2017-06

アステラス製薬・仙頭史子さんの本人尋問

 昨日、アステラス製薬の男女差別裁判の仙頭史子さんの原告本人尋問に行ってきました。
 仙頭さんは、大阪府立高専を卒業後、1973年に藤沢薬品(現アステラス製薬)に入社し、現在まで働き続けてきました。
 しかし、男性は入社後平均14年で主任に昇格するのに、仙頭さんは倍近くの27年かかるなど、男女差別を受け続けたため、2002年に大阪地裁に提訴しました。

 昨日は延べ112名の方がいらっしゃって、大法廷は午前も午後も満員。午前中は20名程度の方に帰っていただくほどでした。
 メモできなかったところもあるので、細かな部分では不正確な箇所もかなりあると思いますが、だいたい以下のような内容でした(前の3回の証人尋問の内容に関しては、(「アステラス製薬・仙頭史子さんの男女差別裁判を支援する会」のHPの「史子ニュースHP」欄をクリックするとわかります。私のプログでも1回目2回目については書きました)。

(1)中央研究所にお勤めの時期

 会社側は、仙頭さんの職務区分は「研究アシスタント」であり、「定型的で補助的な仕事をしていたにすぎない」として、差別を正当化する主張をしていました。
 しかし、仙頭さんは「面接試験の時もその後も、自分の職務区分や仕事の内容が『研究アシスタント』だと説明されたことはまったくなかった」と証言なさいました。
 実際、仙頭さんが最初にした仕事(HPLCという機械を、分析に使えるように条件設定する仕事)も専門知識が必要な仕事でした。また、実験結果を見て試行錯誤する「仮説→実験→検証」というプロセスを伴うもので、「定型的な業務」ではまったくなかったことを、難解な専門用語を交えつつも、私たちにもわかるように具体的に説明なさいました。

 会社側は、前々回、仙頭さんの仕事は「自己流」で「不正確で大ざっぱ」だとも言っていました。
 しかし、仙頭さんは、もしそうならば、正確なデータが出なかったり、機械を壊したりするはずだが、そんなことはなく、そうした注意を受けたこともなかったことを証言しました。
 むしろこんなこともあったそうです。出たデータを持っていったら、当時の上司のさらに上の上司から「こんなにきれいなデータでは、捏造ではないかと疑われる。このデータは使えない」と言われ、新しく入って来てまだ仕事に慣れていない人に、実験をやり直させたとのことです。
 また、高専時代の成績表も示しました。全体的に「優」が多く、とくに実験科目はほとんど全て「優」でした。もし仕事が不正確なら、こんな成績はとれないことは明らかです。

 仙頭さんがやっていたデータ判定業務は、大学院卒の当時既に経営職(管理職のこと)だった人が引き継いだそうです。

 次に、NCWSというものの研究の話になりました。
 仙頭さんが、それ以前は捨てていた「中間層」(水にもクロロホルム?にも溶けない物質)について研究を提案したという功績があったのですが、会社側は「いや、それは以前から知られていたことにすぎない」と主張していました。
 しかし、仙頭さんの証言では、そんなことはまったくなく、上司も最初は「そんなの、捨てといたらええんや」と言っていたそうです。
 このテーマは外部発表もやり、仙頭さんは論文の第一執筆者になりました。ところが、会社側は「仙頭さんは手足を動かしただけで、頭を動かしてはいない。時間的貢献が多いから第一執筆者にしただけだ」という、非常識な主張をしていました。
 当然そんなはずはなく、仙頭さんは「一段階ずつ、仮説を検証する仕事をやった」と証言しました。

 仙頭さんはこのように能力もあり、仕事で活躍していたのに、女性だからということで差別されました。
 こんなことがあったそうです。仙頭さんが英文の論文を読んで得られた成果を上司に渡しました。すると、上司は「これは面白い。やってみよう」と言って、それを、それまで他の仕事をやっていた大学院卒の男性に渡して仕事を済ませてしまい、その後仙頭さんには何の報告もなかったとのことです。
 仙頭さんは、このことについて、「工夫してやった仕事なのに、あたかも自分が存在していないかのように扱われ、とても傷つました」と証言なさいました。

 こうした差別はありましたが、仙頭さんが研究所にお勤めの時代、「研究アシスタント」などという職務区分は一度も聞いたことはなかったことのことです。

(2)営業職の時期

 社内報で女性営業職の公募を見つけた仙頭さんは、「研究所では、どんなに努力しても格差は縮まらない。これは個人ごとの成果が不明確だからだ。個人の成果が明確に出る営業ならば」と考え、17年間のキャリアを捨てて、1990年に営業職に転身を決意します。
 そして、選考を経て、みごと初の女性営業職(それまでは国内の他社にもいなかった)になります。

 営業をしていたときは、会社の中にいることはほとんどなく、泊まりを伴う出張も男性同様にこなしていました。
 仙頭さんの仕事ぶりは、社報でも4ページにわたって「厳しい仕事、忙しい日々」といった説明付きで紹介されたこともありました。

 当時の課内の営業成績は、トップは課長でしたが、仙頭さんも2~3位で、他の多くの男性と比べてまさるとも劣らないものだったことも示されました。

 ところが、前々回、会社側証人の元上司は「目標や達成率はすべてグループごとのものだった」などと、個人目標がなかったかのような珍妙な主張をしました。
 しかし当然そんなはずはなく、個人ごとの計画目標や達成実績、達成率を示した文書が作成されており(元上司本人が作っていた)、それが営業員全員に配布されていたのです(この文書でも仙頭さんは3位でした)。
 そして成績が芳しくないと、当然営業会議で追及され、営業員は対策を答えなければならなかったとのことです。

