2017-04

WANの団交に参加して

 2月12日、私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労組「ユニオンWAN」(遠藤礼子委員長)の団体交渉に参加しました(この間の経過については、労組のサイト「非営利団体における雇用を考える会(仮)」に詳しい)。

 私は自分のメモだけを頼りに書ていますので、以下の内容には正確さに欠ける点もあると思います。文責はすべて私にあります。また、当日は多くの細かなやり取りがありましたが、以下では、私が特に印象に残ったことのみを書きました。また、ここで書いているのは、もちろん私の個人的な意見です。

 団交では、まず最初に、理事側が「今回の事態については、NPO会員やそれ以外の人にも説明します」「その前に組合に説明したい」とおっしゃって、その説明内容について口頭で述べられました。

 その説明によると、「WANは、女性の非正規雇用やNPOでの働き方に強い問題意識を持っており、WANの労働者は一般的と思われる以上の待遇にしてきたし、労働者からの要望も受け入れてきた」そうです。この点に関しては、具体的な数値なども挙げられました。私は、それを聞いて、それ自体はWANが誇れることだと思いました(もっとも、あとで遠藤さんから、理事側の挙げた数値には、いくつか不正確な点もあることが指摘されましたけれども)。

 しかし、理事側の説明が、ユニオンWANが現在の団交で問題にしている「一方的な外注化、仕事の取り上げ」「一方的な現事務所の閉鎖→退職勧奨」という肝心の点になったとたん、私は、説明の説得力がガクッと落ちた気がいたしました。さらに後で遠藤さんに反論されると、ガタガタになった感じです。

 たとえば理事側は、外注化などについて事前に十分話せなかったのは、「コミュニケーションの不足・悪化(一方だけの責任ではない)」のためだったという言い方をしていました。しかし、私は、たとえ当時、関係がぎくしゃくしていたとしても、労使関係の場合には、使用者側は、「使用者としての責任」として、話し合うべきことはきちんと話し合わなければならないと思います。理事側の説明には、そうした観点が欠けているように思いました(→文末の追記も参照)。

 遠藤さんは、業者を入れて自分が仕事から外されることについて、理事側からは一方的に「決定済の事項」として話されたということを具体的に語られました。「事前協議制があったにもかかわらず、そうされた」ということも指摘なさいました。

 この点について、理事側は、「事前協議制の対象は、『労働条件』そのもの(=賃金と労働時間)だけで、『労働条件と関わる重大事項』(=今まで担当していた業務から外すことや事務所閉鎖)までは含んでいないと思っている」と述べておられました。しかし、今まで担当していた業務から外せば必然的に遠藤さんの労働条件は下がるのですから、これは形式論としか私には思えませんでした。誠実な対処をしたとは言えないと思うのです。

 また、遠藤さんは、今後の労働条件について前回の団交で話し合うことになっていたにもかかわらず、理事側は、その団交2日前に退職勧奨を突き付けてきたということに怒りを表明しました。今回の団交では、理事側は「財政上の理由から、現事務所を閉鎖して家賃のかからない場所に移さざるを得ない」ということを述べましたが、労働条件の協議中に退職勧奨をするというやり方については、まともな弁明はありませんでした。

 理事側は、協議中なのにユニオンが一方的に情報を労組のサイトで流したことが「信頼関係を損なった」「理事会の信用を失墜させた」と言うのですが、私にはその意味がよくわかりませんでしたし、そういうレベルの理由でこうしたやり方が正当化されるのかな? と疑問に思いました(追記:理事側のこの発言については、山口ともみさんが詳しく批判しておられます)。遠藤さんは、労働条件の協議中に退職勧奨をするようなやり方こそが信頼関係を損なうと述べました。

 それから、私が気になったのは、理事側が「理事会からの説明は、サイトには掲載せずに、NPO会員やその他の支援者などに説明する」と述べていたことです。「説明する」というのは、恐らくメールか何かで流すということだと思いますが、だとすると、それらの人々に対しては、理事会側に都合のいい説明のみが流されるということにならないでしょうか?

