2017-11

WAN理事会への3通の手紙――WAN争議における謝罪=反省点の表明を求めて

私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の会員として、今年1月以来、理事会に対して、昨年のWAN争議の和解において理事会がユニオンWANに対して謝罪した内容を、自ら会の中で公表するか、かりにそれができないとしても、その内容を「理事会の対応の問題点(反省点)」として表明していただくことなどを求めてきましたが、理事会の同意を得るに至りませんでした。

私は、公然と理事会を追及して理事会に反省点の表明などを迫るよりも、会の内部で理事会に申し入れをすることによって、理事会が自発的に反省を表明していただく形を取った方が今後のWANにとって良いと思いましたので、当初は私が提出した文書(手紙)を公表するつもりはありませんでした。

しかし、私の提案は理事会には受け入れられませんでしたので、以下、私が理事会に提出した3通の文書を本ブログに掲載いたします(私の文書に対する理事会の2通のご返事については、現在、理事会に公表の許可を求めているところです。許可が得られ次第、公表させていただきます〔*しかし、5月15日、理事会から、私のブログへの掲載は許可できないという回答がありました。許可できない理由については書いてありませんでした。私が書いた掲載許可願は、このエントリの末尾に掲載しています――5月16日追記〕)。

1通目(2011年1月11日)

WAN争議の問題についての理事会への提案

          遠山日出也(WAN法人会員)

最近のWANのサイトは頻繁に記事が更新されており、アクセスも急増しているとのこと、これも理事や運営委員、ボランティアの方々の努力のたまものだと思いますが、うれしく感じます。

さて、WAN争議自体の終結から既に半年以上が経過いたしましたが、私は、この問題をどう捉えるかは、WANの今後の発展にも関わる問題だと考えます。今回WAN法人会員のMLが開設されたのを機に、以下、いくつかの提案をさせていただきます。

一、WAN理事会がユニオンWANに謝罪した内容を自ら公表する

まず、昨年5月にWAN理事会がユニオンWANに謝罪した内容を、理事会自ら公表することを提案いたします。

ご承知のとおり、昨年5月11日、労働委員会のあっせんの結果、WAN理事会とユニオンWANは、理事会がユニオンWAN組合員2人に対して以下3点についての謝罪および解決金40万円の支払いをすることをもって、組合員が円満退職することで合意しました。
(1)平成21年12月に組合員遠藤礼子の仕事を外したこと、その後、事務所の閉鎖及び突然の2人の退職勧奨に至ったこと
(2)それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと
(3)これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと

WAN理事会は「労働委員会から、労使双方に対して、あっせんでの合意内容や経緯について、第三者に内容を情報を漏洩しないよう、厳に求められている」と主張しておられます。しかし、ユニオンWANのお2人は「あっせんの結果として合意したことついては、公開は禁止されていない」ということを、あっせん委員に再三確認しています(ですから、上の理事会の主張のうち、少なくとも「労使双方」の「労」に対する記述は事実と異なります)。また、理事会は、「合意した内容」さえ公開してはならない理由を説明できていません(注1)

かりに一歩譲って理事会の言い分を認めて、あっせんでの合意内容自体は公表しないとしても、理事会が今回謝罪なさった(1)~(3)の内容は、その経緯は別にして、理事会が自らの対応に問題があったことを認め、反省なさった点であることには間違いないのですから、「あっせんの結果として」ということには触れずに、「理事会側の対応の問題点」として内外に表明することは可能です。実際、理事会自身も、お2人の「円満退職」(これも、あっせんの結果として合意したことです)については、WAN-NEWSで公表しておられます。

私は、以上のことは、以下の意味で重要だと思います。

第一に、WAN争議における理事会のWAN-NEWSおよび会員向け文書での発表の多くは、組合に対する理事会側の言い分を述べたものでした。理事会側が自らの非を認めた内容は、「ご退職いただけるよう(……)お願いをせねばないのは(……)大きな責任を感じている」という一般論を別にすれば、「NPO運営や雇用についての見通しの甘さが理事会にあった」ことくらいで、(1)~(3)の具体的事項には触れていませんでした。とくに(2)の「組合員及び組合員と事前に相談、協議しなかったこと」については、謝罪するどころか、組合側を非難して理事会の対応を正当化していました(注2)

