2017-06

「2010年中国10大同性愛ニュース」

 ゲイサイト「淡藍網」は、毎年、セクシュアル・マイノリティの10大ニュースを発表してきました(2007~2009年の10大ニュースについては、本ブログの記事「2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース」参照)。しかし、昨年は淡藍網自身は10大ニュースを発表せず、彦暁さんのブログ「二人の男の勇気(两个男人的勇气)」が発表した「2010年中国10大同性愛ニュース」を転載しました(2010年中国十大同性恋新闻事件)。以下、これを適当に端折って、ご紹介します。

1.全国各地で続々と同性の結婚式がおこなわれた

 1月3日、成都でゲイカップルの曾安全と潘文傑がバーで結婚式をしたのを皮切りに[本ブログの記事「同性婚をめぐる最近の動向」参照]、2010年の中国では、同性婚が続々とおこなわれた。
 3月、山東でゲイカップルが結婚式をした。
 5月、長春でレズビアンカップルがバーで結婚式をした。
 11月20日、常州で、江蘇で初めてゲイカップルが結婚式をした。

2.「同志ニーハオ」ほほ笑み募集活動

 5月17日は、「国際反ホモフォビアデー」である。このとき、東北師範大学4年生の侯海洋は、同性愛者のために尽力して、偏見をなくそうと考えた。「同志ニーハオ」ほほ笑み募集行動(同志你好微笑征集行动)はこのようにして誕生した。この活動は、多くの異性愛者に、自らの笑顔の写真とともに、同性愛者を祝福するメッセージを書いてもらうものである。

 12月初めには5700余りの「ほほ笑み」が集まったが、この数字は、最初に計画した1000をはるかに越えていた。これらの写真とメッセージは、すでに北京・上海・昆明・長春などの都市で展示された。この活動は、中国で今までに最も大規模な、同性愛者を支持する公然とした活動として、全国各地のメディアが次々に報道した。

 *遠山補足:さまざまなセクマイグループもこの活動に参加し、専用サイトも出来ています( 同志你好行动网络)。2011年1月17日現在、7600人以上の人が活動に参加し、サイトでも数千人の笑顔とメッセージが公開されています(同志你好微笑征集(第一季)同志你好微笑征集(第二季))。

 関連記事:「中国のオランダ大使館で、『Smile for Gay』キャンペーンの写真展示開催」みやきち日記2010年8月4日。

3.北京9.26牡丹園事件

 あなたは2009年の「広州人民公園事件」を覚えているだろうか? 理由もなく追い払われることに対して、同性愛者が公然と、勇敢に自分の権益を守った[本ブログの記事2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュースの2009年の3参照]。残念なことに、この事件が起きて1年後に、同様の行為がまた発生した。

 9月26日夕方、北京の警察が、突然、海淀区にある、同性愛者が集まる場である牡丹園の手入れをおこなった。英文版『環球時報』の9月28日の報道によると、牡丹園にいた100名にのぼるゲイが警察に連れて行かれ、尋問された。ゲイたちは、身分証を呈示することと血液検査を受けることを要求され、写真を撮られ、指紋も採取された。

 この件ついて、北京市公安局のスポークスマンは、「警察が牡丹園でとった行動は、国慶節の休日の全市の年間の治安検査の一部であり、連れて行った人は、問題さえなければ、すぐ釈放した」と表明した。

4.中国初の「ミスターゲイ」コンテストが途中で挫折した

 この件は、日本でもレコードチャイナが報じました。
 ・「北京で初の『ミスター・ゲイ・コンテスト』、政府が同性愛者に保護措置?―中国」レコードチャイナ2010年1月15日。
 ・「当局の圧力? 中国初の『ミスター・ゲイ・コンテスト』、開催当日に突然中止―北京市」レコードチャイナ2010年1月16日。

 彦暁さんは、この件について、以下のようにコメントしています。

 上述の牡丹園事件もあり、2010年の北京のセクマイの活動は、いくぶん元気がなかった。しかし、未来は、結局のところ明るいであろう。今回のミスターコンテストについてのメディアの報道で注目すべき点は、新華社がコンテスト前に珍しく2000字あまりの長文で報道したことである。その文章は、コンテストが行われる予定だった当日に発表され、文中には「このミスターコンテストは、規模は大きくないが、中国の同性愛者たちが、より多くの社会的受容を勝ち取る小さな一歩になる」と書かれていた。

5.第2回「上海プライドフェスティバル」が成功

 10月16日から11月6日まで、第2回「上海プライドフェスティバル(上海骄傲节2010)」が上海でおこなわれた(第1回については、本ブログの記事「上海プライドウィーク」参照)。今回の活動に協力した淡藍網は、上海プライドフェスティバルは、中国大陸最初の、また唯一の、ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーが融合した祭典であり、今回の主題は「多元・団結・調和」だと報道した。

