2017-05

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「館長雇止め・バックラッシュ裁判」勝訴の意義と支援運動の問題点

 私は、今年3月、日本女性学研究会のニュースレター『VOICE OF WOMEN[VOW]』319号(2011年3月10日発行)の7~13頁に、以下の文を掲載しました。先日、同研究会の運営会から転載の許可をいただきましたで、このブログにも掲載いたします(誤字と注のナンバリングの誤りは訂正しました)。

「館長雇止め・バックラッシュ裁判」勝訴の意義と支援運動の問題点

                               遠山日出也

 私は『VOW』2006年9月号で「館長雇止め・バックラッシュ裁判」を紹介させていただいたが、今年1月20日、最高裁は、この裁判について、豊中市らの上告を棄却し、原告の三井マリ子さんの勝訴が確定した。ついては、今回の勝訴の意義および支援運動の問題点について、私なりに述べてみたい。

1.勝訴判決の内容と意義について

 三井さんは、2000年、大阪府豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の初代館長(非常勤)として採用された。三井さんは、北欧から要人を招くなど、さまざまな斬新な企画をおこなって成果を挙げた。しかし、そうした三井さんが目ざわりだったバックラッシュ勢力が市やセンターに圧力をかけたため、豊中市は、非常勤館長職を廃止して館長を常勤化する「組織変更」を三井さんに知らせずにすすめ、2004年、三井さんを雇止めして、常勤館長にも採用しなかった。

 それに対し、三井さんは、豊中市と「すてっぷ」を運営する「とよなか男女共同参画推進財団」とを相手取って、損害賠償を求める裁判を起こした。2007年の一審判決は原告敗訴だったが、昨年、大阪高裁は逆転勝訴の判決を下し、豊中市らに慰謝料100万円と弁護士費用50万円の支払いを命じた。

大阪高裁判決の内容

 大阪高裁判決も、雇止めや不採用自体の違法性は認めなかった。

 しかし、以下のように述べて、雇止めに至る経緯に違法性を認めた。

 判決は、まず、バックラッシュ派の北川市議が市議会で「『すてっぷ』や学校図書館の蔵書からジェンダーフリーの本を廃棄せよ」と迫るなど、「一部勢力」のすてっぷや三井さんに対する様々な攻撃を詳細に認定するとともに、それらに対する豊中市の対応の問題点も指摘した(1)

 そのうえで、判決は、バックラッシュ勢力の攻撃は「陰湿かつ執拗」であり、市議会でも北川議員らが一定の影響力を持っていたため、豊中市は男女共同参画推進条例の上程を延期したと述べた。条例はのちに成立するが、判決は、北川議員が条例への反対討論を延々とおこなったのに、議決では一転して賛成に回るという「不自然な流れ」などを見ると、豊中市は、三井さんの首を切るのと引換えに「条例の議決を容認するとの合意を、北川議員らの勢力と交わすに至っていたものとの疑いは完全に消し去ることはできない」と言い、少なくとも豊中市の人権文化部長らが三井さんを「すてっぷ」から排除する行動をとったのは、「あってはならないところを一部勢力の動きに屈した」と指摘した。

 判決は、人権文化部長らがこのように「中立的であるべき公務員の立場を超え、控訴人[=三井さん]に説明のないままに常勤館長職体制への移行に向けて動き、控訴人の考え[=館長を続けたい]とは異なる事実を新館長候補[=桂容子さん]に伝えて候補者になることを承諾させた」と述べ、「これらの動きは、控訴人を次期館長職には就かせないとの明確な意図を持ってのものであったとしか評価せざるをえないことにも鑑みると、これらの(……)行為は、現館長の地位にあった控訴人の人格を侮辱したもの」であり、「控訴人の人格的利益(2)を侵害するものとして、不法行為を構成する」と指摘した。

 また、判決は、「[三井さんは]その実績から次年度も継続して雇用されるとの職務上の期待感も有していたものといえるのであり、雇用契約が年単位であるからといって、常勤館長職制度への移行期において、その移行内容及び次期館長の候補者リストについて、何らの説明、相談を受けなかったことについては、現館長の職にある者としての人格権を侵害するものであった」と述べた(3)

大阪高裁判決の意義

 大阪高裁判決は、以下の2つの面で意義があると思う。

①バックラッシュ勢力に屈した、女性センターからの排除を不法行為と認定

 近年、東京都が上野千鶴子さんの国分寺市での講座を拒否したり、つくばみらい市が一部の抗議に屈してDV防止講演会を中止するといった、地方自治体がバックラッシュに屈したような事件が相次いだ。

