2017-09

本年の動向11―男性問題のシンポジウム

4月 香港の「両岸三地男性デー交流会」でシンポジウム
12月 北京で「男性とジェンダー平等:多元的対話と研究・討論」シンポジウム


 今年は、中国・台湾・香港の3つの地区の研究者などが集まる男性問題のシンポジウムが2回、開催されました。

 (1)まず4月8日と9日に香港で、香港明愛男士成長センターが「両岸三地男性デー交流会」(「両岸三地」とは、大陸と台湾、香港のこと)を開催します。
 香港明愛男士成長センターというのは、1998年3月に設立された団体で、その目標としては「男性の不断の成長を喚起し、彼らに家庭における役割を確立させ、調和的で打ち解けた家族関係を築くのを助けること」を掲げており、グループ活動や講座などをしているといいます。
 また、同センターは2003年から、4月10日を男性デーと定めて毎年行事をおこなっています。4月10日に決めたのは、『論語』の中の「四十にして惑わず」という言葉から取ったそうで、その趣旨としては「男性の自尊・自信を打ちたて、新しい時代がもたらすさまざまな挑戦を正面から積極的な態度で迎える」というものです。
 以上の説明を読むかぎりでは、一般的なメンズリブとはちょっと異なる感じです。

 しかし、この香港明愛男士成長センターは、今回、方剛さん(男性解放学術サロン)や藍懐恩さん(台湾中華21世紀男性成長協会の創設者。女性)と協力して、「両岸三地四都市・男子大学生のジェンダー自己認知調査」をやりました(四都市とは、北京、上海、台北、香港)。これは、かなりフェミニズム的ないしジェンダー論的問題意識が強い調査です。
 この調査は、このページからダウンロードできますが、全体として台北の男性が進歩的で、北京や上海の男性は保守的な傾向があるようです(香港は中間)。

 また交流会の中で、「第4回男性デー 三八から四十へ:男性の覚醒と更新『両岸三地』シンポジウム」が開催され、以下のような報告がされました。
 方剛:中国内地の男性運動の萌芽
 藍懐恩:台湾の男性関懐
 黎偉倫(香港明愛男士成長センター主任):香港の男性の成長
 楊明磊(台北銘傅大学):コメント
(このシンポジウムの写真は、上のページにも掲載されていますし、方剛さんのブログでも紹介されています。)

 (2)また、12月4日から6日まで、北京で「男性とジェンダー平等:多元的対話と研究・討論」というシンポジウムが開催されました。
 これは4月の香港のシンポよりはるかに大規模なものでした。男性とジェンダー平等の問題を論じたシンポジウムとしては、中国大陸はもちろん、台湾や香港でもかつてないものだったようです。

 このシンポジウムは、北京・天津「ジェンダーと発展」協力者グループ(京津社会性別与発展協作者小組)、男性解放学術サロン中国フェミニズム学術文化サロン女性メディアモニターネットワーク(婦女伝媒監測網絡)北京紀安徳相談センター(北京紀安徳諮詢中心)が共同で発起し、香港楽施会の資金援助を得ました。

 このシンポの模様は、「中国におけるジェンダーと発展」ネットワークのHPで詳しく報告されています。以下の報告がおこなわれました(クリックすると内容がわかります[中国語])。

12月4日
9:20-10:35:大会の主旨
 王雅各:新世紀の男性研究
 栄維毅:共に権力を持ち、責任を分担する──フェミニズムと男性がジェンダー平等を促進する行動との相互作用
 陳錦華:男性サービスの志向:ジェンダー本位の実践

11:00-12:30:男性とフェミニズム
 畢恒達:男がフェミニズムと出会うとき
 劉兵男性とフェミニズム研究
 黄海濤:どのようにフェミニズム団体の中で成長するか
 李麗華:高等教育における男性の全面参与
 石瀟純・陳智慧:男子学生と「フェミニズム」──湖南の三つの大学のアンケート調査

14:40-15:20:男性の気質の構築と男性の経験(1)
 陶咏白:画像に閉じ込められた男性精神──林剣峰の絵を解析する
 賈方舟:現代芸術の中の男性のテキストと男権の言葉
 李修建魏晋の男性気質から今日のジェンダー問題まで
 朱雪琴:男性のジェンダー役割のステロタイプなモデルの、男性心理に対する影響の事例の分析

