2017-08

台湾刑法の「性自主妨害罪」の改正草案をめぐって

 台湾では、昨年夏以降、子どもに対する性犯罪の量刑の問題をきっかけに、刑法の「性自主妨害罪」の章の改正や裁判官のあり方が問題になっています。

1.1999年に「強姦罪」から「強制性交罪」へ:男性も対象にするとともに、被害者の「意思に反する」ことを要件に

 まず、「中華民国刑法」の第16章「性自主妨害罪[妨害性自主罪]」について紹介しておきます。この章には、以下のような条文があります(抜粋)。

第221条(強制性交罪)
 男女に対して暴力・脅迫・恐迫・催眠術またはその他のその意思に反する方法によって性交をした者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。
 前項の未遂犯はこれを罰する。

第222条(加重強制性交罪)
 前条の罪を犯し、以下の状況の一つがある者は、7年以上の有期懲役に処する。
 一、2人以上が共同でこれを犯す者
 二、14歳未満の男女に対してこれを犯す者
 (以下略)

第224条(強制わいせつ罪)
 男女に対して暴力・脅迫・恐迫・催眠術またはその他のその意思に反する方法でわいせつ行為をした者は、6ヵ月以上5年以下の有期懲役に処す。

第224-1条(加重強制わいせつ罪)
 前条の罪を犯し、第222条第1項の各款の状況がある者は、3年以上10年以下の有期懲役に処する。 

第227条(14歳未満・16歳未満との性交罪・わいせつ罪)
 14歳未満の男女と性交した者は、3年以上10年以下の有期懲役に処す。
 14歳未満の男女とわいせつ行為をした者は、6ヵ月以上5年以下の有期懲役に処す。
 14歳以上16歳未満の男女と性交した者は、7年以下の有期懲役に処す。
 14歳以上16歳未満の男女とわいせつ行為をした者は、3年以下の有期懲役に処す。

 「性自主妨害罪」という章は、1999年4月に中華民国刑法が改正された際に設けられた章です。それまでは、第16章は「良俗妨害罪[妨害風化罪]」でした。第221条の「強制性交罪」も、以前は「強姦罪」という名称で、その条文も「女性に対して暴力・脅迫・薬剤・催眠術またはその他方法によって、抵抗できなくして姦淫した者は、強姦罪として、5年以上の懲役に処す。14歳未満の女子と姦淫した者は、強姦罪と見なす。前2項の未遂犯はこれを罰する。」というものでした。

 すなわち、1999年の改正によって、以下の点が変わったということです(1)
 ・保護される法益が、「良俗[風化]」から「性の自主性」になった。
 ・性交やわいせつの強制が、「女性」に対する犯罪ではなく、「男女」に対する犯罪になった。
 ・処罰される行為が、「姦淫」から、「性交」に変わり、口による性交、肛門による性交、異物の挿入なども含まれるようになった。
 ・罪の構成要件が、「抵抗できないようにする[至致使不能抗拒]」から「その意思に反する[違反其意願]」に変わった(この点は、第224条の強制わいせつ罪も同じ)。

 この改正の背景には、女性団体の運動があったことは言うまでもありません。

2.子どもに対する性犯罪の量刑に抗議する「白バラ運動」→最高法院、「7歳未満の児童と性交した者は懲役7年以上」という決議

 昨年2月、6歳の女の子に性暴力をふるったある男を検察は第222条の強制性交罪として起訴しました。しかし、8月15日、高雄地方法院(裁判所)は「女の子が抵抗しなかった」として第227条の、14歳未満の男女との性交罪に改め、3年2ヶ月という軽い刑に処しました。

 また、9月1日には、3歳の女の子に対する性犯罪で起訴された男が、一審、二審では女の子が「やめて」と泣き叫んだとして7年2ヶ月の重刑が下されたにも関わらず、最高裁では証拠不十分で無罪となりました。

 この2つの事件が報道されると、ネット上での非難が爆発、facebookで裁判官の解任を求める署名活動がおこなわれ、わずか3週間で28万人の賛同が寄せられました(最終的には30万人以上になった)。また、ネット上で結成された「正義連盟(正義聯盟)」が「白バラ運動(白玫塊運動、白バラは子どもの純潔を示す)」という抗議活動を開始しました(2)

 正義連盟の趣旨は、以下のようなものでした(3)
1.政府当局に、でたらめな判決が被害者とその家族にもたらす二次被害を重視するように呼びかける。
2.裁判官の任用・評価・退場のメカニズムを推進する。
3.司法の案件審理のメカニズムを改め、陪審団方式で審理することを提案する。
(以下略。)

