2017-08

「女性抗エイズネットワーク・中国」設立

 以前、本ブログで、2007年3月、女性のエイズ感染者などのネットワークとして「タンポポ女性ネットワーク[蒲公英女性網絡]」が結成されたこと、本年[2009年]2月には「中国女性抗エイズネットワーク」の準備グループが出来たことをお伝えしました(「HIV女性感染者のネットワーク」)。

 こうした活動を経て、本年7月9日、「女性抗エイズネットワーク・中国(Women's Network Against AIDS-China)」が設立されました(ブログ:「女性抗艾網絡-中国」)。設立にあたっては、国連合同エイズ計画(UNAIDS)の資金援助もありました。

 「女性抗エイズネットワーク・中国」は、「タンポポ女性ネットワーク」を含む、中国各地の、エイズに影響を受けた女性(エイズ感染者やエイズ患者の家族)の組織によって構成されており、エイズに影響を受けた女性の声を集め、発表する活動の足場となる組織です。現在のメンバーは以下の21組織で、中国の11の省・市・自治区にまたがっています。

 苦草工作室、瀋陽蛍火虫工作組、河南新郷愛心協会、浙江互助会網絡支持、河南鞏義康楽家園、蒲公英女性網絡、絲路駅站、貴陽滋心小組、広西寧明荷城之光互助小組、河南登封市陽光家園、鄭州祥宇工作組、“半辺天”河北永清感染者互助組、山西臨汾緑色港湾、七台河愛心家園、商丘臘梅花女性小組、貴陽関愛苑、中山陽光公社、美麗人生依依茉莉、河南金色陽光児童関懐協会、凉山社会性別与艾滋病研究会、柳州雨后陽光女性小組

 総幹事は、「治療手記」を発表したことで有名な感染者の何田田さん(彼女のブログ:「江南可採蓮,蓮葉何田田」)です。

 「女性抗エイズネットワーク・中国」の「目的」は、「女性感染者の組織の発展を促進し、女性のコミュニティへの参与と地位を高め、それによって、エイズと共に生きる女性の地位を高め、ジェンダー・センシティブなエイズ防止・治療の政策と措置を提唱すること」です。

 「使命」は、「全国各地の女性の抗エイズの力をつなぎあわせ、女性グループの成長を促進し、女性が声をあげること」です。

 「願い」は、「平等な生存・平等な治療・平等な発展」です。

 「活動計画」は、以下の柱で組み立てられています。
1.組織の発展と能力建設
 1.1 ネットワークの組織の発展
 1.2 ネットワークのメンバーの能力建設
 1.3 女性組織の設立の援助
2.唱道
 2.1 一般大衆の中での唱道
 2.2 政策転換のための唱道(1)

設立の過程(2)

 2007年3月に設立された「タンポポ女性ネットワーク」は、インターネットの中に自分たちの交流の空間を作ろうとしました。ところが、彼女たちのホームページが存在していたサイトの中に性に関わる内容があったため、そのサイトは国家のインターネット粛正運動によって閉鎖させられ、それに伴って、彼女たちのホームページもなくなってしまいました。

 そこで、彼女たちは、今度は、もっと広い範囲で、もっと具体的な方法で自己の存在を示す試みを開始しました。すなわち、彼女たちは、全国各地の女性感染者グループを探して、それらのグループの責任者や中核の人と連絡を取って、相互のネットワークが結成できるかを探求しつつ、しだいに目標や活動プランも明確にしていきました。この過程は、馮媛さん(ジェンダー研究者、元『中国婦女報』高級編集者)によると、以下の3つの過程でもあったと言います。

 ①お互いに激励する過程……ネットワーク作りの過程で、女性感染者が集まる機会が増え、お互いの経験を語り合った。それらの話は、女たちが困難に対処し、生活を創造できる潜在能力を示すものだった。ある人は、エイズのために離婚したが、その後、自立した単身生活を創造した。ある人は、陽性であることを明らかして結婚相手を求め、勇気ある陰性の人と家庭を持つにいたった。ある人は、同じ病気の人と一緒に病気や差別と闘う中で知り合った人と結婚した。若い感染者たちは、出産・育児の経験を交流し、どのように困難を克服して母親である権利を実践・実現したかを語った。最低生活保障などの権益を獲得したり、体制と個人の差別・偏見と闘った人もいた。これらの話は、古くから病気だった人を勇気づけ、新しく病気になった人を恐怖や消沈から脱出させた。感染者の家族には、病気の家族を理解し、励ます気持ちを持たせた。

 ②行動を示す過程……現在、国内で比較的形が整った女性グループは、10数にすぎないが、それぞれのグループの行動の歩みは、感動的なものだった。たとえば、雲南の女性感染者グループである「苦草」(3)というグループ名は、生命力の頑強さと草の根が地下では一つであることを示している。このグループは、病気になったセックスワーカーのホスピスケアと葬式をする活動で有名になったが、現在は、生産による自助や監獄訪問、孤児の援助などにも活動を拡大している。河北の永清の「半辺天家園」は、農村の女性感染者の自助組織であり、生活や栄養、治療の面で助け合いをし、福利や薬の権益を勝ち取ることにも成功している。