にもかかわらず、それらの文書の訂正などもせず、理事会が新たに謝罪した事項についてはWAN-NEWSで公表しないというのは、フェアではなく、不誠実だと言わざるをえません。こうしたやり方は、WAN理事会に対する信頼を大きく損なったと思います。ですから、私は、WAN-NEWSで、今回の謝罪内容について、少なくとも「理事会の対応の問題点」として述べることが、WANに対する信頼を回復するうえで必要だと考えます。

第二に、今後のWANにおける民主主義や人権を保障する上でも、今回、反省(謝罪)なさった点を自ら表明なさることが必要だと思います。WANは今後当面は直接、賃労働者は雇わないのかもしれません。けれど、ボランティアや運営委員、一般会員に対してであっても、理事会が、するべき「相談や協議」をしないことや「不適切な言動」をすることがあってはならないことは言うまでもありません。本人の意向を軽視して、仕事から外したり、押し付けたりしてもならないでしょう。しかし、もし理事会が上の反省点について口をつぐんだままだとすれば、「理事会の謝罪はその場逃れの、口先だけのものだったのではないか?」とか、「もし何かトラブルが発生したら、また同じようなことを繰り返すのではないか?」という疑惑を持たれることは避けられません。私自身、WANの会員として不安ですし、新たな会員やボランティアの獲得にもマイナスになると思います。

第三に、他の非営利団体でも雇用や労働(ボランティア労働を含む)の問題はしばしば発生していますが、WANには、この点で範を示してほしいからです。もし理事会自らが、今回反省(謝罪)した内容を認め、広く公表すれば、他の非営利団体の運営者が襟を正したり、不当な扱いを受けている賃労働者やボランティアを力づけたりするために役立つでしょう。今回のWAN争議は広くネットで話題になり、争議支援の署名運動までおこなわれました。この点から言えば、本当は、WAN-NEWSだけでなく、サイトの登録会員やユーザー、署名運動をした人々にまでWAN理事会の反省点を伝えるべきだと思うのです。

さらに、理事会が反省(謝罪)した内容を単に公表するだけでなく、そうした問題が生じた原因についても自己分析をして報告なされば、非営利団体における雇用労働や無償・ボランティア問題を解決するうえで、大きな貢献になるのではないでしょうか? 争議終結からすでに時間が経過しましたから、今から当時のことに立ち返っての自己分析は難しいのかもしれませんが、本来なら、再発防止のためにも、問題が生じた原因の分析にまで求められるのが普通だと思います。

二、「通告書」が不適切であったことを表明する

和解成立後、理事会は遠藤さんに対して、代理人の弁護士経由で、「断固たる法的手段を執る」云々という言葉まで含んだ「通告書」を送られています。

こうしたやり方は、すでに和解し、円満退職した人々に対して、きわめて不穏当なものだったと思います。もし理事会と遠藤さんとの間に事実認識や見解の相違があったのならば、ふつうにメールか手紙で指摘なさればよかったと思います。実際、争議中においても、ユニオンWANのブログは、理事会側からの指摘に対して、訂正を含めた対応をしていることは、ブログをお読みになればわかります。もちろん、理事会側が遠藤さんの対応に納得がいかないことはありえますし、実際あったでしょうが、そうした場合は、抗議した内容を広く公表すればよかっただけではないでしょうか?

もし事実認識や見解の相違について、ふつうにメールなどで指摘なさっていただけならば、「恫喝訴訟の予告?」という非難を遠藤さんやユニオンWANの支援者から浴びることはなかったでしょう。WAN登録団体であるユニオンエクスタシーも、当時、この件について、Twitterで「労働委員会のあっせんで和解ができたというのに、、、。WANは評判を落とすようなことはしないでほしい」と述べていました。

この点についても、理事会自ら「こうしたやり方は不適切だった」と表明していただきたいと思います。

以上、本来ならもっと早く申し入れをしていればよかったところ、意見を出すのが遅れたことをおわびいたします。

しかし、過去の歴史をどのように認識するかは、未来をどのように切り開くかと深くかかわっています。ましてWAN争議はまだ多くの人の記憶に新しい出来事です。ぜひご検討をお願いいたします。