 こうした動きに押されて、9月3日、中華民国司法院(wikipediaによる説明)は、法務部に7歳未満の児童に対する罰則を強化するよう提案したことを表明しました(4)。9月7日には、最高法院(裁判所)が刑事法廷会議を開き、7歳未満の児童と性交した者は、一律に7年以上の懲役の判決を下すという決議をしました(7歳から14歳までは、現行どおり、児童の同意があれば、3年以上10年以下)。この決議は、実質的には下級審にも拘束力を持ちます(5)

 9月25日には、「正義連盟」が呼びかけ、性暴力の問題に取り組んできた勵馨社会福利基金会現代婦女基金会なども賛同して、「9.25白バラ運動集会」が開催されました。この集会は、下のような要求を掲げて、1万5千人余りが総統府前のケタガラン大道でデモと集会をしました。
 1.性侵害の保護の対象を、7歳以下から14歳以下に拡大する。また、心身の障害者も対象に含める。
 2.子どもの性侵害事件についての専門家証人制度を設立する。性的侵害を受けた児童には、捜査および裁判の段階で、児童の心理の専門家が被害者に付き添う(*)。
 3.「裁判官・検察官評価法」を制定し、適任でない者には憲法による終身職の保障を受けさせないようにする。

 (*)勵馨社会福利基金会は、以下の理由で専門家証人制度が必要だと述べています。
 ・性侵害の被害者は、必ずしもはっきりした生理的な傷を負っているとは限らないし、目に見える証拠があるとは限らない。だから、公平に訴訟をおこなうには、被害者が受けた心理的な傷を評価することが必要である。
 ・性侵害の被害者は、必ずしも明らかな暴力的な脅迫を受けたとは限らず、しばしば加害者に権力や地位があるために、抵抗できなかったり、協力させられたりする。そのため、専門家の証人の協力によって、被害者が被害を受けた時の心理状態を明らかにすることが必要である(6)
 現在は、そういう制度がないため、1、2人の裁判官が専門家の証人を求めたことがあるだけで、大多数の裁判官は、不必要だとするそうです(7)

 この集会に参加した大人は「司法の死」を示す黒い服を着、子どもは「純潔」を示す白い上着を着て、手に手に白いバラを持ってアピールしました(8)

 この集会のテレビ報道は、以下のようでした。
・[公視中晝新聞(要求撤換恐龍法官 白玫瑰上凱道) 2010-09-26]

・[中天新聞 925白玫瑰運動]


 同じ9月25日、総統府の公共事務室も声明を発表し、馬英九総統はこの問題を重視しており、性侵害の保護の対象を広げること、「裁判官法」の早期成立をめざすことなどを表明しました(9)

女性団体の訴え――被害者保護や裁判官の研修を重視

 従来から性的侵害の問題に取り組んできた「現代婦女基金会」は、9月25日の集会に参加した際、以下の「6つの訴え」を発表しました。
 1.性侵害の法規を速やかに改定する。
 2.性侵害専門の法廷を設立する。
 3.訴訟での被害者の地位を向上させる。
 4.司法官の研修を強化する。
 5.性犯罪者の診療の専門家を育成する。
 6.性犯罪者の監視とコントロールを実現する(10)

 現代婦女基金会は、以下のように述べています(11)

 「現代婦女基金会は、長年、暴力の被害に遭った女性を助けてきた過程で、司法関係者に性侵害についての専門的知識が欠けているために、あまりにも多くの誤った判決や軽い判決が下されてきたことに気づいた。それゆえ(……)性侵害の犯罪の法律改正作業をしなければならないだけでなく、裁判官の専門的資質も同時に向上させることが求められている。」

 「刑法の『性自主妨害罪』の章はとっくに民国88年[1999年]に改正され、『抵抗できないようにする』という要件は『その意思に反する』に改められたのに、われわれの司法官は、まだ被害者を『抵抗できないようにする』ことを判決の主な根拠にしている。(……)統計資料では、性侵害事件の6割以上はよく知っている者の犯罪であり、子どもに対する性侵害事件はさらにそうである。子どもを主に性的侵害の対象にする多くの加害者は、児童が常に身辺に接触できる対象であり、彼らは、子どもが幼くて抵抗できないか、抵抗することを知らないために、脅すか利益で誘いさえすれば、身体的暴力をあまり必要とせずに、たやすく子どもを傷つけることができる。子どもが拒絶の声を上げないのは、子どもがわかっていないからであり、『いやだ』と言うのは、子どもにとっては拒絶を示す最大の反抗であり、手足で必死に反抗して傷を負うことがないのは、幼くて反抗する力がないからである!」