 そうした中、この判決は、寺沢勝子弁護士が述べるように、「バックラッシュ勢力の攻撃の詳細を明らかにし、この攻撃に屈して(……)三井さんを財団から排除した過程を明確に認定し、公務員としてあってはならない行為であるとして不法行為を認定した」もので、「『一部勢力』に対する地方自治体のありようを厳しく問うものである」(4)と言える。

②人格権を侵害するような雇止めのやり方を違法とする――非常勤の公務員の場合でも

 判決が雇止めの違法性を認めない理由として挙げたのは、「すてっぷ」の館長職は「特別職の非常勤の公務員の地位に準ずるもの」だから、契約更新についても「解雇の法理は適用されない」ので、「雇止めについては原則として雇用者の自由」ということだった。しかし、三井さんは公務員ではない。また、非常勤公務員の雇止めは、「法の谷間」の問題として、それ自体が問題にされ続けている。

 ただし、今回の判決は、特別職の非常勤の公務員の雇止めさえ、人格権を侵害するやり方は違法としたという点で意義がある。

 現在、非正規雇用では、契約期間が終わったというだけで、しばしば何らの説明や相談なしに雇止めがおこなわれている。今回の判決には幾つかの要因が絡んでいるが、本人に説明や相談をすべき理由があるにもかかわらず、しない場合などは、「人格権の侵害」になるという判断だと思うので、現在の状況に歯止めをかける一つの足掛かりには充分なると考える。

ナショナリズムや新自由主義と闘うためにも女性解放の視点が必要

 三井さんがこの裁判を起こした理由は、自らの雇止めの背景にある「非正規雇用」や「バックラッシュ」は、日本の女性にとって重要かつ普遍的な問題だと考えたからである。私は2005年半ば以降、支援者としてずっとこの裁判を傍聴してきたが、傍聴者の9割以上は女性であり、今回の判決は、女性解放運動の成果だといえる。

 私自身は男性だが、今回の判決は、けっして女性にだけプラスになるものではないと思う。

 豊中市や「すてっぷ」に圧力をかけたのは、「日本会議」や「教育再生・地方議員百人と市民の会」の議員・活動家だったが、それらの団体は、憲法改悪を推進し、ナショナリズムを煽っている。「すてっぷ」に嫌がらせを繰り返した中心的人物は、「在特会」の関西支部長でもあった。この判決は、そうした勢力の圧力によって行政が左右されることを断罪したと言えるからである。

 また、非正規雇用のジェンダー的性格は依然として変わっていないが、この判決は、近年増大した、私を含む男性の非正規労働者にとってもプラスになるからである。

 すなわち、今回の判決は、男性の人権や生活をも脅かしているナショナリズムや新自由主義に対抗する上でも、女性解放の視点には意義があることを示したと思う(5)。もちろんナショナリズムや新自由主義に反対する課題とバックラッシュに反対する課題とは相対的には別個のものであるが、それらの反動思想の間には、性別(家族)役割を重視する点などで構造的連関があるので、ナショナリズムや新自由主義に反対するためにも、女性解放の視点が必要だということだろう(もちろん、逆に、かりに女性解放の視点があっても、民族差別などに反対する視点がなければ、バックラッシュに対して十分に対抗できないということも言えるが)。

2.裁判支援運動の問題点について

 ただし、この裁判の支援団体である「ファイトバックの会」の運動には問題点もあった。この件はネット上ではすでに論じられているが、私なりに簡単に報告しておきたい。

桂さんに対する誹謗中傷とそれについての謝罪をめぐって

 三井さんの後任館長になった桂容子さんは、裁判前や裁判中、三井さんやその支援者の質問に答えて、原告に有利な事実を多数語っていた。裁判における証言でも、桂さんは、当時現職館長だったにもかかわらず、原告側にとって有利な重要な事実をいくつも証言された。

 たとえば、先述のように高裁判決は「控訴人の考えとは異なる事実を後任候補に伝えて候補者になることを承諾させた」と述べているが、この箇所は、桂さんが「三井さんが[すてっぷに]残りたいのなら、行く気はありません」と言ったにもかかわらず、豊中市の人権文化部長らが「桂さんしかいないんです」と述べたことなどを指している。桂さんの証人尋問では、その問答があったのが、三井さんがまだ常勤館長に応募する(2004年2月1日)以前の1月15日のことだったのか、それとも応募後の2月9日のことだったのかが一つの争点だったが、桂さんは2月9日のことであることを証言された。桂さんのこうした証言や発言なしには、「人格権侵害」は認められるのは難しかったと思う(6)

