2017-09

WAN理事会の文書は、サイトリニューアルについて事前に遠藤さんと相談しなかったことを正当化しうるか?

 ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)で起きたWAN理事会とユニオンWANとの労働争議に関して、今年2月、WAN理事会は、「この間の事情の説明」と題するWANの法人会員向けの文書(以下、「事情説明文書」と略す)を出して、理事会の行動の正当性を主張しました。

 この文書は、遠藤礼子さんに対する個人攻撃的な色彩もあり、書かれている内容には、客観的事実と相違する箇所も多いようです。

 それに加えて、私は、「かりに事情説明文書に書いてある事実関係がすべて正しいと仮定しても、遠藤さんと事前に相談することなく、遠藤さんのウェブマスター解任と直結するサイトリニューアルを決定したことは、正当化できないのではないか?」と思いました。

 以下に述べるのは、あくまで私の個人的な考えですが、よろしければお読みください。

理事会は、新業者によるサイトリニューアルについて遠藤さんと事前に相談すべきであった

 理事会の事情説明文書は、新業者によるサイトリニューアルおよび遠藤さんのウェブマスター解任をおこなった理由として、おおよそ以下の2点を挙げています。

 (1)WANサイトを改善する必要があるが、業者や専門家に話を聞いたところ、サイト改善のためには、システム自体の変更とそれによる大規模なサイトリニューアルが必要であることがわかった。また、リニューアルに伴い、それまで遠藤さんの仕事のうちの大きな部分が不要になることも判明した。
 (2)サイトリニューアルを遠藤さん自身のイニシアティブで進めることは、遠藤さんの労働時間の制限からも、スキルの点からも、不可能とだと判断せざるをえなかった。

 私が上の箇所を読んで、真っ先に思ったのは、「もしこれが本当なら、今ごろになって全会員に事情説明文書を送るのではなく、サイトリニューアル決定前に、遠藤さん自身に(1)や(2)のようなことを説明していれば良かったじゃないか!?」ということです。同じ手間をかけるのなら、トラブルになる前にやっておいたほうが良かったことは、今やきわめて明らかでしょう。

 これは、けっして単なる結果論ではありません。サイトリニューアルについて遠藤さんと事前に相談すべきだったということは、当時でも十分判断できたと思います。

 なぜなら、なにより第一に、新業者によるサイトリニューアルは、遠藤さんの労働条件の不利益変更と直結する問題だったからです。

 理事会は「サイトリニューアルは、組合との協議事項ではありませんので、理事会にて決定しましたが、遠藤さんの業務・労働条件については協議を続けている」と述べています。私も、理事会がまだ遠藤さんの労働条件の不利益変更をおこなっていない点自体は、良いことだと思います。

 しかし、理事会は、サイトリニューアルを決定した時から、遠藤さんの労働条件の不利益変更を提案(のち退職勧奨)し続けています。はじめから理事会は、サイトリニューアルをしたら「遠藤さんの労働条件に影響を与えざるを得ない」(事情説明文書より)と考えていたのですから、サイトリニューアル自体について遠藤さんと相談しないことには、真の意味で「労働条件について協議をした」ことにはならないと思います。

 WAN理事会のやり方は、言ってみれば、遠藤さんを行き場のない袋小路に追い詰めたうえで、細部についてだけ「協議」をするというものです。すなわち、大まかに言えば、第一段階として「まず仕事を干し」、第二段階として「『あなたのやる仕事はないから』という理由で労働条件を引き下げたり、退職に追い込む」という世間一般に「よくある手法」(遠藤さん)でしかないと思います。

 仕事がないのに給料だけ貰うというのは、一見良いようですが、そのこと自体が本人には心理的圧力になります。ましてWAN理事会は、全会員に向けたこの文書の中で「[遠藤さんには]していただく仕事が無いまま、元の賃金(時給××××円[遠山注:原文には、比較的高い時給の金額が具体的に書かれています])を支払い続けています」と宣伝しています。これは、遠藤さんをさらしものにすることによって、退職するよう圧力をかける行為だと思います。

 第二に、遠藤さんはサイトを統括するウェブマスターであったにもかかわらず、理事会が、サイトの根本的リニューアルについて遠藤さんに一言も相談せずに決定をしたこと自体、遠藤さんを人間として尊重していない行為だと私は思います。

 たとえば、先日の三井マリ子さんの館長雇止め事件の大阪高裁判決を見てみましょう。この事件は、豊中市らが、当時、女性センターの館長だった三井さんを、センターの組織変更を三井さんに知らせずに決定して、排除した事件ですが、高裁判決は次のように言っています。三井さんは「専門的知見や経験……を生かして館長職をこなしてきた者として……組織のあり方、次期館長候補者(自己を含む)について情報を得て、協議に積極的に加わり自らの意見を伝えることは、現館長職にある立場にあってみれば当然」なのに、「説明、相談を受けなかったことは、現館長の職にある者としての人格権を侵害するものであった」(*)