(住所[略])
遠山日出也

(注1)WAN理事会は、労使協議や労働委員会のあっせんについて、第三者には情報を流してはならない理由として、労使協議では「公開で、自分たちの立場から相手方を一方的に批判非難したりすれば、なおさらに事態は紛糾し、歩み寄りが困難になる恐れが大いにある」という点と「そのような批判非難の応酬は、双方が属する組織の信頼信用をいたずらに傷つけることにもなりかねない」という点を挙げているのですが、この2点が理由だとすると、一歩譲って理事会の言い分に従うとしても、両者がすでに合意した事項については公開してもいいことになります。
 また、理事会側も、自分たちに有利な点については、事実上、あっせんでの合意内容を公表しています。すなわち、まず第一に、理事会は「今般、あっせんが成立し、5月11日付で両氏に円満退職いただきました」と発表しましたが、この文を読んで、「あっせんの合意内容」と「両氏の円満退職」とが無関係だと考える人は誰もいないでしょう。もし理事会が言うように、本当に「本メールでは、和解に至った点のみをお知らせする」つもりだったならば、理事会は、文字通り「今般、あっせんが成立し、解決いたしました」とだけ書くべきでしょう。また、第二に、WAN総会では、理事会は、「会計報告」と関係があるからという理由で、和解金の額も公表しましたが、あっせんでの謝罪の内容も、当然「事業報告」の「(6)雇用問題について」と関係があるのですから、謝罪内容を総会の場でさえ公表しなかったかったことは、筋が通りません。
(注2)理事会が2010年2月に出した「この間の事情の説明」という文書は、「A[=遠藤]さんは、業者によるリニューアル[遠山注:このリニューアルは遠藤さんから仕事の多くの部分を奪った]について事前に相談がなかったことが問題であると主張して」いることや「事務所の閉鎖についても、そういう考えが浮上した時点で相談すべきであると組合は主張」いることに対して、遠藤さんや組合を非難して、理事会の対応を正当化していました(p.3-4)。


 上記の文書に対しては、1月16日付けで、理事会からごく簡単なご返事をいただきました。下は、それに対する私の返信です。

2通目(2011年1月20日)

私の提案へのお答えを再度求めます

          遠山日出也(WAN法人会員)

WAN理事会御中

先日は、ご多忙のところ、私の提案に対してさっそくご回答をいただき、ありがとうございました。ただ、ご回答には、私の提案内容を基本的に理解しておられない点があります。その点を、以下、ご説明いたします。

一、私が提案したのは、労働委員会のあっせんによって解決した事項ではない

ご回答は、「ご提案の件に関しましては、既に労働委員会のあっせんにより昨年5月円満に解決しました」というものです。

しかし、私が提案したのは、ごく簡単に言えば、「一、WAN理事会がユニオンWANに謝罪した内容を自ら公表する」「二、『通告書』が不適切であったことを表明する」ということでした。これらは、もちろん「労働委員会のあっせん」にかけられた事項ではなく、したがって「昨年5月円満に解決した」事項ではありません。

理事会が「円満に解決した」と述べておられるのは、昨年5月にWAN理事会とユニオンWANとが、ユニオンWANの組合員2人に対する謝罪および解決金の支払い、組合員の円満退職で合意したことを指しているのだと思います(その点は、私の提案の文中にも書いており、当然私もよく認識しております)。しかし、私が提案したのは、その「解決」に対する、その後の理事会の対応についてです。

別の言い方をすると、こういうことです。たしかに、あっせんにかけられた「WAN理事会」と「ユニオンWAN」との紛争は「解決」しました。しかし、私が今回の提案で述べているのは、その「解決」について、「WAN理事会」が、「WAN-NEWSの読者」や「WANの法人会員・登録会員・ユーザー」に対してどのように報告し、どのような見解を表明するのかという問題なのです。それに加えて、「解決」後に送付した理事会の「通告書」が不適切だったという問題です。

二、「新しい体制」になったことは、提案を拒否する理由になるか?

また、今回のご回答では、「WAN理事会は、昨年より既に新しい体制によって再出発致しております」とも述べられています。

しかし、上で述べたような問題は解決していない以上、そうした問題にどう対処するかは、現理事会の問題だと思います。

私が今回の提案をした理由として挙げたのは、「WANに対する信頼を回復する」、「今後のWANにおける民主主義や人権を保障する」、「新たな会員やボランティアの獲得にマイナスにならないようにする」、「他の非営利団体でも起きている労働問題についてWANが範を示す」といったことであり、まさに現在の問題、今後の問題にほかなりません。私自身が遅ればせながら今年になって提案をした一つのきっかけも(注)、私が、WAN裏方日記に「ボランティアスタッフがもっと欲しいなああああ!」(2010.12.14)と書かれていることなどを読んで、「私もWANのためにもっと何かしたほうがいいかな?」と思いつつも、理事会が労働者に対してするべき「相談や協議」をしなかったことや「不適切な発言」をしたことへの反省を公表していない状況の下では、WANで仕事をすることに不安を感じたことにあります。