 桂さんはこの裁判自体は支持しておられなかったが(部分的には意見が一致している点もあった)、彼女の「フェミニズムと男女共同参画の間には、暗くて深い河がある」(『女性学年報』30号)という文にも表れているように、桂さんはフェミニズムの立場から、行政に対しても言うべきことを言うなど自律的に行動なさってきたからこそ、こうした証言をすることもできたのだろう。

 しかし、ファイトバックの会の一部の人々は、桂さんが三井さんの後任を引き受けたことや、桂さんが証言において被告側に有利な意見も述べたことに不満があったからか、会のブログなどに、桂さんについて、ありもしないことを憶測で述べたり、人格攻撃をしたりする誹謗中傷を多数掲載した。

 それに対して、桂さんは、当時ファイトバックの会の会員だった村井恵子さんを通じて、会に抗議の訴えを提出なさった。そこで、それに対して会がどう対応するかが問題になり、会の世話人の中にも桂さんに対して謝罪すべきだという人々が現われた。その結果、世話人会で、桂さんに対する誹謗中傷をブログから削除するとともに、お詫びを掲載することが決まった(後日、実施された)。その際、世話人会はこの問題に対処するため、「謝罪チーム」(世話人ら数人で構成。私は世話人ではなかったが、その一員だった)も設立した。

 しかし、その後、代表や副代表を含む世話人の多くが、謝罪に向けて動いた世話人を排除した「ニュー世話人会ML」というメーリングリストを、従来の世話人会のMLとは別個に秘密裏に立ち上げた。そのため、世話人会は機能麻痺状態に陥った。「ニュー世話人会ML」では、謝罪チームのメンバーに世話人を辞めてもらう方向にもっていく相談などもなされていた。こうしたことのため、少なくない世話人が、世話人や会を辞めた。

 また、ファイトバックの会には、会員の誰もが入れるMLもあり、そちらのほうでも、謝罪をめぐる論争が起きた。すると、ニュー世話人会の人々は、それまでは誰でも発信できていた双方向的なMLを、彼女たちが発行する一方通行のメールマガジンに変えた。さらには、桂さんに対するお詫び文の中の「事実誤認にもとづく不適切な表現」という箇所を、「桂さんの心情を傷つける不適切な表現」に変更した。

 なお、会のブログの誹謗中傷記事は、会のMLへの投稿などを(執筆者の了解を得て)ブログに転載したものが多かったが、そうしたブログ更新の作業をしていたのは三井さん本人であり、三井さんはニュー世話人会MLにも加わってきた。

問題が起きた原因は?――支援運動とそのネット利用のあり方自体に問題

 以上を述べたのは、本研究会の桂さんが被害者だったという理由もあるが、何より、その原因を考えることによって、今後、他の運動体にも参考にしていただくためである。

 この点については、すでに「フェミニズムとネット問題研究会」で検討し、近くその研究成果を発表する予定であるが、以下、いくつかの点を簡単に述べてみたい。

 まず、ファイトバックの会のネット利用には、以下の点のような問題点があった(7)
 ・会のMLには300人近い参加者がいたにもかかわらず、それを一面的に「内輪のもの」と捉えて、つい外部の人の誹謗中傷をするような傾向があった。MLの場合、外部の人にはそのことがわからないので、反論のしようがないという問題もある。
 ・先述のように、会のブログは、会のMLへの投稿や原告個人に宛てたメールを少し修正しただけで転載したものが多かったが、そうしたやり方は、もともとは会の内部や個人に宛てて書かれた文を世界中に発表することになるので、問題が拡大した。
 ・ブログはほとんど原告が更新していたのに、名目上は「ファイトバックの会ウェブチーム」が更新していることになっていたため、責任の所在が曖昧だった。
 ・ブログやサイトが、ほぼ完全に外部から閉じていて、双方向性がないので、独善的になった面もあった。
 ・ファイトバックの会のネット利用には、以上のような問題点があったので、桂さん以外の人に対しても、誹謗中傷などがあった。私もネットや誹謗中傷に関する認識が不十分で、桂さんの件が起きる以前は、上のような問題点にあまり気づいておらず、私自身が他の証人に対し人格攻撃や憶測・一面的認識にもとづく記述をしたこともあった。