 「このほか、一般の成人の性的侵害の案件でも、裁判官はジェンダー意識が欠乏しており、女性が性的侵害に直面したときの恐怖を理解していない。司法の関心はまだ、被害者が強力に反抗したかどうかや、身体にひどい傷を負ったか否かにある。被害者は常に『あなたはその時何をしていたのか?』『あなたはなぜすぐに離れなかったのか?』『なぜ大声で叫ばなかったのか?』『なぜ加害者を攻撃しなかったのか?』『なぜすぐに警察に届けなかったのか?』などの一連の質問をされる。ジェンダーの観点から見れば、女性は小さい時から伝統的な性別役割の教育をされ、すぐに攻撃性や能動性を持てるように訓練されていない。性的侵害が女性に与える恐怖や汚名化も、女性が司法に告訴したり声を上げたりしない主な原因である。」

 「10年前すでに、現代婦女基金会は、性侵害事件の司法の二次被害についての調査をおこなったが、多くの性侵害の被害者の弁護士はみな次のように考えている:司法システムには、被害者を保護するソフト・ハードの設備が欠けているだけでなく、司法業務従事者には性侵害というテーマについての専門知識がないために、被害者は法廷で立証の仕事に責任を負わなければならず、性的被害に遭ったという事実を裁判官に説得しなければならない。そのため、被害者は性侵害事件の細かな内容を絶えず繰り返して述べなければならず、心身に二次被害を受ける。そのことが多くの性侵害の被害者に司法の正義の前に歩みを進めることを間接的に妨げている。勇敢に司法に訴えた被害者も、裁判官が性的侵害の専門的認識がなく、訓練されていないので、間違った判決や軽い判決が下される。」

 「私たちは、司法院が『性侵害専門法廷』を設立しなければならないと訴えている。本会は現在『犯罪被害者保護法』の修正草案を完成させることに着手しており、これによって、性侵害の被害者の訴訟での地位を高めることを望んでいる。」(10)

 「白バラ運動」は、裁判官批判が軸で、その名称などから見ると、「子どもの純潔を守る」運動という色彩もあるようですが、女性団体は、「性暴力の被害者の保護」という視点を重視しているようで、具体的には、上のように性被害についての裁判官の研修などを求めています。9月25日の集会で掲げられた、専門家証人制度の要求も、女性団体の要求を反映している面があるのかもしれません。

3.法務部、性自主妨害罪の罰則を強化するとともに、強制性交罪の要件から被害者の「意思に反する」を削除する草案を作成→女性団体は「意思に反する」の削除などに反対

 2011年1月10日、法務部は、以下の(1)(2)の「性自主妨害罪」の改正草案を完成させ、それを審査するために行政院に送ったと報じられました(12)

(1)罰則を強化する
第221条(強制性交罪)
 「3年以上、10年以下」の有期懲役→「5年以上」の有期懲役
第224条(強制わいせつ罪)
 「6カ月以上、5年以下」の有期懲役→「1年以上、7年以下」の有期懲役
第227条(14歳未満・16歳未満との性交罪・わいせつ罪)
 「14歳以上、16歳未満の男女と性交した者は、7年以下の有期懲役に処する」→「12歳以上16歳以下の男女と性交した者は、1年以上、7年以下の有期懲役に処する」

(2)性自主妨害罪から「その[=被害者の]意思に反する」という要件を削除する 
 その意図は、法改正のための会議に参与した人によると、「裁判官が量刑をするとき、被告の犯罪の手段の軽重だけを考慮すればよくして、証明しようがない被害者の意思への違反の有無によって、被告に軽い判決を出す状況を減らす」ということだと報じられました。

 女性団体は、上の(1)の点についても必ずしも評価していません。勵馨社会福利事業基金会の紀惠容執行長は、刑罰を強化すると、裁判官が有罪判決を下しにくくなるので、審理の際により多くの証拠が求められ、被害者が立証することが困難になるのではないかという危惧を述べています(13)。また、現代婦女基金会の頼芳玉弁護士は、被害者の年齢が1ヵ月でも高ければ適用しないのはおかしいし、2人の子どもが無邪気に性行為をした場合はどうなるのかという問題もあると言っています(14)。尤美女弁護士も、「性侵害犯に対する判決が軽いのは、裁判官が比較的軽い条文を採用することに問題があるのであって、『年齢で一律に扱う』ことには反対である」と述べています(15)

