2017-07

台湾初のレズビアン雑誌『LEZS』創刊

 4月1日、台湾でレズビアン雑誌『LEZS』が創刊されました。頤創藝有限公司(同社のサイト)が発行する季刊誌です。『LEZS』誌は、自らを「台湾初のレズビアン雑誌」だと述べ、『中央日報』などもそのように報じています(1)

 ただし、『聯合報』の記事は、そのようには報じず、「台湾ではここ二十年来、『女朋友』『Sappho』というレズビアン雑誌が出版された。前者は知識人向けで、思弁性が強く、地下的な性格が濃厚であった。後者は、古代ギリシャの女性詩人、『女性同性愛の祖』サッフォーの名であるが、2期しか刊行されなかった」(2)と述べており、少なくとも厳密な意味では「台湾初」ではないのですが、広く市場で販売される本格的?なものとしては初めて、という意味でしょうか?

 また、『LEZS』誌は、「大中華圏唯一の全方位のレズビアン雑誌でもある」(3)とも称しています。たしかにミニコミなどは別にして、商業的に販売されている、さまざまな話題を扱うレズビアン雑誌としては、「大中華圏唯一」ではないかと思います。

 『LEZS』誌によると、同誌は「レズビアンのための、レズビアンおよびレズビアンと共に立つ人々による雑誌であり、芸術・流行・レズビアンの生活・生命をすべての人に示し、身体/心理の間、T(女性同性愛における男性役)/婆(女性役)の間、女性/男性の間、性/愛の間、クロゼット/カムアウトの間、生活/表現の間で流動する女性の多種多様な姿を見せることができるよう希望している」(4)とのことです。

 同誌を発行する頣創藝有限公司は、1995年から、「女人国 Lez's Meeting」という大規模なパーティーを10回ほどやってきたグループです。パーティーの具体的な内容はよくわかりませんが、レズビアンのためであるとともに、女性だけで集まる場を作るという目的もあるようです(關於女人國)。昨年5月には、台北市で「アジア女子ロック音楽祭(亞洲女子搖滾音樂祭)」をおこないました(YouTube→5/15亞洲女子搖滾音樂祭 RockN' Girl@華山Legacy全面引爆發聲!)。昨年のハロウィンには、参加者が童話の登場人物に扮するパーティもしたりしました(YouTube→Lezsmeeting 女人國【玖】童話變奏夜 Promo女人國玖-童話變奏夜)。また、2009年からは、LGBTパレードに参加するなど、運動の場にも登場しています(5)

 定価は119ニュー台湾ドル(台湾元)です。私も和平書店を通じて取り寄せてみました(952円でした。もちろん他のルートで取り寄せることも可能だと思います)。表紙は、以下のようなものでした。

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 創刊号の目次は以下のとおりで、計106ページでした。

 總編輯的話/堅持的路,就是最大的一條路
 VIEW 中性迷思與恐同症 是誰讓MISSTER躲回櫃裡了
 VIEW Stay OUT/想生了嗎?
 REVOLUTION
 因為有愛,革命無所不在 
 陶晶瑩+貝莉+周美玲+蔡健雅+范曉萱+水瓶鯨魚
 2011 ROCK'N GIRL
 PEOPLE 林晨晞/革自己的命
 FOCUS 成長中的女人國
 ART 魏如萱/音樂緩緩勾起革命的火花
 PEOPLE 女人國AJ+女帝維克
 PEOPLE 何韻詩/WOMEN仍必須努力
 TREND 我驕傲 故我在
 S-CHATTING
 妳是朋友的愛情顧問嗎
 我的愛情為何不長久
 FOCUS LEZ'S STAR
 ART 流動的W

 巻頭では、編集長の王安頤さんが、近年、メディアやネットにセクシュアル・マイノリティが登場するようになったけれど、レズビアンのLife Styleの専門の雑誌はなかったこと、『LEZS』誌の誕生は「革命」的な出来事だから創刊号は「革命」をテーマにしたこと、将来は日本や北京など他の都市のレズビアン雑誌とも提携したい、といったことを述べています。