もし役員が改選されたなら、前期の問題についてはもう扱わないとすれば、WAN発展のマイナスになるでしょう。理事会自身、昨年の総会前にWAN法人会員に向けて文書を送付なさいましたが(5月13日付)、その目的の一つは、「お二人の雇用問題」についての経験にもとづいた理事会の認識を示して、「総会および今後の議論に役立て」ることでした(p.1)。すなわち、理事会自身も、WAN争議の経験から得られた認識(その認識は私とは大きく異なりますが)について、総会での理事改選後も、会の内部で継続して議論をする意思を示しておられたのです。

しかし、理事会がユニオンWANに謝罪した内容については、理事会はWANの法人会員にさえ伝えていないので、会員も、他の場で聞かないかぎり、知らない状態に置かれています。内容を知らなければ、その点について議論したり教訓を得たりすることができるはずはありません(次期以降の理事も現会員から選出される可能性が高いのですから、これでは理事会として経験を継承する上でもマイナスです)。このこと一つとっても、WAN理事会は、ユニオンWANに謝罪した内容を公表する必要があると言えます。

そもそも、「新しい体制になった」とはいえ、現在の理事長と副理事長は、お三方とも、前期も理事でいらっしゃったのであり、WAN争議の対処についての責任の一端があると言えます。また、たしかに前期の理事長と副理事長は理事から退かれましたが、他の理事と監事の方は、みなさん今期も理事でいらっしゃいます。

もっとも、たしかに私の提案を実行するとしたら、その際には、既に(副)理事長をお辞めになった3人の方のご意見も伺うべきかと思いますので、その分、多少の手間はかかると思います。しかし、この点に関しましても、すでに昨年5月の時点でWAN理事会の対応には批判の声が出ていながら、前理事会の任期中に私が述べたような点を解決しなかったのは、理事会の責任が大きいと思いますので、やむえないものと考えていただきたく思います。

以上のような理由により、もう一度私の提案に対するお答えをお願いいたします。

                            2011年1月20日

(注)もう一つの理由は、以下のようなものです。昨年5月のWAN総会で、理事会が頑なに謝罪の内容を公表しない姿勢を取られたので、私はこの件については、しばらく諦めていました。しかし、昨年秋ごろ、「たとえ謝罪内容自体は公表しないとしても、それらは理事会が反省なさった点には違いないのだから、『理事会の反省点』として公表してもらえばいいのではないか?」ということに思い至りました。それをきっかけになって、理事会への申し入れを考えるようになったのです。もちろん、もっと早い時期に提案をしていれば、より良かったと思うのですが……。


しかし、その後、理事会から返信はずっとありませんでした。

そうした中、4月1日に上野千鶴子さんがWAN理事長に就任なさった際の挨拶で、WAN争議があった当時の理事長と副理事長の理事復帰を今年度の総会で承認していただく予定だということを述べられました。私は、お二人が復帰なさろうとする今こそがWAN理事会が当時の反省点を表明なさる良い機会だと思いました。そこで、私は、そうしたことも述べて、私の提案のその後の審議状況を理事の方におうかがいしてみたところ、理事会からご返事がきました。下の手紙は、そのご返事への私の返信です。

3通目(2011年4月17日)

ウィメンズ・アクション・ネットワーク理事会御中

          遠山日出也

このたびは、ご多忙のところ、ご回答ありがとうございました。また、わざわざMさんやFさん(WAN争議があった当時の理事長と副理事長。原文では実名)のご意見も集約していただいたとのこと、厚くお礼申し上げます。

いただいたご回答は、繰り返し読ませていただきました。以下、理事会のおっしゃることに即して、私の意見を述べたいと思います。

1.和解後に理事会がおとりになった対応は、「双方に齟齬や対立を生じさせ」ることを免れていない。私の提案こそ「和解の意義」をより尊重する道である。

私は、今年1月11日、理事会に対して、昨年の和解で理事会がユニオンWANに謝罪なさった内容を自ら公表するか、一歩譲ってそれができないとしても、その内容を「理事会の対応の問題点(反省点)」として表明してほしいという提案をさせていただきました。