 また、婦女新知基金会現代婦女基金会勵馨社会福利事業基金会台北市晩晴婦女協会台灣少年權益與福利促進聯盟台北市女性権益促進会は、共同で記者会見をし、法改正の手続きが民主的原則に違反していることを批判しました。これらの団体によると、法務部は2010年9月に1回、特定の民間団体と専門家を招いて公聴会をしただけであり、その後は、この問題に関心を持つ民間団体や民衆には、意見を述べるパイプが何もなかったそうです。今年1月になって、やっとニュースを通じて法務部の一部の修正意見を知ることができただけで、改正案の本文や改正理由はまだ知ることができていない状況だそうです(16)

 2月には、それらの女性団体が連名でおおむね下のような声明を発表して、署名を募り、同月22日には立法院前で抗議行動をおこないました(17)

法務部が性急に法改正することに反対であり、民主的審議の精神を実行すべきである
 (略…上述)

「意思に反する」という要件の削除に強く反対する
 1999年、刑法に「性自主妨害罪」の章を増訂して、性の自主権を保護する精神を確立したと同時に、刑法221条の強制性交罪の構成要件を、「抵抗できないようにさせる[致使不能抗拒]」ことから「意思に反する[違反意願]」ことに改めた。その目的は、家父長制的な思考を除去し、個々人の自主的な意思を正視することにあった。しかるに、法務部は、民衆の不満を早くなだめるために、軽率に「意思に反する」という要件を削除して、性自主妨害罪の章を、再び被害者の自主的権益を無視するものにし、「性の自主権を擁護する」という重要な精神もすっかり失わせた。
 このほか、私たちがさらに憂慮するのは、そのことによって、全国の性侵害の通報量の7割を占める知り合いによる性暴力が、暴力・脅迫などの強制の要件に符合しないために、性自主妨害罪から、いっそう除外されやすくなることである。たとえば昨年2月、かつてのボーイフレンドがかつてのガールフレンドに性的侵害をした事件について、台中法院は、女性側が強力に拒絶しなかったという理由で、無罪の判決を下したが、これは、被害者の自主的意思がまったく重視されなかった結果である。類似の判例は日増しに増えており、私たちは、このような法改正は、保護を拡大する効果がないだけでなく、むしろ性の自主権の保障の範囲を大きく縮小すると考える。

法務部は民意をもてあそんでおり、法改正は、民衆の不満が向けられた点を根本的には解決できない
 去年の女児の性侵害事件が引き起こした社会の反発は、その原因の一部は、裁判官が具体的なケースについて適切な処罰ができなかったことにある。しかし、現行法の規定によれば、裁判官が裁量する際に、重く処罰することができるのであって、裁判官の量刑の不当さに対しては、刑の重さを引き上げて、裁量の範囲を縮小することだけを解決方法にしてはならない。刑の重さの取り決めは犯罪の情状の軽重と符合しており、軽率に一部の条文の刑の重さを引き上げたり、引き下げたりすることは、刑法の刑罰全体の軽重のバランスを崩し、刑法の体系を混乱させる。

 私たちは、以下の主張を提出する。

 1.立法院は審議をしばらく猶予するべきであり、けっして性自主妨害罪の章の修正草案を軽率に通過させてはならない。
 2.私たちは「家に閉じこもって車を造る」法改正をただちに停止して、社会的な参与を拡大してコンセンサスを形成し、民主的審議の精神を実現することを要求する。
 3.性侵害罪の法改正は、見知らぬ人の性暴力にだけ着目して、性侵害犯罪の多数を占める顔見知りの暴力の被害者を犠牲にしてはならない。


発起団体
婦女新知基金会現代婦女基金会勵馨社会福利事業基金会台北市晩晴婦女協会台灣少年權益與福利促進聯盟白玫瑰社會關懷協會

連署団体
上記6団体のほか、婦女救援社会福利事業基金会台湾女人連線主婦聯盟環境保護基金会台湾性別平等教育協会高雄市婦女新知協会台湾女性学学会台湾大学婦女研究室

 こうした声にもかかわらず、3月10日、修正草案は行政院会(閣議)を通過しました。

 法務部は、「現行の刑法の強制性交罪の成立要件は、行為者が客観的に『被害者に抵抗できないようにする』ことのほか、『被害者の主観的意思に反する』ことを必要としているが、反していない場合や被害者の意思が証明しようがない時は、強制性交罪によって制裁しようがない」などと言って、「意思に反する」という要件の削除を正当化しています(18)

