2017-07

同性婚をめぐる最近の動向

「中国初の公然とした同性婚」

 今年1月3日、曾安全さん(46)と潘文傑さん(27)という男性カップルが、成都のゲイバーで結婚式を挙げました(1)(写真→「实拍:成都同志情侣MC酒吧办婚礼(组图)(1)」「(2)」「(3)」淡藍網2010/01/13)。China Dailyは、「『初めて』、ゲイカップルが中国で結婚した」と報じ、『新京報』は、「国内初の同性愛者の公然とした結婚」と報じました。

 来客の大部分は「同じ世界の人[圏内人]」(ゲイということでしょうか)でしたが、200人あまり(China Dailyの数字。『天府早報』は100人と報じる)が集まりました。

家族の反応

 曾さんは、5人きょうだいの長男なのですが、弟や妹の多くが今回の結婚に反対し、三番目の弟だけが支持しました。曾さんの女児(曾さんも潘さんも、以前は女性と結婚していました)は、父親の苦しみを理解して、「お父さん、命は短いのだから、いちばん重要なのは、自分が楽しいこと。お父さんが男と一緒になることを、私は支持はしないが、反対もしない」と言ってくれるようになりました。

 潘さんの父親は、潘さんがカミングアウトしたとき、殴ろうとし、その後もまったく無理解です。ただし、母親は、相手の曾さんと電話で話すうちに、しだいに曾さんと仲良くなりました。母親は結婚式には来なかったのですが、式の数時間前に、潘さんに「幸福を祈る」という電話を寄こしてくれました。

メディアで報じられたことによるプレッシャー、親族との関係の悪化

 以前から2人で手をつないで歩くと、動物を見るような目で見られたり、指さされたりしていたのですが、結婚後のプレッシャーは、2人の想像をはるかに越えていました。

 結婚式のとき、メディアが写真やビデオを撮っていましたが、そのときは2人はあまり気にしませんでした。1月5日には、2人は成都のテレビ局にも出演しました。しかし、その後、振り返って見られたり、知らない人から電話がかかってることが多くなりました。買い物に行ったり、街をぶらついたり、食事をしたりするときにも、記者が付いてきました。また、団地の入り口には、毎日10~20人のやじ馬が集まりました。

 肉親からは、2人を罵る電話がかかってきました。曾さんが経営している家族企業は、弟によって資金を凍結されました。弟は「兄さんに顔をつぶされた」と言うのです。曾さんの娘にも、多くの同級生から父親のことを尋ねる電話がかかって来て、傷つき、父と娘との関係も悪くなりました。

「正式の結婚証がほしい」

 『天府早報』の取材に対して、曾さんは憔悴した様子で、「勇敢に自分の道を歩むのは、言うはやさしいが、行うのは難しい」と述べました。その前の晩、潘さんは、長い間泣いていたということです。

 けれど、2人は、China Dailyの取材に対しては、「私たちはもう隠れる必要はない。今回の結婚式は、私たちの人生の中で一番幸福で、一番貴重な時間だった」、「一緒にいられさえすれば、他の人が私たちをどのように見ようと気にしない」と答えています。

 しかし、2人にとって残念なのは、正式に結婚できないことです。「一番欲しいものは何ですか?」という問いに、潘さんは「結婚証」と答え、「フランスやフィンランド、イギリスでは、ゲイやレズビアンが結婚できるのに、なぜわれわれはできないのか」と述べています。

 2人には、養子を持ちたい希望もあります。

これまでにも行われてきた同性婚

 今回の結婚式が中国初の同性婚だというわけではありません。

2人だけの式だったが、20年続けている同性婚(2)

 まず、公然とした結婚式ではないのですが、1986年3月、四川省成都市で、林さん(仮名)と張さん(仮名)という2人の男性が、洋服を着て、赤いネクタイを締め、乗用車を借りて、郊外の景色が美しい場所に行って、「2人の結婚式」をしました。赤い「結婚証」も自分たちで作って(中国では、結婚の合法性が確認されると、男女双方に赤色の「結婚証」が発給され、これをもって法的な婚姻が成立したとみなされる)、そこに「同舟共済、白頭偕老(互いに助け合って、白髪になるまで添いとげる)」という8文字を書きました。

 初めは家族の抵抗にあいましたが、3年かけて少しずつ双方の家族に2人の愛情を理解させました。家族の希望で、老後のために養子も取り、隣近所とも仲良くやっています。錫婚(10年目)や水晶婚(15年目)の記念日も、多くの友人を招いて祝いました。もうすぐ20周年の際にも、新聞が取材しています。