 国外のようなプライドパレードはおこなわなかったが、主催者は、参加者のために前回よりすばらしい内容、たとえば、写真展・芸術展・カラオケ・ピクニック・運動会・クィア映画祭などの各種の形式の活動を準備した。3週間にわたる第2回プライドフェスティバルは、比較的順調に進行し、全国各地のLGBTの友人を吸引しただけでなく、少なからぬ海外のLGBTも参加した。

6.セクマイ健康雑誌『朋友通信』停刊

 (この項目については、彦暁さんは個人的な関わりを書いていらっしゃるので――そうした文も大切ですが――、私が他の媒体の記事をもとに簡単に述べます)

 エイズ防止と同性愛者の権利のための雑誌『朋友通信』が、2010年6月末、74号をもって停刊しました。この雑誌は、1998年2月、張北川さん(青島大学医学院教授)が創刊したもので、部数は1万5千部でした。

 停刊の原因は、フォード財団が資金援助を停止したためです。1996年、フォード財団中国事務局のジョン・カウフマン(Joan Kaufman)さんが、中国では、同性愛者が差別されていて、同性愛者をサポートする社会団体もないことに気づいたことをきっかけに、同財団は『朋友通信』にずっと資金援助をしてきたのですが、今回、援助を停止しました。停止の理由は、「中国はもう豊かになったので、資金援助の目標を他の東南アジアやアフリカの国に転換する」というものです。

 『朋友通信』のサイトも昨年末で消滅しましたが、バックナンバーは、青島陽光朋友サイトの「《朋友通信》往期期刊检索」から読むことができます。

 [資料]Yang Dingdu“Many lament loss after Chinese magazine for gay, AIDS-affected communities closes”新華社2010年7月20日→中国語訳「《朋友》停刊,读者:就象最好的朋友突然离别」愛白網2010年7月21日、「《朋友》和他的“同志”们」『斉鲁晩報』2010年8月14日。また、『朋友通信』については、「中国大陆另类媒介的生产:以《朋友通信》为例」曹晋『媒介与社会性别研究:理论与实例』(上海三聯書店 2008年)という研究があります。

7.「直通中南海」の掲示板規則:性的指向による差別を禁止する

 9月8日、人民網と中共新聞網が「直通中南海――中央の指導者と中央の機構の掲示板(直通中南海——中央领导人和中央机构留言板)」を正式に開設した。その掲示板規則の中の、「以下の内容を本掲示板で発表することを禁止する」という箇所の第11条には、「人種・皮膚の色・性別・性的指向・宗教・民族・地域・障害・社会経済状況などの差別的内容を含む言論とニュース」と書かれていた。

 規則の制定者が特に考えてそう書いたのではなかったのもしれないが、人民網・中共新聞網+直通中南海の重みを考えると、掲示板が性的指向による差別を禁止したことは、国民の性的指向の観念の混乱を正して正常に戻す、かすかな現れである。

 これに、先述の新華社のゲイコンテストの長編の報道や『環球時報』の牡丹園事件に対する報道を加えて考えるなら、私たちは、中国のメディアが同性愛に対する態度において、10年前の毛寧刺傷事件※の後には、ひたすら猟奇的だったか、口をつぐんでいた報道に比べて、天地がひっくりかえるような変化がすでに発生していることがわかる。

 当然、例外もあり、たとえば百度……

 ※2000年に当時人気歌手だった毛寧(マオ・ニン)がナイフで刺された事件。犯人が男娼だったことから、メディアが毛の「同性愛疑惑」を報道、毛は芸能界からしばらく姿を消した(その後のレコードチャイナの報道:「刺傷事件で『同志恋』疑惑の人気歌手マオ・ニン、親しげに話す男性はアノ人―北京市」2008-12-18)。

8.「百度[中国の検索サービスの会社]」が同性愛者たちを尊重せず、同性愛の大衆の怒りを買う

 2010年の中国のインターネットでは、多くの事件が起きた。そのうち、年初のGoogleの撤退は、中国のライバルである「百度」の支配人の李彦宏に、喜びで目を輝かせた。しかし、Googleの格調と比べると、李彦宏と彼の「百度」には、本当に大きな違いがある。市場占有率と稼いだ多くの紙幣は、けっして「百度」の前途が有望であることを示していない。

 現代的なインターネット企業でありながら、人と人は本来平等であるという理念において何もなすことなく、金儲けのためには公然とマイノリティ・グループを差別さえする。これが中国最大の検索エンジン「百度」であり、セクシュアル・マイノリティに対して最も友好的でないサイト「百度」である。

