国妇女社会地位调查主要数据报告」(『婦女研究論叢(妇女研究论丛)』2011年第6期)を参照してください。

(1)記者会見での一問一答を含めた発表全体の記録は、「国新办就第三期中国妇女社会地位调查等情况举行新闻发布会」(中国網2011年10月21日)。
 以下は事項ごとに分けた記事です。しかし、ネットの新聞記事では、記者会見での質問が書かれていません。質問に対する回答だけを書いている場合(☆)もあり、こうした書き方は公正でないと思います。もちろん日本でもこうした記事の書き方はなされると思いますが、質問の内容と答えが噛み合っていない場合もありますし、相互のやり取りを伝えることも重要だと思うのです。
○まとめ
妇女地位调查报告发布 八成女性满意自己家庭地位」同上。
○女性の地位
全国妇联:85.2%的女性对自己的家庭地位表示满意」同上。
女性多方面受歧视 宋秀岩呼吁性别意识纳入决策」(☆)同上。
中国妇女社会地位调查报告显示妇女地位明显进步」(☆)同上。
○政治参加
调查称中国逾半数女性至少有过一种民主监督行为」同上。
中国高度重视赋权女性问题 高层有八位女领导」同上。
○社会保障など
中国超过三成农业户口女性享有社会养老保障」同上。
近六成农村老年女性首要生活来源为家庭成员资助」同上。
○就業
中国18-64岁女性在业率为71.1% 农村比例超八成」同上。
中国超六成外出流动女性对在工作生活感到满意」同上。
调查称1/3高层人才单位存在"男性晋升比女性快"」同上。
○教育
中国超三分之一女性接受过高中阶段及以上教育」同上。
调查称高校女大学生学业成绩优良率比男生高9.7%」同上。
中国妇女社会地位调查报告发布 29.1%女性上过网」同上。
○医療
中国中西部农村逾四成女性从未做过妇科检查」同上。
○女性の声
调查显示:中国3.8%的女童父母都长期不在身边」同上。
近九成女性同意“男人也应该主动承担家务劳动”」同上。
○家庭内暴力
中国一成女性遭性别歧视 近1/4妇女遇家庭暴力」(☆)同上。
中国反家庭暴力意识强 更多人会寻求法律帮助」同上。
 今回の調査結果については、日本のメディアでも、「女性の社会的地位、10年でさらに進歩―中国政府統計」(サーチナ2011年10月22日)、「『男は外、女は内』へ逆戻り=家事重く、共働きつらい-中国」(時事ドットコム2011年10月22日)、「中国の女性4人に1人がDV被害 女性団体が調査」(47NEWS2011年10月22日)と報じられました。ただ、時事通信(時事ドットコム)の見出しの中の「共働きつらい」という文言は、その記事の本文にも、発表の原文にもないので、共働きに対するバイアスのかかった見出しではないかと思いますが……。
(2)第1回調査(1990年)のデータについては、中国全国婦女連合会(山下威士、山下泰子訳)『中国の女性―社会的地位の調査報告』(尚学社 1995年)、第2回調査(2000年)のデータについては、第二期中国婦女社会地位調査課題組「第二期中国婦女社会地位抽様調査主要数据報告」『婦女研究論叢』(2001年第5期)や蒋永萍主編『社会転型中的中国婦女社会地位』(中国婦女出版社 2006年)など参照のこと。
(3)この点に関しては、中国のメディアでも注目されています(「中国女性就业晋升面临歧视 “女主内”观念回潮」中国新聞網2011年10月21日)。
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