 次の「VIEW」のコーナーでは、まず、MISSTER(ミスター)という中性的な女性歌手グループをめぐる出来事を題材にして、芸能界におけるホモフォビアについて論じています (ネットにも転載→「中性迷思與恐同症 是誰讓MISSTER躲回櫃裡了」。MISSTERについては、「中性女子:台湾発!! 話題の男装女性ユニット『MISSTER(ミスター)』、でもネットユーザーからは不満の声!?」ブログ《華流 チャイナ日和》2011年03月04日参照) 。また、台湾の「少子化」の問題と絡めて、レズビアンが子どもを持つことについて論じた文もあります。

 特集の「革命」のコーナーでは、以下の6人の著名な若い女性が、自らの生活における「革命」について、短文を寄せています(ネットにも転載→「因為有愛,革命無所不在(上)」「(下)」)。
 ・陶晶瑩(wikipediaの説明[中国語]、「姊妹淘」サイト編集長)
 ・貝莉(作家、『戀愛是種邪教』など)
 ・周美玲(ゼロ・チョウ)(女性映画監督、レズビアン、百度百科の説明[中国語])――映画《刺青》(wikipediaの説明[日本語]第16回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭サイトでの紹介)で有名。
 ・蔡健雅(タニア・チュア)(女性シンガーソングライター、wikipediaの説明[日本語])
 ・范曉萱(メイヴィス・ファン)(女性シンガーソングライター、wikipediaの説明[日本語])
 ・水瓶鯨魚(作家・漫画家、ブログ)

 次に、「第2回アジア女子ロック音楽祭」の予選参加者募集のページがあります。メインボーカルが女性ならば、応募できるようです。

 以下、さまざまな記事がありますが、「ART」のコーナーでは、香港の歌手の何韻詩(デニス・ホー)さん(wikipediaの説明[日本語])が登場したり、写真家の鄭文さん(サイトWenjei Cheng Photography)が撮影した写真を掲載したりしています。

 『LEZS』誌は、写真を配したページがほとんどで、カラー写真も多く、きれいな雑誌です。もちろん、上述のように「VIEW」のコーナーなどでは、社会的問題も取り上げています。ただ、「Life Style雑誌」であるせいか、社会問題・社会運動について正面から取り上げた記事は少ないです。その一方、恋人募集や漫画・小説、セックスなどに関するページもなく、「上品」で「おしゃれ」な感じがします。「PEOPLE」のコーナーをはじめとして、人物に焦点を当てている傾向が強いですが、創刊号を見るかぎり、どちらかというと著名人中心で、一般のレズビアンのリアルな生活や人権の問題は直接取り上げていません。また、『LEZS』は、以前からあるレズビアンの団体やサイト(台湾女同志拉拉手協会2GIRL女子拉拉学園など)では、あまり話題になっていないようです。

 もちろんレズビアンの具体的な人権問題をメインにするような雑誌はミニコミにならざるをえないでしょうから、書店で売ることを視野に入れると、こうした雑誌のほういいのかもしれません。『聯合報』は、『LEZS』について、「『女朋友』『Sappho』は、当時の社会に対して牙をむき出し、爪を振るわなければならなかったが、『LEZS』は流行に沿っているだけでなく、ずっと軽やかでのびのびしており、新しい世代のレズビアンの特色をくっきりとあらわしている」(6)と述べていますが、ひょっとしたら、そうした面もあるのかもしれません。ただ、写真が多いうえに、紙も上質ですが、商業的な広告は少なく、採算がとれるかどうかは気になります。

 いずれにしても、商業的なレズビアン向けの雑誌が出版され、しかもその中に多くの著名人や歌手が登場するというのは、台湾のレズビアンの人々の動きの活発化や世間の風潮の変化を示しているのかもしれない、と思います。

 下は、『LEZS』誌の中のいくつかのページです。

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(1)臺灣首本女同性戀雜誌誕生 陶子范曉萱力挺」中央日報網絡報2011年4月6日、「第一本女同雜誌LEZS誕生! 揭開女女情欲面紗」今日新聞網2011年4月5日。
(2)女同志雜誌『LEZS』 演繹中性時尚」聯合報2011年4月15日。
(3)LEZS「全台第一本女同雜誌LEZS誕生 陶子、貝莉、蔡健雅等革命女性相挺」姊妹淘サイト2011年4月6日(誌面の写真もいくつか掲載されています)。
(4)同上。
(5)Bjork「成長中的女人國」『LEZS』創刊号
(6)(2)に同じ。
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