2017-08

林さんへのお応え(2)──WANの資金不足の解決策について

林葉子さんが、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)その労使紛争をめぐって、ご自分のブログにお書きになった「WANのこと(2) 遠山さんのコメントにお応えして」というエントリーに対する、私のご返事「林さんへのお応え――『自分はWANのために何ができるか』という問いをめぐって――」に対して、林さんから上記のエントリーのコメント欄でご返事をいただきました。

その中で、林さんは「おそらく最も深刻な問題だと思われる資金不足の問題の解決のために、遠山さんがどのような解決策をお持ちなのか(……)よくわかりませんでした」とおっしゃっています。

私としては、その点についても、ある程度は前回のお応えで触れたつもりですし、ボランティアの賃労働者化を目ざすか否かによって若干解決策は異なってくると思いますが、今回、もう少し詳しく考えてみました。ありきたりな考えのような気もしますが、よろしければお読みください。

1.私自身の寄付・入会およびその動機

今回の林さんの問いかけは、「自分はWANのために何ができるのか?」という私が先日お答えした問いと違って、第一義的には「WANという団体としてどうするのか?」という問いだと思います。

ただ、林さんと私の議論は、林さんが提出された「『自分は、WANのために何ができるのか』を答えてほしい」という問いかけから始まりましたので、今回の問題に関しても、私自身の行動を示しつつ、その行動の動機を出発点にして考えてみたいと思います。

私は、先週末、WANに、先々月の2000円に追加して、5500円、合計して7500円をお送りしました。WAN設立1周年が近づいてきましたので、最初の1年分のつもりでお送りしたのですが、その内訳というか、理由は以下の3点です。

(1)「もしWANが有料だったら、どの程度の価格で購読するか?」→年間3000円。
(2)実際にはWANは無料で広く情報を提供していらっしゃるので、その社会的役割(広い意味で性差別解消に寄与するなど)を応援するためのカンパ→年間2500円。私は、WANは、総合サイトとして、個人サイトでは果たせない役割(個人サイトを持っていない人や幅広い人々に訴えをしたい人に場を提供する)をなしうるということが重要だと思います。
(3)林さんの文からは、ボランティアスタッフの労働の無償性に疑問をお持ちの一面も感じられるので→この問題解決のために、とりあえず2000円。

前回述べたように、もしボランティアスタッフの方々が(たとえ林さんお1人でも)有償労働化を要求する活動を始められたら、私もWANの財政力を強化するためにもう少し頑張ろうと思いますが、今のところ、私にはこれでギリギリです。

今回の送金は、非正規の場合の会費の5000円を上回りましたので、WANへの入会も申し込みました。入会すれば、発言権も得られますので、極めて微力ですが、有償・無償を問わずスタッフの方の応援もさせていただけるという意味でも良いと思います。

以上が私の送金の動機ですが、他の人にお金を出してもらうとしても、(1)~(3)のことが訴える材料になるだろうと思います。

お金を出してもらうには、まず、とにかく(1)や(2)のようなWANの価値を高めることが必要だと思います。(3)のように、WANのボランティアスタッフの労働の有償化のためのお金を集める場合も、もし(1)や(2)の評価が低ければ、難しいでしょう。先日の林さんのご論について、Twitterで言及している方がいらっしゃて、その方は、「月々数万円WANに支払えと言われたら普通に無理。月2万としても年額24万。それで爆笑トークとか専門家の個人ブログの足下にもおよばない映画評とか載せるサイトを運営し続ける? 本気でわけがわからない」とつぶやいておられました。こうした発言からわかるように、林さんのようにおっしゃられても、支払いを求められた側がWANの活動自体を高く評価していなければ、現実的には、お金はあまり集まらないという面も見ておかなければならないと思います。もちろん、ボランティアの無償労働について考えたり訴えたりすることは、それ自体として重要だと思いますし、だからこそ、私もほんの少しですが、送金させていただいたのですけれども……。

さて、かりにWANを有料化したら、皆さんいくらお払いになるのでしょうか? また、WANが性差別解消に向けて果たしておられる役割(もちろん間接的な寄与を含めた広い意味です)を、どの程度のカンパに値するものと見なすでしょうか?

もちろん人によるでしょうが、今のサイトの内容から考えて、私は、正直申し上げて、皆さんからは、それほど高い金額は出てこないと思います。現在の会費や寄付金を払っていらっしゃる方々は、将来に期待して払っていらっしゃる部分が大きいのではないでしょうか? 私の1年目の会費と寄付についても、来月、林さんが力をお入れになった企画が掲載されるとのことですので、そうしたものに対する期待を含めての金額です。

2.資金不足の解決の方向性

私自身の場合をもとにして考えると、資金不足の解決の方向性は、次の2つになると思います。

A.WANのサイトやweb会員へのメールで、上の(1)や(2)のようなWANの役割をもっと具体的に訴えて入会や寄付を呼びかける。
 →入会や寄付の呼びかけ自体は現在でもなされていますが、もっと具体的な声(WANが自分が生きる力や考えを深める力になったり、運動の発展のうえで役に立ったりした経験など)を集めて訴えたり、無料で情報提供していることの社会的意義を訴えたりした方がいいのではないでしょうか?