15:20-18:10:男性の気質の構築と男性の経験(2)
 曹瓊:男性気質の解体と再建──現代中国映画のジェンダー権力関係の分析
 曹瑪麗:現代のコマーシャルにおける男性気質
 方剛・曽丹:ベッドの上の「平等」の背後──高収入の男性の性生活の叙述における男性の気概の分析
 李強:アメリカの両親がいる家族における父親の男性気質の家庭化
 陳国康:「変遷する社会、変遷する男性」:香港の男性の社会的境遇と家事参与

19:30-21:30:ジェンダーと芸術:林剣峰・李虹・斉鵬の美術作品の研究と討論
 李虹:永遠に跪いてる『女』人
 余迪:絵画の「鬼才」林剣峰取材ノート
 張君:画家・斉鵬女史訪問記

12月5日
9:00-10:00:クイアとジェンダー平等
 Leslie Cao:私のトランスジェンダリズムあるいは反ジェンダー主義の精神史
 崔子恩クイアの「見る」と「見られる」
 童戈:ジェンダーを越えて構築された「易装MB[女装したmoney boy=売春する男の子]」およびその活動状態
 王海生:中国の「性転換した人(変性人)」の透視と思考
 李強対立と融合──中国の男性同性愛の主流文化における身分の構築
 郭雅:中国大陸の男性同性愛コミュニティ組織の発展

11:00-12:30:男性研究と男性運動(1)
 楊明磊両岸の男子大学生のジェンダー役割の内包の対比研究──北京と台北を例に
 侯書芸・王海生・張君・余迪:ここでの変革はひっそりと──首都師範大学男子学生のジェンダー観念の調査
 張京メディアと男性研究

14:00-15:20:男性研究と男性運動(2)
 荒林フェミニズムと男性研究の方法──『中国のフェミニズム』と『男性批判』を例に
 梁麗清:女性運動が男性運動と出会うとき
 方剛:「男性の自覚/解放」釈義
 藍懐恩:『紳士生活サロン』による男性の人文生活のモデルを構築する試み

16:35-18:00:男性研究と男性運動(3)
 黎偉倫:香港の男性運動:ソーシャルワーク主導から男の参与まで
 梁展慶:香港の男性運動──フェミニズムの観点への支持の欠如
 馬毓鴻・楊明磊:男性の幼稚園教師の職業選択と適応経験の研究
 洪文龍:台湾の男性成長団体のジェンダー・ポリティックス

19:30-21:30:映像作品の展示とシンポ
19:30-20:30:中山大学ジェンダー教育フォーラム記録映画『ホワイトリボン』の簡単な紹介
20:30-21:30:雲南の少数民族男性の生存状況(DV)
 金曉敏:東洋の神秘の女児の国・瀘沽湖畔のモソ(摩梭)人の男性の生活と権益
 鄭新民:ハニ(哈尼)部落の青年男性の結婚難の状況の調査と訪問インタビュー

12月6日
9:00-12:00「ジェンダー平等の行動への男性参与の促進」参与式討論と計画

 以上、男性とジェンダー平等について、実に多面的に検討されていることがわかります。ぎっしり詰まった日程にも驚かされます。

 栄維毅さんは、このシンポは「多元的な対話と研究・討論」という点で成功だったとまとめています。男性と女性だけでなく、男性と男性、女性と女性、さまざまな性志向の人が対話と交流をし、内容が豊かで、雰囲気は民主的で平等だったと。 

 栄さんは、反省点としては、会議で発言者が多くて討論が十分できなかったこと、多元的なのはよいが「政治的に正しくない」発言(女性に対して暴力的、被害者を責める)が十分正されなかったこと、男性団体の関心がまだセクシュアリティに集中していることなどを挙げています(栄維毅「《男性与性別平等:多元対話与研討》研討会綜述」)。

 いずれにせよ、まだま小さいとはいえ、中国でも地区を越えて男性団体や男性問題への関心は急速に発展しつつあるように思えます。

[追記]
 報告の内容についてのリンクが切れていますが、下のページですべて見ることができます。
 男性与性别平等:多元対話与研討
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