4.その他の要求は、積み残されたまま

 その一方で、、白バラ運動や女性団体が訴えてきた、以下のようなさまざまな問題が残されたままです。

裁判官教育

 正義聯盟が2010年11月~12月の「性自主妨害罪」の判決652件を分析したところ、性侵害事件において刑が軽いことは変わっていませんでした。正義連盟によると、この問題は裁判所全体の現象であり、最低刑期+6ヵ月以下の判決が62%で、判決の35%は法定の刑期よりも低かったということです。また、減刑の理由として、「被告の公務員としての生涯に影響しないようにする」とか、「完全な家庭を保持するため」とかいった不合理なものが見られました。裁判官は、司法院の「控訴率」「維持率」に関する要求に縛られ、自分の業績の上げるために、独立した裁判をしていないとも指摘されています(19)

 現代婦女基金会の頼芳玉弁護士は、「民間団体は、裁判官の専門教育を強化して、性侵害事件に対する正しい認識を持たせることを訴えてきたのに、法務部は民間団体の訴えの重点を理解していない」と述べており(20)、同基金会の姚淑文執行長も、「法改正の前提として、裁判官の専門の研修を強化しなければならない」と言っています(21)

裁判官の審査

 白バラ運動をきっかけに、「裁判官法」の草案も出されたようですが、民間団体の「裁判官検察官評価推進連盟(法官檢察官評鑑法推動聯盟)」によると、その草案の評価は「ブラックボックス」的な評価(公表されないなど)にすぎず、現状よりも後退している面もあるとのことです(22)

専門家証人制度、専門法廷

 以前から女性団体が言ってきた、専門家証人制度や専門法廷の必要性は訴えられていますが(23)、まだ形になっていないようです。

ミーガン法

 白バラ運動は、昨年から、台湾版「ミーガン法」(ウィキペディアの説明)の制定も目指し、署名運動を展開しています。2010年11月20日、「白バラ運動」は、2回目の集会をケタガラン大道でおこないました。この集会には、200人足らずしか集まりませんでしたが、台湾版「ミーガン法」の制定を訴えました(24)

2010-11-20公視晚間新聞(白玫瑰返凱道 催生台版梅根法案)


 内政部も、2011年1月、「性侵害犯罪防止法(性侵害犯罪防治法)」の改正草案を作成して、犯罪者に対する「地域コミュニティの監視・コントロールを強化する」として、性侵害事件を起こし、かつ高い再犯の危険があると評価され、かつ刑の後に強制治療の適用の対象になっていない者*については、姓名や写真、判決の要旨を公告すると表明しました(*2006年7月以降に犯罪を犯した者は、現行刑法91条の1の規定により、刑期が終わった後、強制治療の対象になるので、対象は、2006年6月以前に犯罪を犯した者)(25)

 白バラ運動も、この点に関する要求を強めているようです(26)。現代婦女基金会も「性犯罪者の監視とコントロール」を言っていましたし、勵馨社会福利事業基金会は、台湾版ミーガン法を制定することに積極的です(27)

 しかし、台湾人権促進会台灣人權促進會は、公告制度は人権侵害である上、再犯率を低下させる証明もなく、他にも方法はあるとして、反対意見を提出しています(28)

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 全体としてみると、昨年来、子どもに対する性暴力の問題をめぐって「白バラ」運動が盛り上がったけれども、政府の対応は、重罰化が中心で、女性団体が以前から訴えていた裁判官の研修の強化とか、被害者保護といった点は軽視されたままであり、むしろ被害者の「意思」を軽視する法改正がなされようとしています。台湾人権促進会が憂慮しているミーガン法(29)の件を含めて、「人権」という観点からは好ましくない事態が生じかねない状況のようです。

 台湾は、10年以上前に「強姦罪」から「強制性交罪」への転換を実現したことは日本に比べて先進的だと思うのですが、その転換の意義が政府や裁判官には充分浸透していなかったのでしょうか? 「白バラ」運動も、大きな集会を成功させたことは注目されるのですが、「子どもの純潔」を掲げる運動であることの限界もあるのかもしれません。