 2人は、財産の公証もおこなって、一方に万一のことにあった場合、もう一方が財産の相続ができるようにしているとのことです。

公然とした結婚式

 公然とした結婚式も、けっして今回が初めてではありません。

 まず、1991年、福建の男性の同性愛者が公開の民俗婚礼をおこない、大いに宴席を設け、賓客を招いたという記録があります。張北川教授によると、清朝の時代、この地方では、この種の民間の風俗が盛んだったということです(3)(福建では、1989年にも、男性カップルが民俗婚礼をおこなったそうです。そのうち1人は農民で、もう1人はずっと勤務態度の良い公職者でしたが、後者は、そのために公職を解かれました(4))。

 また、メディアで報じられたことが確認できる例も、以下のようなものがあります。

 2000年5月:広東省江門市で、曹さんと李さんという2人の男性が、広東の風習に従った結婚式をした(曹さんは新婦姿、李さんは新郎姿)。40人あまりの親しい友だちが集まった。李さんの父母は怒り、曹さんの父は何も言わなかったが、母は強く反対した。広東省人民弁護士事務所も、新聞の取材に答えて、「結婚は男女の間でだけしかできない。同性間でのこのような行為は、社会の良好な道徳・気風に違反し、社会の気風を悪化させるものだ。わが国の現在の法律も許さないことである」と述べた(5)

 2000年10月:上海市で、明水さんと婉如さんという2人の女性が、2人とも花嫁姿で結婚式を挙げた。結婚式の招待客は家族(婉の母親、姉、義兄)と同性愛者の友人25名だった。この結婚式については、「中国初の女性同性愛者の結婚式である」と報じた記事もあります(6)

 2001年10月:貴州省貴陽市で、女性カップルが結婚式を挙げた。式に出席したのは、主に双方の父母と何人かのよく知っている親しい友だちだった(7)

 2002年1月:江西省南昌市のゲイバーで、男性カップルが結婚式を挙げた(8)

 2002年4月:河南省鄭州市で、女性のカップルがホテルで民俗婚礼をした。双方の父母と家族も出席した(9)

 以上のように、これまでも同性愛者どうしの結婚式はおこなわれてきました。ただ、今回の曾さんと潘さんの結婚式は、出席者が多く、カップルがテレビに出演するなど、「今までで一番公然としたもの」だったたとは言えるかもしれません。それだけに、周囲からの圧力も大きいということだろうと思います。

李銀河さん、全人代などにまた同性婚の提案

 また、社会学者の李銀河さんは、今年も、全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(全国政協)に同性婚の提案をしました(10)。李さんは、今までにもたびたび同性婚の提案をしてきたことは有名です。ある記事(11)は、以下のようにまとめています。

 2000年:全人代常務委員会が、婚姻法改正に対する意見を募ったのに対して、李さんは、新しい婚姻法では、同性愛者と異性愛者に同等の権利を与えるように提案した(12)

 2001年:李さんは、全人代と全国政協の開催期間に、初めて同性婚姻の合法化の提案をした。ただし、李さんは、全人代の代表でも、全国政協の委員でもないので、1名の人民代表大会の代表に託さざるをえなかった。しかし、規定によると、30名の代表が署名しなければ、正式の議案として審議されないことになっており、それだけの署名が集められなかった。

 2004年:李さんは、2度目の同性婚の提案をした。この時は、1名の全国政協の委員に託したが、30名の代表を集められず、なしのつぶてだった。

 2009年:李さんは、3回目の提案を全国政協の委員に託した。

 ただし、実際は、2006年にも李さんは提案していることは明らかであり(本ブログの記事)、2007年にも、前年とほぼ同じ内容の提案を「提案する準備をしている」と書いています(13)。上の記事の文中にも、今年の提案について、「7年来の4回目に提出した提案である」と述べられているので、2006年の提案が抜けていることは間違いないと思います。ただし、他の年度の提案を合わせると、今回は、6回目か7回目になりますが……。

 このように李さんは繰り返し提案しているのですが、正式の議案にするのさえ難しい状況のようです。李さんも、「私は採択される可能性がないのはわかっています。」「中国の現在の環境は、そんなに成熟した水準には到達していません。けれど、若干の発展した国々も、長い期間のたたかいによって、はじめて同性婚姻の合法化を実現したのです」と述べています(14)

広東省の人民代表大会で、朱列玉弁護士が「同性家庭登記」を試行する提案

 また、今年は、広東省の人民代表大会で、朱列玉弁護士が「同性家庭関係の登記」を広東省で試行する提案を出しました。

 朱弁護士は、長い間安定して一緒に生活している同性のパートナーは、以下のような問題を抱えていることを指摘しています。
 ・どのように相互の扶養と忠誠の義務を履行するか。双方の共同の財産の問題・債権債務関係は双方でともに担うのか否か。
 ・どのように各自が相手の父母を扶養する義務を担うのか。
 ・どのように遺産の相続をするのか。
 ・一方が病気になったら、もう一方は医療の決定(たとえば手術のサイン)を代わりにできるのか否か。
 朱弁護士は、「これらはみな立法によって明確にしなければならない」と述べています。