 ③主張を形成する過程……2003年前後、各地で感染者の自発的組織が出来はじめた。その中には、たまに女性の姿も見られたが、表現するニーズは男女に共通のものだった。2005年秋冬以降、十数の女性感染者グループが相次いで出現した。2007年には、タンポポ女性ネットワークが設立された。しかし、エイズに影響を受けた女性(とくに女性感染者)独自のニーズ主張は、まだ提出されていなかった。けれど、ネットワークの準備をする過程で、以下のような女性独自なニーズが明確になっていった。
 ――地位向上のニーズ。病気になって夫や実家・婚家からの援助が断ち切られた時にも生きるのが困難にならないように、女性には、自分と子どもの生存・発展を支えられる独立した経済的地位が必要だ。女性の地位向上は、感染したためにDVの被害にあうのを避けたるためにも必要だ。また、性的搾取・性的奴隷労働や子どもを産む道具にされたために感染するのを避けるためにも、女性の地位向上が必要だ。母親としての役割を果たすためにも、地位の向上は必要だが、現在はシングルマザー(ファーザー)へのサポートや援助はない。
 ――出産・育児と性の健康のニーズ。女性感染者は、しばしば子どもを持ちたいという切実な希望を持っており、そのための専門的科学的知識を必要としているけれど、それらの知識は得るのが難しいし、医療・看護従事者は、しばしばそうしたニーズを否定するので、専門家からも相談や援助は得にくい。養子をもらうことを希望する女性もいるが、国家の養子法は、伝染病の病人は養子をもらえないと規定している。また、長い間、男性の性のニーズは堂々と論じられてきており、実現できるルートもあったけれど、女性、とくに感染者の性のニーズは正視されてこず、またジェンダー規範の圧力によって実現することはさらに難しかった。
 ――平等な参与のニーズ。女性が社会政策や法律の制定・修正に参与できるルートを保障する。世界基金などの国際協力のメカニズムと資源の分配において発言権を得る。メディアにおいて、女性感染者を単なる被害者でなく、行動者・変革者としての働きや彼女たちの観点や要求を示すようにする。女性感染者の声を科学研究プロジェクトに組み入れる。薬物の副作用の性別による差異を探究するなど。

女性エイズ感染者の手記・『写生』出版

 11月25日、「女性抗エイズネットワーク・中国」は、同ネットワークが企画・出版した、女性エイズ感染者の手記を集めた『写生』という本の発表会をおこないました。

 発表会には、国連副事務総長のMichel Sidibéさん、衛生部が選んだ初のエイズ防止宣伝大使である女優の蒋雯麗さん、監督の顧長衛さん、写真家・王小慧さんらも出席しました(4)

 『写生』は商業出版されていないようですが、網易女人の特集ページで連載が開始されており、感染者が出産や仕事について語っています(「第一部女性艾滋感染者手记《写生》发布」、「《写生》一:我好想好想做妈妈」、「《写生》二:感染艾滋的我,也可以工作」)。

 この本を編集した何田田さんは、次のように述べています。

 「中国の感染者のうち、女性感染者は1/3を超えており、若干の地区では40%以上に達しています。三大感染経路のうち、性感染が最も主要な感染経路になりつつあり、新しく増えた感染者の中では、女性の増加速度は男性より速くなっています。エイズウイルスに対しては、生理的角度からも、社会的角度からも、女性は、より大きな危険に直面しています。中国の社会では、女性が家族や跡取りから受ける圧力は、男性よりはるかに大きく、また、私たちの民族のいささかの伝統的・封建的意識によって、災難が降りかかった時、しばしば、多くの女性が家族や夫、はなはだしきは子どもによって捨てられます。さらに、人々は、しばしばエイズを道徳的堕落や行動の慎みのなさと結びつけます。病身の上に付加されるこれらの汚名と差別は、女性にとって巨大な圧力となります。」

 「エイズに影響を受けた女性の訴えは、みんなが聞く必要があります。ジェンダー意識は、エイズ予防・治療政策の中で体現される必要があり、病身の上に付加された汚名と差別は、社会全体の努力で少しずつ解消していかねばなりません。」

 「ですから、私たちは『写・生』を作って、私たちが書いた生命の物語を通じて、みんなに『私たち』を本当に知ってほしいと思います。『私たち』とは、エイズに影響を受けた女性であり、女性感染者のほかに、感染者の女性の家族もいます。病気を前にして、運命の選択を前にして、私たちは逃避せず、正面から立ち向かいました。『写・生』のきめ細かで耽美的な写真や文の背後には、女性が厳しい環境に直面して示した剛毅さと勇気が表現されています。それは、生活と運命が交差する中での答案であり、社会の理解と平等な扱いを訴える叫びなのです。」

 「健康・貧困・差別・DVは、エイズに感染した女性が直面する主要な悩みです。免疫力の低下による日和見感染と抗ウイルス剤の副作用は、次第に、または急速にエイズ患者の健康を損ないます。もともと貧困だった家庭が、エイズに感染したことによってさらに貧困になります。差別は、無知と恐怖から来ますし、感染者自身のアイデンティティの欠如からも来ます。DVは、身体的暴力と精神的暴力を含んでいて、もし夫が妻がエイズに感染したことによって思いやりをなくし、性愛をなくしたら、名前は夫婦でも、赤の他人と同じになります。」(5)

(1)以上は、「中国女性抗艾网络正式成立,21个组织为首批成员」中国紅絲帯網2009-07-10、「我们是女性抗艾网络-中国」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15、「Debrifing on Women's Network against AIDS-China」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15
(2)馮媛「感受她们的力量」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-15
(3)個旧市苦草工作室。2005年10月に設立された、(前)女性セックスワーカーのエイズ感染者のための組織(「“无意苦争春,一任群芳妒” ——记个旧市苦草工作室」NGOCN官方博客2009-11-05に詳しい)。
(4)蒋雯丽、王小慧与联合国官员携手女性抗艾网络为《写.生》揭幕」女性抗艾網絡-中国blog2009-11-26
(5)网易女人专访女性抗艾网络总干事、《写生》主编何田田」網易女人2009-11-26
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