(1)刑法『妨害性自主罪』修訂的評估與展望」網氏女性電子報第29期。
(2)以上については、「【アジア発!Breaking News】子どもが『NO』と言わなければ無罪? 子どもへの性犯罪を裁けない法律に、国民の怒り爆発。(台湾)」techinsight2010年9月10日。「99年兒童性侵司法輕判事件」(勵馨社会福利事業基金会サイト9月13日)も参照。
(3)關於正義聯盟」正義聯盟サイト。
(4)司法院建議修法 性侵幼童罪加重」『自由時報』2010年9月4日、「性侵7歲以下幼童 司法院建議修法重刑」今日新聞網2010年9月4日。
(5)最高法院刑庭決議 性侵7歲以下幼童最低判7年」『自由時報』2010年9月7日、youtube「最高院決議 性侵7歲以下幼童 重判7年以上 2010.09.08」、「最高裁『7歳未満の子供への性犯罪は刑罰を加重』と決議」国民党ニュースネットワーク2010年9月8日。
(6)不容許恐龍法官再胡搞--受性侵兒需要你的協助」勵馨社会福利事業基金会サイト2010年9月3日。
(7)紀惠容「【勵馨觀點】我們需要人性的司法審理系統」勵馨2010年9月23日。
(8)以上のこの集会についての記述は、「925白玫瑰運動集會」維基百科、「促司改 白玫瑰凱道怒放」『自由時報』2010年9月26日、「性犯罪の被害児童を守ろうと訴える 白バラ運動デモ集会」国民党ニュースネットワーク2010年9月27日より。
(9)性侵輕判 白玫瑰籲司改總統高度重視」今日新聞網2010年9月25日、「總統府正面回應 曾香蕉回嗆」『自由時報』2010年9月26日。
(10)白玫瑰運動-現代婦女基金會六大訴求」現代婦女基金会サイト
(11)法官漠視被害人與家屬的痛,法官的專業與性別意識在哪裡?」現代婦女基金会サイト
(12)法部草案送出/嚴懲性侵犯 刑期5年起跳」『自由時報』2011年1月10日。
(13)加重性侵刑 婦幼團體看法不一」中央社2011年1月9日。
(14)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(15)性侵未滿12歲兒童 至少判5年」『自由時報』2010年10月13日。
(16)婦團砲轟 性侵修法閉門造車」『立報』2011年1月12日、「性侵修法霧煞煞,被害權益嘸底看 行政院會暫緩審議,儘速擴大召開公聽會」婦女新知基金会サイト2011年1月28日。
(17)【我要連署】堅決反對立法院通過妨害性自主的恐龍法條」婦女新知基金会サイト2011年2月21日、「【記者會】堅決反對立法院通過妨害性自主的恐龍法條」婦女新知基金会サイト2011年2月22日(写真あり)、「性侵修法 竟擬刪『違反意願』」『台湾立報』2011年2月21日、「婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日(写真あり)。
(18)強制性交需違意願 將刪除」『台湾立報』2011年3月10日。
(19)性侵輕判嚴重 民團怒批司法院是恐龍院」『自由時報』2011年2月14日、「刑法妨害性自主章法院輕判之研究分析報告[word]」(正義聯盟志工分析整理、中華民国100年[2011年]2月14日発表)。
(20)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(21)性侵未滿12歲兒童 至少判5年」『自由時報』2010年10月13日。
(22)司改團體痛批法官法初審 更保障恐龍法官」『自由時報』2011年1月12日。
(23)婦團痛批性侵修法開倒車」『台湾立報』2011年2月22日。
(24)白玫瑰連署 推『台版梅根法』」『蘋果日報』2010年10月31日、「推台版梅根法案 白玫瑰再上凱道」『自由時報』2010年11月21日。
(25)內政部部務會報通過『性侵害犯罪防治法』部分條文修正草案,強化性罪犯社區監控機制,近日將函報行政院審查」内政部サイト2011年1月28日。
(26)白玫瑰:政府需落實性侵矯治」『台湾立報』2011年3月23日。
(27)白玫瑰運動 11/20 重返凱道,不容許性侵加害人再犯! 」勵馨社会福利事業基金会サイト2010年11月19日。
(28)公布性侵前科個資 無助維護安全」、「針對內政部『性侵害犯罪防治法』部分 修正案説帖」台湾人権促進会サイト。
(29)台湾とは直接関係ありませんが、アメリカ在住のmacskaさんは、多くの資料をもとにしてミーガン法についてのまとめサイトを作成し、同法は「有害無益」であることを主張しておられます(ミーガン法のまとめ @macska dot org)。
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