 なぜなら、それらの人々のメールアドレスを把握しているのは、理事会側だけで、組合側は把握していないでしょうから、たとえ事実と異なる説明や一面的な説明だったとしても、反論のしようがないからです。もちろん、ユニオンWANのサイトでは反論できますが、その反論を読むのは、理事会からのメールが来た人のうちの一部でしかないと思いますから、フェアなやり方でないように思います。

 やはりサイトに両方の主張を出し合うのが、公平かつオープンだと思います。たしかに同じサイトで労使がやり合うなどというのは、企業のサイトなどでは絶対やらないことでしょう。しかし、この争議に関心を持っている人は多いですし、NPOなら、それぐらいオープンにした方が良いと思います。お互い誠実な態度で議論するならば、たとえ立場の違いや認識の一面性、若干の勘違いなどがあっても、第三者にも悪い感じは与えないと思います。

 また、理事側は、サイトが見にくいので、業者を入れて大幅にリニューアルすることが必要だと強調していました。そのために相当の支出をするようです。この点自体は当日の団交では議論になりませんでしたが、私は、業者に頼んで今のサイトをリニューアルしてもらっても、それほどはアクセス数が上がるような気はしません。

 やはり記事の内容次第だと思うのです。もちろんWANは良い記事を多く掲載していますが、「他のフェミ団体・個人サイトと比べて特に記事の内容がすぐれている」というわけでは別にないと思いますし、内容が現状のままなら、アクセス数はそうは多くならないと思います。お金や手間をかけるとしたら、サイトのリニューアルも結構ですが、良い記事を毎日もっとたくさん掲載したり(*)、サイト内外のコミュニケーションを活発化するために使った方が良いような気がします。

 理事会は「雇用と経営の見通しについて甘さがあった」と述べ、責任を感じているとおっしゃって、WANの組合員に謝罪するとともに、解決金も払うと述べていました。ただ、私は、その「甘さ」の原因も掘り下げないと、業者に頼んでも、また別の形で問題が出てくるような気がしました(この点は余談ですが)。

 遠藤さんは、この日の団交で、議論がゴチャゴチャして私にはよくわからなくなったり、私が漫然と聞き流していたりしていた箇所についても、ポイントをつかんで鋭く追及して理事の側を追い詰めておられました。「やっぱり、さすが遠藤さんだ」と感服しました。

 理事会の見解には疑問が多く、立場のズレを感じさせました。しかし、理事の姿勢にまったく誠実さがないとか、対話がまるで成立していないなどとは私は思いませんでしたので、今後の粘り強い話し合いの中で、ぜひ、良い形で解決をしてほしいと思います。

 なお、この問題に関しては、「WAN労働争議への支援および理事会への要望」という署名がおこなわれています。私からもご協力をお願いいたします。

(*)たとえば、インターネット新聞社のJANJANは、毎日何本も個人の投稿を掲載しているために、多くの記事があるので、1日20万ページビュー(人数的には、数万アクセス?)だそうです。もちろんWANとJANJANでは条件が全く異なりますが、たとえばの話、そんなふうに個人投稿を受け付けて、そのチェックや掲載のために人やお金を使ったらどうだろう、と思うのですが……。

[追記]
 2月12日の団交では、理事側は、「コミュニケーションの不足・悪化」について、「理事側にも責任があった」という意味のことを何度も述べていました。実際、私の当日のメモを見ても、理事側の発言を、「担当[理事]─webに不慣れ─遠藤さんもフラストレーション─コミュニケーションの悪化」とか、「コミュニケーション 私たちにも責任がある」とかいうふうにメモしています。私の記憶では、理事側は、「コミュニケーションだから、一方だけを責めているのではない」という趣旨の発言もしてしました。

 ですから、上の記事では、私は、理事側の発言を、「コミュニケーションの不足・悪化(一方だけの責任ではない)」というふうにまとめ、その上で、私は、たとえ当時関係がぎくしゃくしていたとしても、労使関係においては、「使用者側の責任」として、「話し合うべきことはきちんと話し合わなければならないと思います」と述べたわけです。

 ところが、その後理事会がWANの会員などに対して発表した、今回の問題についての事情説明文書では、コミュニケーションの悪化について、ひたすら遠藤さんを非難したうえで、理事側の責任については、抽象的に「使用者であるWANにコミュニケーション改善の責任の一端があったことは承知していますが」と述べるにとどまっています。

 私は、理事会が、このように当事者に対する説明とWANの会員に対する説明とでニュアンスを区別するのは、結局のところ、当事者の前では言えないようなことを会員に説明していることになるので、ちょっとおかしいと思います。

 なお、2月12日の団交については労組のサイトにも報告が掲載されており、理事会の事情説明文書に対しても簡単な反論をしています。ぜひお読みください(→「2/12の団交」)。
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