それに対する今回の理事会のご回答は、ごく簡単に言えば、すでに1月20日(注:1月16日の誤り)付で理事会が「(その件に関しては)すでに和解し円満解決済みです」と回答した以上のことは言えない、なぜなら、和解について当事者が「それぞれの立場から説明や釈明を行うと(……)ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせかねず、それは、和解の意義を損な」う結果になるので、和解に関して「私どもの見解や説明を述べることは差し控え」ているからだ――ということだと思います。

私も、「和解の意義」を尊重したいという気持ちは理事会の方々と同じです。また、私は、今回のご返事を読んで、理事会の方々が「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせない」ように配慮しておられることも理解できました。

しかし、私は、和解後に理事会がおとりになった対応は、なお「双方に齟齬や対立を生じさせ」ることを免れていないと思います。私は、理事会が謝罪なさった内容を公表する(注)(またはその内容を理事会の反省点として表明する)ことこそが、より「和解の意義」を尊重する道であると考えます。その点について、以下、詳しくご説明いたします。

理事会は、まず、「『和解』の重みを十分に認識し、双方、紛争のあった事態については、いわゆる、蒸し返すことをしない、ということを、[労働]委員会より、くれぐれも申しつかっております」と述べておられます。私が求めているのは、理事会がユニオンWANに謝罪なさった内容を「理事会の対応の反省点」として表明する、すなわち今後はそうしたことをしないと表明することですから、紛争があった事態を「蒸し返す」ことではなく、むしろ和解内容を未来に生かすことであり、「和解の『重み』」を尊重することにほかなりません。

理事会が、労働委員会から説明されたこととして、「紛争が和解に至るというのは、当事者が、相容れない認識や対立点を残しながらも、それぞれに歩み寄り、妥協点を見つけて双方がそれで納得することを約束した、ということである」とおっしゃる点については、私も同意いたします。たとえば、理事会の謝罪点の第3項の「これまでの労使のやり取りの中で組合に対して不適切な言動があったこと」の中の「不適切な言動」が具体的に何を指すのかという点に関しては、和解後も労使で認識の相違が存在している可能性が高いでしょう。また、謝罪点の第2項の「それらのことについて組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと」という点は、昨年2月の時点では、理事会は、WAN-NEWSで組合側を批判することによって「事前に相談、協議がなく実施したこと」を正当化しておられましたが(「この間の事情の説明」p3-4)、5月に和解なさった後においても、理事会は、当時の言い分のすべてを撤回されたわけではないかもしれません。けれども、和解で合意した内容自体は、労使双方が納得なさったことである――すなわち、「不適切な言動があった」という点や「事前に相談、協議がなく実施したことには問題があった」という点自体については労使双方が一致した、ということだと思います。

ところが、理事会は、「そこからそれぞれの立場から説明や釈明を行うと、それがどのような意図であれ、ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせかねず、それは、和解の意義を損ない、労働委員会のあっせんの労を踏みにじる結果となる」と労働委員会から説明されたとおっしゃいます。この点に関しても、たしかに、おっしゃるとおり、たとえば、もし組合側が勝手に「理事会は、〇〇と××と△△という『不適切な言動』について謝罪したのだ!」と「説明」したり、逆に、理事会側が「組合側がいっぱい『不適切な言動』をしたから、こっちも、ついちょっと言い返しただけだ!」という「釈明」をおこなうなら、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせ」るかもしれません。

しかし、私が提案しているのは、あくまでも合意した内容を発表する(またはそれを自らの反省点として表明する)ということなのですから、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせる」はずがありません。

ここで注意していただきたいのは、理事会は、和解前や和解後(*)に、WAN-NEWSや会員向け文書で、自らの言い分については、既に詳細に公表しておられるという点です。もちろん昨年4月24日の団交で理事会が呈示なさった文書のような未公表のものもありますし(ただし同日の団交については、組合側も自らの言い分を公表していません)、まだ言い足りない点もおありになるのかもしれませんが、理事会が発表してきた文書における労使紛争に関する説明の大部分は、組合側を非難し、理事会側の正当性を主張したものであることは否定できません。しかも、上述のように、「組合及び組合員と事前に相談、協議がなく実施したこと」という点に関しては、あっせんにおける謝罪とは異なり、理事会はずばり自らを正当化しておられました。