B.サイトやweb会員へのメールで、WANの魅力、不満、要望、増収策などについてのアンケートをして(できれば、それらの内容を書ける掲示板も設けて)、そうした声をもとにしてサイトの改善策を練る。
 →好評な内容を拡大したり、取り入れるべき要望やアイデアを取り入れば、WANの価値は高まるでしょうし、逆に、不評の内容をやめれば、ボランティアの方々の負担が減ります(有償化の際の金銭的負担も減る)。林さんは一案として「サイトの規模を調整する」というお考えを示されましたが、その場合、どの部分を削るかが問題ですから、そのためにも必要なことだと思います。また、もし「WANは、こんなふうに私の力になっている!」という具体的な意見が出てきたら、それらを広く宣伝すれば、資金集めの助けにもなりますね。

私は、前回は、意見の一つの例として、macskaさんのご意見をご紹介しましたが、より多くの方に意見や感想を出してもらえれば、必ず増収策やコストカット策は見つかると思います。

出てきた意見は、みんなの参考になりますから、集まった意見は公表するか、初めから公開の掲示板に書き込んでいただくようにすればいいと思います。現在でも、「WAN裏方日記」のコメント欄に感想を書き込むことはできますが、この日記のコメント欄は、字数制限が非常にきつく、断片的な内容しか書き込めませんので、専用の掲示板などを設けてもいいのではないでしょうか?

3.私自身の意見・感想

私自身の意見・感想については、すでに「WAN裏方日記」に何度か書き込んでいますし、このブログでも、いくらか述べましたが、以下、何点かを付け加させていただきます。

・他の何人かの方から「学者のエッセイがつまらない」という感想が出ていますが、実は、私もそう思います。研究者の文の場合、ご自分の研究やご自分の研究と関係がある時事問題、ご自分の職場(大学など)の問題について論じていらっしゃる文は興味深いのですが、それ以外の「随筆」的な文は、私個人としては、面白いものは少なかったです。

・いまWANに掲載されている研究関係の記事は、すでに単著を出版なさったような方々が、その本について書くのがメインだと思うのですが、私は、もっと若手の研究者の方も、ご自分の研究や時事問題について大いに論じていただきたいと思います。その意味で、林さんが「新春爆笑トーク」をめぐってお書きなった文はよかったと思いますし、今度なさる企画もとても楽しみです。林さんは「WANのボランティア・スタッフは高い専門性を有する優秀なスタッフなのに、その力がサイトの中で生かされていない」という趣旨のことを指摘なさいましたが、私も、ボランティア・スタッフの方々の専門性を生かしていただけば、興味深いサイトになると思います。

・運動についての文は、現在のところ、団体としての投稿(またはそれに近いもの)にかなり限定されているのがネックだと思います。多くの方々が集会やデモに行ったり、日常的な活動をしておられるのですから、個々人が、自分の経験やルポ、感じたことを自由に書けるようにした方がいいと思います。裁判にしても、支援団体があるような裁判ばかりではなく、伊藤真理子さんの京都市女性協会裁判のように、原告お1人でやっていらっしゃって、支援者はいても、支援団体まではない裁判もありますから……(伊藤さんの文は、幸い、きちんとWANに掲載されていますが)。また、林さんのブログのコメント欄で「こちゅかる子」さんが書かれた市民団体でのご経験など、すごく貴重な経験ではないかと思うのでして、まさにこうした経験を出し合うことが、重要ではないかと思うのです。この点は、個人投稿の問題になりますが、先日、「WAN裏方日記」のコメント欄でお尋ねしたところ、投稿規程を現在作成中でいらっしゃるそうですので、うれしく思います。

・私は、WANに期待が寄せられた背景の一つは、インターネット上ではフェミニズムが弱く、むしろ右派が優勢だという現実だと思います。ですから、WANは、アンチフェミニズムやナショナリズムに対抗し、それを乗り越えていくような文をもっと掲載した方がいいのではないかと思います。最近は朝鮮学校の問題にみられるように、民族問題が激しい争点になっていますので、そうした動きに対して、ジェンダーを絡めた視点から意見を述べるような文が待望されていると思います。もっとも、恥ずかしながら、私自身のこのブログも、いま粗雑な「反中」イデオロギーが強い中で、それに対抗するような文をあまり書けていませんので、この点は自分の反省点でもあるのですけれど、他の個人サイトでは、少なくない方が反歴史修正主義や反バックラッシュのために奮闘しておられますので、WANも、この点にもう少し力を入れてはいかがでしょうか?

もちろん、以上の意見は大した意見ではありません。けれど、こんなふうにして、多くの方々が意見を出し合えば、必ず実りあるものになると思います。

追伸:
林さんにご紹介いただいた、岡本仁宏「市民社会、ボランティア、政府」をコピーしてきました。大きな問題意識で書かれた論文ですね。私は、いま、ボランティアと搾取に関する論文も取り寄せているところですし、カサイさんご推薦の『図解 ゼロからわかる労働基準法』(ナツメ社)も注文しました。もちろん文献だけでなく、林さんやこちゅかる子さんがお書きになっているを読ませていただくこと自体が勉強です。私はまだまだ何も知らない人間ですので、今回の議論からいろいろ学んでいこうと思います。
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