 遠藤さんも、ウェブマスターとして専門的知見や経験を生かして働いてきました。サイト立ち上げの際には、相当な無理をされ、その後も必死に修正作業をしてこられました(昨年12月にも、理事から「それはもう、ここまでやってこれたのは遠藤さんのおかげだ」と言われたそうです)。その矢先のウェブマスター解任でした。私は、法律には詳しくありませんが、遠藤さんが、サイトのシステム変更について、何の相談もされずに、仕事を奪われたこと自体、人間として尊重されていないことだと思います。

 第三に、サイトリニューアルについて、より良い判断するためにも、遠藤さんに相談することが必要だったと思うからです。

 遠藤さんはウェブマスターだったのですから、少なくともその面に関しては、理事よりは、業者や専門家の説明について的確に判断できる力を持っていたと考えられます。業者は根本的には自己の利益を追求する団体ですし、外部の専門家も当事者ではない以上、限界は免れませんから、WANとしてより正確な判断をするためには、理事会だけで判断するのではなく、遠藤さんにも相談するべきだったろうと思います(**)

 第四に、理事会は、それまでの経過を根拠にして、「リニューアルを遠藤さん自身のイニシアで進めることは、労働時間の制限からも、スキルの点からも、不可能と判断せざるをえなかった」と述べています。しかし、人間の生活状況やスキルは常に変動するものですから、他人が勝手に判断すべきことではなく、本人に確認するのが当然だと思います。特に本人の雇用とサイトの根本に関わる、こうした問題に関しては、絶対に本人への確認が必要でしょう。

 もし本人に確認してみたら、「しばらくしたら他の仕事が減るから、大丈夫ですよ」などという答えが返ってこない保証はありません(また、プチ・リニューアルの仕事なら、より短時間でできたと思います)。

 もし理事会の見込みどおり、遠藤さんにはご無理だったとしても、「ご無理ですよね?」と予め確認しておけば、遠藤さんは「はい。私には時間的に(orスキルの面で)できません」とおっしゃるでしょうから、その後の話がよりスムーズに進んだと考えられます。

理事会が挙げている「事前に相談しなかった理由」は、正当な理由たりうるか?

 理事会は、業者によるサイトリニューアルについて事前に遠藤さんに相談しなかった理由として、「[遠藤さんの]勤務時間の制限から遠藤さんと相談する時間が取れなかったこと」と「遠藤さんと理事たちのコミュニケーションに問題があったこと」を挙げています。

 こんなことが理由になるのでしょうか? 当時のコミュニケーションに問題があろうがなかろうが、理事の方々は、最初に挙げた(1)や(2)の点を説明したメールを遠藤さんに送りつけて、相談に応じるよう求めればよかったのではないでしょうか??

 サイトリニューアルは、遠藤さん自身の雇用にとっても、WANサイトにとっても一大事である以上、常識的に考えれば、遠藤さんは時間を作って相談に応じただろうと思われます(事情説明文書にも、遠藤さんは、それまでにも「一部の仕事を自発的に自宅でしてくださったこともあった」と書かれています)。私は、むしろ理事会は、遠藤さんに対して、普段やってもらっているシステムの細かな調整の仕事などより優先して、サイトリニューアルの相談に応じるように命じるべきだったのではないか、とさえ思います。

 もし万一遠藤さんが相談に応じることを断るようでしたら、理事会だけの判断でサイトリニューアルを進行させるものやむをえないでしょうし、遠藤さんの側も、あとで問題にはしづらかったであろうと思われます。

理事会は、「使用者としての自覚」が不十分だったのでは?

 2月の事情説明文書の内容の大部分は、理事会の行動を正当化するためのものですが、最後に反省点もいくつか書かれています。その中に、「使用者としての自覚が当初十分ではな(かった)」とあります。私は、遠藤さんやカサイさんへの具体的対応に関しても、「使用者としての自覚」が不十分な点があったように思うのです。理事会の皆様には、この点について、ぜひご検討をお願いします。

 事情説明文書は、他にもいくつかの論点があり、それらについても疑問が多いのですが、それらについても、またの機会に取り上げたいと思います。

(*)もちろん三井さんの事件に関しては、豊中市が「一部勢力[=バックラッシュ勢力]の動きに屈した」と判断されたことなど、今回の問題とは多くの相違点がありますが、「人格権の侵害」(人間として尊重していない)という要素において、共通点があると思いましたので、引用いたしました。なお、判決の原文には「館長職をこなしてきた控訴人」と書かれていますが、読みやすくするために、「館長職をこなしてきた者」と書き変えました。
(**)事情説明文書は、遠藤さんには比較的高い時給を払っていることを、理事会の誠実さを示す事実として強調しているようですが(時給の高さ自体について言えば、私もそう思いますが)、その時給は、サイトを統括するウェブマスターとしての専門性や責任(ストレスもですが)の大きさを反映したものであったのですから、サイトリニューアルに際しても、それにふさわしい扱いが必要だったと思います。
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