(*)和解後に理事会が発表なさった文書は、和解前の文書に比べて組合を非難した記述の量は減っており、その点は、理事会が和解の意義を損なわないよう努力なさった結果だと思います。しかし、和解後の文書も、組合側は「事実と異なる情報を流した(ている)」と繰り返すなど、もっぱら組合を非難していますし、和解前の文書の修正をなさったわけでもありません。

にもかかわらず、和解における謝罪で自らの非を認めた点のほうについては、何ら公表・表明しない――そうしたやり方は、フェアではなく、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせかねない」ものであり、相手方だけでなく、部外者を含めた人々のWAN理事会に対する信頼も損ったと言わざるをえません。「理事会の謝罪は口先だけのものだったのではないか?」という疑惑を持たれたことも否定できません。まして、和解において、「事前の相談・協議がなかったこと」という、それまでは自らを正当化する説明をなさっていた点についても謝罪した、すなわち態度を変えたにもかかわらず、そのことは知らせないというのは、「『和解』の重みを十分に認識」する姿勢とは逆であり、和解をないがしろにしていると言わざるをえません。

実際、遠藤礼子さんは、理事会が和解後に発表したWAN-NEWS16号とその添付文書(それらは、新たに謝罪=反省なさった点については語らず、組合側を非難する文言が目立つものでした)を読んで、「謝罪した後1週間くらいは、『反省したフリ』をするかと思っていたのに……。」「せっかくできた謝罪のおかげで、ひょっとしたら上がったかもしれない[WAN理事会の]評価をぶちこわしにするような文書」だと書きました(2010年5月14日付ユニオンWANブログ)。こうした事態こそ、まさに、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせ」た事態だと言いうるのではないでしょうか?

ですから、私は、理事会には、最低限、今後のWAN-NEWSで、たとえば、「昨年のWANにおける労使紛争の際には、私たち理事会の方にも、いくつかの件について組合と事前の相談や協議が欠けていたという問題や組合に対して不適切な言動をおこなったという問題がありました。今後は、従来以上に事前の相談や協議を大切にし、トラブルが起きた際も、不適切な言動はしないよう注意したいと思います」といったことを表明していただきたいと思うのです。

理事会側にも言い分はおありになると思いますので、「理事会の方に」という文案にさせていただきましたし、さらに、「さまざまな事情があったとはいえ」といった文言を、「私たち理事会の方にも」の前に挿入してもよろしいかと思います。あるいは、「今後は……注意したい」ではなく、「その後は……いっそう注意しております」でもよいと思います。

表明のタイミングとしては、前理事長や前副理事長が理事に復帰なさる時あたりが良いかと思いますが、もちろん他の時でもかまいません。

また、理事会としては、「本当はもっといろいろ言いたいことはある」とお思いかもしれませんので、上記の文章について、「先日、会員の方から昨年のWANの労使紛争に関するお尋ねがありましたので、その方がお尋ねの点について理事会の立場を表明します」という添え書きを付けてお書きになってもいいと思います。

具体的な文案を提示させていただくのは、おこがましいかもしれませんが、私の言っていることをより具体的に理解していただくために、文案を提示させていただきました。私は、理事会の文章を何度読み返しても、なぜこうしたことを表明していただけないのか、どうしてもわからないのです。

なお、今回の争議は広くネット上で話題になったことに鑑みれば、WAN(理事会)に対する信頼をアップするためには、本当は、サイトの登録会員に対しても、そのことを表明なさった方がいいと思います。また、本来は、問題が生じた原因も掘り下げて、今後、類似の問題が再発することを防ぐことも必要だと思います。

かりに、それらがどうしてもご無理だとしても、最低限、WAN-NEWSで上の点を表明していただかないと、筋が通らないと思います。加えて、組合を支援した署名サイトにも、まだ何も返答をしていらっしゃらないとうかがっていますので、上の点を表明した方がよろしいかと思います。なぜなら、署名サイトは直接WAN理事会に申し入れをしてこられた以上、何らかの対応が必要だと思うからです。

なお、今回いただいた手紙の最後の箇所に、「私ども理事会は、この経験を法人の運営に十分に生かしつつ、活動を進めておりますことを申し添えます」とあります。この箇所で述べられていることのうちに、「今回の反省を生かして、以前より事前の相談や協議を大切にし、トラブルがあっても、不適切な言動はしないよう注意している」といった点が含まれているのでしたら、歓迎です。

ただ、私は、そうした点は、現理事だけでなく、すべてのボランティア・運営委員・会員(未来の理事も恐らくこれらの方々の中から誕生するでしょう)、さらには他の非営利団体の共有財産にしなればならないと思います。そうするためには、今回の謝罪点を公表することが必要だと思うのです。

2.弁護士による「通告書」をいきなり送付したことも、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせ」た

私の提案の2点目である「『通告書』が不適切であったことを表明する」という件についてはまだ、理事会からのお答えがありません。この点に関してもお答えをお願い申し上げます。

ユニオンWANのブログの記述に異議があるからといって、「円満退職」した労働者に対して、「断固たる法的手段をとることも付言する次第です」としめくくった内容証明を、いきなり弁護士を通じて送付したことも、「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせ」たことは明らかだと思うからです。

もし抗議なさるとしても、少なくとも最初は、ふつうにメールなどで指摘なさるべきだったと思います。

もしそうなさっていれば、「恫喝訴訟の予告?」という非難を遠藤さんやその支援者から浴びることはなかったでしょう。当時、この件について京都大学時間雇用職員労働組合(ユニオンエクスタシー)は、twitterで、「労働委員会のあっせんで和解ができたというのに、、、。WANは評判を落とすようなことはしないでほしい」と述べています。同組合の発言は、和解を尊重する立場からの発言であり、また、WANの評価を高めたい立場からの発言であることを見ていただきたいと思います。

ですから、上の点については、私は、近いうちに、ごく簡単で結構ですから、理事会から、遠藤さんに、「いきなり弁護士による『通告書』を出したのは不適切なやり方でした。その点、おわびします」という趣旨の手紙かメールをお送りいただきたいと思います。

長文になって申し訳ありませんでしたが、以上、理事会がおっしゃる「和解の意義を尊重する」「ふたたび双方に齟齬や対立を生じさせない」というご意思をより良く実現するためにも、以上の下線個所を提案させていただいた次第です。ぜひよろしくお願い申し上げます。

(注)私は、 理事会が謝罪なさった内容自体を公表なさっても、その内容を理事会の反省点として表明なさっても、どちらでも結構です。ただ、今回の理事会のお手紙を読んで、和解での合意文書そのものを発表してもいいのではないか、ということをあらためて思いました。その理由は、以下のとおりです。
 ・「和解についてのそれぞれの立場からの説明や釈明」ではなく、和解での合意内容そのものを発表すれば、「双方に齟齬や対立を生じる」危険は、まったくない。
 ・今回のお手紙で、理事会は、「私ども理事会としても、たしかにそれ[=それぞれの立場から説明や釈明を行うことは、好ましくない結果になるのでやるべきでないということ]は、京都府労働委員会の特殊な指示ということではなく、一般に和解というものがもつ、法的 ・社会的な慣習・規範であることを納得し、委員会のご指示に従うことといたしました」ともおっしゃっています。しかし、かりに「一般に和解というものがもつ、法的・社会的な慣習・規範」を基準にするのでしたら、和解で文書化したもの自体を公表することも、問題のない行為だと思います(和解条項の中に「非公開とする」という条文が入っていないかぎりは)。たとえば、ご存じのとおり、かつて上野新理事長が意見書を提出された住友電工男女差別裁判での和解も、和解内容そのものがマスコミを通じて広く公表されています。
 ・「裁判とあっせんとは異なる」とおっしゃるかもしれませんが、今回の和解に際しても、ユニオンWANのお2人は「あっせんの結果として合意したことについては、公開は禁止されていない」ということを、あっせん委員に再三確認しています。
 ・理事会も、「あっせんの結果として合意したこと」さえ公開してはならない理由を説明できていません。すなわち、単に「労働委員会に指示されたから」とおっしゃるだけで、今回のお手紙のように、その指示が正当であると理事会自身が「納得」なさった理由を示しておられないのです。
 もちろん私は、労働委員会におけるあっせんの場で、あっせん委員が労使双方にどのようなお話をなさったのかを直接確認できません。あっせん委員が、理事側に対して、組合側とニュアンスが異なることを言っていた可能性はあると思いますし、あっせん委員としては両者に対する発言を使い分けたつもりはなくても、やり取りの文脈の相違などによって、両者の受け止め方が異なっている可能性などもあると思いますが、以上、私の意見を述べさせていただきました。


この文書をお送りした後しばらくして、理事の方にお尋ねしたところ、やはり理事会としては、私の提案には同意できないむねのご返事がありました。

なお、上でも少し触れましたが、上野理事長が総会前に、特定の個人名を挙げて、「今年度の総会で理事復帰をご承認していただいた上で、副理事長に就任してもらいます」とか、「総会で理事復帰を承認いただいた上で、事務局補佐にあたってもらいます」とか述べておられる点に関しては、私は、WANのfacebookの同記事のコメント欄で、以下のようにコメントいたしました。

会員の遠山日出也です。上野さんは、「WAN新体制」として、次期の理事や理事会内の役割分担について語っておられます。しかし、原則的には、会員であるかぎり理事に立候補する権利は誰にでもあると考えられる以上、私は、特定の個人名を挙げて就任の予定をサイトで発表するのは、公平なやり方でないと思います。もちろん事前に根回しするのはかまわないと思うのですが、立候補の意思表示は総会の席でおこなうか、もし事前に就任の意思表示をするとしたら、誰にでも立候補の意思表示をサイト上でおこなう機会を与えることを記事中に明記すべきだと考えます。もちろん以上は就任予定者にケチを付けようとして言っているのではありませんし、また、実際には既にある程度幅広い合意がある人事なのかもしれませんが、こうした発表のし方は不適切なように思いました。

ただ、facebookによって、WANサイトの記事にコメントが付けられるようになったことは、WANサイトの双方向性を少し拡大したものとして、歓迎できます。

(以下は、5月16日追記)

 私が5月10日にWAN理事会に出した、理事会の回答の許可願は以下の通りです。

ウィメンズ・アクション・ネットワーク理事会御中

          遠山日出也

 このたびは、ご多忙のところ私の提案への回答を二度にわたりいただき、ありがとうございました。しかし、結局、私の提案は、現理事会では受け入れていただけなかったことは、残念です。

 私は、今後、私の提案に対してより多くの人々の賛同を得られるように、もう少し努力したいと思っています。

 本日、私が理事会宛に提出した以下の3件の文章を、私のブログで公開させていただきました。
http://genchi.blog52.fc2.com/blog-entry-353.html
 ・1月11日提出の「WAN争議の問題についての理事会への提案」
 ・1月20日提出の「私の提案へのお答えを再度求めます」
 ・4月17日に提出させていただいた意見
(原文には日付がなかったり、題目がなかったりで、形式が不揃いで恥ずかしいですが)

 つきましては、2回にわたる理事会のご返答(1月20日付[遠山注:1月16日付の誤りでしたので、後に理事会に追伸をお送りして訂正しました]と4月10日付)も、私のブログに掲載させていただきたいのですが、かまわないでしょうか?

 私が理事会のご返答を掲載させていただきたい理由は、まず第一に、もちろんその方が全体の経過がわかって良いからですが、第二に、私の言い分を一方的に述べるのでなく、理事会の主張も掲載した方が、公平だと思うからです。さらに第三に、理事会の4月10日付の回答には、理事会が今までに表明しておられなかった論点が含まれていますので、理事会の現在のお立場を多くの人に理解していただくという意味で、理事会にとっても良いと思うからです。

 当初から公開質問状の形式をとっていれば、このようなご了解を取る必要もなかったのですが、私としては、理事会をおおっぴらに追及した結果として理事会に反省点を表明していただくよりも、理事会が自発的に反省点を表明していただく形を取った方が意義がより大きいと考えましたので、公開質問状の形式にはしませんでした。また、私の提案は、あっせんでの合意内容を念頭に置くなら、ごく普通のことだと思いましたので、理事会に私の提案を受け入れていただける可能性も相当あると考えていたのです。

 今回、私の書いた文書については公開のやむなきに至ったわけですが、ブログを読む人に理事会の立場を正確に理解していただくために、理事会のご返答についても掲載の許可をお願いする次第です。



 第2回WAN総会でも、私が提案した件について発言しましたが、理事会には受け入れられませんでした(「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」の中の「第2回WAN総会」参照)
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2011-05-15

[労働問題][フェミニズム]遠山日出也さんのWAN理事会への3通の手紙 NPO法人WAN会員として、内部から理事会に対して、WAN争議における説明および謝罪の表明を要求し続けておられる遠山日出也さんが、WAN理事会に対して出した3通の手紙をブログにおいて公開された。 WAN理事

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