2017-09

第5回北京クィア映画祭は当局に中止を命じられるも、ゲリラ的に開催

 6月15日から19日まで、第5回北京クィア映画祭(映画祭のサイト:北京酷儿影展)がおこなわれました。

 北京クィア映画祭は、第1回は2001年(この時の名称は中国同性愛映画祭)、第2回は2004年(この時の名称は北京同性愛映画祭)、第3回は2007年、第4回は2009年におこなわれました(本ブログの記事「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」参照)。第1回と第2回は当局の妨害にあって、当初の予定どおりには開催できませんでした。しかし、北京郊外の宋荘芸術家村でおこなった第3回と第4回は、警察などの干渉はなかったので、第5回はさらに大規模な映画祭を宋荘でおこなう予定でした。

 しかし、今年4月、北京クィア映画祭の組織委員会は当初の計画を変更せざるをえなくなりました。というのは、5月に同じ宋荘で開催が予定されていた第8回中国ドキュメンタリー映画交流ウィークが当局に中止させられたことが明らかになったことによって(1)、宋荘はもう非主流派の芸術のエデンの園ではなくなったことが示されたからです。北京で文化・芸術の催しをする他の多くの場所も、政府からの締め付けが強まりました。

 組織委員会は、いくつもの場所に断られた末、北京市西城区にある、民間組織の活動の場である「東珍書院」で映画祭をすることに決めました。組織委員会は当局を警戒して、映画祭の場所は公表せず、座席を予約した観客にだけ場所を知らせるというやり方をしました。にもかかわらず、6月12日、北京市西城区公安局分局・文化委員会・工商局の官吏が東珍書院にやってきて、法律法規をいいかげんに引用して、映画祭は違法だから取り締まると宣言しました。

 組織委員会は緊急会議を開いて、場所を変えて映画祭をすることに決定しました。組織委員会のメンバーであり、映画祭の創始者の一人でもある崔子恩さんは、「北京クィア映画祭を開催するのは、主流文化を疑い、挑戦する場を提供するためだ。中国では、主流文化は政府当局によって構築されているのだから、私たちには、映画祭を政府の圧力によって中止してはならない責任があると思った」と述べています。

 映画祭の開幕まではもう3日しかありませんでしたが、組織委員会は、北京中の映画上映が可能なバーや喫茶店を探しました。当局が新しい上映地点を見つけるかもしれないので、組織委員会は、映画祭の活動を一か所に集中させることは避けて、たえず場所を変えておこなうことにしました。

 開幕式では、崔子恩さんが開会を宣言しました。組織委員会の輪番主席である楊洋さんは、挨拶(致辞 Preface)の中で、クィア映画祭について次のように述べました。「これはセクシュアルマイノリティの文化活動であるが、北京という全国の政治と文化の中心に生存しており、周囲が一面の赤いイデオロギーであるという環境の下で自由で多元化した人間関係と生活様式を探求するものである以上、クィア映画祭が政治的色彩を持つのは不可避である。十年来、各レベルの政府当局の干渉の下で、映画祭は北京城の西から東へ、都市から農村へ引っ越したが、現在また都市の中に戻ってきた。私はかつて、映画祭を、臨時のゲリラ戦をせずとも、通常に開催できることを希望していた。しかし、さきごろまた、上映場所の協力機構が、政治的にデリケートな問題だと考えて、最終的には映画祭との協力を拒絶するという紆余曲折に遭遇して、私は、次のことに気がついた。ずっと、私たちは簡単に警察と当局を「化け物扱い」して私たちの仮想的だとみなしてきた。けれど、私たちの最大の敵は、実は、少数者の権力機構が強大な国家機構の宣伝教育を通じて長い間に知らず知らずのうちに構築した、大衆の主流イデオロギーである。このような『主流』イデオロギーに対抗することが、まさにクィア映画祭が存在する価値であり、追求する目標ではなだろうか?」「革命いまだ成功せず、クィアなお努力せよ!」

 開幕式には100名近い人が参加しました。下がその動画です(中国語と英語の字幕付)。
 

 今回の映画祭は、上映を計画していたすべての映画を上映することはできませんでしたが、それでも30作以上の映画を上演し、500人以上の観衆が集まりました(映画祭のスケジュール:第五届北京酷儿影展放映日程表 5th Beijing Queer Film Festival Schedule)。映画祭には、アメリカのBarbara Hammerさん(サイト)や台湾の陳俊志 (Mickey Chen)さん(Facebook)といった、クィア映画の著名な監督も参加しました。

 前回の第4回クィア映画祭が成功を収めた時、私は、それを中国社会の変化の表れであるように感じたのですが、やはり、まだまだ楽観視はできないようです。楊洋さんの挨拶の中の「周囲が一面の赤いイデオロギー」云々というのは、中国共産党建党90周年のキャンペーンを指していると思いますから、その意味では今回は時期が悪かったのかもしれませんが、もしそうだとしても、何かキャンペーンがあると映画祭のような文化的催しさえつぶされるというのでは、非常に心もとないことです。

[資料]
第五届北京酷儿影展组委会「媒体通稿 PRESS RELEASE」北京酷儿影展サイト2011年6月19日。
第五届北京酷儿影展圆满落幕(组图)」淡藍網2011年6月21日。
第五届北京酷儿影展手记:酷儿与权力的游击战(组图)」淡藍網2011年6月29日。
[注]
(1)ドキュメンタリー映画祭が突然の中止、官制メディアは『空気の緊張』が理由と報道―北京市」レコードチャイナ2011年4月23日。
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