 上のようなネット利用の問題点とも関係があるが、ファイトバックの会では、会の中で論争が起きると、「こころ一つに(して支援しよう)」とか、「この会は、三井さんを支援する会だ」とか言われて、世話人会や三井さんに対して批判的な意見が抑え込まれる傾向があった。私自身も、ある時期までは、原告や他の支援者の発言に疑問を持っても、「原告(or古くからのリブor地元の人)だから、私などより、いろいろよくご存じなのだろう」などと思って、疑問を出すこと自体を遠慮したような面があった。

 以上のような、個々人の自律性が不十分な組織は、組織の外の人に対しては、排外的になったり、人権侵害をしがちだ。本来なら、「意見や認識の相違についてはきちんと議論し、誹謗中傷はせず、一致点では大いに協力する」という関係であるべきなのだが、そうした関係が会の中でも、会の外の人との間でも、十分築けていなかったのである。

 このことは、運動をより良いものにしたり、多様な人々の中に運動を広げたりする上で障害になった。たとえば、本当なら、会は、桂さんとも、もっと普通に対話や意見交換ができたはずだし(実際、私はいくらか対話させていただいた)、一致点では協力できた可能性もあったと私は思うのだが……。

他団体にも今回の経験は参考に

 私はこれまで「旧い運動は、組織中心で、上から動員するなど、個々人の自律性を軽視してきたが、フェミニズム運動は、自立した個人のネットワークだ」といった話を聞かされてきた。しかし、ファイトバックの会は、必ずしもそうではなかった。

 けれど、考えてみれば、フェミニズム的な要求をしている人(団体)だからといって、自動的に個人を尊重した民主的運営ができるわけでも、他者の誹謗中傷をしなくなるわけでもない。これらの点に関しては、個人レベルでも、システムのレベルでも意識的努力が必要だ。たとえば日本女性学研究会では、「無血革命」(ご存じない方は、『女性学七転八倒』や『わたしからフェミニズム』参照)などを通じてフェミニズム的組織の構築が試みられてきたが、他の団体でも、その団体に応じた形で、個人を尊重するような組織や運動のあり方を意識的に追求する必要があるだろう。

 この点は、まさに「不断の努力」が必要であり、ネットを活用する際にも、ファイトバックの会の問題点を教訓にして、誹謗中傷を避けつつ、組織の内外で双方向的な議論をするよう努力する必要があると思う。

 私も、三井さんが、勝訴が難しい行政相手の有期雇用の裁判を起こし、7年余り[追記:裁判の期間は6年余りだったのを、私が間違えてこう書きました。ただし、裁判の準備期間を含めれば7年程度になります]にわたって不屈に闘い抜かれたことについては、本当に尊敬している。また、私は、三井さんの「女性学でバックラッシュを論じる人は多いが、この裁判を支援する人は少ない」という発言からも様々なことを考えさせられた。世話人会も、法廷を毎回満員にするなど、勝訴のために大変な努力をなさってきた。また、支援運動に問題点があったことは、勝ち取った判決の意義自体を損なうものではない。

 ただ、せっかく「人格権の侵害」や不当な「排除」を断罪する判決を勝ち取ったファイトバックの会が、組織の内外の人々に対して似たようなことをするなら、裁判の成果を広げる上でも障害になりかねない。他の団体においても、大切な運動を広げるためにも、ファイトバックの会で起きた問題を参考にしていただければ幸いである。

 なお、「館長雇止め・バックラッシュ裁判」に関する資料の多くは、ファイトバックの会のサイト(http://fightback.fem.jp/)に掲載されている。私自身も、自分のサイトの中に、私の文章などを掲載したページ「館長雇止め・バックラッシュ裁判(原告・三井マリ子さん)」を開設している(http://www.k5.dion.ne.jp/~genchi/kyb.html)。

 また、ファイトバック会の問題点については、「ファイトバックの会 謝罪問題まとめ@wiki」というサイト(http://www1.atwiki.jp/fightback3/)を参照していただきたい。