 朱弁護士は、同性のパートナーが養子をとる時の法律の規定がないことも指摘しています。

 朱弁護士は、同性のパートナーの関係を安定させることは、性病やエイズの防止にもなると述べています。

 朱弁護士は、「『婚姻法』は婚姻の双方を1人の男と1人の女と定めているので、同性結婚には立法の根拠がないけれども、現行の法律も同性間の同居関係を禁止しているわけではない。」「同性愛は現行の法律に違反しておらず、彼らの中には事実上の長期的なパートナー関係が存在し、家庭を結成する要求がその他の公民の合法的な権益を損なうものでない以上、法律は同性愛の家庭を承認しなければならない」と述べています(15)

 朱弁護士の言う「同性家庭関係の登記」というのが、同性婚なのか、同性パートナー法のようなものなのかは私にはよくわからないのですが、朱弁護士は、具体的な問題を取り上げて同性愛者の権利を主張していると言えます。

 もっとも、李銀河さんによると、2004年の全人代と全国政協の期間にも、専門家が「ドメスティックパートナー制度(合約婚姻)」に関する提案を出したことがあるそうで(16)、こうした提案自体は今回が初めてというわけではないようです。

(1)この結婚式についての主な記事には、以下のようなものがあります。この結婚についての本文の記述は、以下の記事を総合したものです。
 ・“In a 'first', gay couple tie the knot in ChinaChina Daily2010.1.13。この記事の日本語抄訳は、「中国で初の公式同性婚カップル誕生、『もう隠れない』」AFPBB News2010年1月14日、「中国で初めてゲイカップルが公に結婚式を挙げました」Gay Life Japan2010年1月15日(←この記事の訳が一番詳しい)、「中国で初?の男性同士の結婚式 英字紙に写真も」2010年1月19日。中国語訳は、「中国日报:高调结婚的成都同性恋者 面临巨大压力」淡藍網2010年1月14日。
 ・「“我们想要一张真正的结婚证” 国内首例男同性恋者公开结婚,面对争议,呼吁社会公平看待和认可」『新京報』2010年1月26日→(転載)「国内首例男同性恋者公开结婚 每天遭数十人围观」新華網2010年1月26日。(元の記事を転載した記事の方が、全文が読みやすかったり、コピーしやすいので、転載された記事も記しています。)
 ・「同志结婚 百人捧场 浮华背后是沉重的幸福」『天府早報』2010年1月11日→(転載)「成都同志情侣 历经艰辛走进婚姻殿堂」「(2)」「(3)」「(4)」「(5)」「(6)」(淡藍網)。
(2)17年同性“夫妻”感动知名专家」広同(来源:成都雨帆)、「四川両同**者以同***身 共同生活17年」『朋友通信』31期成都同性夫妻欢度20年幸福生活 令“同志”艳」東方網2005年9月29日(来源:成都商報)。
(3)高峰「中国当代同性恋全记录——“同志”20年」人民網2001年3月30日。
(4)大陆4000万同性恋生态调查」『鳳凰週刊』2004-09-27(愛白網より)。
(5)法律不容的“婚礼”」『南方都市報』2000年5月14日(広同HPより)、「广东一対男同性爱者举行民俗婚礼,受到法律界人士严厉批评」『朋友通信』第16期
(6)一対中国女同性恋者的婚礼」網易2000年12月11日、「中国低调的同性恋解放运动」(楚鈞 翻訳)『華盛頓郵報』2000年1月24日(亜洲les聯盟HPより)。
(7)贵阳一对女同性恋者行婚礼」南方網2001年11月2日(来源:人民網)。
(8)南昌“同志”酒吧目击同性恋“婚礼”」東方新聞2002年1月4日(来源:『江南都市報』2002年1月4日)。
(9)「郑州一対女同性爱者举行民俗婚礼」『朋友通信』第27期(河南の『東方早報』2002年4月13日の記事が出典)。
(10)建议取消聚众淫乱罪」李银河的博客2010年3月3日。
(11)李银河:2010两会再提同性婚姻法案」淡藍網2010年3月4日。
(12)このときは、海外に拠点を置く団体ではありますが、北アメリカのChinese Society for Study of Sexual Minorities(北美華人性別与性傾向研究会)も、婚姻法で同性婚を認める提案をしています(「関于《中華人民共和国婚姻法》接納和包容同性恋婚姻或伴侶関係的建議」『桃紅満天下』増刊37期[2001.2.24])。
(13)同性婚姻提案」李银河的博客2007年1月26日。
(14)(11)に同じ。
(15)代表建议广东试行“同性家庭登记”」大洋網2010年2月1日(来源:『広州日報』)、「広東省・同性愛者同士の婚姻を認める建議を提出」エクスプロア上海2010年2月2日。
(16)李银河会面同性恋者:同性婚姻国内可能更易合法化」『南方日報』2005年11月7日。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/309-87af779a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード