2017-06

2007~2009年の各年の中国10大セクシュアル・マイノリティニュース

 中国のゲイサイト「淡藍網」(1)は、先日「2009年度中国10大セクシュアル・マイノリティ(2)ニュース(2009年度中国十大同志新闻)」を発表しました。

 「淡藍網」は、2007年以降、毎年10大ニュースを発表していますので、まず2007年と2008年の10大ニュースを紹介してから、今年のものをご紹介します(といっても、どの年度についても、私はよく知らない事件がかなりあるので、正確に書けていないものもあると思います)。

2007年
 (「2007同志十大新闻、十大人物评选揭晓」淡藍網2008-01-01)

1.同性愛者の姿が初めてエイズ防止の公共ビデオ広告の中に出現した記事
 12月1日の国際エイズデーを前にして、淡藍網は、[衛生部から]権限を授けられて、成龍・濮存・姚明などのスターによるエイズ防止公益広告を放映したが、その中で、濮存(プー・ツンシン)は、広告の中で初めて同性愛者のアベックの姿で登場した(ビデオ→「保护自己 关爱他人——濮存篇」)。

2.馬天宇が「同性愛者」だと言われて、裁判所に訴訟を起こした記事
 11月2日、人気スターの馬天宇が、カメラマンの高波に「同性愛」だと書かれたことを、「名誉毀損」だと言って裁判所に訴えた。それに対して、ある人は「同性愛が名誉毀損だというのは、同性愛に対する侮蔑である」と主張し、ある人は「プライバシーの侵害であり、捏造なので、馬天宇は被害者だ」と主張した。

 *馬天宇については、上の事件には触れていませんが、レコードチャイナに「まるでレスリー・チャン! イケメンアイドル馬天宇の京劇美女姿に絶賛の声―中国」(2008-03-09)という記事が出ていました。

3.鳳凰網と淡藍網が合同で、初めて同性愛をテーマにした番組を放送した記事
 4月5日から、中国初の同性愛をテーマにした番組「同性相連」が、[インターネットの]鳳凰網の「性情解読[解碼]」チャンネルで放送された。毎週木曜の午後3-4時に、生放送で、12週間放送された。

4.孫海英が「同性愛は犯罪だ」と罵り、ネットユーザーが立ち上がって批判した記事
 俳優の孫海英が、中国の恋愛・結婚の状況を尋ねた記者の質問に対して、同性愛者のことを「道徳的堕落」「ろくでなし」「ほとんど犯罪のようなものだ」「人間性に反する」と語った。それに対して、ネットで「同性愛は先天的なものだ」「昔からあるもので、前近代にはもっと盛んだった」「法律にも規定はない」など、多くの批判が起きた。

5.「レインボーには力がある」2007台湾LGBTパレード記事
 10月13日。→本ブログの記事「台湾のプライドパレードと移住労働者デモ」参照。 

6.中国のセクシュアル・マイノリティがプライド月間の祝賀活動をおこなった記事
 6月10日、北京・成都などの地で、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、異性愛の友好的人士、国際的人士が、プライド月間の活動をした。北京では、同語レズビアングループ、愛白文化教育センターのボランティアと友人20人余りが北京の円明園公園で公然と活動をして、虹色の凧を飛ばした。愛白成都青年同志活動センターと成都LES愛心グループのボランティア70人余りは、成都市植物公園で「プライド凧あげ」(=これも、虹色の凧をあげること)をした。

7.ビル・ゲイツが2620万ドルを同性愛サイトに投資した記事
 マイクロソフトのビル・ゲイツを含むカスケード投資会社が、アメリカ最大の同性愛サイトGay.comの親会社のPlanetOutに2620万ドルの投資をした。

8.ネット仲間がセクマイに友好的な10のメディアを選び、「新浪」がトップに輝いた記事
 「新浪」の受賞理由:ブログという場を作り出すことに成功することによって、同性愛を含めた草の根の階層に声を上げることができるようにした。新浪網は、最も多くのセクマイのブログを集めており、国内の比較的影響力のあるセクマイのブログの多くはここに集まっている。

9.ネットユーザーが暴露した:井柏然と付辛博は同性愛カップル記事

10.内地初の同性愛者の愛情を反映した映画《ガラスの心[玻璃心]》が撮影開始記事
 内地で初めて実在の人物の話を脚色して、同性愛者の愛情を反映した草の根映画[=自主制作映画を指すようです。百度百科「草根电影」]《ガラスの心》が、同性愛者たちへの関心を引き起こした。これは、有名な挿絵画家で同性愛者の毛智勇が、自分の経験をもとにして脚色した作品である。

2008年

1.濮存が同性愛者を励ました原文
 10月、取材に答えて。エイズ防止広告に出演したことがきっかけで同性愛者との接触が多くなり、理解を深めた結果として。

2.李銀河が、ふたたび「2つの会(全人代と全国政協)」に同性婚姻立法を提案した原文
 3月、李銀河(中国社会科学員研究員、社会学者)が、ふたたび全人代と全国政協に同性婚姻の提案をした(初めて提案したのは2003年)。李は、また、民政部門に同性愛の社会団体(社団)を承認することを求める提案もおこなった。→本ブログの記事「本年の動向6―同性婚姻立法の提案」(これは、2006年の話ですが)、「李銀河さん、LGBTの社会団体の登記を承認するよう提案」も参照。 

3.台湾のLGBTパレードが、大陸のLGBTの上陸体験を待ち望んだ原文
 昨年[2007年]は、大陸のセクマイは出席できなかったけれども、2008年は、両岸の直航チャーター便と大陸の観光客ツアーの実現によって、大陸のセクマイが華人のセクマイの盛事に参与することが現実になった。→本ブログの記事「台湾プライドパレードに史上最高の1万8千人」も参照。

4.香港で12月13日、千人にのぼるLGBTのプライドパレード原文
 →本ブログの記事「香港初のプライドパレードに1000人あまり」参照。

5.「同性愛治療カプセル」という疑わしいサイトが再び出現した原文
 7月、あるサイトが「同性愛を治療できる」と宣伝したが、同性愛者のネットユーザーの関心や圧力によって閉鎖された。その後このサイトは再びオープンしたけれども、同性愛者がもう一度圧力をかけ、また閉鎖させた。

6.四川大地震後、同性愛者の献血の話題がメディアの関心を集めた原文
 5月12日、四川地区で大地震が起き、大量の負傷者への輸血が必要になったため、血液が不足した。同性愛者の献血が話題になり、同性愛者グループの内部でも多くの討論がなされ、若干のメディアの関心を引いた。
 6月2日、インドの英字紙Daily News & Analysisの記事“No gay blood in quake aid”(2008/06/02)は、以下のように伝えた。中国のレズビアン雑誌《Les+》は、多くのレズビアンが献血をしようとしたのに、「同性愛者はエイズのハイリスクグループだ」という理由によって、珍しいタイプの血液の人さえも献血を拒否されたこと伝えた。北京のレズビアングループ「同語」は、性的指向を理由として献血を拒否する規定を改めることを呼びかけた。《Les+》は、レズビアンはけっして感染のハイリスクグループではなく、エイズウイルスやB型肝炎を含めて、ローリスクグループであることを指摘した。この問題に関してはネットで議論になり、同性愛者の献血禁止については賛否両論が出たが、ある人は「血液の安全を保証するには、厳格な血液検査がカギである。」「それなしに献血を禁止するのは、同性愛者に対する差別である」と述べた。

7.オーストラリアの飛び込みの金メダリストのマシュー・ミッチャムが、北京オリンピックの前にカミングアウト原文)。
 5月24日。→Gay Japan Newsの記事「オーストラリア代表選手、ゲイであることを公表して北京五輪へ」(2008/07/15)参照。

8.2008年の最も悲しい人物、エイズ患者の曉陽を救え、青春を救え原文
 7月、北京で1人で働いていた23歳の曉陽がエイズに感染した。淡藍網の報道によって社会の関心が集まり、社会の各界から義援金が寄せられた。8月、曉陽は多臓器不全によって亡くなった。

9.中国クィア独立映画巡回展原文
 北京・上海・成都・広州などを巡回した。北京については、本ブログの記事「北京でクイア映画文化月間および上映会」参照。

10.南京の特大の同性愛売春グループが粉砕される原文
 南京のある男が、5月から、「労働者募集」の名目で20歳前後の少年10人余りを騙して、自分の住み家に連れてきて、むりやり「関係」し、同性に対して売春を強要した。11月に警察が摘発したが、その同性売春所は、多いときには百人近い客が予約し、客の中には教授や省クラスの機関の公務員もいた。

2009年
 (「淡蓝盘点:2009年度中国十大同志新闻」淡藍網2009-12-9)

1.同性愛者の恋人が今年のバレンタインデーに結婚写真を撮って、同性婚姻をアピール
 2月14日。→本ブログの記事「バレンタインデーに北京の街頭で同性婚の記念写真を撮影してアピール」参照。

2.李銀河が、趙本山の春の夕べの出し物は同性の恋人たちを侮辱していると批判原文
 2月10日、李銀河が、趙本山の作品「不差銭」のセリフの中の「尻精」という言葉について、「尻精は同性愛者の蔑称であり、ゲイのある種の性交の方式を暗示していることが起源かもしれない。受け手の数が億である春の夕べのプログラムの中で、このような粗野な侮り罵りをしてはならない。現在の世界のLGBTの権利の基準に照らすと、同性愛をメディアで公然と罵倒することは、まちがいなく政治的な誤りであり、マイノリティに対する差別である疑いがある」と述べて批判した(李銀河「赵本山的政治错误」[2009-02-10])。それに対して、趙本山の代理人は、ここで言う「尻精」は、「馬尻精(おべっか上手な人、ごますり)」の意味であり、趙は、李銀河の言う意味は知らなかったと述べた(「赵本山否认侮辱同性恋 称李银河误解」)。それに対して、李銀河は、前後の文脈から見て「尻精」は同性愛者の意味だと読めるので、まさか趙がその意味を知らなかったとは思わなかったと述べ(李銀河「不知者不为罪」[2009-02-14])……と議論は続きました。

 淡藍コメント:趙本山に本当に同性愛者を侮辱する意図があったかどうかはともかく、「尻精」はたしかに文明的ではない。メディアの後押しの下、ネットユーザーは一方的に趙を支持し、李銀河教授はいささか孤独だった。

3.広州の警察が人民公園の中の同性愛者を追い出した原文
 広州の人民公園はゲイが集う場になっていたが、8月25日の夕方、この公園にいた50名ほどのゲイを、警察が追い払おうとしたところ、言い争いになったが、双方とも平和的な態度をとり、最後には警察が退いた。

 淡藍コメント:「人民公園は人民のものだ。なぜ同性愛者が来れないのか?」という質問が広州市広衛派出所で出されたとき、警官たちには返す言葉がなかった。中国のセクマイはあまりにも多くの侮りと抑圧を受けた。私たちが必要なのは少しの空間と自由なのに、彼らはそれも剥奪するのか?

 この事件は、8月29日、『中国日報』が、英文で“Homosexuals clash with police in park”(要旨:「《中国日报》报道同性恋者被要求离开广州人民公园而引发的争议」愛白網2009-09-02)と伝え、9月14日、AP通信が“Gay Chinese stand up police sweep of hangout”(中国語訳:「美联社:广州警察驱逐人民公园内的同性恋者」)と伝えた事件です。AP通信によると、それまでは警察がゲイたちに公園からに立ち退くように要求したら、彼らは面倒を避けるために解散していたのが、この日は警察と対峙し、警察が退却したということです。『中国日報』によると、広州に拠点があるゲイ団体のあるボランティアは、「人民公園は、すべての人民に開放されている。なぜ我々がここにいてはいけないのか?」と述べたといいます。

 このニュースはインターネットであっという間に伝えられ、全国の同性愛者の間でホットな話題になりました。ある人は、この事件は「中国社会の自主意識と権利意識の進歩、観念の不断の開放と文明化への趨勢を証明した」と述べました(洪慶明「“公园同志”事件折射中国变化潜流」『羊城晩報』2009年9月17日)。また、ブログ「二人の男の勇気」(彦曉)が選んだ「2009中国同性愛10大事件」(3)は、この事件をトップに挙げ、「『人民の公園は人民のものだ。同性愛はなぜ来れないのか?』 このような詰問が同性愛者と警察との間に発生したとき、世界は真に変わった」と言っています。

4.プライド月間[6月]に、南北が呼応して、多くのセクマイの文化活動が集中的におこなわれた原文
 淡藍コメント:毎年この時期、異国ではレインボーフラッグが高々と翻っている時に、中国の内地のセクマイたちは、ずっと首を長くして自分たちの六色を見ることができるのを待っていた。2009年は……私たちが特に重大で、歴史的意義を持った活動として記憶するのは、「“別・性”中国第1回多元性別芸術展」が北京で開幕し、「上海プライドウィーク」が全世界のメディアの注目を集め、「第4回北京クィア映画祭」が滞りなく閉幕し、第2回中国クィア独立映像巡回展がおこなわれたことである。→本ブログの記事「第1回中国多元性別芸術展開幕」「上海プライドウィーク」「第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史」参照。

5.《春風沈酔の夜》が国際的に大きな賞を取り、《無声風鈴》が香港・台湾で公開上映された原文
 淡藍コメント:中国では、同性愛を題材にした一切の映画・テレビの作品は禁止されている。韓三平(中国映画集団会長)は、「それは、主流のイデオロギーではない」と述べた。しかし、我々には中国系の大監督のアン・リー(李安)が撮った《断背山(ブロークバック・マウンテン)》がある。大陸の関係機構が封殺したロウ・イエ(婁)が撮った主流の《春風沈酔の夜》は、カンヌで脚本賞を取った。このほか、香港の主流の同性愛映画《無声の風鈴》は、香港・台湾地区で公開上映され、主演の呂玉来は、マドリッド国際レズビアン&ゲイ映画祭で最優秀男優に選ばれた。これらの成績は、みな、「主流の」放送・映画官僚たちは自分のイデオロギーを見つめ直すべきことを示している。
 *《無声風鈴》については、wikipediaの記述[英語]あり。

6.中国が初めて代表団を結成して、コペンハーゲンの第2回世界同性愛運動会[ザ・ワールド・アウトゲームズ]に参加した原文
 淡藍コメント:2009年、中国の同性愛者が自発的に結成した代表団が、デンマークの首都コペンハーゲンに行って、7~8月、第2回ザ・ワールド・アウトゲームズ(World Outgames 2009、ニールセン北村朋子「LGBTの祭典 ザ・ワールド・アウトゲームズがコペンハーゲンで開催」Media Sabor2009/06/18、「コペンハーゲンでゲイのオリンピックが開幕」Gay Life Japan2009年7月28日参照)に参加した。これは、中国のLGBT初の大きな国際的競技会へのデビューである。そこで、李賛東とSean Leeが男子ビーチバレーで中国代表団初の金メダルを獲得した。

7.台湾のLGBTパレードが新記録を作り、香港の反差別デモが関心を集めた原文
 →本ブログの記事「台湾プライドパレード2009に2万5千人」「香港プライドパレード2009に1800人あまり」参照。

8.中国の同性愛者に対するメディアの肯定的な報道が明らかに増えた原文
 淡藍コメント:2009年は、『人民日報』(*)・『中国日報』・『中国新聞周刊』および洪晃が編集する『iLook』などのさまざまな媒体が、同性愛集団に対して肯定的で多面的な報道をした。けれども、相変わらず一部のメディアは、偏見や誤った認識で、珍しいものを漁る(猟奇)とか、魔物化する態度で同性愛集団を報道した。

 (*)淡藍網が言う『人民日報』の報道は、アイスランドの首相にヨハンナ・シグルザルドッティルさんが就任した際、彼女のさまざまな功績を紹介しつつ、「アイスランドの政界が最も歓迎している人物」だと述べた後で、「しかし、シグルザルドッティルが就任後真っ先に国際的メディアの注目を集めたのは、彼女が世界で初めて同性愛者であることを公然と認めた政府の首脳であることである。けれど、アイスランドではとっくに13年前、同性婚を認めており、アイスランド人は、そのことを気にしていない」というもの(要旨)です(「曾濒临“国家破产”境地——冰岛现在怎样了?」『人民日報』2009年2月10日)。この報道について、ある専門家は、「中国の最も権威ある主流の新聞が正面から同性愛者の社会的貢献について報道したものであり、中国社会の変化を反映している」と指摘しています(「《人民日报》正面报道国外同性恋者社会形象」淡藍網)。ただし、国外についての報道にとどまっているという面もあります。 

 最初は「8」は、「作家の劉仰が大放言をし、セクマイは本を引き裂いてボイコットした」でしたが、その後変更されました。

9.大理の政府が出資してゲイバーを作った原文
 →本ブログの記事「大理ゲイバー事件について、現地の同性愛者の人権団体がメディアと政府を批判する声明」参照。興味本位のマスコミの過剰報道などによって開店が遅れましたが、12月19日、ひっそりとですが、無事開店して、満席になったそうです(後日報告します)。

10.同性愛者サイトがエイズ防止の新しい場になったが、ハラスメントが絶えない原文
 淡藍コメント:長年、セクマイのサイトの役割は、セクマイの話題と同様、デリケートで具合が悪いものであり、毎回のインターネットの暴風[取り締まり]の際にいつもひどい損失を被ってきた。これは、セクマイサイトの自律性と関係があり、管理機関のダブル・スタンダードや差別とも関係がある。私たちは2007年のインターネットの厳しい取り締まりの時、上海のあるインターネット警察が電話の中でこう怒鳴ったのを、非常にはっきり覚えている:「同性愛サイトとは何だ? 社会の公徳に背いたサイトだ!! つまり閉鎖すべき範囲内のサイトだ!!」。
 しかし、社会は進歩しつつあり、人々の偏見は変わりつつある。今年5月、中国で初めて政府筋のLGBTサイトが江西で開設された(*)。このほか、テレコムの緑色オンラインが同性愛サイトをスクリーニングしたとき、メディアが次々に注目して報道し、抗議と質問をする中で、同性愛サイトに対するスクリーニングは解除された。
 (*)南昌市疾病控制中心の支持の下設立された「江西同志知己網」を指していると思われます(http://www.jxtzzj.com/、ただし12月24日現在は不通)。
 →本ブログの記事「同性愛サイトに対する攻撃や規制」も参照。

 以上、3年間の10大ニュースを全体として見ると、中国のセクシュアル・マイノリティの人々が、困難な状況の下で、少しずつ新しい動きを作ってきておられることがわかります。

ゲイ中心のニュース選定の傾向があるかも?

 ただし、「淡藍網」の「10大ニュース」は、「淡藍網」が基本的にはゲイサイトであるせいか、「セクシュアル・マイノリティニュース」と言いつつ、四川大地震後の献血の話題を除いて、ニュースの選び方や記述にゲイ中心の傾向があるように思います。

 単純な例を挙げると、北京オリンピックで同性愛者であることを公にした選手は、たしかにゲイではミッチャム1人ですが、レズビアンでは、9人いました(「10人の同性愛者アスリートがカミングアウト <北京オリンピック>」てのる【Gay】タイムズ2008/08/19)。また、レズビアンにも目配りをするならば、2007年から2009年にかけて行われた、女性の同性愛者・バイセクシュアルに対するDVの調査プロジェクト(本ブログの記事「女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDV調査プロジェクトはじまる」、「レズビアンのための反DVハンドブック刊行」参照)や中国大陸初のレズビアン民間フォーラムである2009年11月の「レズビアン発展フォーラム」(4)も、10大ニュースの中に入れてもいいのではないかと思います。やはりゲイの活動に比べて、レズビアンの活動はマイナーなのでしょうか?

 また、トランスジェンダーを視野に入れるならば、2009年11月の「性転換手術技術管理規範(試行)」の制定は、10大ニュースから落とすべきではないでしょう。

 さらに、ゲイに関しても、2009年3、4月のゲイの妻の会の結成やその共同声明(本ブログの記事「『同性愛者の妻の会』開催、『同性愛者の妻の共同声明』発表」参照)のような事件も重視されてもよいように思います。実際、ゲイブログでも、先ほど触れたブログ「二人の男の勇気」は、「2009中国同性愛10大事件」の4番目にこれを選んでいますし……(もっとも、ブログ「二人の男の勇気」の方は、台湾や香港の事件を10大事件の中に入れていないので、その分、国内の事件を多く選んでいるという違いのためかもしれませんが)。

(1)2000年に創設された中国の大陸で最も影響力がある「同志」のブログ。ただし、実質的にはゲイ中心。広告などはすべてゲイ向け。
(2)「同志」という言葉は、「同語」が作成した『同性恋ABC 関于性別和性傾向的基本知識与問答(同性愛ABC ジェンダーと性的指向に関する基本的知識と問答)』(PDFファイル)に収録された「同性愛小辞典」によると、「男女の同性愛、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人々の別称。香港の監督の林奕華によって1989年に初めて使用が唱えられ、『志同道合(志と信念を同じくする)』を意味し、それによって社会の『同性愛』のスティグマ化に対抗する」と説明してあります。この記述から見ると、「LGBT」が適訳のように思います。しかし、その一方、「同志」という言葉について、「実質的には、男性の同性愛者の表象である」という指摘もあります(本ブログの記事「女性の同性愛者・バイセクシュアルの状況調査」でも取り上げた、「《2008女同性恋・双性恋生存状況調査報告》(徴求意見稿)」の指摘)。だとすると、いっそのこと「ゲイニュース」と訳してしまう方法もあるでしょう。しかし、この10大ニュースの場合、レズビアンなどへの言及はあるので、「ゲイニュース」と訳すと訳しすぎになると思います。けれど、後で述べるように、少なくともトランスジェンダーを視野に入れているとは思えないので、「LGBTニュース」と訳すのも、無理があると思います。ですから、より漠然と、「セクシュアル・マイノリティニュース」と訳してみました。
(3)ブログ「2人の男の勇気(两个男人的勇气)」で発表された「2009中国同性愛10大事件2009中国同性恋十大事件)(2009-12-08)」は、以下とのおりです。10件うち、5件までは、淡藍網と共通の事件を選んでいます。
1(=淡藍網の3).広州人民公園事件
2(=淡藍網の1).北京で同性愛者の結婚衣装が前門に登場した
3.深圳で10人のゲイが逮捕されたが、その中の1人はあくまで頭を下げなかった

 →9月10日、深圳の警察が、「同性売春」の疑いで、ある同性愛者の集会所の10名の男性を逮捕したところ(実際は、彼らはトランプをしていただけだった)、9名の容疑者はうつむいて何も言わなかったが、1人は「罪を犯していないのに、なぜ頭を下げなければならないのか」と言って警察と対峙した。
4.悲惨で痛ましいゲイの妻が水面に浮かび出た
 →「ゲイの妻の訴えを読むたびに、私たちの心は格別に痛み、無辜の人を傷つけない決心をいっそう固めた」
5.同性愛ブログが「3.15」偽物取り締まりにあう
 (→この事件については、よくわかりません)
6(≒淡藍網の8).同性愛の報道で、中国のメディアが両極に分化
 →セクマイに友好的なのは、『中国日報』『I LOOK』。多くの地方メディア(都市報が主)は相変わらず猟奇的。
7.偽学者が形を変えて宣伝し、セクマイグループを激怒させた
 (→この事件についても、よくわかりません)
8(=淡藍網の9).大理同性愛バーの騒動
9(=淡藍網の6).中国のセクマイが世界に向かって進む
10.両岸三地[=大陸、台湾、香港]のセクマイが大融合──統一は、セクマイから始まる

 →台北や香港だけでなく、上海でもプライドパレードがおこなわれた(これは事実誤認。「上海プライドウィーク」のことを指しているのであろうが、デモはおこなわれていない)。これらの活動の参加者は現地の者だけでなく、両岸三地の者が参加した。
(4)2009女同发展论坛公告与征集」北京拉拉沙龍HP2009年9月21日、「2009女同发展论坛暨北京拉拉沙龙五周年」北京拉拉沙龍HP2009年11月14日参照。
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遠山日出也

Author:遠山日出也
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