 「百度」における、万人に罵られている価格競争による順位づけは、金儲けのためには手段を選ばない悪徳商人の面構えを真に体現している。かつて長い間、「百度」で「同性愛」を検索すると、トップに出てくるのは、「同性愛の治療」という商業的な詐欺情報だった。もし「Gay」で検索すると、多くの情報やゲイサイトは相変わらずスクリーニングされている。逆に、「反同性愛」スレッドは、セクマイを攻撃し慢罵・侮辱する書き込みに満ちている。

 多くのネットの友人が抗議したため、「同性愛の治療」という詐欺情報はすでに消えたけれども、スクリーニングと攻撃は、「百度」では、相変わらずやりたいほうだいである。

 同じ検索エンジンをやっている会社でも、Googleは、同性愛の従業員の賃金を異性愛の従業員の賃金よりも高くすると宣言した。なぜなら、同性愛の家庭は、通常の家庭のように所得税が減免されないからである。しかるに、百度は、大々的に「同性愛の治療」を鼓吹し、同性愛を差別する書き込みを野放しにしている。政府筋のメディアもすでに同性愛者たちを直視し、差別に反対しはじめている現在、李彦宏と百度は、一体いつの時代の「関連法規と政策」を執行しているのか?

9.同性愛者の父母が表に出て、同性愛の子どもが理解され受け入れられるよう訴えた

 社会の外部の環境と比べても、中国のセクマイにとって最も大きな圧力になっているのは、やはり自分の父母と親戚である。しかし、2010年、理解が、しだいに、私たちの最も親愛なる父母からやってきた!

 近年、同性愛者の家族と友人の会(同性恋親友会)を創設したのに続いて(本ブログの記事「『同性愛者の家族と友人の会』がサイト開設」参照)、中国で最初に同性愛者の息子を公然と支持した呉幼堅女士の努力によって、「同志父母懇談会」もすでに3回おこなわれた。10月30日、第三回同志父母懇談会が北京で開催され、全国のさまざまな地区から、同性愛者と彼らの父母を含めた約200人が集まって、各自の経験を交流し、父母たちに同性愛の性的指向を持った子どもを理解し受け入れるように励ました。

 言うに値するのは、6月15日、『愛は最も美しい虹である――一人の母親が見た同志の世界(爱是最美的彩虹――一一位母亲眼中的同志世界)』という書物が正式に世に出たことである。書物の作者は、同志コミュニティの中で広く尊敬されている呉幼堅女士である。この10万字の本は公益の読み物として、公衆に無料で贈られた。

10.国家ラジオ映画テレビ総局が、交友番組で同性をカップリングすることを禁止した

 2010年は、テレビでお見合い番組が盛んだったが、国家ラジオ映画テレビ総局がそれを規制する通知を出した。その中に、「各テレビ局は、同性の交友という旗印の下に、同性愛者をカップリングしてはならない」ということが含まれていた。

10+1.同性愛者が献血を拒否され、血液センターの差別を訴えた

 6月6日、同性愛者の王梓政が北京西単図書ビルディングの献血スポットで献血しようとしたところ、「『献血法』の規定※により、献血できない」と言われた。また、衛生部が出した「献血者健康診断基準」にも、「献血を受ける人の安全を保証するために、同性愛者には献血しないよう訴える」という一条がある。

 4日後、32歳の王梓政は告訴状を持って海淀法院に行き、北京赤十字血液センターに対して、彼の献血を許可することと、彼の献血を拒否したことについて公開で謝罪することを要求した。王は、単純に性的指向だけによって献血できるか否かを判断することは、非常に非科学的であって、自分は公民として、憲法と法律が賦与したすべての合法的な権利と義務を有していると考えた。

 海淀法院は一カ月後、「上級の法院の指示を仰いだ結果、立件しないと決定した」と表明したけれども、この事件はそれでも私たちが銘記するに値する。同性愛の献血についての議論は、すでに長い間続いているが、同性愛者が公に法律的支持を求めたのは初めてであり、そのメルクマールとしての意義は忘れられるべきではない。

 関連記事:「中国の裁判所、ゲイ男性の献血訴訟を却下」みやきち日記2010年7月9日。

 ※「中華人民共和国献血法」自体には、献血者には健康検査をする必要があると述べられているだけですが、同時に施行された「献血者健康検査基準(献血者健康检查标准)」の六の18が同性愛者の献血を禁じています。この規定には、HIV感染のリスクが低い女性同性愛者も排除しているという問題もあります(「中国の女性同性愛者献血差別について(作成中)」RyOTAの日記2009-08-03)。



 こうして見てくると、「本当に一進一退だけれども、長い目で見ると少しずつ前進しているのかな」と感じます。
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