 また、会社側は「仙頭さんの成績がよかったのは、課長の取引先を引き継いだからにすぎない」と主張していました。
 しかし、仙頭さんは、そうではなく、新たな取引先を開拓・担当していたし、その課長とは関係がない年度の成績も良かったことを具体的に述べられました。
 むしろ、仙頭さんが開拓した取引先を、他の男性の営業員が引き継いだりしていたようです。こうした担当先の変更は通常おこなわれないそうで、のちに仙頭さんを別の地区に引っ張った上司からは、「お前が大阪で新規開拓しても、男の営業員に取られるだけや」と言われたとのことでした。

 前々回、会社側証人の元上司は、「週報」というのがとても重要なのに、仙頭さんはそれを提出していなかったと述べました。
 しかし今回、仙頭さんは、週報を提出しなかったことなど一度もないと証言しました。また、週報がさほど重視されていたわけではなく、仙頭さんの週報に返答が返ってきたりとか、他の人のものを含めて週報の情報について話されたりするとかいうことはなかったそうです。

 1997年、賃金制度が変更になり、営業職は全員が「C職群(総合職)」に位置づけられることになりました。
 仙頭さんは、「これで今までの苦労が少しは報われる」と思いました。
 ところが会社は、その直前に仙頭さんを子会社に出向させることによって、「B職群(一般職)」のままにしたのです。

(3)子会社に出向になった時期

 仙頭さんは、子会社では、研究のための「機器分析部門」に配属されましたが、仙頭さんが営業職に就いていた時期に技術的な進歩があったため、新たな勉強が必要でした。
 しかし、仙頭さんは「君、いたから、できるだろう」と言われて、会社からのフォローはありませんでした。
 仙頭さんは自力で新しいことも習得したうえで、部下のオペレータなどに教育や指導もするという管理職的な仕事をなさいました。
 実際、「品質管理部門」では、そうした仕事は管理職がやっていたとのことです。

(4)賃金制度について

 仙頭さんは、賃金制度に関してもいろいろ証言されました。たとえば賃金制度が改定された際にも、賃金はそのままで(つまり、それまでの男女格差もそのまま)、むしろ資格を賃金に合わせたことなどを述べられました。

 男女・学歴別に考課も固定されていることを告発したメールが提訴直後に仙頭さんのところに届いたそうですが、実際、仙頭さんの考課はずっと「+3」で変わらなかったとのことです。成績が良くて、賞与などがプラスになった年も、考課は同じだったそうです。

 また同期同学歴の男性は、業務はさまざまなのに、ほぼ全員が一律に昇格していたとのことです。結局、制度をあれこれ変えても男女別の雇用管理だったということでしょうか?

 主尋問の最後に仙頭さんは、「提訴した時点で、男性は50%が管理職だったのに、女性は0.5%だけ。私はまだ若くて体力もあるので提訴できたが、提訴したくてもできない女性がたくさんいる。私だけの問題ではない」と訴えられました。

(5)反対尋問

 反対尋問では、まず、当時の新聞広告に「研究アシスタント募集」と書いてあったので、仙頭さん自身もそうした採用区分であることを認識していたことを確認させようとしました。
 この新聞広告だけが会社側の書類上での証拠だとのことで、会社側の弁護士は必死のようでした。
 しかし仙頭さんは、「たしかにその新聞広告を見て応募したと思うが、その新聞広告のことは覚えておらず、当時、とにかく技術職を探していたので、そうした意識で新聞広告を見ていた」といったことを話されました。

 次に、仙頭さんに当時の同僚の女性のことを盛んに尋ねていました。どうも当時は女性には長期勤続が少なかった(から男女別雇用管理は当然である)ことを認めさせたかったようです。
 しかし、こんなひどい差別があったらなかなか長期勤続する気になりませんし、仙頭さんご自身は今までずっと勤めてきたのです。

 また仙頭さんが子会社に出向になった時、会社はちゃんと研修をしてフォローしていたことを主張しました。
 けれど、仙頭さんに「その研修は、単なる機械の操作法についてです」と言い返されていました。

 あと、仙頭さんの成績表について、一つ「可」があったのを見つけて、あれこれ言ったりしていました。

 また、仙頭さんが最近主事になって、賃金も上がったことを確認させていました。
 しかし、それは裁判を始めたあとのことです。また仙頭さんと同期同学歴の男性はみな管理職になっており(主事は管理職ではない)、差別が是正されてなどはいません(この点は、再主尋問で明確に仙頭さんが答えられました)。


 前々回、元上司が、仙頭さんの仕事について過小評価する証言をたくさんしました。
 そうした証言については、その時の反対尋問ですでに根拠の薄弱さは明確になったと感じていましたが、今回の仙頭さんの証言で、それらは、ことごとく粉砕されたように思います(書き切れなかった点もたくさんあります)。
 今回の反対尋問では、主尋問で具体的に述べられた仙頭さんの主張を崩すような尋問はほとんどありませんでした。
 とくに営業職のときのことについては、反対尋問そのものがありませんでした。
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