(1)判決は、以下のようにバックラッシュ勢力の攻撃やその不当性、および豊中市の対応の問題点を認定している。
・Мと名乗る者による「ジェンダーフリーの危険性を学ぶ」という勉強会のために、「すてっぷ」の貸室を使用することを豊中市長は認めた。これは、「『すてっぷ』の貸室としては(……)一般使用としても許されないものといえる」。
・北川議員は「集会において『すてっぷ』がジェンダーフリーの拠点となっていると述べた(ここでは、ジェンダーフリーの用語を、フリーセックスを奨励し、性差をすべてなくして、家族を崩壊させ、社会を混乱に陥れるおそれのある思想と曲解して用いている)」→判決自体がカッコ内も記している。
・「男女共同参画を考える豊中市民の会」[遠山註:バックラッシュ派の団体]が男女共同参画推進条例に反対し、講演会に市民を誘うビラを配布したが、「その内容は男女共同参画の推進政策を中傷し,故意に誤解を与えるものであった」。
・三井さんや財団事務局長は、北川議員の呼び出しを受け、「人気(ひとけ)の少ない豊中市庁舎において、午後7時から10時まで(……)時折、大声で口を挟み、机を叩くなどして糾弾を受け」たが、市の対応は「事案の本質から離れて一部勢力に迎合しようとするものであった」。

(2)「人格権」とは、この裁判のために提出された浅倉むつ子意見書によると、「身体・健康・自由・名誉など人格的属性を対象とし、その自由な発展のために、第三者による侵害に対して保護されなければならない諸利益の総体」(五十嵐清『人格権』)であり、民法はこれを「個人の尊厳」という言葉で表現しているとのことである。なお、浅倉意見書や高裁判決は、『労働法律旬報』1724号(2010年7月下旬)に収録されている。

(3)原告側は、そのほか、三井さんを採用する意図もないのに、公正さを装うために、三井さんに館長選考試験を受けさせたことも、人格権の侵害だと主張した。
 判決は、豊中市の人権文化部長が三井排除のために動いてきたことが、選考試験に「影響を及ぼさなかったと断言することはできない」し、そもそも同部長が選考委員に就任にしたこと自体、「公正さを疑わしめる」と述べた。しかし、ある選考委員が、桂さんの方が適任だったことを述べる陳述書を提出していることや、選考委員は、職種や地位を考慮して5名が選任されたものであって、市の部長が選考委員になったのも財団への支援や協力のために必要だったという被告側の主張に不合理な点はないなどの理由で、選考委員らの選考は「部長らの動きを、結果的に浄化したものと評価するのもやむを得ない」と述べている。
 私は、原告側は人権文化部長以外の選考委員の4名に関しても、幾つもの書面で検討しているのに、判決がその点をどう判断したのかがわからない点が不満である。また、「すてっぷ」の理事である選考委員らが豊中市に対して自主的判断をしえたかも疑問を感じる。ただ、選考でいかなる議論がなされたかがよくわからない以上、現在の司法に上記以上の判断を求めるのは難しいのかもしれない。

(4)寺沢勝子「大阪高等裁判所で逆転勝訴――雇止め、不採用で人格権侵害を認定」前掲『労働法律旬報』18頁。

(5)こうしたことをVOWのような女性団体の雑誌で言うだけではいけないので、岩波の『世界』の「読者談話室」に、裁判の紹介を兼ねて投稿したところ、「女性運動の意義を改めて考える」というタイトルで今年4月号に掲載された(18-19頁)。

(6)弁護団の紀藤正樹弁護士は、高裁判決が事実認定で、「[2004月2年9日に人権文化部長らが桂さんと面談した際、]『控訴人が残りたいのなら行く気はない』旨を述べる桂に対し、こもごも『桂さんしかいない』などと延べて、同人の翻意を止めた。一方、控訴人は同年1月24日、山本事務局長から理事会の議案を受領し、館長の常勤化案を知り、常勤館長に応募することを決意した」と述べている部分を指して、「まさにここが今回の判決の人格権侵害の基本になっています。桂さんに嘘をついてまで館長になるように仕向け、一方で三井さんには、民主的な手続き、合理的な手続きによって館長を選任するかのような言動で表面的には中立性を装っていた。ここが、非常にこの判決の真髄だろうと思います」と述べている(2010年4月、東京の集会で。http://fightback.fem.jp/kitogijiroku-100424.html)。

(7)これらの点については、元世話人の山口智美さんのブログ「ふぇみにすとの論考」(http://d.hatena.jp/yamtom)の2008年9月以降のエントリも参照。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/356-6df168ca
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。